最適ルートはAIだけが知っている!? カーナビのルート案内最前線
2020.04.08 デイリーコラムドライバーの好みに応じたルート案内
都内から首都高速湾岸線で東京ディズニーリゾート(TDR)へ向かう。カーナビが案内するのは最寄り出口である葛西経由のルート。しかし、葛西周辺は渋滞が激しく、それを知るドライバーは次の浦安出口で降り、折り返すようにしていち早くTDRへ到着。実はTDR公式サイトで推奨されているルートも浦安経由なのだ。
ルート選択に唯一無二の正解はない。少々遠回りでも幹線道路を好む人もいれば、裏道好きの人もいる。短距離でも高速道路を使う人もいれば、下道に徹する人もいる。こうした各ドライバーの運転の傾向に基づき推奨ルートを提供してくれるのが、ナビタイムジャパンのスマートフォンアプリ『カーナビタイム』だ。
推奨の根拠となるのは各ドライバーの過去の走行データ。高速道路利用率や細道利用率、渋滞回避率、最短距離率、運転速度などの特徴を抽出して人工知能(AI)で分析する。分析の根拠となるデータが異なるため、同じ時間帯に同じ区間で検索しても、AさんとBさんとでは違う検索結果が出てくるという。
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現場を熟知するベテランドライバーのノウハウ
膨大なデータから条件に合う答えを導き出すのはAIの得意分野で、カーナビ業界だけでなく、物流業界も熱い視線を注ぐ。物流のルート設計は一般車両以上に難易度が高い。特に個別の店舗への配送や個人宅宛てを含む宅配便など「ラストワンマイル」と呼ばれる領域はルート選択に影響する因子が多くて複雑だ。
ごくシンプルなケースを図1に示す。3つの店舗を巡回して配送センターに戻る場合、店舗1→店舗2→店舗3と回ることもできるが、店舗2が反対車線にあるため、この場合は店舗1と店舗3を回ってから折り返して店舗2に行く方が、事故リスク低減という意味でも移動時間短縮という意味でもよさそうだ。しかし、もし時間指定の関係で店舗3から回るとなれば、また違ったルートを考えなければならない。
地域の交通事情を熟知するベテランのドライバーは比較的短時間のうちにルート設計をやってのける。このノウハウをシステム化できれば、経験の浅いドライバーでも効率的に仕事ができる。そして将来的に自動運転が実現したときにはこれが頭脳の一部になり得る。人手不足に悩む物流業界にとって、ラストワンマイルのルート効率化とシステム化は極めて大きなテーマなのだ。
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地図だけでは分からない情報をGPSから
そんなラストワンマイルのルート最適化に特化したサービスが、オプティマインドの『Loogia(ルージア)』だ。同社は名古屋大学発のベンチャー企業で、昨2019年秋にトヨタ自動車など4社から10億円以上の資金を調達したことでも話題を集めている。
ルージアはAIを使って住所や時間指定等の配送情報から最適なルートを導く。計算の基本は組み合わせ最適化だ。例えば3つの店舗に配送するとしたら、巡回パターンは「1-2-3」「1-3-2」「2-1-3」「2-3-1」「3-1-2」「3-2-1」の全6通りが考えられるので、この中から時間指定や交通事情などの要素を加味して最適なものを選ぶ。しかし、配送先が増えるほどに計算は複雑になる。配送先が5カ所ならば巡回パターンは120通り。10カ所ならば362万超と、巡回パターンが爆発的に増えていくためだ。
そこで採用されたのがメタヒューリスティクスという最適解を効率的に導く手法。これにより複雑な問題も短時間で解くことができる。同社が行ったルート作成の実験では、28カ所に31個の荷物を届けるルートを作成するのに、新人ドライバーは44分かかったが、ルージア使用では6分に短縮できた。実際の移動時間も、新人ドライバー作成のルートでは57分のところ、ルージア版では45分となり、合計で50分の時間短縮を実現した。
また、ルージアのアルゴリズムはラストワンマイルに特化して開発されたもので、Uターン抑制や左付け優先といった特殊なルートを提示できる。さらに、実際に走行した車両のGPSデータを学習させることで、機能が強化される。例えば、地図では配送先の出入り口や駐車可能スペースまでは分からない。商業施設の場合、来客用駐車場は大通りに面していても、配送トラックの出入り口は裏側といったケースもある。しかし、走行履歴を解析すれば地図だけでは分からなかった現場の情報が分かり、どこに車両を着ければよいのか、よりよい配送ルートを導くことができる。
Eコマース市場は依然として右肩上がりだが、物流の担い手不足は深刻さを増している。こうしたツールで課題が解決されるとしたら、一利用者としても大歓迎だ。しかも、現在は新型コロナウイルスの影響でEコマースの利用が増加中。こんな状況にあっても通常通り業務を遂行してくれる物流業者の皆さまに、この場を借りてお礼をお伝えしたい。本当にありがとうございます!
(文=林 愛子/写真=ナビタイムジャパン、日産自動車/編集=藤沢 勝)
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林 愛子
技術ジャーナリスト 東京理科大学理学部卒、事業構想大学院大学修了(事業構想修士)。先進サイエンス領域を中心に取材・原稿執筆を行っており、2006年の日経BP社『ECO JAPAN』の立ち上げ以降、環境問題やエコカーの分野にも活躍の幅を広げている。株式会社サイエンスデザイン代表。
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