スバル・レヴォーグGT-H EXプロトタイプ(4WD/CVT)/レヴォーグSTI Sport EXプロトタイプ(4WD/CVT)
スバルの全力投球 2020.09.18 試乗記 間もなく正式発売となる新型「スバル・レヴォーグ」のプロトタイプにサーキットで試乗。フルモデルチェンジによって進化したボディーやサスペンション、専用開発されたタイヤ、そして新しくなったパワートレインが織りなす“動的印象”を報告する。隅から隅まで新しい
正式発表まであと1カ月ほどになった新型レヴォーグ。今のところはまだプロトタイプながら、既に日本自動車研究所のテストコースで次世代アイサイトの実力を体験する試乗会が開催されており、今回はそれに続く「動的体感編」と銘打った試乗会である。
場所は動的体感というテーマにふさわしく袖ヶ浦フォレストレースウェイなのだが、実際には一周およそ2.4kmのサーキットを一台につき4周のみ。新型レヴォーグの「STI Sport EX」と「GT-H EX」グレード、および比較車として現行型「1.6 STI Sport」の3台で計12周だから、私たちも歯がゆいことこの上なしという状態で悶々(もんもん)としている。
何しろ6年ぶりの新型レヴォーグは、2代目にしてまるっきり生まれ変わったというぐらいに、エンジンもボディーも先進安全機構も一新されている。展示物や資料を見れば見るほど、エンジニアの話を聞けば聞くほど、これで出来栄えが良くないほうがおかしいというほどの内容充実ぶりである。細かい部分、あるいは見た目はあまり派手ではないところにも入念に配慮されているところがスバルらしい実直さといえるかもしれないが、それらをじっくり確認するのはもう少しお預け。今回は舞台限定、ダイナミック性能に的を絞ってのリポートである。
それにしても、採用すれば良い結果になると分かっているとはいえ、これほどいっぺんに中身を新しくして(コストは)大丈夫なのか? と要らぬ心配をしてしまうほど、新機構は盛りだくさんだ。例えば電動パワーステアリングシステムは従来型の1ピニオンから2ピニオン式に変更されている。
デュアルピニオンなど呼び方はさまざまだが、要するにステアリングホイールからの入力軸とモーターによるアシスト軸を独立してラック上に設けたタイプで、正確で過不足のないアシストが可能になる。プレミアムクラスでは普通だが、スバルでは初採用だという。つまりコスト増につながるために、良いことは分かっていても採用には二の足を踏むというやつだ。
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目立たぬ部分も手抜かりなし
ボディーももちろん新しい。初代レヴォーグではわずかの差で間に合わなかったSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)導入は当然として、ボディー骨格を組み上げてから外板パネルを最後に接合するフルインナーフレーム構造を採用(これも国内スバル車としては初めて)。さらには構造用接着剤を多用している上に、ルーフレール部分には1200MPa級の超高張力鋼板、Bピラー上部には同じく1500MPa級のホットスタンプ材を使用している。
従来は最高でも980MPaだったというから、ずいぶんと豪勢だ。ボディーの作り方を変更すると生産設備も一新しなければならないのだから、かなり思い切った決断といえるだろう。
前:ストラット/後ろ:ダブルウイッシュボーンのサスペンションの形式は踏襲しているが、前後ともにロングストローク化された上にマスオフセットの低減(前輪キングピン軸とホイールセンターの距離縮小)、ストラットトップマウントの改良など細部も抜かりなし。さらにSTI Sportには電子制御可変ダンパーを採用し、ドライブモードセレクト(コンフォートからインディビジュアルまで5種類)で3段階の設定を選択できるようになっている。
このような新機構は“飛ばした”場合にだけ光る限界性能の向上を目指したというより、実用上のクオリティーアップに効果が大きい部分を、漏れなく手当てしたものといえるだろう。
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ソリッドだが滑らかに走る
そこで貴重な4周を目いっぱい踏んで走るのではなく、同走車に迷惑がかからない範囲であえて1周は普通に流してみた。路面がスムーズなサーキットだから当たり前だが乗り心地は文句なし、というより判断は難しいが、なるほどステアリングフィールはリニアで正確だし、たとえ「スポーツプラス」モードでもサスペンションはスムーズに動く上に、姿勢変化は適切に抑えられているようだ。ちなみに新型レヴォーグは装着タイヤがヨコハマの「ブルーアースGT」に統一されていることも新しい。
レヴォーグ用の専用開発品だというこれは、ひとことで言えばアフターマーケット用よりもスポーティーだというが、それでも燃費にも配慮したいわゆるエコタイヤで、グリップ最優先ではない。
実際にコーナリングスピードはダンロップの「スポーツマックス」タイヤを履いた現行型1.6 STI Sportのほうが上回ると感じたほどだが、新型レヴォーグはコーナリング中にスロットルを緩めた際の挙動も穏やかで滑らかで、総じてバランスが取れている印象だった。ダイナミック性能と同時に快適性を重視していることがうかがえる。
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燃費はさておき扱いやすい
このところのスバルの大きな悩みは燃費、とりわけ実用燃費が伸びないことで、デビューから6年でまったくの新型エンジンを投入した理由もそこにある。これまでの最高出力170PS/4800-5600rpm、最大トルク250N・m/1800-4800rpmのFB型水平対向4気筒1.6リッター直噴ターボに代わる新型のCB型水平対向4気筒1.8リッター直噴ターボは、同177PS(130kW)/5200-5600rpmと同300N・m(30.6kgf・m)/1600-3600rpmを生み出すが、両者のスペックを見比べるとピークパワーが狙いではないことが分かる。
低回転低負荷ではリーン燃焼で燃費向上を図るこのエンジンのカットモデルを見ると、カウンターウェイトやジャーナルが見るからに薄く実際に前後長はおよそ40mm短縮できたという。空いたスペースにはリングモーターを押し込むのではないか、などと妄想することもできる。
また、300PSのFA20型2リッター直噴ターボモデルに代わる車種は当面不在となるが、そのうちに登場するだろう。
変速機は従来通りのリニアトロニックCVTだが8割が新設計というだけあって、全開時の加速感にはあまり違いは感じられなかったが、スロットルの半分あたりで踏んだり放したりという肝心の過渡領域では確かによりリニアに反応してくれているようで、扱いやすさは向上している。自分のペースで走れるサーキットでは健康的でスムーズに回り、気になるところはなかった。現実の路上でも洗練度大幅アップという結果になる、はずである。
(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
スバル・レヴォーグGT-H EXプロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1795×1500mm
ホイールベース:2670mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:177PS(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1600-3600rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:16.5km/リッター(JC08モード)/13.6km/リッター(WLTCモード) ※いずれも社内測定値
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:2199km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スバル・レヴォーグSTI Sport EXプロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1795×1500mm
ホイールベース:2670mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:177PS(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1600-3600rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:16.5km/リッター(JC08モード)/13.6km/リッター(WLTCモード) ※いずれも社内測定値
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1740km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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