大事なのは信頼関係の回復!
ヒビの入ったルノー・日産アライアンスの処方箋
2019.02.18
デイリーコラム
“ケンカ腰”はもうやめよう
2019年の2月14日と15日、ルノーのジャンドミニク・スナール新会長が来日し、日産自動車の西川廣人社長、三菱自動車の益子 修会長兼CEOらと会談を行った。スナール会長と西川社長が顔を合わせるのは、1月31日~2月1日にオランダ・アムステルダムで行われたアライアンスの定例会議に続き、これが2度目。具体的な内容については明らかにされていないが、建設的な話し合いとなったことを期待するばかりである。
20年にわたりルノー・日産アライアンスを主導していたカルロス・ゴーン氏が、金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたのが2018年11月。当初は、ルノーがゴーン氏の会長兼CEO解任をしぶったり、日産が臨時株主総会の開催要請を拒否したりとツノを突き合わせていたが、ここに来てようやくその流れが変わってきた。拘留の長期化を理由に、ルノーがゴーン氏の職を解いたのがきっかけだ。最近では、ゴーン氏の退職金(約37億円だとか)を支払わない意向を示すなど、氏に対するルノーの態度もすっかり硬化。容疑が確定する前に、本人不在でこうした流れが決まっていく様にはそら寒いものを感じるが、ルノーと日産の間に矛を収め、足並みをそろえる雰囲気が出てきたことは歓迎すべきだろう。
そもそも、“アライアンス維持”の意向は両陣営で共通しているのだし、傲岸(ごうがん)不遜な態度は避けて、いいかげん「これからのこと、どないしましょ?」という話をすべきだ。風雲急を告げる自動車業界において、単独で生きていけるほどの力はどちらも持っていないのだから。
拡大 |
ルノーなしでホントにやっていけるの?
こんなことを言うと、熱心な日産ファンからは、「アライアンスなんて必要ないよ」と反論されるかもしれない。実際、偉い学者先生の中にも「いや、日産は技術力があるから大丈夫。ルノーなんてただのお荷物だから!」と力説する方がいるし、“アライアンスご破算”まではいかなくとも、日産自身が「これを機会に……」とルノーとの関係是正に強い姿勢を見せている。ただ個人的には、トリコロールのくびきから解放された日産の姿を想像しても、どうにも不安を抱かずにはいられないのだ。
だってアナタ、ルノーが手を差し伸べる前は2兆円の有利子負債を抱えていた企業ですよ。80年代には無計画な欧州進出を推し進めて、90年代には毎年のごとく営業赤字を計上していた企業ですよ。労働組合と社長が犯罪映画ばりのケンカをしていたり、怪文書が発端でクーデターが起きたりする社史を見るにつけ、「おたくの会社、昔っからガバナンスがガバガバじゃん」とダジャレのひとつでも垂れたくなる。
そもそも、ゴーン氏に代わってこの大企業を統括する人物が見えてこない。誰がいるんだ? 西川社長か? ちょっと前に「引責辞任を示唆」なんてニュースが出てたけど、大丈夫か?
