レクサスLS500h“Fスポーツ”(FR/CVT)
スポーツしすぎてる 2018.03.06 試乗記 エモーショナルな走りをテーマに掲げ、新たなプラットフォームを基に開発された新型「レクサスLS」。ハイブリッドのスポーティーモデルに乗ってみると、トヨタがこのクルマに込めた並々ならぬ意欲が伝わってきた。オッサンくささを徹底排除
今度のLSはどうなのか? と真剣に考えている人は、たぶんそんなに多くはないだろう。すでに国産最高級セダンとしてのブランド力は完璧に光り輝いているので、買う人は自動的に買うし、買わない人は買わない。外野の評価なんかほとんど関係ない。
なにせ日本の最高峰だから、カーマニア的には気になるが、「なんか乗り心地が硬いらしいよ」とか、「相変わらずデザインがな~」とか、勝手なことを言っておしまいだ。カスタマーさまとは無縁の独り言である。
ただ、この試乗記を読んでくださる方の多くは、そんなカーマニアが大部分……である気もする。そこで今回は当方も、買わないけどカーマニアなのでLSに興味がある、という立場で、「LS500h“Fスポーツ”」に乗った率直な感想を記してみたい。
まずデザインだが、かなり攻めている。攻めの方向はひたすら“スポーティー”の文字。今度のLSは見た目からしてオッサンくささを完璧に排除したる! というトヨタの意欲がビンビン感じられる。平べったく見えるクーペ的フォルムをはじめ、ハッチバックっぽくなだからにラウンドしているリアピラー、攻撃的なフロントフェイス等々。先代LSと並べたらその差は歴然、ターゲットユーザーを10歳くらい若返らせた雰囲気だ。
過ぎた美意識に赤面
カーマニア的には、「最高級セダンがこんなにスポーティーでどうすんだ」という見方もある。しかしこういうのを買う層は、グローバルでは確実にそっちの方向を志向している(らしい)。日本では相変わらず「社長車なんだから、もうちょっと重々しくないと」ではあるが、特に主要市場たる北米で、そうしないと生き残れないのだ。これはサバイバルを賭けた変身だと考えると、外野のカーマニアは納得するしかない。
しかしまぁ、Z型のヘッドライトはじめ、グワッと広がったスピンドルグリル等、あまりにも素直にカッコよすぎて、子供っぽく感じられる。「どうです、若々しくてハンサムでしょう!!」と面と向かって言われているようで、シャイな日本人は赤面してしまう。
インテリアも同様で、ダッシュボードの流れるような造形は確かにカッコいいのだが、「メーターフードから助手席の端まで伸びるレジスターのフィンが描く優美かつシャープなラインは、琴や茶道具の茶せんからインスピレーションを受けました」と言われると、再度赤面だ。
ドアトリムオーナメントにいたっては、努力は痛いほど感じるが、頑張りすぎて微妙に浮いている。もちろんLSは最高級セダンとしては依然ニューカマーだから、頑張らないとイカン立場ではあるが、「お客さまからアートピースとして認めていただき、オーナーとゲストがクルマ談義とともに交わす文化論のきっかけともなれば」なんて言われるとツライ。LSもあと3代くらい経れば、こういう努力が板についてくると信じたい。
いたるところがスポーティー
“スポーティー”の文字が旗印の新型LSだが、後席に座ってみると、景色が実にスポーティーで、それが如実に感じられる。
後席からは例のダッシュボードの“琴や茶せん”のライン全体が見渡せるし、フロントからサイドにかけて、すべてのウィンドウがスポーツカーのように薄く(上下幅が狭く)見える。極めつけはフロントシートの造形だ。ヘッドレストがぐっと前傾した「く」の字で、非常にマッチョかつスポーティーなのだ。間違ってもレースのシートカバーをかける雰囲気ではない。
運転席に移動してスターターボタン始動。走りだすと、ハイブリッドの最高級セダンなのに、V6エンジンサウンドがスポーティーでビックリする。サウンドだけでなくレスポンスもスポーティーで、「LC500h」と大差ない。もちろんトヨタのハイブリッドだからエンジンが停止している時間もけっこうあるけれど、「徹底的にスポーティーに振ってるな~」と言うしかない。
ハンドリングも同様で、ステアリングを切ればわずかなロールとほぼ同時にゲインが来て、ピッと向きが変わる。試乗した“Fスポーツ”は、ほかのグレードに比べるとことさらそうだ。少なくともドライバーは楽しい。トヨタはよくぞ思い切った。
フワフワモードも欲しい
