ランドローバー・ディスカバリー スポーツHSE(4WD/9AT)
名門ならではのSUV 2018.04.26 試乗記 新世代の2リッター直4ガソリンターボエンジンを搭載した、「ディスカバリー スポーツ」に試乗。デビューから3年半を経たプレミアムコンパクトSUVは、ほかのランドローバー車にも通じる実力の高さを感じさせてくれた。最も買いやすいランドローバー
ランドローバーのエントリーモデルがディスカバリー スポーツである。「フリーランダー」系のポジションを引き継ぐモデルとして、2014年に登場した。
“スポーツ”が付かない大きいほうの「ディスカバリー」は2017年のモデルチェンジでさらに大型高級化して、800万~900万円台のクルマになった。エンジンは3リッターV6のガソリンとディーゼル。
一方、ディスカバリー スポーツは、2018年モデルでエンジンの品ぞろえを刷新した。フォードのエコブーストに代わるのは、ジャガー・ランドローバー開発の2リッター4気筒“インジニウム”ユニット。ガソリンに加え、これまでディスカバリー スポーツにはなかったディーゼルも登場した。価格は400万円台から700万円台。ディーゼルはガソリンより一律30万円高い。
ディスカバリー スポーツは、日本で一番売れているランドローバー、「レンジローバー イヴォーク」に成り立ち上、最も近い。443万円からあるディスカバリー スポーツに対して、イヴォークは「502万円より」。2018年モデルでも、最も敷居の低いランドローバーである。
一番安い「ピュア」に乗ってみたかったが、最廉価モデルというのは、カタログにはあれど、試乗車はなしということが多い。今回試したのはガソリンの上級モデル「HSE」(613万円)である。
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別格のプレミアム感
エントリーモデルとはいえ、動き出すと、ディスカバリー スポーツはまごうかたなきランドローバーである。全長4610mmというと、輸入SUVではコンパクトの部類に入るだろうが、アイポイントは生意気なほど高い。ランドローバー伝統の“コマンドポジション”だ。
車重は1970kgある。横置きエンジンが載る前車軸重量だけで1100kgある。乗り心地にもズシリとした重量感がある。ランドローバーのクルマは重い。だが、その重さが遠くへ連れて行ってくれるような安心感を生んでいる。乗用車メーカーがつくるSUVにはない、やっぱりモノが違うなあと思わせる重厚なプレミアム感。そんな乗り味を感じさせるのはディスカバリー スポーツも同じだ。
力もある。2リッターターボのインジニウムユニットは240ps。2t近い車重を考えると、過小表示ではないかと思うほどパワフルである。しかも6000rpmを超える高回転までモーターのようにツーンと滑らかに回る。9段ATとの相性もよく、とにかく右足を踏み込めば間髪を入れず力強く加速するから、パドルでシフトダウンしたくなることはなかった。
インジニウム(ingenium)。レアメタルみたいな名前だが、「知力」や「才能」を意味するラテン語で、engineの語源でもあるという。約420kmを走って8.4km/リッターと、燃費のほうは2t近い四駆の相場を裏切ることはなかったが、回して気持ちいいこのガソリンエンジンはディスカバリー スポーツの大きな魅力だと思う。
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イヴォークとは異なる居住性
リアドア後ろのCピラーがフツーに外に露出しているのがディスカバリー系の識別点である。本家を含めていまや4モデルを数えるレンジローバーファミリーは、どれもみなCピラーをブラックアウトしてフローティングルーフふうに見せている。
運転席に座ると、ダッシュボードがランドローバーにしてはビジネスライクなのがディスカバリー スポーツの特徴だ。センターフロアも低くて、狭い。ATセレクターは円柱のダイヤルで、エンジンをかけると浮上してくる。
四駆の制御プログラムを変えるテレインレスポンスのコントローラーは、小さな横1列ボタンで、ダッシュ中央の垂直面に追いやられている。どうせ使わないでしょ、という感じだ。とはいえ、そこはランドローバー、ドアのボトムラインよりはるかに高い60cmの渡河水深をうたっている。ただし、水密性能を確保するためか、ドアの開閉はクソがつくほど重い。
イヴォークより25cm長いボディー全長を実感するのは後席だ。前後も天地もたっぷりしている。座面が高いので、見晴らしもいい。イヴォークが2ドア/4ドアのクーペなら、ディスカバリー スポーツは完全なセダンである。
荷室の床板をめくると、19インチフルサイズのスペアタイヤが入っていた。調べたら、全グレードがフルサイズ搭載だった。こういうところもヘビーデューティーなランドローバーらしい。
“乗りごたえ”がある
今回試乗したHSEは、4グレードあるうちの上から2番目である。ランドローバーのクルマは、自動運転的なドライブ支援システムの装備では先進的とはいえない。ディスカバリー スポーツでも、高速道路で追従走行するACC(アダプティブクルーズコントロール)は全車オプション扱いである。試乗車には付いていたので使ってみると、エーッと思うほど近づいておいて強めのブレーキをかけるなど、あまり上手ではない。オプションでいいと思う。
乗ったのは、「ボルボXC40」試乗会の行き帰りだった。運転支援システムでは差をつけられているが、新しいボルボのコンパクトSUVと比べると、ディスカバリー スポーツにはハードカバーの分厚い単行本みたいな“乗りごたえ”がある。ここ1年ほどのあいだに「レンジローバー ヴェラール」、ディスカバリー、本家「レンジローバー」、イヴォークに乗ったが、エントリーモデルでも、このクルマは全然薄味ではない。エンジンはすばらしいし、個人的には最近一番気に入ったランドローバーである。
17インチの最廉価版ピュア(443万円)にキーレスエントリーくらいを付ければ十分かなと思ったのだが、ハズキルーペがないと読めないほど細かい装備表を検討したところ、キーレスエントリーは今回のHSEからが標準装備で、なんとピュアではオプションにも設定されていなかった。最廉価モデルというのは、やはり“カタログ(のみの)モデル”のようである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
ランドローバー・ディスカバリー スポーツHSE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4610×1895×1725mm
ホイールベース:2740mm
車重:1970kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:240ps(177kW)/5500rpm
最大トルク:340Nm(34.7kgm)/1750rpm
タイヤ:(前)235/35R19 105V/(後)235/35R19 105V(ピレリ・スコーピオン ヴェルデ オールシーズン)
燃費:10.2km/リッター(JC08モード)
価格:613万円/テスト車=908万7000円
オプション装備:セキュアトラッカー(9万7000円)/コネクトプロ(5万9000円)/インテリジェントダイナミクスパック<アクティブドライブライン+アダプティブダイナミクス>(25万8000円)/ドライバーアシストプラスパック(12万円)/エアクオリティーセンサー(9000円)/ダイナミックエクステリア(41万7000円)/サンブラインド付き電動パノラミックサンルーフ(17万6000円)/アダプティブキセノンヘッドライト(7万7000円)/コンフィギュラブルインテリアムードライト(4万5000円)/ACC<アダプティブクルーズコントロール>(12万円)/ハンズフリーテールゲート(10万2000円)/HSEダイナミックパック<コンプリートパック>(61万円)/HSEダイナミックインテリア(28万4000円)/ブラックコントラストルーフ&スポイラー(8万2000円)/パークアシスト(18万3000円)/10.2インチデュアルビュータッチスクリーン(12万7000円)/レーンキープアシストおよびドライバーコンディションモニター(11万円)/サウンドカメラシステム+ウエイドセンシング(5万6000円)/ラゲッジスペースレール(2万5000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2833km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:424.3km
使用燃料:50.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.4km/リッター(満タン法)/9.4km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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