プジョー2008シエロ(FF/5AT)
もう「派生モデル」とは言わせない 2014.04.15 試乗記 プジョーのニューモデル「2008」に試乗。走りのよさと高い実用性を兼ね備えたコンパクトクロスオーバーは、プジョーのファミリーカーの主流となり得るか?おしゃれな人の琴線に触れる
「プジョー208」をベースにしたコンパクトなクロスオーバー、2008の日本でのお披露目は、2013年の東京モーターショーのプレスデイだった。数日後の一般公開日、所用である人と待ち合わせをすることになった時に、プジョーのブースを指定された。
「なぜプジョーのブースですか?」と尋ねると、「多分、人が少ないから」という大変に失礼な答えが返ってきた。
実際、プジョーのブースは控え目に言ってそれほど混雑していなかった。待ち人は渋滞で少し遅れるとのことだったので、デビューしたばかりのプジョー2008を眺めながらボーッと待つ。で、あることに気付いた。
こざっぱりとした服装の若いカップルだとか、パパがマクラーレンのベビーカーを押すおしゃれなファミリーが、プジョー2008の前で次々と立ち止まるのだ。
プジョー2008の前で立ち止まる方の服装には共通点があって、一目でわかるブランド品ではないけれど上質だ。そしてみなさん、インテリアの雰囲気や、荷室にベビーカーが収まるのかをじっくり時間をかけて確かめている。
どこでもグッドルッキング
ここで思ったことは3つ。
ひとつは、派手ではないけれど人を引きつけるデザインだということ。ふたつめは、「安いから」とか「お得だから」という理由でモノを買う人ではなく、自分の気に入ったモノを丹念に選びたいという人の琴線に触れるモデルらしいということ。3つめは、なんやかんや言ってもクルマは乗り手の人となりを表すということ。
といった“街角市場調査”を経て対面したプジョー2008は、あらためて見ると確かにグッドルッキングだった。SUV的なたくましさとスタイリッシュな佇(たたず)まいがいい具合にブレンドされている、と書くと中途半端な印象を受けるかもしれない。「タフなのか都会的なのかはっきりしろ!」的な。
でも、街で買い物もするしたまにはアウトドアアクティビティーも楽しみたい、というのが今の生活者のリアリティーだろう。
ブラウンを基調にしたインテリアも、主張しすぎないシックな雰囲気がすてきだ。
そして洗練された見た目の好印象は、走りだしても変わらなかった。
重量アップは最小限に
直列3気筒の1.2リッターエンジン(ちなみにノンターボ)を始動して、シングルクラッチ式の5段トランスミッションをオートマチックモードにセット。2ペダル式の5段MTと書くとまぎらわしいけれど、オートマチック変速モードを選べば普通のオートマ車として扱うことができ、マニュアル変速モードを選ぶと手動でギアを変えることができる。
2540mmというプジョー208のホイールベースはそのままに200mmストレッチしたボディーは、全長4160mm。ここで、2008の車重を見て軽く驚く。208に比べてかなり大きくなっているように見えるけれど、それほど重くはなっていないのだ。
試乗したパノラミックガラスルーフやハーフレザーシートを装備する豪華版の「シエロ」で1160kgと、208シエロと比べると50kgしか増えていない。装備が少し簡素な「プレミアム」は1140kgだ。
現行208シリーズは、先代モデルに比べて70kgの軽量化を果たしたことがポイントのひとつだったけれど、2008シリーズの開発にあたっても体重増加は巧妙に避けられている。
見事な仕事ぶりのパワートレイン
体が絞られているおかげか、1.2リッターの3気筒エンジンでも気分よく加速する。決して周囲を圧するリッチな加速感ではないけれど、軽快な加速で運転の楽しさを味わうことができる。また、かつての3気筒エンジンにあった振動や音の安っぽさも感じられない。
「ETG5」と呼ばれる5段トランスミッションの仕事っぷりも丁寧だ。シフトアップもシフトダウンもスムーズ。マニュアル変速モードを選んでシフトダウンすると、名手がヒール・アンド・トウを決めるように、ポンと軽く回転を上げて変速ショックなしにギアを落とす。
