BMW 118dプレイ エディションジョイ+(FF/8AT)
そこに明確な意志がある 2020.09.22 試乗記 BMWのエントリーディーゼルモデル「118dプレイ エディションジョイ+」を、片道300kmを超える長距離ドライブに連れ出した。高速道路と山岳路を組み合わせたタフなルートでステアリングを握り、あらためて確認できたBMWの走りに対するこだわりとは?変わらないBMWらしさ
ご存じのように、「BMW 1シリーズ」は2019年のフルモデルチェンジで3代目に移行。駆動方式を従来型のFRからFFへと変更した。そしてこのたび、2リッターの直列4気筒ディーゼルターボエンジンを積む118dがラインナップに加わった。
このクリーンディーゼルエンジンは、「BMW X2」に初めて搭載されたB47D20型で、ちなみにFRレイアウトの「BMW 320d」が積む2リッターのディーゼルターボはB47C20型。両者は、駆動方式とエンジンレイアウトの違いから吸排気の取り回しなど細部が異なる。一方で8段ATと組み合わされるのは、B47D20とB47C20で共通する。
で、最近のBMWというかドイツ車全般にいえることですが、正面から見ると何シリーズだか何クラスだか、見分けがつきませんね。
この118dプレイ エディションジョイ+も立派なたたずまいなので、パッと見は「3シリーズ」かと思った。現代の1シリーズの全長×全幅×全高=4335×1800×1465mmというサイズは、1975年にデビューした初代3シリーズ(E21)の4355×1610×1380mmとほぼ同等。昭和は遠くなりにけり。
昭和は遠くなったけれど、運転席に座るとBMWは変わらないと感心する。「BMWライブコックピット」と呼ばれるメーターパネルは、ドライバーの眼前に10.25インチのデジタルメーター、ダッシュボードに10.25インチの液晶パネルを配置するもので、2つの画面で構成するあたりがイマ風だ。一方でちょっとタイトに感じるけれどドライビングに専念できる空間であることや、清潔で機能的な雰囲気はいかにもBMWらしいもの。
スターターボタンを押すと、ディーゼルだと意識させることなくエンジンは始動した。アイドリング状態でサイドウィンドウを下ろすと、かすかにノイズが聞こえるものの、特に耳障りだというわけではない。そしてサイドウィンドウを上げると、室内に静寂が戻る。遮音はしっかりしており、エントリーモデルではあるけれど、“いいモノ”感はひしひしと伝わってくる。
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洗練されたパワートレイン
走りだしてすぐに、このディーゼルはいい、とピンとくる。低回転域でドシンというトルク感を意識させるわけではないけれど十分に力持ちで、滑らかに車体を引っ張る。最高出力は150PS/4000rpm、最大トルクは350N・m/1750-2500rpmというスペックである。
組み合わされる8段ATは早め早めにシフトアップするから、市街地を普通に流す程度だとエンジン回転が2000rpmを超えることはあまりない。けれどもこの回転域でも力強く、回転フィールもスムーズだ。2ステージターボチャージャーが、低回転域から有効に機能している。
ちょっとした加速が必要なところで軽くアクセルペダルを踏み込むと、ハミングするように軽やかに回転が上がり、上質なトルクが湧き出してくる。さらに強くアクセルペダルを踏み込むと、キックダウンでギアが落ち、加速は一段と力強くなる。
このパーシャルスロットルからの加速や、キックダウンによる変速といった一連の動きが滑らかで、洗練されている。インテリアと同様、パワートレインからも“いいモノ”感が伝わってくる。
タウンスピードでの乗り心地は、ひとことで表現すればバランスがとれている。路面からのハーシュネス(突き上げ)をうまくやわらげつつ、同時に車体をフラットな姿勢に保つ。身体がとろけるように快適なわけでも、ビシッと引き締まっているわけでもないけれど、気持ちよく、明るい気分で運転ができる。普段使いには絶妙のあんばいの足まわりだろう。
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ロングドライブに最適
高速道路に入ると、このクルマはさらに生き生きとした表情を見せるようになる。本線への合流でアクセルペダルを踏み込めば、ディーゼルなのに喜々として回転を上げる。2500rpmを超えたあたりからタコメーターの針の動きが軽くなり、ストレスや振動なしに5000rpmあたりまで吹け上がる。うっかりすると、ディーゼルであるという事実を忘れてしまいそうだ。
ここ最近のBMWは、エンジンの種類にかかわらず、従来の常識を覆すようなファンがある。かつてはつまらないとされたディーゼルやガソリンターボに新たな魅力を与えているあたり、感心することしきりだ。
このディーゼルターボエンジンも例外ではなく、ガソリンエンジンとも違う、かつてのディーゼルエンジンとも異なる、厚みがあって洗練された加速フィールでドライバーを楽しませてくれる。
