三菱エクリプス クロス Gプラスパッケージ(4WD/CVT)
起死回生の一台 2018.05.10 試乗記 三菱の新型クロスオーバーSUV「エクリプス クロス」に試乗。クーペスタイルの見た目から“オシャレ系SUV”と判断しがちだけれど、だまされてはいけない! 「ランエボ」由来の4WDシステムや高いボディー剛性を備えた、実に真面目なクルマに仕上がっているのだ。掛け値なしにカッコいい!
三菱自動車4年ぶりのニューモデル・エクリプス クロス! なにしろ4年ぶりだ。自業自得とはいえ臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の日々だったことでしょう。
われわれの務めは真実をお伝えすることだが、これをケナすのは水に落ちた犬を打つようなもの。微妙に書きづらいなぁと思いながら乗ってみたら、とてもいいクルマでした! この「とてもいいクルマ」という印象には、もともと期待値があまり高くなかったからというのもある。しかしそれでも、「かなりいいクルマ」とはいえる。
まず見た目がかなりいい。向こうから走ってくるのを見ても、真横から眺めても、後ろ姿を遠目に見ても、結構カッコいい。全体にメッキ類の化粧は厚めだが、フォルムに適度な凝縮感があり、わかりやすい未来感もある。前から見るとどこかシトロエンっぽく、後ろ姿はなんとなくボルボ。分割されたリアウィンドウはサイバースポーツ「CR-X」か「プリウス」か? ただしどれもマネには見えず、割と単純にカッコいい。このクラスのSUVを検討している人にとっては、「えっ、これ、結構いいんじゃ?」となる確率は高い気がする。
ちなみにですが、私がエクリプス クロスに試乗した際(2回)、それぞれ「ボルボXC40」と「レンジローバー イヴォーク」が一緒でした。さすがにこの2台と並べると、かなり見劣りしたのは確かです。特にメッキ類はうるさくて安っぽく感じました。でもそれは比べる相手が悪い。値段が全然違うんだから。例えば「C-HR」や「ヴェゼル」と並べたら、エクリプス クロスが一番質感が高く、オトナっぽく見えたんじゃないか。
ホントの話、XC40やイヴォークさえ見なければ、単純に「このクルマ、カッコいいよ!」と思えたのです。個人的にはメッキ部の一部をスプレー塗装でつや消し黒にしてみたい。そうすりゃXC40に対抗できるかも。そんなことも考えました。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
パワーユニットは若干非力
エンジンは1.5リッターの直噴ターボ(レギュラーガソリン仕様)。このサイズのSUVでこの車両重量(1550kg)で1.5ターボというのは節約志向で、少なくともゼイタクではない。
実際走らせると、若干非力だなと感じます。1.6t足らずのボディーに150ps、240Nm。ちょうどいいといえばちょうどいいが、少なくともゼイタクではない。
若干非力に感じるのは、欧州製ダウンサイジングターボのようには、低い回転からトルクが出ていないからだ。スペックを見ても、最大トルクを発生するのは2000rpmから(3500rpmまで)。1400rpmくらいからモリモリモリッ! とトルクが出てくれれば、たとえ上まで回してスカでも「日常域で痛快な加速感」ということになる。でもエクリプス クロスは、2000rpmまで回さないとそれなりの加速はしないので、痛快な加速が始まるまでタイムラグがあり、結局痛快な感じが薄いのだ。
その分、上まで回した時の加速感はスカではなく「まあまあ」ですが、そこまで踏むのって、せいぜい本線料金所からの加速時くらいだ。
このCVTはただ者ではないぞ!
動力性能の微妙な不足感を補ってくれているのが、メチャメチャよくできたCVTだ。これまで私が乗ったCVTの中でベスト! ほとんどカラ回り感はないし、アクセルを深めに踏むと自動的にステップ変速になるし、まるでよくできたトルコンATです!
他にもステップ変速可能なCVTはいろいろあるが、Dレンジのままでまったく自然にそれをやってくれるのはエクリプス クロスが初めて(たぶん)! いちいちSモードとかにしなくてもイイのがすごくイイ!
