第430回:どこまでヤルの? VW流ハイクオリティ戦略 新型「ゴルフカブリオレ」は“味のオープン”だっ!!
2011.06.01 小沢コージの勢いまかせ!第430回:どこまでヤルの? VW流ハイクオリティ戦略新型「ゴルフカブリオレ」は“味のオープン”だっ!!
予想を超えた出来の良さ
ヤルよヤルヤルとは思ってたけど、ちょっとビックリ。ホントにここまでヤルか! って感じですよ。新型「フォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレ」。
先日、“世界の保養地”ニースでグローバル試乗会があり、不肖・小沢も日差しサンサンと降り注ぐコートダジュールの空の下にはせ参じたわけですが、なにより当のクルマの出来にビックリ。
スタイルや実用性もさることながら、そのクオリティ、いや“味”にね。アウトラインをざっと言うと、新型ゴルフカブリオレは大ざっぱに3代目、厳密には4代目に当たる。
初代は79年に「ゴルフI」ベースで生まれて10年以上造られ、2代目が91年登場の「ゴルフIII」の時代に生まれてフェイスリフトされつつ3代目となって「ゴルフIV」の時代まで生き、今年2011年に現行「ゴルフVI」をベースに新型が生まれたわけだけど、出来の良さはある程度想像がついていたわけです。
というのも、最近のフォルクスワーゲン車はどれも質感がハンパなく、中でもゴルフVIは、現フォルクスワーゲングループ総帥ヴィンターコーンが直々「史上最高のゴルフ」と言い切る出来の良さ。
ボディ剛性はもちろん、エンジンの緻密さ、ステアリング、ブレーキのタッチと全域にわたり、“ドイツ質感バカ”(失礼!)と言いたくなるほどのこだわりぶりで、個人的には「味のフォルクスワーゲン戦略」と呼んでおりました。
ついでにジマンの小排気量直噴ターボのTSIエンジンはエコ性能も高く、コンパクト系なら実燃費でリッター15kmは楽勝だし、フォルクスワーゲン車はそのほとんどがパッケージ効率もいいけど、それ以上に安定しているのは質感。データで分かるところ以上に、体と心に直接訴える“味”で勝負してきてるブランドなわけよね。老舗の和菓子屋よろしく。
実際フォルクスワーゲングループは台数を伸ばしてて、世界一位のトヨタを猛追中なわけで、その戦略は目下大成功。新型ゴルフカブリオレも、手抜きナシで来るとは想像しておりました。とはいえ、ここまでヤルとは……!
クオリティはジャガー並み!?
というのも、乗ると一瞬「もしやハッチバックよりしっかりしてる?」と感じるのだ。無論、屋根を閉めて走ると多少はバタバタするし、ボディのゆがみ、つまりオープン化の欠点を多少は感じるわけだけど、開けて走ると驚き。マジな話、あまりの静かさに、「ホントに屋根開けて走ってる?」と勘違いする時があるほど。
それは当然、空力の良さからくる風の巻き込みの少なさもあって、特にリアにディフレクターを付け、サイドガラスを上げた時は100km/hくらいまでは完璧に助手席と会話が交わせるくらいだが、それ以上に効いてるのはボディのしっかり感やステアリングの滑らかさ。そういうタッチの部分が全くオープンカーっぽくないというか、一部ハッチバッグゴルフをしのぐレベルなのだ。
実際、某大御所ジャーナリストは「クオリティはジャガークラスのオープンに匹敵しますね」と評してたけど、ホントそう思う。
聞けばボディのフロア補強は相当なレベルで、下から見るとハッチバックとはまるで違う構造になっている。ある意味、レーシングカー並みのテコ入れがなされたのだ。
それから凄いのは、スタイルの良さと、変わらぬ実用性。これは賛否両論かもしれないけど、ボディはサイズで全高×全長×全幅=4246×1782×1423mmとハッチバック比で約4cm長く、約6cmも低くなっていて、見た目は今までのずんぐりむっくりしたゴルフカブリオレとはまるで違う。
中でも決定的なのはその象徴ともいうべき、固定式ロールバーがなくなってること。その代わりに転倒時に自動で飛び出すポップアップ式ロールオーバーバーを装備し、その分、スタイリッシュにはなったけど随分アカ抜けちゃったなぁ……という印象もあり、ある意味ゴルフカブリオレらしくない。この辺は好みが分かれるかもしれない。
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人間界にも通じるキャラ
とはいえそれでも居住性はさすがのレベルで、前席に176cmのオレが乗ったポジションでも、後席は背もたれがちょっと立った? ってくらいで余裕で乗れるし、ラゲッジは相変わらず250リッターもあって、機内持ち込み可の小型トランクが2列で積める。
それでいて、現在(本国では)販売中のゴルフベースのハードトップカブリオレ「イオス」に比べると全長はおよそ17cmも短くなっており、パッケージは明らかに新型ゴルフカブリオレの勝ち。ソフトトップ採用により、屋根をコンパクトに畳め、ボディの無駄な拡大が防げたわけで、ルーフのオート開閉タイムにしろ実に9秒! で世界最速レベルだ。
加えて幌は三層構造と耐候性は十分。パワートレインは日本仕様が160psの直噴1.4リッター直4ツインチャージャー+7段DSGで、欧州複合モードの燃費もリッター15.9kmと良好。車重は約1.5トンと重めで、大人4人が乗ったら多少かったるいかもしれないが、普通に走る分には十分速い。
ってなわけで見た目、実用に加えて味! と三拍子そろった新型ゴルフカブリオレ。日本には今年の秋にも入ってくるそうで、お値段は400万円以下が見込まれているらしいが、これで日本でも人気のMINIコンバーチブルあたりを凌駕(りょうが)しようってわけだろう。
MINIもそうだけど、今のオープンモデルはベース車同等の走り&実用性+それ以上の開放感ってのが当たり前になりつつある。
つまり、“ある長所のための短所”というのがまずます許されなくなってるわけで、そういう意味では人間界と似ている。「長所で欠点を隠す」というより長所はそのまま「とにかく欠点を隠せ」って時代なのだ。
うーむ、南仏でステキなオープンカーに乗りながら、こんなに苦い世相を思い浮かべるオレって一体なんなんでしょー。クルマがマジメすぎるからかもよ!? なんてね……。(苦笑)
(文=小沢コージ/写真=小沢コージ、フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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