第455回:よみがえったもう1台のボンドカー
幻のトヨタ2000GTがフルレストアを経て復活
2017.11.01
エディターから一言
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トヨタが1967年に世に問うた名スポーツカー「2000GT」は、日本車として初めて映画『007』シリーズの劇中車に用いられたことでも知られている。その“2000GTボンドカー”が、実は2台存在したことをご存じだろうか。長くベールに包まれていた幻の2000GTボンドカーが、このたびフルレストアを経て復活。ついにその姿を、われわれの前に現した。
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1967年の『007は二度死ぬ』に登場
ちょうど50年前の1967年。5月16日がトヨタ2000GT発売の日である。もっとも、その日に初めて“トヨ2”が披露されたというわけではなかった。
そこから約2年前、1965年10月の東京モーターショーで、プロトタイプが披露され、翌66年5月には第3回日本グランプリに出場している。同年7月の鈴鹿1000kmレースでは1-2フィニッシュで優勝するなど、デビュー前からクルマ好きの注目を集めていたのだ。
なかでも同年10月に谷田部で開催されたFIA公認スピードトライアルにおける3つの世界記録達成という偉業は、発売前にして国際的な評価をも高めていた。
そして、67年5月の発表とほぼ同時と言っていいだろう、6月7日に公開された映画『You Only Live Twice』(邦題『007は二度死ぬ』)に登場し、人気をさらに不動のものとしている。ショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンド映画の劇中車として、2000GTが日本車としては初めて採用されたのだった。
実をいうと、本編中にジェームズ・ボンドが2000GTをドライブするシーンはない。若林映子演じるアキの助手席、という設定だった。もっとも、若林も2000GTを運転することはなく、当時のトヨタワークスドライバーが代役を務めたという話も有名である。英国でのスタジオ撮影には「アルファ・ロメオ・スパイダー」が使われた。
それゆえ、2000GTがボンドカーであるかどうかを巡っては、マニアの間でも意見が分かれるところだが、ボンド映画に登場し、重要や役割を演じた初めての日本車であることには違いない。
それはさておき、“ボンドカー”としての2000GTが人気を博した理由は、ただ単に世界的に有名な映画に登場したからではなかった。それが、世にも美しいロードスタースタイルだったからでもある。長身(約1.9m)のコネリーがクーペでは狭くて乗りこめなかったから屋根を切った、ともいわれている。プロトタイプをベースに突貫工事を強いられたロードスター化だったが、そのスタイリングはあまりにも美しくまとまっており、以後、多くのコンバージョンが生まれるほど、2000GT好き、クルマ好きを魅了してきた。
実は2台存在した
映画用に製作されたロードスターは、実は2台ある。長年、そうウワサされてきた。うち1台は、実際に劇中車として映画にも登場し、数奇な運命をたどったのちに、現在は収まるべき場所=トヨタ博物館に里帰りを果たした有名な個体である。
それではもう1台は、どこに行ったのだろうか? いや、やっぱり1台しかなかったのだろうか。
長年、マニアが発し続けてきた疑問に答えを出したのが、日本を代表するコレクターのひとりであり、トヨタ2000GTにとりわけ造詣の深い、M氏だった。
氏は国内某所にて、長年にわたり打ち捨てられたも同然にしまい込まれている“もう1台のボンドカー”存在情報をいち早くつかみ、オーナーに掛け合った。多くの歳月を露天に放置されて過ごしてきたためか、状態はサイアクと言っていいものだった。しかも、無造作に積み上げられた荷物の重みで、車体は無残にもへこんでいた。M氏はそんなボンドカー#2のレストアを決意する。
がしかし、レストレーションは困難を極めた。何しろ元からして試作車がベースである。市販モデルとは似ているようでいて違っている。当然、基本データなどは残っていない。おそらく、ロードスター化も現場合わせで進んだであろうと推測される。それでもM氏は、ありとあらゆる資料や映像を分析しつつ、復元に努めた。特に、エンジンに関しては、プロトタイプ仕様が奇跡的に積まれたままであり、歴史的にみても貴重な資料材料だと言っていい。もう1台のボンドカーは残念ながら積み替えられているのだ。
足掛け8年にもわたるフルレストレーションの結果、そのボディーワークは先だってヤマハで開催された50周年の記念オーナーズミーティングで披露され、そして、内装が仕上がり、エンジンも稼働する状態の完成形が台風の最中に京都は東寺で開催された2000GTミーティングで披露された。ひとりの男の2000GT愛が、長い間幻とされてきた自動車界における1台の宝物を、この世に取り戻したのだった。
来る11月4日、トヨタ博物館で開催される2000GTの50周年ミーティングでは、いよいよ、2台の真性ボンドカーが50年のときを隔てて再会することになる。その歴史的瞬間の目撃者に、クルマ好きの貴方もなってみてはいかがだろう。
(文=西川 淳/写真=浦野浩之/編集=竹下元太郎)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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