スバルWRX S4(4WD/CVT)/WRX STI(4WD/6MT)
キモはボディーにあり 2014.08.26 試乗記 いよいよ登場した新型「スバルWRX」。「インプレッサ」の名を捨て、「S4」「STI」の2モデル態勢でデビューした新しいスバルの旗手を、サーキットで試す。もう「インプ」ではない
すでに海外デビューを果たしていた新型WRXの国内発売が今の時期になった背景には、日本市場ではより重要な「レヴォーグ」との兼ね合いへの考慮があったらしい。レヴォーグはスバルきもいりの重要な国内戦略車である。WRXと同時期に発売して、存在感が薄れるのを避けたかったようだ。
それはともかく、従来の「インプレッサWRX」から数えると、今回で通算4世代目となるが、その正式車名に「インプレッサ」の冠はつかない。もっとも、先代の後期からは車体にインプレッサのバッジがつかなくなっており、その後は公式サイトやカタログなどでの呼称も、インプ名なしの「WRX」となっていた。しかし、そのいっぽうでプレスリリースなどでは最後まで「インプレッサWRX」と呼んでいたり……と、先代は富士重工内でも明確にブランド統一されていなかったフシがある。
厳格なブランドコントロールを重視する最近の風潮からすると、正直いって「意外とテキトーだな」とツッコミたくもなるが、この新型WRXからは、正式にインプレッサから独立した上級スポーツモデルという扱いが、社内外で徹底されるようである。
すでにご承知のように、ハードウエア構成では、WRXは実質的にレヴォーグのセダン版といっていい(というか、開発の時系列としてはグローバルモデルのWRXが先行して、それを追っかける形で日本専用ワゴンのレヴォーグが企画されたらしいが)。セダンとワゴンという根本的な車体形式のほか、フロントにオーバーフェンダーが形成されるのもWRXだけの特徴だが、これもインプ時代からのWRXのお約束モチーフである。
独立車種となったがゆえの利点
まあ、そうはいっても、WRXの基本骨格やパッケージは、レヴォーグ同様に、インプレッサがベースである。インテリアデザインもレヴォーグと基本的に共通。細部やトリム素材が高級化されているだけで、大まかな造形意匠や操作レイアウトはインプのままだ。それでも、フロアその他がWRX/レヴォーグのために専用設計された車体骨格は「車体骨格剛性はまるで別物。インプレッサのままならできなかったでしょう」と開発担当氏。
まあ、われわれ外部の人間からすれば「車名がなんだろうが、それはそれ、これはこれ。結局インプでしょ?」といいたくもなるのだが、実際には「WRXは独立車種」と社内で正式なお墨付きを得たことが、新型WRXをWRXたらしめている……と彼は主張する。
独立車種となったことで、企画開発チームも独立組織となり、設計も独立して進めることができて、コスト管理もインプとは別計算となった。それゆえに、手間のかかるWRX専用設計も生産部門が付き合ってくれた……のが、WRXがインプから独立した最大のメリットだそうだ。自動車メーカーのような巨大組織でモノをつくるには、家内制手工業的な仕事しか知らない(例えば私のような)人間には、想像だにしない世界があるのだろう。
新型WRXには大きく2つのシリーズがあって、いわばレヴォーグ2リッターのセダン版である「WRX S4」と、競技ベース用途およびハードコアマニア向けを想定した「WRX STI」である。グレードはどちらも2つ。各部のデザインやパワートレインにグレード間の差はないが、ともに“S”がつくほう(S4では「2.0GT-S」、STIでは「Type S」)に、専用のビルシュタインダンパーが与えられることが最大のちがいである。
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オートマだって売れてほしい
S4は海外では、単純に「WRX」として販売されるモデルの日本仕様。エンジンは最新FA20の直噴DITターボで、変速機はチェーン式CVTの最大許容トルク版。「スポーツ♯」モードにすると全域で8段ステップ変速になるほか、スロットルをある一定以上踏み込むと、あえてステップAT的な制御となるのもレヴォーグなどのそれと同じである。
海外仕様のWRXは同じエンジンでも約270psという控えめなチューンで、しかもCVTのほかにMTも用意される。それに対して、世界で唯一「S4」というサブネームが与えられる日本仕様は、より高度な300psチューンとCVTの組み合わせのみ。さらにアイサイトを筆頭に、各部の装備も海外仕様より高級化されている。
そこには「(STIではない)WRXの海外での好評価に対して、日本ではどうにも存在感がうすい。とくにオートマのWRXは歴史的に売れたためしがない」という日本市場特有の葛藤がある。先代の「A-LINE」はそれ以前よりはずいぶん売れたそうだが、それでも欧州ブランド車のスポーツセダン人気を考えれば、ある意味で同等以上の機能・性能をもつオートマのWRXは「もっと売れてしかるべき」の念が、開発チームに根強い。日本仕様のS4があえて「クラスを超えて、スバルの技術をすべて投入」ともいうべき満艦飾仕様なのは、そういう理由からだ。
今回の試乗は富士スピードウェイ構内道路のみだったので、細かいことはいえないが、レヴォーグ比で車体の剛性感の向上は印象的なほど。フットワークはレヴォーグより明確に硬いわけではないが、レスポンスや走行ラインはハッキリとタイトになっている。
レヴォーグではGTかGT-Sか……つまり、ビルシュタインがつくかどうかで乗り味はかなり異なるが、S4ではその差が望外に小さいのも特徴だ。
レヴォーグでは市街地の乗り心地で快適なのは圧倒的にGTで、ビルシュタインのGT-Sは限界域での所作が高度な代わりに、乗用域の乗り心地ははっきりカタかった。対するS4は低速でのアタリの強さに大差はなく、身のこなしの正確さを合わせれば、ほとんどのシーンでビルシュタインのほうが快適ですらある。逆にいえば、ビルシュタインに憧れつつ、予算の関係で安価なGTを選んでも、WRXのほうが後悔は少なそうだ。基本的な味わいはダンパー銘柄を問わずに酷似しているからである。
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いちマニアとして拍手を贈りたい
STIもまた海外モデルとは異なる日本専用仕様で、海外の2.5リッターに対して、日本仕様はこれまでのSTI同様の2リッター。エンジンチューンも先代とぴたりと同じ。
新しいSTIは早い話が、新型WRXの車体に、旧STIのパワートレイン(変速機やデフのギヤ比まで同じ)とクイックレシオのステアリングシステム(S4が電動パワステなのに対して、STIのそれは油圧式)や手動パーキングブレーキを、そのまま移植したクルマと考えていい。「SIドライブ」やパーキングブレーキの操作系も、STIだけが旧来タイプのままセンターコンソールに残っている。
車両重量も先代とほとんど変わらない新型STIが「史上最強の加速性能」とうたわれるのは、(とくにリアサスの)横剛性が格段に進化した新しいシャシーに合わせて、スロットル特性をこれまでにない「はや開け」のセッティングにできたことを指す。