高速道路での乗り心地も、いかにもBMWらしいものだ。基本にあるのはボディー剛性の高さで、ちょっとした路面の不整や段差を突破してもみしりともいわない。そしてボディーがねじれたりゆがんだりしないから、サスペンションが常に正しく路面に接することができる。車体は常にフラットな姿勢を保ち、ドライバーは体が揺さぶられることがないから視線も安定。結果として快適に、疲れやストレスを感じることなく遠くを目指すことができる。
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普段使いにもちょうどいい
驚いたのは路面のやや荒れたワインディングロードに入ったときの乗り心地のよさだ。前述したようにかっちりしたボディーと、それに組み合わされるサスペンションによるマッチングの妙だろう。
この取材には某国産車も同行しており、ここまではBMW 118dといい勝負だった。けれども、路面のコンディションが悪くなり、平均速度が上がるなど、条件が厳しくなるほどにBMWとの差が明らかになった。
また、そこそこのハードコーナリングを試しても、FFのネガティブな側面を感じることはなかった。ステアリングフィールは良好だし、アンダーステアを感じることもない。この回頭性のよさには、タイヤスリップコントロールシステムが寄与している。これは前輪が滑るとエンジンの出力を制御するデバイスで、コーナリング時に外側にふくらみそうになると作動する。コーナリング時に内輪にブレーキをかけて曲がりやすくするヨーコントロールとの合わせ技で、コーナーの連続を気持ちよく駆け抜けることができる。
とはいっても最高出力150PS。びっくりするくらい速いわけではないけれど、ピックアップがよいエンジンとシームレスに変速する8段ATを組み合わせたパワートレインを操っていると、すがすがしい気持ちになる。
取材を終えて下町のわが家へお連れすると、狭い路地ではこれくらいのサイズが扱いやすいことを痛感した。普段使いするクルマとしては、サイズ、性能ともにちょうどいいと、しみじみ。同時に、FFになってもディーゼルであっても、BMWらしさが失われていないことも印象に残った。駆動方式やエンジン形式よりも、「こういうクルマをつくりたい」という明確な意志が重要なのだろう。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
BMW 118dプレイ エディションジョイ+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4335×1800×1465mm
ホイールベース:2670mm
車重:1490kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150PS(225kW)/4000rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)225/45R17 94Y/(後)225/45R17 94Y(ブリヂストン・トランザT005 RFT)
燃費:16.7km/リッター(WLTCモード)/22.9km/リッター(JC08モード)
価格:385万円/テスト車=493万8000円
オプション装備:ボディーカラー<ミネラルホワイト>(7万9000円)/iDriveナビゲーションパッケージ<BMWライブコックピット、BMWインテリジェントパーソナルアシスタント、ITSスポット対応DSRC車載器、BMWコネクテッドドライブプロフェッショナル>(24万9000円)/コンフォートパッケージ<BMWインディビジュアルアルミニウムライン、オートマチックテールゲートオペレーション、ACC、イルミネーテッドベルリンインテリアトリム>(19万円)/ハイラインパッケージ<電動フロントシート、フロントシートヒーティング、パーフォレーテッドダコタレザー ブラック/ブラック>(25万円)/ストレージパッケージ<ストレージコンパートメントパッケージ、ラゲッジコンパートメントパッケージ、ラゲッジコンパートメントネット>(5万円)/マルチスポークスタイリング546アロイホイール(7万円)/電動パノラマガラスサンルーフ(15万円)/HiFiスピーカーシステム<205W、10スピーカー>(5万円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:1116km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:646.8km
使用燃料:39.3リッター(軽油)
参考燃費:16.4km/リッター(満タン法)/18.5km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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