BMW X3 xDrive28i(4WD/8AT)【試乗記】
買えれば“買い” 2011.05.02 試乗記 BMW X3 xDrive28i(4WD/8AT)……698万1000円
2代目に進化した、BMWのSUV「X3」に試乗。新型の走りは? そして、乗り心地は?
「Xシリーズ」の主役になるかも
7年前に行われた初代「BMW X3」の試乗会で、インポーターが強調していたことのひとつが“小ささ”だった。全長では100mm、全高では65mm、兄貴分の「X5」を下回り、全幅は15mmしか狭くないものの、顔やキャビンを絞り込むことでコンパクトに見せていると説明していた記憶がある。
しかし新型X3に、そのような思慮遠慮は見られない。フロントマスクやサイドウィンドウは全幅いっぱいまで広がり、その上で立体感を出すべく、ドアやフェンダーには躍動的なプレスラインが入った。
その結果、旧型よりはるかに大きく見えるようになったわけだが、実際のボディサイズも拡大している。全長×全幅×全高=4650×1880×1675mmという数字は、高さは同じまま、85mm長く、25mm幅広くなった。
ホイールベースの延長は15mmにとどまっているので、前後のオーバーハングが延長されたことになる。おかげでロングノーズにリア寄りのキャビンという、「1シリーズ」にも通じる個性は希薄になり、万人向けのフォルムになった。
ひとクラス上のX5は、日本の路上では巨大と言いたくなる外寸にまで拡大した。その一方で、より小さな「X1」の登場もあった。しかも、環境対策は引き続き重要な課題である。そんな状況のなかで、BMWはXシリーズの主役をX5からX3へとシフトさせようとしているのではないか。そんな印象を新型のデザインから受けた。
隙のないインテリア
キャビンに足を踏み入れると、その印象はさらに強まった。旧型X3にあったカジュアルな雰囲気は姿を消し、「3シリーズ」を上回る高級感が漂う。ウインドスクリーンに映し出されるヘッドアップディスプレイに、交差点までの距離や進行方向を示す矢印でナビの道案内が示されるなど、装備品は至れり尽くせりだ。
しかも、後席の足元スペースが20mm広がったというアナウンスのとおり、キャビンは広くなった。前席まわりはBMWらしくタイトな作りだが、後席は身長170cmの僕が座ると、ひざの前に20cmほどの空間が残る。
この後席は4:2:4の3分割可倒式。容積は「後席を立てた状態でも550リッター、畳めば1600リッター」に拡大した。SUVとしては低めのフロア上にはスライド可能なフック、下には使いやすい収納スペースを備える。プレミアム感を高めつつ、ユーティリティにも手抜きがない、隙なしの空間だ。
あえて不満を挙げれば、センターコンソールの幅が広すぎて、助手席側が心理的に狭く感じられる点だろうか。それと街なかでは、1.9m近い車幅と、「5シリーズ」を上回る5.7mの最小回転半径が気になる。でも都市を抜け出してペースを上げると、いろいろな場面で完成度の高さに圧倒されることになった。
さらに洗練された走り
直列6気筒エンジンは、3リッターの自然吸気と直噴ターボが用意される。グレード名は前者が「X3 xDrive28i」、後者は「xDrive35i」だ。旧型は2.5リッターと3リッターの自然吸気だったから、ボディサイズ同様ステップアップを果たしたことになる。
今回乗ったのは「28i」で、1850kgの車両重量は旧型3リッターとさほど変わらないうえに、ATは6段から一挙に8段に進化しているから、加速に不満はなかった。ストレート6らしい吹け上がりのなめらかさ、音の心地よさは相変わらずX3の美点。でも新型ではそれを、オブラートに包んで届けるようになった。
試乗車のタイヤはオリジナルの245/50R18に代えて、前245/45R19、後275/40R19という「35i」と同じサイズになっていた。ただしダイナミック・ダンピング・コントロールも追加されていたので、ノーマルモードを選んでおけば、少なめのストロークながら段差や継ぎ目をうまくいなしてくれる。旧型にあったザラついた感触は消え、上質な乗り心地を届けてくれた。
背が高いのにロールしないXシリーズの芸風にも磨きがかかっていて、目線はそれなりに上がっているのに、水平移動するようにコーナーをクリアしていく。一種不思議な感覚ではあるが、これが最新のプレミアムSUVのトレンドであることも事実である。ロードホールディングやトラクション能力の高さも、この印象に輪をかける。
新たなカテゴリーを創出した旧型のような新鮮さは薄い。その代わり、車両全体から漂う「いいモノ感」は相当なものだ。その意味で新型X3は3シリーズに似ている。Xシリーズの中核に成長したことを、さまざまな部分から感じるのだ。598万円をポンと出せる人にとっては、このクラスのSUVでいちばん間違いのない買い物になるだろう。