疑問の声がある乗り心地については、前席に座っている限りギリギリセーフだ。コンフォートモードならもちろんのこと、一番スポーティーなスポーツS+でも、ちょっと昔のBMWだと思えば大丈夫である。モードの切り替えも、コンフォートは文字通りかなり快適、スポーツS+はかなりスポーティー。そのまんまである。ただ後席に座っていると、コンフォートモードでもスポーツS+でも、どのモードでも大差なくキツイ。ただこれは、「“Fスポーツ”だから」という面が大きい。
新型LSは、LSとして初めてランフラットタイヤを採用し、しかもコンセプトを思い切りスポーツ寄りに変更しているので、乗り心地がいきなり硬くなって、「LSのウリは安楽さじゃなかったのか」と思ってしまう面があるわけだが、“Fスポーツ”はタイヤサイズが標準で20インチにアップされ、しかもリアは245から275へと幅も広くなる(LC500hと同サイズ)。後席の快適性が犠牲になることは最初から覚悟のグレードだ。完全にオーナードライバー向けなのだ。
個人的には、新型LSは“Fスポーツ”以外のグレードならギリギリセーフだが、“Fスポーツ”はやりすぎで、まるで欲しいとは思わない。スポーティーに走れるのはいいんだけど、コンフォートモードはもっと思い切りコンフォートに振ってほしい……。
お手本としては「BMW 760i」がある。スポーツだとビシッとスポーティーだけど、コンフォートだとクルーザーに乗ってるみたいにフッワフワ。私はこのフワフワモードが大好きでした。高級セダンにはフワフワの超絶快適性を求めてしまうなぁ~。だってスポーティーなクルマに乗りたいなら、スポーツカー買えばいいんだから。
新型LSの場合、ランフラットタイヤの採用も初めてだし、そもそもサスペンションのもともとのセッティングが、そこまでの振り幅を持たせられなかったのだろう。それは仕方ないと思います。BMWだって最初にランフラットを採用した時は、高速道路のジョイントで尻が浮くほど硬かったんだから。
仕方ない。仕方ないし、“Fスポーツ”以外のグレードならギリギリセーフ。おそらくいつの間にか熟成も進められて、「LSの乗り味、全然変わったね~」となる予感もする。ただ、現時点での“Fスポーツ”は私にはキツかった。LC500hの4枚ドア版だと思えば、それはそれでアリだと思いますが。
(文=清水草一/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
レクサスLS500h“Fスポーツ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5235×1900×1450mm
ホイールベース:3125mm
車重:2290kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
最高出力:299ps(220kW)/6600rpm
最大トルク:356Nm(36.3kgm)/5100rpm
モーター最高出力:180ps(132kW)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
システム最高出力:359ps(264kW)
タイヤ:(前)245/45RF20 99Y/(後)275/40RF20 102Y(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:1310万円/テスト車=1356万2240円
オプション装備:“マークレビンソン”リファレンス3Dサラウンドサウンドシステム(28万6200円)/デジタルインナーミラー(10万8000円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、ラゲッジルーム内+フロントセンターコンソールボックス後部>(4万3200円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ+ウインドシールドデアイサー等>(2万4840円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:7298km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(9)/山岳路(0)
テスト距離:128.3km
使用燃料:11.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.1km/リッター(満タン法)/9.9km/リッター(車載燃費計計測値)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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