スバル・インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight(4WD/CVT)
楽しく走れるスバル 2016.12.09 試乗記 フルモデルチェンジした「スバル・インプレッサスポーツ」に試乗。新世代プラットフォームと直噴化された水平対向エンジンがもたらす走りや、最新の運転支援システムの使い勝手を、2リッターの4WDモデルで確かめた。違いのわかる乗り心地
新型インプレッサに初めて乗ったのは、夜だった。webCG編集部から走りだしたのは、インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSightの4WD(259万2000円)。ハッチバックシリーズの最上級モデルである。
新プラットフォームの採用で、少しボディーが大きくなったせいか、右肩というか右腕というか、ドア側のいわゆるショルダールームが広くなったような気がする。
ナイトドライブで一番印象的だったのは、運転席まわりにあるスイッチ類の多さである。ドアパネルとダッシュボードとハンドルで自発光するスイッチを数えたら、全部で33個もあった。多すぎるだろ! と思ったが、責任の一端を担っているのは、全車に標準装備されたアイサイト(Ver.3)をはじめとする運転支援装置のスイッチ類である。ということを考えれば、オレンジ色の夜光虫に囲まれているような居住まいも、最新インプレッサの特徴と言えるかもしれない。
“走り”は、気持ちいい。まず乗り心地が上質だ。長年乗った「レガシィ」から「レヴォーグ」に買い替えた学生時代の友人が、「乗り心地が硬くてかなわん」と言っていた。乗せてやろうかと思ったが、名古屋に住んでいるので無理だった。
シートもいい。体を軽く乗せてくれる感じで、実際、長時間座っていても至極快適だった。ただし、このレザーシートは「ブラックレザーセレクション」(10万8000円)に含まれるオプションである。
プレミアムになった足まわり
5代目になる新型インプレッサのうたい文句は「動的質感と静的質感の向上」である。要は、走りも、見た目もつくりも、さらに磨きをかけた、ということらしい。
2リッターモデルのエンジンは直噴水平対向4気筒のFB20型をブラッシュアップしたもの。パワーは4ps増しの154ps。20.0kgmのトルクは変わらないが、低回転から十分以上に力強い。
最新のスバルフラット4は、ビートも排気音もすっかり直列4気筒並みだが、かといって、直列4気筒とまったく同じかというと、そうではない。特に回転を上げていくときのエンジンの息づかいには、血の通った水平対向らしさが、かすかだが残っている。モーターのようにスムーズな(そして、えてしてつまらない)直4とは違うのである。
動的質感の向上を一番実感させるのは、足まわりだ。ひとことで言うと、旧型よりプレミアムになった。サスペンションのストローク感が増し、しなやかで、フトコロが深い。18インチの切削ホイールに225のヨンマルというスポーティーなタイヤを履くのに、ゴツゴツした硬さは伝えない。乗り心地は日本車のベスト・イン・クラスではないかと思う。
使える運転支援システム
車載カメラで速度標識を読み取り、計器盤のなかに小さな速度標識マークを表示するという機能は、まず欧州車が始めて、最近では日本車でも珍しくなくなった。
この新型インプレッサでは、カーナビのディスプレイに「制限速度○○km」という文字情報が大きく出るようになった。「止まれ」の標識を見つけると、40m手前から10mごとにカウントダウンしてくれる。それが役に立つか、立たないかはともかく、こうした機能は、完全自動運転へ向けて、クルマがここまできてますよということを示す、自動車メーカーの“プレゼン”である。
バックしようとRに入れたら、計器盤に「後退速度リミッター」という文字が出た。アイサイトのVer.3から備わる安全策で、後退速度の上限を10~20km/hまで5km/h刻みの3段階で任意に設定できる。リミッターに当たっても、そこからさらに強くアクセルを踏み込めば、乗り越えられる。
最新型アイサイトに組み込まれる全車速追従機能付きクルーズコントロールは、なかなか見事である。町なかで例えば60km/hに設定し、前走車をロックオンすると、加減速と停止は任せられる。
自動発進はしない。前のクルマがスタートしたのに、こっちが止まったままでいると、「先行車発進お知らせ機能」が働き、電子音が小さく鳴って、それを示すイラストが出る。わかってるなら追っかけてくれよと思うが、スバルはまだ完全自動発進をさせない慎重派で、スタート時にはアクセルをわずかでも踏むか、あるいはレジュームボタンを押すか、いずれにしてもドライバーの“入力”がいる。発進加速もドイツ車のシステムほど俊敏ではない。だが、スピードが乗ってからの追従はうまい。車間距離を最短に設定しておくと、ブレーキングポイントは筆者より奥で、制動Gもグイーッと強い。
スバルらしさは健在
約400kmを走って、燃費(満タン法)は10.0km/リッターだった。
今回の撮影には、たまたま「ポルシェ718ケイマン」(MT車)が同行した。たまたまとはいえ、新型ケイマンも2リッター水平対向4気筒である。ターボ付きでインプレッサの倍近い300psを出しているが、燃費は9.5km/リッターとインプレッサと比べて遜色なかった。完全に同道したわけではなく、むしろケイマンのほうが燃費には悪い走行パターンだった。そう考えると、いかにフルタイム4WDとはいえ、インプレッサの燃費は「もっとがんばりましょう」である。
だが、走っては旧型を正常進化させたプレミアムコンパクト5ドアである。走行性能やつくりこみのクオリティーで、いまの「フォルクスワーゲン・ゴルフ」をそうとう意識したのではないか。乗っていて、そう感じた。この価格でゴルフの四駆はとても買えない。
いまやスバルのお家芸の運転支援装置満載だが、自分で運転していても、楽しい。国産ハイブリッドよりクルマらしくて楽しいし、スバルテイストも健在だ。個人の鼻の感想ですが、出たてのレヴォーグで気になったトヨタ車のニオイ(車内臭)もしない。スバリストの期待を裏切ることはないはずだ。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
スバル・インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1775×1480mm
ホイールベース:2670mm
車重:1400kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:154ps(113kW)/6000rpm
最大トルク:20.0kgm(196Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/40R18 88W/(後)225/40R18 88W(ヨコハマ・アドバンスポーツV105)
燃費:15.8km/リッター(JC08モード)
価格:275万4000円/テスト車=325万7064円
オプション装備:ブラックレザーセレクション(10万8000円)/アドバンスドセーフティパッケージ(5万4000円) ※以下、販売店オプション フロアマット(3万0240円)/パナソニックビルトインSDナビ(23万4360円)/バックカメラ(1万7280円)/ETC<DSRC>キット(3万2184円)/LEDライナー(2万7000円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2429km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:398.5km
使用燃料:39.8リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.0km/リッター(満タン法)/10.4km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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