それはライダーのためのものなのか?
初の「日本バイク・オブ・ザ・イヤー」について考える
2018.12.28
デイリーコラム
2018年の最も優れたオートバイは……
2018年12月19日、一般社団法人日本二輪車文化協会が主催する「日本バイク・オブ・ザ・イヤー2018」(以下、BOTY)の結果発表と表彰式が、ホテルグランドアーク半蔵門にて行われた。
この協会は、「オートバイ文化の推進と確立」を目的とし、2016年7月に発足したものだ。以来、地域活性化のためのイベントや女性ライダーのためのフォーラム、もしもの時のためのファーストエイドの講習会開催など多岐にわたる活動実績を持つ。現在理事会は14人の役員と1人の相談役から成り、その多くがバイクの販売店やパーツショップなどに籍を置きながら各種イベントや部会の運営をサポートしている。
BOTYは今回が初の試みであり、受賞結果は大きく報道されることになった。人気・機能・デザイン等を評価基準とし、それに秀でたモデルをウェブ投票と選考委員の得票数によって決定。いくつか設けられた部門賞のほか、最も優れた一台を大賞として選出するのがその概要だ。
受賞結果と審査方法、選考委員等は下記の通りである。
【日本バイク・オブ・ザ・イヤー2018】
■部門賞
- 原付クラス賞:ホンダ・モンキー125
- 軽二輪クラス賞:スズキVストローム250
- 小型二輪クラス賞:カワサキZ900RS
- 外国車クラス賞:ドゥカティ・パニガーレV4 S
- ロングランヒット賞:ヤマハSR400/ホンダ・スーパーカブシリーズ
■大賞(ベスト・バイク・オブ・ザ・イヤー)
- カワサキZ900RS
■選考対象
2017年9月~2018年5月に発売されたモデル
※国内外カテゴリー問わず
■ウェブ投票期間
2018年7月15日~2018年10月31日
※選考委員投票は2018年11月中旬、集計は2018年11月末
■選考委員
大倉正之助(能楽師 大鼓方 重要無形文化財総合指定保持者)
小倉 良(作曲家)
菊地武夫(ファッションデザイナー)
輿水恵一(公明党オートバイ議員懇話会 元代議士)
杉田水脈(自民党オートバイ議連 代議士)
鈴木英敬(三重県知事)
樋口髙顕(東京都議会議員)
福岡賢二(神戸情報大学院大学教授 副学長)
牧内真一郎(株式会社秋田書店執行役員 編集局次長)
松浪健太(日本維新の会オートバイ議連会長 元代議士)
間宮淑夫(内閣府審議官 文化経済戦略特別チーム 副チーム長)
三原じゅん子(自民党オートバイ議連事務局長 参議院議員)
山本ひろ子(目黒区議会議員)
吉田美佳子(女優)
いかがだろう? 各賞は得票による結果なので、もちろん問題はない。特に大賞の「Z900RS」は、話題性も実際の性能も受賞に値するもので、なによりその販売台数によってライバルを圧倒。2018年のバイク界を語る上で、間違いなく外せない一台である。
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公明正大なジャッジといえるか?
問題なのは、選考に至る過程がほとんど明らかにされていないことだ。ウェブを通してどのモデルにどれだけの票が集まり、選考委員がどんな基準で審査して何に票を与えたのか。そういったことが公表されないまま、結果だけがひとり歩きしている印象なのだ。
同協会のSNSには、「金や力による影響を防ぎ公明正大なジャッジを行う」という宣言があるが、その理念にのっとっているとは言えず、実施規約の制定や情報公開に対する不備は少なくない。同様の賞はさまざまな二輪雑誌内でも開催されているが、それらはあくまでもちょっとした人気投票の域を出ないものだ。雑誌に携わった作り手と読者を結ぶ、ひとつのコミュニケーションの場であり、それでも得票結果やそこに至る過程が伏せられているケースは皆無だ。
たとえ秘匿でも、それがなんの影響も及ぼさない内輪ネタなら害はない。しかしながら、BOTYはその大仰な名称といい、選考委員の顔ぶれといい、まるで存在意義が正当化された団体に見えてしまうのが問題だ。
いま、国内のバイクは社会性よりも趣味性で成り立っている。その意味では無邪気な人気投票のひとつとしてスルーしてもいいのかもしれない。とはいえ、その結果が少なからずユーザーの指針になっていることを忘れてはいけない。まして、時には命をも左右する乗り物である。公の目にさらされる場でモノの優劣に評価を下すという行為をあまり軽く考えてはいけない。
BOTY最大の問題はまさにそこで、その責任に対して選考委員の背景があまりにも曖昧模糊(もこ)としている。なんらかの得票や点数を与える上で、それらに乗りましたか? 少しは触れましたか? せめて目の当たりにしましたか? と問いたい。
ではその選考委員がいかにして選ばれたかといえば、「メーカーの影響を受けていない人」が基準になったという。それが既述の面々ということだが、メーカー色がないことと単にバイクに幅広い知見を持たないことを同列にしてはいけない。
「選考」の重みを考えるべき
関係するジャーナリストや団体、メディアは、比較対象に挙げられては気分が悪いかもしれないが、四輪とその技術の周知を目的にした組織に「日本カー・オブ・ザ・イヤー」(以下、COTY)がある。選考委員は接待漬けや忖度(そんたく)の象徴のように揶揄(やゆ)されることが少なくないものの、その実施規約や選考方法、個人の配点結果はすべてが明確にされている。選考委員になるということは、その賞の元ですべてがさらされるに等しい。相応の覚悟の上で臨んでいるに違いなく、それと同質の重さをBOTYの面々が感じているとは思えないのだ。
設立されて40年近くが経過するCOTYでも、いまだに改善すべき点はあると聞く。例えば先ごろ発表された2018-2019年の賞において、スズキは最初から、スバルは10ベストカーにノミネートされた時点で実行委員会に賞の辞退を申し入れている。
その前に発覚していた燃費と排ガス試験における不正がその理由ゆえ、結果的に実行委員会はそれを受け入れたのだが、本来そこにメーカー側の意向が先回りして介在するのはおかしい。ノミネートするかどうか、不正があったのならその内容はどうだったのか、それを踏まえた上で賞を授与するかどうか。それらはすべてCOTY側の判断に委ねられるべきであり、今回のような事前のやり取りは、ことと次第によってはなんらかの忖度につながりかねないからだ。
おそらくこの一件は、今後実行委員や選考委員の間で論議されるだろう。十分な歴史を持つCOTYでさえそうなのだから、設立されて3年目、BOTYに関しては1回目を終えたばかりの団体に改善すべき点があるのは当然だ。
とはいえ、その不透明さはバイク界全体の信頼性にかかわる。政治家や行政関係者の肩書がダメなわけではない。バイクを愛し、十分な知見があり、それを基にした信頼に足り得る情報を、同じくバイクを愛するユーザーに堂々と伝えられているかどうか。BOTYに限らず、なにかを発信しようとするなら、その志と姿勢を忘れてはいけない。
(文=伊丹孝裕/写真=荒川正幸、三浦孝明、ヤマハ発動機、スズキ、ドゥカティ、webCG/編集=関 顕也)

伊丹 孝裕
モーターサイクルジャーナリスト。二輪専門誌の編集長を務めた後、フリーランスとして独立。マン島TTレースや鈴鹿8時間耐久レース、パイクスピークヒルクライムなど、世界各地の名だたるレースやモータスポーツに参戦。その経験を生かしたバイクの批評を得意とする。
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