富士の本コースで試乗したSTIは、なるほど、そういう能書きを着実に体感できた。エンジン本体は変わっていないのだが、とにかく「後ろ足の蹴り」が先代の比ではないほど鋭い。いやホント、スロットル以外イジッていないとは、にわかに信じがたいほどのロケット脱出である。自慢の横剛性で、エンジンパワーをあますところなくトラクション(=推進力)に変換できているのだろう。
リアのキック力だけでなく、トータルでの方向安定性のレベルアップも顕著。これまでだと路面ミューやコーナー曲率によって「DCCD=ドライバーズ・コントロール・センター・ディファレンシャル」をプラス(=ロック)方向にイジると、体感的なフロントけん引力が増して、私のようなアマチュアは安心感が得られたが、少なくとも今回はDCCDをイジる必要性をまるで感じなかった。
それにしても、まさか環境や燃費などまるでシカト(?)して、「低速スカスカ、高速で大爆発」というEJ20のキャラクターに、最近では異例なほどズシリと重いパワステ……と古典的な味わいを、この最新スポーツセダンにそのまま残してくれた開発陣には、マニアのひとりとして素直に拍手したい。
STIにもビルシュタインの有無で2グレードがある。絶対的な減衰力に明確な差はないそうだが、標準モデルがターンインなどで、時折「カクン」という神経質な動きを見せるのに対して、ビルシュタインは微小域からしっかりとダンピングが立ち上がって、サーキットでの操縦性から、ピットロードでの乗り心地まで、すべてでより好印象だった。S4もSTIも、高価なビルシュタインの美点をレヴォーグ以上に正確に引き出せているのは、自慢の車体剛性によるところが大きいのだろう。
(文=佐野弘宗/写真=高橋信宏)
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テスト車のデータ
スバルWRX S4 2.0GT EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1795×1475mm
ホイールベース:2650mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2200-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:334万8000円/テスト車=343万9800円
オプション装備:オールウェザーパック<フロントワイパーデアイサー+スーパーUVカットフロントドアガラス+はっ水加工フロントドアガラス>+ウエルカムライティング&サテンメッキドアミラー<フットランプ付き>+トランクリップスポイラー(9万1800円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1793km
テスト形態:サーキットインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--
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スバルWRX S4 2.0GT-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1795×1475mm
ホイールベース:2650mm
車重:1540kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/2200-4800rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:13.2km/リッター(JC08モード)
価格:356万4000円/テスト車=356万4000円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:527km
テスト形態:サーキットインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--
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スバルWRX STI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1795×1475mm
ホイールベース:2650mm
車重:1480kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6MT
最高出力:308ps(227kW)/6400rpm
最大トルク:43.0kgm(422Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)245/40R18 93W/(後)245/40R18 93W(ダンロップSPORT MAXX RT)
燃費:9.4km/リッター(JC08モード)
価格:379万800円/テスト車=392万400円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイト・パール>(3万2400円)/オールウェザーパック<フロントワイパーデアイサー+スーパーUVカットフロントドアガラス+はっ水加工フロントドアガラス>+ウエルカムライティング&サテンメッキドアミラー<フットランプ付き>+運転席10ウェイパワーシート(9万7200円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2757km
テスト形態:サーキットインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--
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スバルWRX STI Type S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1795×1475mm
ホイールベース:2650mm
車重:1490kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6MT
最高出力:308ps(227kW)/6400rpm
最大トルク:43.0kgm(422Nm)/4400rpm
タイヤ:(前)245/40R18 93W/(後)245/40R18 93W(ダンロップSPORT MAXX RT)
燃費:9.4km/リッター(JC08モード)
価格:411万4800円/テスト車=417万9600円
オプション装備:ウエルカムライティング&サテンメッキドアミラー<フットランプ付き>+運転席10ウェイパワーシート(6万4800円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2106km
テスト形態:サーキットインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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「オートモビル カウンシル2026」の会場から(RENDEZ-VOUS/STRAD&Co./BRITISH LABEL AUTOMOTIVE)
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