(文=森口将之/写真=峰昌宏)
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
スズキeビターラZ(4WD)【試乗記】 2026.3.28 スズキが満を持して世に問うた、初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」。エントリーグレードは400万円以下! 500万円以下で4WDも用意されるというお値打ち価格のBEVは、走らせてみるとどうなのか? 東京-愛知を往復して、その実力を確かめた。
-
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】 2026.3.25 昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。
-
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】 2026.3.24 販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。
-
BMW iX M70 xDrive(4WD)【試乗記】 2026.3.23 BMWが擁するSUVタイプの電気自動車「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。
-
BMW i5 eDrive35LエクスクルーシブMスポーツ(RWD)【試乗記】 2026.3.21 BMWの「5シリーズ ロング」は知る人ぞ知る(地味な)モデルだが、実はエンジン車のほかに電気自動車(BEV)版の「i5 eDrive35L」も用意されている。まさに隙間産業的にラインナップを補完する、なんともニッチな大型セダンの仕上がりをリポートする。
-
NEW
開発中にボツになった「素晴らしいアイデア」は、その後どうなる?
2026.3.31あの多田哲哉のクルマQ&A車両を開発するなかで生まれた良いアイデアや素晴らしい技術には、実際に製品化に生かされないものも多数あるという。では、時を経て、それらが再び日の目を見ることはあるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
メルセデスAMG GTクーペ/メルセデスAMG GT 4ドアクーペ【試乗記】
2026.3.31試乗記メルセデスAMGの「GT63 S Eパフォーマンス クーペ」と「GT53 4MATIC+(ISG)ファイナルエディション」は、同じAMG GTを名乗りながらも片や2ドア、こなた4ドアのクーペモデルだ。この両者には、どんな特徴や違いがあるのか。クローズドコースで確かめた。 -
あなたの行動範囲を無限大に 「クムホ・ソルウス4S HA32」を試す
2026.3.30毎日をアクティブにするクムホのオールシーズンタイヤ<AD>クムホのオールシーズンタイヤ「ソルウス4S HA32」は春夏秋冬の全季節に対応。その心は高いドライ&ウエット性能で夏タイヤとしての高い性能を満たしたうえで、高い雪上性能を付与しているということだ。「三菱デリカD:5」に装着した印象をリポートする。 -
第332回:クルマ地味自慢
2026.3.30カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。最近、年齢とともに地味なモデルが大好きになった。そんななか、人気の「フォレスター」や「クロストレック」の陰にひっそりと隠れたスバルを代表する地味モデル「インプレッサ」に試乗。果たしてその印象は? -
レクサスGX550“オーバートレイル+”(4WD/10AT)【試乗記】
2026.3.30試乗記スタッドレスタイヤ装着の「レクサスGX」でウインタードライブへ。クルマ好きにとってはいかにも胸がふくらむシチュエーションだが、刻一刻と変化する自然環境が相手ゆえに、なかなか一筋縄ではいかないものだ。山に分け入る際には引き返す覚悟もお忘れなく。 -
欧州メーカーもホンダも大損 EV政策はなぜ急加速から“大コケ”に至ったか?
2026.3.30デイリーコラム主要な自動車メーカーが、EV政策の見直しにより、2025年12月期または2026年3月期の決算で莫大(ばくだい)な損失を計上した。なぜEV開発はかくも急速に進められ、急減速に至ったのか。清水草一は、その理由についてこう考える。





