確かに日産の技術力はスゴい。「リーフ」や「ノート/セレナe-POWER」などに搭載される電動パワートレインに、可変圧縮比エンジン。CMの仕方はどうかと思うけど、ADAS(先進運転支援システム)の技術だって世界屈指のレベルだろう。ただ、技術力だけでは生きていけないことについては、「901運動」が経営不振の打開に結びつかなかった過去が証明している。それに、今日に至る業績回復と海外市場での伸長を実現したのが、ゴーン氏の“政治力”であったことに異論を挟む人はいないだろう。外交、経営、営業と、さまざまな方面で高い力を有していなければ、自動車メーカーは立ち行かない。20~30年前でもそうだったんだから、業界がはるかに複雑怪奇となった今日では、それは言うまでもないことだ。
拡大 |
日産に対する依存が過ぎる
一方で、“一人暮らしNG”な生活力のなさはルノーの側にも言える。このほど発表された同社の2018年通期決算では、純利益が前期比37%減の33億0200万ユーロ(約4130億円)となった。この大幅減益について、多くのメディアが新興国での販売不振と並び、「日産の利益貢献減」を理由として挙げている。だとしたら、ルノーの日産に対する“おんぶに抱っこ”っぷりが過ぎるだろう。ちなみに、同年ルノーが日産から得た利益は15億0900万ユーロ(約1900億円)で、最終利益のおよそ45%を占めるのだとか。株主の正当な権利とはいえ、こんな状態でF1やら採算のアヤしいスポーツカーブランドやらに金をつぎ込まれるんだから、日産にしてみれば、そりゃ文句も言いたくなるでしょうよ。
自動車メーカーの本分である技術開発やクルマづくりについても同様で、次世代の核となる電動パワートレインやら自動運転やらコネクテッド技術やらの開発は、みんな日産にお任せ。ついぞルノーから画期的なニュースを聞いたことがない。現世ご利益のある車両技術にしても、日産が開発を主導したCMF-C/Dをベースにしたクルマをバンバン販売。今をときめく「アルピーヌA110」や「ルノー・メガーヌ ルノースポール」のエンジンは、「日産シルフィ」などに積まれる1.8リッターをターボ化したものなのだとか。「シナジー効果が……」と言えば聞こえはいいが、いささか“分け前”がアンバランスじゃございません? 日本で乗れるCMFの日産車って、いまだに「エクストレイル」だけなんですけど。
……そんな日本人ユーザーとしてのささやかな嫌みはさておき、もしアライアンスがご破算になったら、ルノーは早々に自動車メーカーとして立ち行かなくなるんじゃないの? そんな風に思っているのは、ワタクシだけではないはずだ。
拡大 |
まずは信頼関係の回復を
そんな訳で、記者はルノー・日産アライアンスは両者の発展にとって欠くべからざる存在だと考えている。そうでなくとも“年産1000万台”というマスがかなえるシナジー効果は大きく(2017年度の数字で57億ユーロ)、それを手放すようなマネはまともな経営者なら考えないはずだ。だからこそルノー、日産ともに、今回のゴタゴタに際して真っ先にアライアンス維持の意向を表明したのだろう。
問題はどのような形でルノーと日産の関係が落ち着くかだが、この点については個人的に、「片方が勝って片方が負ける」といった結論になるのが最も危険だと思う。安定的なアライアンスの維持が目的なら、互いを尊重し、相手の不満に耳を傾ける姿勢がゼッタイに必要だ。立場の差をかさに着て、片方が片方に主張を押し付けるようなことがあればどうなるか。ケンカ別れに終わったフォルクスワーゲンとスズキの提携劇を思い出してほしい。
今のところ、ルノーは日産に対する批判の矛を収めており、スナール会長も今後の話し合いに向けた地ならしに重きを置いている様子。水面下では日産の会長職をめぐって激しい駆け引きが行われているのだろうが、まずは互いの信頼回復に注力してほしい。
(文=webCG ほった/写真=ルノー、日産自動車/編集=堀田剛資)
拡大 |

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今NEW 2026.7.20 トヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。
-
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く 2026.7.17 アルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。
-
九州・熊本で開催 「Lamborghini Summer Days 2026」で極上なる猛牛の世界観を知る 2026.7.16 ランボルギーニが1泊2日の無料招待制イベント「Lamborghini Summer Days 2026」を、九州・熊本で開催。上天草の自然とともに最新モデルの走りと独自の世界観を味わう特別なツアーの詳細を報告する。
-
スライドドアはいつから? 「日産エルグランド」登場前夜の国産ミニバン史 2026.7.14 間もなく「日産エルグランド」の新型が発売される。これに限らずわが国は多くのブランドが多くのモデルをラインナップするミニバン王国なわけだが、そもそも国産ミニバンはどのようなかたちで始まり、どのような進化を遂げてきたのだろうか。多人数乗車モデルの歴史を解説する。
-
みんなで乗れるアメリカンSUBARU 3列シートSUV「アセント」はどれだけ大きいのか? 2026.7.13 アメリカで生産されているスバルの3列シートSUV「アセント」が、日本でも2026年後半から販売される見込みだ。一体どんな魅力の詰まったクルマなのか、発売を前にその特徴を予習しておこう。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。

































