第138回:ハッピーなロードムービー2作と超怖いスリラー
冬休みに観たいクルマ映画DVD
2016.12.28
読んでますカー、観てますカー
アルファ&フィアットでイタリアを駆けぬける
イタリアが舞台だからアルファ・ロメオとフィアットで旅をするロマコメでどうだ! とまで単純な考えだったかどうかは知らないが、『ローマ発、しあわせ行き』は実際にそういう映画である。安易なようでもモノになってしまうのがイタリアというブランドの強みだ。
1年前に夫の浮気が原因で離婚したマギーは、反抗期の娘サマーを連れてイタリアにやってくる。20年前に住んでいた村のコテージに到着すると、隣人は当時の恋人ルカ。これだけで結末が予想できてしまいそうだ。
マギーは空港で借りた「フィアット・パンダ」を運転してきた。いくら予約を忘れたとはいえ、レンタカー屋にこんな古いクルマは置いてないはずだという当然の疑問は忘れよう。気にしていたら、この後の展開すべてで引っかかってしまう。
サマーは麻薬で捕まったボーイフレンドから身代わりで出頭してほしいと頼まれ、ニューヨークに帰りたいと思っている。だまされているのは明らかだが、恋する乙女は気づかない。ルカの家には、かつての恋人に会うためローマ行きを企てる老母がいる。利害の一致した2人は、ガレージにあった「アルファ・ロメオ・スパイダー デュエット」を持ち出して逃走する。マギーとルカはパンダで追いかけるしかない。
かくしてイタリアの美しい風景をバックに、2台の魅力的なイタリア車が走るシーンを撮影することになる。観光映画としても楽しめるわけだ。最後にはおなじみの三輪トラック「ピアッジョ・アペ」が活躍するから、イタリアンのフルコースである。
マギーを演じるのは、『セックス・アンド・ザ・シティ』のサラ・ジェシカ・パーカー。彼女のことを「鼻の大きい女」と形容するセリフが出てくるが、本人は納得しているのだろうか。ルカの老母は往年の美人女優クラウディア・カルディナーレで、歳月の力を感じることができる。
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少女2人が大統領夫人に会うためアメリカ横断
『マックス&エリー ~15歳、ニューヨークへ行く!~』もロードムービーだ。カリフォルニアからニューヨークまで、アメリカ大陸を横断する。クルマは「クライスラー・タウン&カントリー コンバーチブル」。1940年代のモデルだ。
1962年8月5日、エリー(リアナ・リベラト)の母が交通事故で亡くなる。日にちまでわかるのは、マリリン・モンローが死去したのと同じ日だからだ。リベラルな考えを持つ母はフランクリン・ルーズベルト元大統領の妻エレノアに心酔しており、彼女の前でスピーチをすることを夢見ていた。
エリーは母の夢を受け継ぎ、ニューヨークに住んでいるエレノアに会いに行くことにする。相棒は悪友のマックス(イザベル・ファーマン)だ。家からクルマを盗み出し、冒険旅行が始まる。
1962年には、マリリン・モンローの死よりもっと重大な事件が起きている。キューバ危機だ。2人がカリフォルニアを出発したのは10月下旬で、ソ連がキューバにミサイルを設置したことが明らかになった直後である。テレビではケネディ大統領の演説が流され、“西半球”が核攻撃の対象になっていると騒がれていた。
マックスとエリーが大胆な行動に出たのは、みんな死んでしまうかもしれないという不安が背景にある。当時は核戦争で世界が破滅する可能性を本気で信じる人が多かったらしい。途中で出会った脱獄犯を旅の道連れにしたのも、やけっぱちな気持ちだったことの反映だろう。
エリーの父ボブを演じたのは、『26世紀青年』でバカが支配するようになった26世紀のアメリカを救ったルーク・ウィルソン。道中で宿を借りた一家で出会うイケメンは、シュワちゃんの息子パトリック・シュワルツェネッガーである。
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真面目青年vs富豪老人の砂漠サバイバル
ハッピーな映画の後は、とっても怖い映画『追撃者』を。『ウォール街』のゲッコーがまだ生きていて、相変わらず冷酷なクソ野郎だったという話である。というのはウソだが、マイケル・ダグラスが富豪役だと誰もがあの映画を思い出してしまうだろう。
ラスベガスの南に位置するモハーベ砂漠でガイドをしている若者ベン(ジェレミー・アーヴァイン)に、保安官から仕事の依頼があった。富豪の老人マディックの狩猟ガイドである。狩猟の解禁前なのに、特別な許可を得ているというのがどうも怪しい。
マディックのクルマに同乗し、砂漠に向かうことになった。携帯電話では中国語で投資について話している。会社を売る交渉をしているらしい。彼が乗っているのは「メルセデス・ベンツG63 AMG 6x6」。「50万ドルのクルマだ。アメリカに1台しかない」とか言って自慢するマディックは本当に嫌な野郎だ。
ベンが獲物を探していると、マディックが待ちきれずに丘の上に向けて発砲した。現場に行くと、血を流して倒れていたのは人間である。マディックは警察に通報しようとするベンに銃を向け、パンイチになるように命じた。砂漠の暑さで倒れたら犯人に仕立てるつもりなのだ。
圧倒的に不利な状況だが、砂漠はベンの庭である。あちこちに隠された仕掛けを使い、マディックを出し抜こうとする。でも、金持ちサイコ野郎はしぶとい。どこまでも追いかけ、しつこく攻撃してくるのだ。
ベンの愛車は40年以上前の「シボレー・ブレイザー」だ。金はないが、彼には根性がある。愛する女性がいる。真面目に人生を歩もうとするベンが虚飾にまみれたいけ好かないオヤジに勝利する時、観客は心から快哉(かいさい)を叫ぶのだ。
(文=鈴木真人)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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