ただし、一点だけ気になる点があった。オートマチックモードの1速から2速へのシフトアップというシチュエーションに限られるけれど、あまり1速で引っ張りすぎると、シフトアップの瞬間に前につんのめるような動きを見せる。かつてのシングルクラッチトランスミッション搭載車に見られた悪癖だ。
1速ではあまりアクセルペダルを踏み込まないようにして早めに2速へのシフトアップを促せば、アラは見えない。このコツだけマスターすれば、上々のパワートレインだ。
懐の深い足まわりに感服
パワートレインは上々の仕上がりだと書いたけれど、プジョー2008の最大の魅力は足まわりの懐の深さにある。乗り心地は、コンパクトなサイズから想像できないほどしっとりと落ち着いている。
路面の凸凹を乗り越えた時のショックは、タイヤ→サスペンション→ボディー→シートという過程でどんどん角が丸くなり、最終的にドライバーに伝わる段階では実にマイルドになっている。
それでいながらハンドリングはダルではなく、小径のステアリングホイールの操作に正確に反応して、狙い通りに向きを変える。
ヘアピンのようにタイトなコーナーを「えいやっ!」で曲がるとさすがにグラッと傾いて、車高の高さを実感する。けれども、中高速コーナーは気持ち良くクリアする。乗り心地と操縦性が、高い次元でバランスしていると言っていいだろう。
これまでの経験だと、スキーやサーフィンなど、アウトドアのアクティビティーを好む人はほぼ例外なく運転もお好きだ。リラックスして長距離移動ができる快適性とファン・トゥ・ドライブを兼ね備える2008は、活動的な人にうってつけのキャラクターだ。
「208」の立場が危うい?
でも、まだここで安心してはいけない。運転席の乗り心地はまずまずなのに、後席に座ったとたんにドッタンバタンして残念、というケースも多々あるからだ。
ということで運転を交代して後席に腰掛けると……、やはり乗り心地がいい。
しかも乗り心地がいいだけでなく、スペースも広い。プジョー208より長くなったことは記したけれど、全高が80mm高くなっていて、これが室内空間に余裕をもたらしている。
ちなみに荷室も広くなっており、プジョー208比だと約25%も容量は拡大している。後席を倒すと現れるフラットなラゲッジスペースは広大で、2名乗車だと割り切るとかなりかさばるものまで搭載できる。
心配になったのは、プジョー208の立場だ。208がよくできたコンパクトな実用車であるという評価は揺るがないけれど、生活を楽しくしてくれそうなパワーを感じるのは明らかに2008。しかも実用性を大幅に増しつつ、運転する楽しさもきっちりキープしている。
プジョーの本流は「208」や「308」といった3桁のモデルで、間に「0」をふたつはさむ「2008」や「3008」は派生モデルだとされてきた。けれども、東京モーターショーでプジョー2008に集まったカップルやファミリーを思い出すにつれ、“4桁モデル”がこれからのファミリーカーの主流かもしれない、と思うのだった。
(文=サトータケシ/写真=峰 昌宏)
テスト車のデータ
プジョー2008シエロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4160×1740×1550mm
ホイールベース:2540mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:5段AT
最高出力:82ps(60kW)/5750rpm
最大トルク:12.0kgm(118Nm)/2750rpm
タイヤ:(前)205/55R16(後)205/55R16(ミシュラン・エナジーセイバー)
燃費:18.5km/リッター(JC08モード)
価格:278万円/テスト車=281万2400円
オプション装備:ボディーカラー<カラド・ブルー>(3万2400円)
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:1304km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:197km
使用燃料:13.9リッター
参考燃費:14.2km/リッター(満タン法)/13.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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