ランボルギーニ・ウラカンRWDスパイダー(MR/7AT)
軽やかなスーパースパイダー 2017.04.27 試乗記 テールを流して走るようなダイナミックなハンドリングだけが「ランボルギーニ・ウラカンRWDスパイダー」の楽しみではない。前輪の駆動機構を捨てたことによって生まれた軽快感を、風とたわむれながら味わうこと。軽やかに楽しむ580psこそが、このスーパースパイダーの醍醐味(だいごみ)と言えるのではないだろうか。RWDの利点とは何か?
webCGの読者諸氏に対して、いまさらこの車のスペックを詳しく紹介するまでもないだろう。なので車両の説明はざっと概要だけにとどめたい。ウラカンのRWD(後輪駆動)仕様はすでにクーペには加わっている。それと同様に、このウラカンRWDスパイダーは4WD仕様から前輪駆動部分を引き算したものと思っていい。
RWDにした趣旨は、もちろんコーナーでオーバーステアが楽しめ、カウンターステアで豪快にまわっていく、あの感覚を味わってくださいということなのだと思う。しかし最近では各種電子デバイスが装備されていて、ホイールスピンさせることさえままならない。また実際にテールを流して走るなどということは、車両をそういった態勢に導くこと自体、少なくとも公道では無理だ。もちろんグリップに優れたタイヤが与えられていることも、そういった走りを難しくしている。となるとRWDの利点とは何だろう? それはひとつには“省略”による軽量化で、動きそのものに軽快感が生まれることだ。また省略は燃費や車両価格にも反映されているだろう。
実際にウラカンRWDスパイダーで走ってみると、駆動系や足まわりの剛性感は、駆動輪が2輪なのか4輪なのかさえわからないくらい高い。しっかり加速するし、減速もしてくれるし、サスペンション取り付け部のコンプライアンスなどから駆動方式の違いを見抜くことはできない。感覚的に後ろから押して前で曲がっていくという、そんな遅れも感じられない。またFRと違ってプロペラシャフトがなく、エンジン/ギアボックスの重量がそのまま駆動輪荷重として寄与するので、トラクションは十分に発揮され、強大なパワーはそのまま安定性に直結する。とにかくスロットルを開ければいつでも、前輪舵角の向いている方向に強力に押し出される。
それからもうこの手の高性能車をキッチリ語るのは筆者にはムリ。トシをとりすぎている。でもイタリアの高性能車には人一倍興味はある。かつてのスーパーカーの時代から今に至っても、乗せてもらえれば心ときめくものがたくさんある。かつてランボルギーニのサンターガタ工場では、船舶やトラクターが高性能SUVの始祖「LM-002」、そして「カウンタック」などと同じ社屋内で造られていた。あの頃のことを思い出しながら試乗記をつづってみようと思う。
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フットワークの軽さが際立つ
全幅1924mm、ミラーからミラーまでだと実に2236mmという幅広なボディーサイズは、一般公道でもてあますと予想していた。しかし実際には案外取り回しやすく、2620mmというホイールベースや4459mmという全長の数値から、むしろ縦長な大きさを感じさせる。操舵とともにスッ、スッと身軽に気持ちよく動く理由は、ボディー全体のヨー/ロール/ピッチ3軸方向の慣性感覚が小さく、レスポンスに優れるからにほかならない。また、最近の高性能車の中には伝達系の安全武装が過剰にすぎ、ドッコイショ的な反応の遅滞を伴うものや、手足で操作する作動パーツなどに剛性的な軟さや鈍さが認められるものもあるが、ウラカンRWDスパイダーにはそういったものが感じられない。
確かに1509kgという車両重量(乾燥重量)に対して580psは十分であって、トルクも1000rpmで最大トルクの75%を生み出すという、低回転域の運転性をも重視したエンジンチューンは、回さずとも素早いレスポンスを得るのに貢献している。昔のスポーツカーエンジンは大排気量であっても低回転域では回転がラフであったり、トルクが出ていなくて3000rpm以下には落としたくない例さえあった。7段のポジションを持つ“LDF(ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ)”デュアルクラッチ2ペダル・トランスミッションはいたずらにキックダウンさせなくとも、そのままのポジションでも右足にちょっと力をこめればスッと前に出てくれる。そこがV10の自然吸気5.2リッターという排気量のなせる業でもある。
この車にはアイドルストップも付いているし、軽負荷時には半分の5気筒になる気筒休止機構も付いており、243.6kmに及んだ今回の試乗の平均で6.8km/リッターという好燃費を記録している。こういう車でアイドリングが停止すると、ちょっと意表を突かれる感覚もあるが、スッと止まってエンジン音や振動のなくなる感覚も悪くはない。どちらかというと、止まるときより再始動するときの方がショックや音は大きい。
ランボルギーニの思い出
この車にはアウディのマークがパーツのところどころに散見され、基本パーツや骨格を「R8」と共用する部分もある。それゆえにドイツ車的な感覚も乗り味としてあり、自分でコントロールしていると自覚するより、クルマに乗せられている感覚も強い。が、各所のデザイン処理などはランボルギーニの家系であることが一目でわかる。
ランボルギーニの思い出をたどってみると、個人的にはカウンタックや「ディアブロ」の方が、よりイタリア車の味わいが感じられた。上に跳ね上げるドアにしても横方向にぶつける気遣いはいらないし、空間的に大きく開くので乗り降りもラクだった。それに対して、ウラカンは普通の横開きゆえ、周囲の物に干渉しないように気をつけなければならない。加えて、ドア後端のボディーと重なる部分はとりわけ長い。切れ目の線がデザイン的に必要なのかもしれないが、イタリア人ならば切り詰めてしまうはずだ……と筆者は思う。フロント・オーバーハングもウラカンは長めだ。給油時など段差が大きなところでは、ノーズを油圧で持ち上げられるから、あらかじめアップさせておくことも可能である。
