ジープ・レネゲード トレイルホーク(4WD/9AT)
見た目以上、の道具感あり 2015.10.15 試乗記 「ジープ・レネゲード」の4WDモデル「トレイルホーク」に試乗。ジープブランドの末弟の“道具”としての実力をじっくり探った。ジープ、には見える
正直、この手は苦手です。いえいえ、あえて武骨さを押し出した全体形にはかなり惹(ひ)かれます。四角いボディーにジープ特有のグリルをつけただけ、と言っては失礼かもしれませんが、それこそ現行「チェロキー」よりずっと明快。流行に流されず、本来の機能性を忘れていませんという主張は分かりやすく伝わります。ジープはこれでいいのである。
しかしながら、ジープ初のコンパクトSUVを唱(とな)える「レネゲード」には、フックというかネタというか、エピソードが多すぎる。ここを見て、ここを取り上げて、こっちも話題にして、とあからさまな話題満載、何だか“キャラ”作りに一生懸命な今時のアイドルみたいで、ちょっと痛々しいほどだ。そういうお前が痛い、と言われれば返す言葉もないわけですが、何しろジープはわれわれオヤジ世代が男の子だった頃、スポーツカーとはまた反対の極に位置する夢の車だった。ジープや「ランクル」は、道なき道を、砂漠を、ジャングルを踏み越えて未知の大陸を目指す探検隊や冒険家の象徴であり、校庭や近所の空き地の先には進めなかった少年たちの憧れだったのである。そんな昔の話なんて今時どうでもいいじゃん、細かいことに目くじら立てんなよ、と別の自分がささやく声も聞こえるんですよ。ウザいオヤジだと思われたくもありません。けれど、キュートだとかかわいいとかだけで済ませては、いわゆるリスペクトに欠ける気がするのでやはり言うべきは言わせていただきます。
もっとも、ジープ一族の末っ子のようなレネゲードは、フィアット版と兄弟車となる“ベイビージープ”としてずいぶん前からうわさが流れていた現代のSUVである。もちろんそれは9月末に日本でも発売された「500X」のこと。昨年初頭にフィアットと経営統合したクライスラー改めFCAにとって、互いの資産を有効活用したシナジーの第1弾。基本プラットフォームも実際の生産もイタリア側の担当ゆえ、昔ながらの“ジープ”風味を期待できないことは百も承知と考えていたら、意外や走らせてみると、なかなかしっかり質実剛健な手応えだった。四角いだけの単なるおしゃれSUVではなかったのである。
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それでも、ちょっと痛い
ジープ初のコンパクトSUVたるレネゲードのボディーサイズは、全長4260mm×全幅1805mm×全高1725mm、ホイールベースは2570mmで500Xと同一である。長さは「マツダCX-3」とほとんど同じ、実はホイールベースも同一だが、全幅は5ナンバーサイズを楽に超えている。今回試乗した4WDの「トレイルホーク」は全高と最低地上高(200mm)がFWD(前輪駆動)モデルの「リミテッド」よりも30mm高い。
全体的にコロッとスクエアなフォルムに、ジープブランドの特徴的なモチーフ、すなわち7本の縦桟(たてさん)グリルと円形のヘッドランプを取り付けただけで何となくジープに見えるのだから伝統もだてではない。今時のSUVとは異なり、クーペのように低く流麗なルーフラインなどを考えないで済むのはジープゆえの利点である。おかげで、室内やラゲージスペースは実用的だ。同じホイールベースを持つCX-3と比べて室内はルーミーだし、高さを生かしたリアシートは足元も天井もずっと余裕がある。フィアット系と同形状のステアリングホイールが目に付くインストゥルメントパネルまわりはなかなかの出来栄えで、チェロキーよりも上等に見えるほど。もっとも、前述したように細工が多すぎてオジサンはちょっと困惑する。件(くだん)のジープ顔やジェリカンモチーフ(バッテン印)がボディー内外にちりばめられており、その“遊び心”たるや「スズキ・ラパン」も顔負けなぐらいだ。まあ、気にしなければいいだけの話かもしれないが、場違いの店に紛れ込んだような気持ちになる。
若い人たちには余計な話かもしれないが、あの無双窓のようなグリルのデザインはもともとフォード製プロトタイプが起源と言われており、しかも「ウィリス・ジープ」で分かるようにその時は9本スロットだったはず。「7スロットグリル&円形ランプこそジープの伝統」なんて声高にアピールされ、しかも至るところにそのジープ顔のモチーフをちりばめられると、ちょっと天邪鬼な気持ちが湧いて出る。迷彩柄にしても、ちょっと安易な使い方に思えるが、今時は虫が出るからキャンプなんて御免というインドア派と思われる人に限ってカモフラ好きだから、まあ、そんなものでしょうか。ただ、センターコンソールに刻まれた「SINCE 1941」はやはり気恥ずかしい。紆余(うよ)曲折を経て民生用ジープブランドがクライスラー、もといFCAのものになっていることは間違いないが、第2次大戦中までさかのぼるのはいささか無理があるのではないだろうか。歴史を知らない世代が興味を持つきっかけになれば、ぐらいに寛容に受け止めるべきなのだろう。
おおらかさがちょうどいい
