メルセデス・ベンツC220dアバンギャルド(FR/9AT)
ベスト・オブ・Cクラス 2015.11.27 試乗記 「メルセデス・ベンツCクラス」のディーゼルエンジン搭載車「C220dアバンギャルド」に試乗。ディーゼル車のメリットといえば経済性や実用性……かと思いきや、それは軽快な走りも見せてくれる、趣味性の高いモデルだった。9段ATに期待高まる
メルセデス・ベンツCクラスにディーゼルエンジン搭載モデルが追加された。ディーゼルエンジンに逆風が吹いているこのタイミングでの登場は不幸というほかないけれど、罪を悪(にく)んでディーゼルを悪まず。このディーゼル車に罪はない。
「BlueTEC(ブルーテック)」と呼ばれるメルセデス・ベンツのディーゼルエンジン浄化装置は、NOx(窒素酸化物)を減らすために尿素を使うのが特徴だ。まず、排出ガスに尿素水溶液を噴射して、熱反応でアンモニアを生成させる。その後、触媒コンバーターを通して、化学反応でNOxを窒素と水に分解する仕組みとなっている。
NOxを減らすにはもうひとつ、NOx吸蔵触媒を使う方法もある。ただし報道によれば、アメリカにおけるフォルクスワーゲンのディーゼル不正プログラムは、尿素水溶液を使うタイプとNOx吸蔵触媒を使うタイプの両方で確認されているという。したがって「尿素を使うタイプだから大丈夫」と言うことはできない。触媒のタイプではなく、あくまでプログラムの問題だ。
という前提をおさらいしてから、メルセデス・ベンツC200dアバンギャルドと対面する。外観は、エンブレム以外はガソリン仕様とまったく同じ。インテリアも変わらない。つまり、少しクラシカルでエレガントな外観に、モダンでスタイリッシュなインテリアを組み合わせている。
見た目は変わらないけれど、ディーゼルエンジンだけでなくトランスミッションも新しくなっている点は注目だ。Cクラスに初めて9段ATが搭載されたのだ。ちなみにこの2.1リッターのディーゼルターボエンジンはすでにメルセデスの「Eクラス」に搭載されているけれど、Eクラスの場合は7段ATとの組み合わせとなる。
現行のメルセデス・ベンツCクラスに対しては、若鮎(わかあゆ)のようにぴちぴちと走るモデルだという印象を持っていた。エンジンのピックアップは軽やかで、コーナーはしなやかな身のこなしでクリアする。そんなCクラスに、トルキーなディーゼルエンジンと9段ATを組み合わせるとどんなフィーリングになるのか、興味津々で試乗した。
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エンジンは上品かつスポーティー
エンジンをスタート、早速走りだす。発進から20~30km/hまでの速度域では少し“いがらっぽい”というか、ディーゼルっぽい音と振動を感じる。けれども一度それ以上の速度域に達すれば、スムーズさも静かさもガソリンエンジンと比べて遜色はない。
むしろ、40.8kgmという大トルクを1400rpmという低回転域から発生するトルク特性と9段ATの組み合わせによってエンジン回転を抑えることができるので、巡航ではガソリンエンジンより静かだと感じるほどだ。
ひとつ「おっ」と思ったのが、かつてのディーゼルエンジンのようなドスンと腹に響くようなトルク感が発進時に伝わらなかったことだ。これは決して遅いというわけではない。十分以上に力強い発進加速に滑らかさが加わって、スマートに発進するようになったのだ。
かつては、ディーゼルのトルク感を強調して広く知らしめるために、わざと男らしいセッティングにしていたのではないか、というのはあくまで邪推である。
ディーゼルエンジンは低回転域で豊かなトルクを供給するだけでなく、2500rpmぐらいから上では「トゥルルル~」と朗らかな音とともに、気持ち良く回転を上げる。決してスポーツカー的に「ギュン!」と回転を上げるわけではないけれど、その上品なスポーティー感は運転好き、クルマ好きであれば好感を持つはずだ。
実のところ、若鮎のようなCクラスにドスンとおっさんくさいディーゼルエンジンが載っかって、えなりかずきみたいなトッチャン坊やになっていたらイヤだなと懸念していたのだ。でも杞憂(きゆう)だった。
ディーゼルエンジンは、軽快な加速や運転フィールはそのままに、全体を上質に底上げしている。
ファン・トゥ・ドライブのある走り
新しい9段ATは、ボーッとして乗っているとその存在に気付かない。変速はあくまでスムーズで、「おっ、いまギアが変わったな」ということをドライバーに伝えない。これが社会人だったら報告・連絡・相談の“ほうれんそう”を怠ったと叱られるけれど、オートマチックトランスミッションだと褒められる。