ディアブロの思い出は何といっても、車自身が自分で自然に当ててくれるカウンターステアだ。ジムカーナ的な低速時ではあるが、キャスター角とキャスタートレール、スクラブ値など、与えられたジオメトリーが絶妙で、いつも後軸に対して直角、つまりドライバーが行きたい方向に前輪が自分で向いてくれるのだ。操舵してカウンターを当てる必要がないわけである。だから手を完全に離してしまっても、適切な量と方向の舵角で進路にいざなってくれる。過大なパワーをかけると、テールを流しただけ回転半径は小さくなる。ま、こんなこと書いても昔の思い出でしかなく、一般的な理解を得ることはないだろう。同じ体験をした人だけに通じる思い出ではある。
コレをウラカンRWDでもできないかなーとは思うが、広いスキッドパッドでもない限り無理だろう。でもステアリングの小入力による“代理感覚”で言えば、ウラカンのキャスター角はアレより小さめで、自然に戻る感覚は少ない。そうか、ディアブロはパワーステアリングではなかったから、フリクションが極微で素直な復元性が確保されていたんだと、今、ふと気が付いた。
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「馬」か「牛」か?
スパイダーとしての幌(ほろ)の部分は、かつてに比べれば快適性を大きく上げている。シートに着いていると、時にウインドシールドの上端が邪魔で、まるでトンネルの中にいるような気分だが、幌を下げると大きく開放感を増す。トップの開閉はモーターで素早く行え、50km/h以下なら動いていても作動するから、突然の雨に対して、信号待ちの時間内に完遂しなくとも動き出せる。その程度は周囲の同情に甘えることなく動作を続けられる。かえって作動をやめてしまうと心配の押し売りにもなろう。トップを上げた姿勢は空力的には優秀なのだろうが、キャビン自体のボリュームが大きいせいかカッコイイとも思えない。トップは小さければ小さいほど、見た目にはまとまりがいいものだ。
これで2788万5924円はお買い得と言えそうだ。「フェラーリ488スパイダー」は約3500万円だから価格的には比較にならないが、イタリアの高性能スパイダーという意味においては同類の車と見なされるだろう。両車は見た目の迫力や、一般路上で発揮できる動力性能に大きな差はない。どちらも耐久性や信頼性はドイツ車水準。「馬」か「牛」かの好みで選べばいい。としたら、ウラカンRWDスパイダーの人気は沸騰するのではないか。価格で選ぶのは、あるいは賢い選択かもしれない。
(文=笹目二朗/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカンRWDスパイダー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4459×1924×1180mm
ホイールベース:2620mm
車重:1509kg(乾燥重量)
駆動方式:MR
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7AT
最高出力:580ps(426kW)/8000rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)305/35ZR19 102Y(ピレリPゼロ)
燃費:12.1リッター/100km(約8.3km/リッター 欧州複合モード)
価格:2788万5924円/テスト車=3437万0784円
オプション装備:エクステリアカラー:ブルー<Blu Le Mans>ソリッド(102万6000円)/スポーツエキゾーストシステム with スタイルパッケージ(40万9212円)/ウインドスクリーン・フレーム in ハイグロス・ブラック(4万0932円)/CCB with ブレーキキャリパー<シルバー>(148万6944円)/磁性流動サスペンション(32万7456円)/ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング<LDS>(23万2740円)/Blue Tooth+ハンズフリー機能(9万5580円)/クルーズ・コントロール・システム<CCS>(9万5580円)/パーク・アシスト・センサー<フロント&リア>+リアビュー・カメラ(38万1888円)/タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム<TMPS>(11万5992円)/トラベル・スモーカー・パッケージ(6万1452円)/インテリア:バイカラースポルティーボ with アルカンターラ(34万1928円)/Q-Citura with バイカラースポルティーボ with アルカンターラ(27万2808円)/ビッグフォージドコンポジットパッケージ with ダーククローム(129万6000円)/カラースティッチ for ウニカラーインテリア(6万8256円)/マルチファンクション・ステアリングホイール in スエードレザー(6万8256円)/ブランディング・パッケージ(9万5580円)/レザーのパイピングとダブルスティッチフロアマット(6万8256円)
テスト車の年式:2017年型
テスト車の走行距離:3956km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2)
テスト距離:243.6km
使用燃料:48.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.2km/リッター(満タン法)/6.8km/リッター(車載燃費計計測値)

笹目 二朗
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