ATのセレクターをわざわざチェンジするなんて、フツーに走ってたらまずやらない。少なくとも私はやりません、カーマニアの自己満足みたいなので。一般ユーザーはなおさらではないか。買った直後に一度入れてみておしまい、ってなことになる。
でもエクリプス クロスのコレは本当にスグレモノ! ステップ変速のレスポンスも速いし、アクセルを踏み込んでのシフトダウンも実に自然。そこから巡航→自動シフトアップ→アクセルオフ→自動シフトダウンでエンジンブレーキという流れは、お見事というしかない。
もちろん、最初からトルコンATにしてくれりゃいい話ではあるんだけど、CVT嫌いの私としては「ホントにCVTじゃないみたいにイイ!」と感動しました。
乗れば乗るほど好きになる
エクリプス クロスでもうひとつ評価が高いのが、ランエボ由来のトルク配分機能を持つ4WD。まるでランエボのようにクイクイと曲がると評判だ。
これに関しては、確かに回頭性は素直でイイけれど、ランエボみたいなパワーがあるわけではなく、『ベストモータリング』の筑波サーキットバトルに出場するわけでもないので、あまり恩恵は感じなかった。こういうクルマでワインディングを攻める物好きも少ないだろうし。ただ全体に、SUVとしては重心が低くどっしりと感じるのは、このランエボ由来の4WDシステムのおかげかもしれない。いや、たぶんそうだろう。つまり、縁の下の力持ちとして頑張ってくれている(推測)。
それ以前にこのクルマ、初めて乗って走りだした瞬間に「あ、いいクルマだな」と感じたのです。それは、ボディーが割としっかりしていて、乗り味がしなやかで、アクセルやブレーキの操作に対する反応が自然だから。乗り味のしなやかさは、18インチタイヤの豊かなエアボリュームが前提で、これにXC40みたいな20インチタイヤを履かせたら、かなりドッスンになってしまいそうだ。つまりボディー剛性は、18インチまでなら良好に感じるレベルだ。
でもそれは当然だよね、値段が違うんだから! 300万円前後というお値段で、このカッコでこの乗り味。後席も実に快適、静粛性も高いし、男の城にもファミリーカーにもイイ。このクルマ、非常にバランスがいいと思うのです。おかげで、乗れば乗るほど好きになりました。「足るを知る」という感じで。
確かに少しだけ非力だし、見た目も少しだけうるさい。でも、東京から河口湖までの道のりを走っているうちに、不満点は徐々に消え、逆にいとおしさみたいなものがこみあげてきた。三菱はいいクルマを作った。逆境の中で頑張った! フレーフレー三菱! そういう気分になったのです。
ただ、燃費に関してだけは、最後まで不満が残った。ロングドライブで10km/リッターに届かないのか~。そりゃXC40もイヴォークもそんなもんかそれ以下だったけど、パワーが違うからなぁ。もちろん燃費はパワーじゃなく車両重量や空気抵抗の影響が大きいので、「節約の1.5リッターターボでこんなもん?」とはいえないのですが。
(文=清水草一/写真=峰 昌弘/編集=藤沢 勝)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
三菱エクリプス クロス Gプラスパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4405×1805×1685mm
ホイールベース:2670mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150ps(110kW)/5500rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(トーヨー・プロクセスR44)
燃費:14.0km/リッター(JC08モード)
価格:309万5280円/テスト車=346万1742円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトパール>(3万2400円) ※以下、販売店オプション ETC車載器(2万9721円)/フロアマット<プレミアム>(3万0045円)/バンパーガーニッシュパッケージ<フロントバンパーガーニッシュ+リアバンパーガーニッシュ>(6万2553円)/エクステンションパッケージ<サイドエクステンション+フロントコーナーエクステンション+リアコーナーエクステンション>(14万2862円)/トノカバー(2万0152円)/ラゲッジマット(1万0800円)/ドライブレコーダー(3万7929円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2517km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:270.4km
使用燃料:27.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:9.7km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。














