じっくり観察すると、ス、ス、スと早め早めにシフトアップしていることがわかる。早め早めにシフトアップしながらも、決してせわしなくシフトしていると感じさせないのは、スムーズさのたまものだ。
一方、アクセルペダルを踏み込むと、「そこだ!」と言いたくなるギアにシフトダウンしてくれる。アクセル開度から解析しているのだろうけれど、なぜ俺の気持ちがわかるのか、と尋ねてみたくなるトランスミッションだ。
アクセルの踏み加減でどんぴしゃのシフトダウンができるので、これだったらシフトパドルは要らない。
しっかりと地面をつかんでいる感触をドライバーに伝えながら、同時にしなやかさも感じさせるという絶妙の足まわりのセッティングは、ガソリン仕様と変わらない。フットワークが軽いのに、同時に懐の深さを感じさせる点も不思議だ。快適さとファン・トゥ・ドライブを高いレベルで両立しているあたり、どうしてもそのサイズが必要だという人以外は、「Eクラス」じゃなくてCクラスで十分だ。
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クルマ趣味の対象になりうる
全般に好印象を持ったCクラスのディーゼル、さらにその思いを強くしたのが満タン法で15.5km/リッターという燃費だ。山道をハードに攻めるような乗り方はせず、ほとんどの行程で高速道路を走った影響もあるだろうけれど、特にエコドライブを心がけたわけでもない。
参考までに車載燃費計の計測値だと16.6km/リッターだ。車重が1650kgもあり、かつこれだけ楽しくて快適なこのモデルが、これだけの燃費をたたき出すというのには素直に感服だ。
このメルセデス・ベンツC220dアバンギャルドが559万円、C200アバンギャルドは534万円、C180アバンギャルドだったら476万円。価格差はあるけれど、Cクラスはディーゼルがベストだと思う。
昔のクルマ好きはメルセデス・ベンツを評して、「実用の道具としては最高」というような表現をした。このC220dは実用の道具として出来がいいだけでなく、クルマ趣味の対象としてもレベルが高い。
クルマ好きの友人からクルマにあまり詳しくない親戚にまで、万人におすすめできる。
ディーゼルエンジンにまつわるもやもやとした雰囲気を、吹き飛ばしてくれる完成度の高さを感じた。
(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC220dアバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1810×1435mm
ホイールベース:2840mm
車重:1650kg
駆動方式:FR
エンジン:2.1リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼルターボ
トランスミッション:9段AT
最大出力:170ps(125kW)/3000-4200rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/1400-2800rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94W/(後)225/50R17 94W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:20.3km/リッター(JC08モード)
価格:559万円/テスト車=633万1000円
オプション装備:レザーエクスクルーシブパッケージ<パークトロニック+アクティブパーキングアシスト+シートヒーター+ヘッドアップディスプレイ+ハンズフリーアクセス(トランク自動開閉機能)+本革シート+エアバランスパッケージ>(65万3000円)/ボディーカラー<イリジウムシルバー>(8万8000円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:4482km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:210.3km
使用燃料:13.6リッター(軽油)
参考燃費:15.5km/リッター(満タン法)/16.6km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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