ショーでの立場はEVに押され気味!?
欧州市場における自動運転の現在地
2018.03.14
デイリーコラム
ジュネーブの主役は電動化車両
毎年恒例のスイス・ジュネーブモーターショー。ドイツのフランクフルトショーとフランスのパリショーは隔年で開催されることもあり、ジュネーブショーは欧州市場のトレンドを定常的に探るために最適な場所である。
今年のショー会場で目立ったのは、プレミアムな電気自動車(EV)だった。
ジャガーの「Iペース」やポルシェの「ミッションEクロスツーリスモ」など、米テスラを狙い打ちする高付加価値型のEVが続々と登場した。
欧州市場では2016年にフォルクスワーゲン(VW)グループが中期経営計画の中で「EVシフト」を強調し、欧州メーカー各社がVWの戦略に相乗りする動きが進んでいる。
中でもダイムラーは、EVだけでなく、次世代車を総括的に開発し、そして事業化するマーケティング戦略として「CASE(ケース)」を提唱している。コネクテッド(通信の融合)、オートメイテッド(自動運転化)、シェアリング(共用化)、そしてエレクトリフィケーション(電動化)の頭文字を取ったものだ。
ところが、ダイムラーやVWを含めて、今回のショーでは自動運転車に関する発表はほとんどなかった。
一体、どうしてだろうか?
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ドイツはウイーン条約を重視
自動運転については、そのレベルに応じて「レベル1」から「レベル5」までの5段階で評価される。これは、米自動車技術会(SAE)が規定したもので、2016年9月に米運輸省を含めて国際的に統一した。
レベル1は同一車線での自動走行、次いでレベル2は自動車線変更を伴う自動走行といった具合に、自動運転の難しさが徐々に上がっていく。そして、レベル3になると、自動運転の制御の主体が運転者から自動車のシステム側に移管される。
ここで課題となるのが、「自動車の運転は、運転者が最終的な責任を持って自ら運転すること」という道路交通法の解釈だ。
道路交通法は各国が定めているが、国際的な共通概念として、国連加盟国が同じ解釈のもとに、ジュネーブ条約とウイーン条約という2つの協定を結んでいる。自動運転に関する解釈でウイーン条約の一部改正が行われたが、ジュネーブ条約では改正のメドがたっていない状況だ。日本としては、ジュネーブ条約の改正を待ってから、レベル3以上のクルマの量産を行う構えだ。
一方、ドイツはウイーン条約を重視。2018年から新型「アウディA8」で、ドイツ国内の高速道路において最高速を限定する形で、世界初のレベル3自動運転車を量産する。
つまり、現時点でレベル3の自動運転車両の量産化が確定しているドイツメーカーにとって、いまさらジュネーブショーで自動運転の将来構想を発表することもない、という判断があったのではないだろうか。
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レベル4、5の完全自動運転は先行き不透明
では、自動運転でもうひとつの大きな課題である“レベル3とレベル4の間の技術的な壁”について、欧州メーカーはどう考えているのか? レベル4とレベル5は、運転者が不要な完全自動運転だ。
結論からいうと、レベル3までがパーソナルカー(またはオーナーズカー)と呼ばれる乗用車に向けたもの、レベル4とレベル5は、タクシーやバスなど公共的な意味合いの強いサービスカー向けと、「まったく別の事業」として捉えている。
後者の代表例が、VWの「MOIA(モイア)」だ。既存のVWの商用バンを改造したような自動運転タクシーを想定し、今年からドイツ国内での実証試験を開始する。ジュネーブショーの報道陣向け公開日の前日に行われた、VW主催の独自イベントでは、2022年までにMOIAなどの新しい自動車サービス領域で総額4兆円以上を投資することも発表された。
とはいえ、完全自動運転タクシーでどのようにして利益を生み出すのかなど、事業の詳細については未公開だった。また、こうした新規事業が世界的に拡大すれば、おのずと自動車メーカーの現業である新車売り切り型事業に影響を与えるはずだ。だが、そうした影響に対する分析データなどは示されていない。
VWなどの大手自動車メーカー以外にも、フランスのナブヤなど完全自動運転を開発してすでに販売しているベンチャー企業が欧州内には複数存在する。彼らとしても「完全自動運転に関する法整備や投資は、後からついてくる。いまは事業を走らせながら、未来を考え続けるしかない」と市場の将来性が不透明であることを認めている。
こうした欧州市場に限らず、アメリカでもカリフォルニア州のみが自動運転に積極的で、トランプ政権としてはあまり前向きな姿勢を示していないなど、完全自動運転については先行き不透明というのが、現時点での自動車産業界の共通意見だ。
(文と写真=桃田健史/編集=藤沢 勝)
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桃田 健史
東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。
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