4WDのトレイルホークのパワートレインは「チェロキー ロンジチュード」に搭載されているものと基本的に共通である。2.4リッター4気筒エンジンは175ps(129kW)/6400rpmと23.5kgm(230Nm)/3900rpmを発生、変速機は9段ATとなる。いっぽうFWDのリミテッドは1.4リッター4気筒直噴ターボ(140ps、23.5kgm)に6段DCTというフィアット由来の組み合わせとなる。
トレイルホークは同じエンジンを積むFWDのチェロキーよりも200kgほど軽い(車重1560kg)せいで、思った以上に軽快、かつ足取り確かである。エンジンは特にシャープにもパワフルにも感じないが、健康的に律義に回るし、ZFの9ATはスムーズで神経質なところがなく扱いやすい。しかもほとんどスロットルを踏まない軽負荷状態ならばメーター上の110km/hぐらいでちゃんとトップ9速にも入る(100km/hのエンジン回転数は1500rpmプラス)。この辺りは100km/h程度ではほとんど7速にしか入らないチェロキーとは違って、現実的な設定だ。
ハンドリングもパキパキ活発でスポーティーといった類いではないけれど、このタイプのSUVとしては十分にリニアでスタビリティーも高い。乗り心地はジープとしては引き締まったものだが、500Xほどタイトな感じではなく、またチェロキーほど鷹揚(おうよう)でもなく、実用車としてちょうどいい、嫌みのないおおらかさといえる。悪路も想定しなければならない4WDは、このぐらいのほんの少し緩い感じが有り難い。ゆっくりとしたテンポでリラックスして走るのはダウンサイジングターボと6段DCTが苦手とするところである。その分燃費は大したことがないけれど、このクライスラー製2.4リッターはレギュラー仕様となっている。
チェロキーよりレネゲード
レネゲード トレイルホークは電子制御カップリングを使用するオンデマンド式4WDだが、チェロキー同様のセレクテレインシステムが備わり、コンソールのダイヤルでオート/スノー/サンド/マッド/ロック(岩場)の各走行モードを選択できるようになってはいる。もっとも、主要メカニズムはカップリングひとつだけで、副変速機もメカニカルなデフロック機構も備わらないシステムゆえに、本格的なオフロードへ踏み入るのはお薦めしない。「アクティブドライブロー」や「4WDロック」といった別のスイッチがあるせいで、いかにも本格派4WD風だが、前述のように比較的シンプルなシステムなので(ZFのトランスファーは「レンジローバー イヴォーク」などと同様のもの)、これはカップリングによるトルクの伝達や変速を制御するものだろう。ちなみに詳しい説明は見当たらなかったが、“ロック”はセンターデフロックを意味するのではなく、FWD/4WDの切り替えをしないことを指すはずだ。もちろん、一般的なグラベルロードや雪道ならば、試してはいないがまったく問題なく走れるはずだ。ジープだからと端から過信するのではなく、どんな4WDにも限界があるということを忘れないでほしい。
考えてみればクライスラーもフィアットも実用重視の道具車を造らせれば一日の長があるブランドだ。とすればファッショナブルなコンパクトSUVに見えて、実はごくまっとうで扱いやすいのも当たり前かもしれない。ちょっと煩(うるさ)い“遊び心”に目をつぶれば、見かけよりずっと実用的、極端な悪路走破性以外はチェロキーを選ぶ理由はないといっていい。
(文=高平高輝/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
ジープ・レネゲード トレイルホーク
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4260×1805×1725mm
ホイールベース:2570mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 SOHC 16バルブ
トランスミッション:9段AT
最高出力:175ps(129kW)/6400rpm
最大トルク:23.5kgm(230Nm)/3900rpm
タイヤ:(前)215/60R17 96V M+S/(後)215/60R17 96V M+S(グッドイヤー・ベクター 4シーズンズ)
燃費:10.4km/リッター(JC08モード)
価格:340万2000円/テスト車=358万7004円
オプション装備:カーナビゲーションシステム<カロッツェリアAVIC-MRP600>(9万9360円)/エクステリアガーニッシュセット(1万8144円)/ETC車載器(1万260円)/フロアマット(2万3760円)/バックカメラ(3万3480円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:3271km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:274.5km
使用燃料:33.6リッター
参考燃費:8.2km/リッター(満タン法)/8.6km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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