第3回:懐かしいけど新しい 英・伊の“モダンクラシック”を試す
2018.05.02 JAIA輸入二輪車試乗会2018今日におけるバイクのトレンドといえば、スクランブラーやカフェレーサーなどに代表される“モダンクラシック”である。今回は、そんなトレンドのど真ん中を行くイタリア&イギリスの3モデルに試乗。その魅力をリポートする。
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むしろ“かつて若者だった”世代に響くかも
ドゥカティ・スクランブラー マッハ2.0……128万6000円
たぶんピントがずれているんだろうけど、このオートバイでうなったのは、テールカウルっていうの? シート後端でブレーキランプの下をめぐる、勝ち気な女の子の上唇みたいなパーツに描かれたラインが、フューエルタンクからの延長線をきれいになぞった上に、サイドのもっとも細い箇所の折り込みの奥まできっちり描かれていたところ。さすが伊達(だて)の国の仕上げと、マジで腕組みしました。
そんなわけで、ドゥカティの「スクランブラー マッハ2.0」。webCGでは少し前に、中型免許でも乗れる「シックスティー2」に触れたけど、スクランブラーの主流ラインは、やはりこの803cc L型ツインのデスモエンジン搭載シリーズですな。何しろ全7種のバリエーションをご用意。その中のマッハ2.0は、ハーレーのカスタムやオリジナルアパレルで有名なローランドサンズデザインとのコラボで生まれた、1970年代テイストのカラーリングが目を引く一台。とはいえ見た目には好き好きがあります。なので、機種そのもので感心したポイントを発表します。
18インチのフロントホイール! って、実はシックスティー2も同サイズ(ちなみにリアが17インチなのも同じ)ですが、排気量も出力も倍以上になったとき、相対的に切れ込み感が高まる17インチだったら、このオートバイのキャラはまったく違っていたと思うのです。むしろオフロードが得意そうなアップ&ワイドのハンドルを持つスクランブラーは、立ち気味の上体から「ふん!」とハンドルを倒しこむライディングスタイル。これがけっこう簡単に傾斜してくれるのがうれしく、73psのパワーもさして恐れずに済むわけです。無論、このオサレでのん気なカラーリングそのままに、まるで無理せず気ままに流すのも似合う。要するに脱力感がうれしいモデルだから、ドゥカとしては若者受けを狙ったのかもしれないけれど、むしろかつて若者だった世代に響くのではないかと。
そしてその世代にドンズバな自分は、シックスティー2のときと同様、「これアリだなあ」という結論に達したのです。浮気性でごめんなさい。
懐かしくもほほ笑ましい感触
トライアンフ・ストリートスクランブラー……125万5000円
トライアンフに一切の偏見はありません。それを大前提にして「ストリートスクランブラー」を評すれば、ただ一言。「あか抜けない」。いや、それはダメじゃないんです。そうだな、地元で就職した学生時代の仲間に再会したときに抱く、懐かしくもほほ笑ましい感じ。わかります?
半ば強引に流行の再来を演出するのが最近の二輪メーカーの傾向ですが、ちょっと土臭い匂いを漂わせる往年のスタイルとして各社が売り出しているのがスクランブラーです。かつてトライアンフは空冷時代の865ccエンジンを搭載した「ボンネビルT100」をベースにスクランブラーを出していましたが、今回はサイズ的に一回り小さい「ストリートツイン」から派生させました。
でね、いろんなモデルに乗るJAIAの試乗会なので、どうしたって比較しちゃうわけですよ。引き合いに出されるのは、ドゥカティの「スクランブラー」。原典が同じでも解釈が違うと文脈が変わるという事実は興味深かったですね。フラットなハンドルバーと上体が立つフォームは、いずれもスクランブラーの手本通り。「ふん!」とハンドルを倒し込んで上体を残す曲がり方も同じなのだけど、トライアンフのほうが「ふ~ん!」とわずかに時間がかかるのです。理由のひとつは、ドゥカティ・スクランブラーがフロント18インチホイールなのに対し、トライアンフは19インチを採用していること。安定感が高まる一方で、俊敏性は劣るわけです。
もうひとつは車重。ドゥカの「スクランブラー アイコン」は油や水を含めて186kgで、トラはドライまたはウエットの表示はないものの224kg。ベースモデルのストリートツインからスクランブラー化する際に8kg太っちゃった。そうした差異が「ふん!」と「ふ~ん!」に表れているのでしょう。
けれど、そういうあか抜けなさは全然悪くないのです。特に長年二輪と付き合ってきた者にすれば、「バイクに乗ってる!」という懐かしくもほほ笑ましい感触がよみがえるから。あ、今わかった。トライアンフはそんな味わいも再現したんだ。そうに違いないでしょ?
バーチカルツインがあればこそ
トライアンフ・ボンネビル スピードマスター……170万5000円
最初に口を突いて出たのは、「皇宮警察か?」でした。伝統的な制服を思わせるカラーリングと、低く構えたシルエット。そして何より近年まれに見る長さのハンドルバー。カタログ上では「レイバックスタイル」と紹介されているけれど、両手を広げて腰を落とすライディングフォームは、胸を張って堂々と進む記念パレードにピッタリじゃないかと思いました。にもかかわらず、名称は「スピードマスター」でしょ。「ロイヤルマスター」のほうがふさわしいんじゃないかな。
水冷化されて久しいトライアンフのバーチカルツイン。そのトラディショナルなエンジンタイプがブランドイメージに定着していますが、そこにこの乗車姿勢となると完全にクラシックの世界ですな。その辺はトライアンフも確信犯的で、どっちがベースモデルなのかよくわからないけれど、やはり往年のカスタムテイストをふんだんに盛り込んだ「ボンネビル ボバー」と共有している特徴は、リアサスペンションをリジッド風に仕上げている点です。ショックユニットをわざわざシート下に隠しているんですよ。手が込んでいるなあ。
じゃ、すべてが古臭いかといえば、さにあらず。スロットルは操作性と安全性にたけたフライバイワイヤ。ロードとレインが選べるライディングモードも装備。さらにABSとトラクションコントロール等々、電子系配慮の備えも万全。
それからもうひとつ。77psの1200ccエンジンは、ぐっとスロットルを開けていくと途中から爆発的な加速を見せます。警備範囲内に不審者を見つけたら即座に追跡できるほどに。その一方で、およそ3000rpm以下の低いレンジでもトコトコ走ります。パレード走行にふさわしい規律正しさを見せるがごとく。って、いい加減に皇宮警察イメージから離れろやと自分にツッコミ入れますが、やっぱりトラはバーチカルツインだよなあと思いました。この“エンジンに乗ってる感が高い”ユニットがあればこそ、時代錯誤の超横長ハンドルを付けるチョイスも可能なんでしょうね。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)

田村 十七男
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