アウディe-tron 50クワトロSライン(4WD)
控えめは美徳か 2021.03.29 試乗記 アウディの電気自動車(EV)ラインナップに正統派SUVスタイルの「e-tron 50クワトロ」が追加設定された。駆動用バッテリーの容量や動力性能は先に導入された「e-tronスポーツバック55クワトロ」よりも控えめになっているが、果たして実際の使い勝手はどうなのか。e-tronの選択肢が増えた!
EVのオーナーになってこのところ気にしているのが、充電ステーションの開設情報だ。特に急速充電施設のオープンはこまめにチェックしているのだが、2020年後半から2021年初めにかけては、アウディの正規ディーラーに急速充電器が続々と設置されているのが目立った。アウディは2020年9月に同ブランドとしては初となるEVの「e-tronスポーツバック」を導入し、それに合わせて充電施設の整備に力を入れているのだ。
日本のインポーターであるアウディ ジャパンにとって、2020年は「e-tron元年」になったが、2021年はその選択肢が一気に拡大する。前述のe-tronスポーツバックに続いて、2021年1月に追加されたのがSUVスタイルのe-tronである。
第1弾の「e-tronスポーツバック55クワトロ1stエディション」は、「e-tronスポーツバック55クワトロ」がベースの導入記念仕様という位置づけだったのに対し、今回のe-tron 50クワトロは、よりSUVらしいデザインを採用するとともに、バッテリー搭載量を少なくすることで価格を抑えたエントリーモデルである。これと同時に同じバッテリー容量の「e-tronスポーツバック50クワトロ」もラインナップに加わり、スタート価格が1000万円を切る933万円からとなったのは、購入を検討している人にとっては朗報だろう。
バッテリー容量を95kWhから71kWhに減少
EVでは、搭載する大容量バッテリーのコストが車両価格を押し上げている。それだけに、車両価格を下げる手っ取り早い方法は、バッテリーの量を減らすことだ。e-tronの場合、55クワトロが36個のバッテリーモジュールで95kWhの容量を確保するのに対し、50クワトロはバッテリーモジュールを27個に減らし、容量を71kWhとすることで価格を抑えている。
バッテリーを減らしたことにともない、モーターの最高出力が低下。55クワトロでは前後2基のモーターが計300kW(408PS)の最高出力を発生するのに対し、50クワトロでは70kW減の230kW(313PS)に。さらに、一充電走行距離も405kmから316kmへと減少(ともにWLTCモード)。一方、バッテリー重量が約120kg減少して車両重量が軽くなり、モーターの出力が控えめになったおかげで、電力量消費率(電費)が245Wh/kmから237Wh/kmへと向上。これらがe-tron 50クワトロの走りにどう影響しているのか、興味津々である。
そして、SUVスタイルのe-tronとSUVクーペのe-tronスポーツバックのパッケージングの違いも気になるところだ。というわけで、走りだす前に、まずは後席とラゲッジスペースをチェックしてみることにした。
室内の広さはほぼ互角
e-tron 50クワトロのテールゲートを開けると、このクラスのSUVとしては十分なスペースが広がっている。後席を立てた状態では、奥行きが約115cm、幅は約105cmで、e-tronスポーツバックとはほぼ同じサイズだ。トノカバーまでの高さも約47cmと同じで、この状態では両者の荷室はほぼ互角の広さということになる。
一方、カタログ値はe-tronスポーツバックの616リッターに対して、e-tronは44リッター広い660リッターを確保しており、ボディー後端の形状の違いがこの差を生んでいる。後席を倒したときの荷室の容量は、1665リッターと1725リッターで、その差は60リッター。見た目から想像するほど大きな違いがないといえる。後席のスペースはSUVタイプのe-tronのほうがヘッドルーム、ニールームともにさらに余裕があるが、e-tronスポーツバックでも大人が座っても十分な広さが確保されており、デザインの好みで選べる2台ということになる。
運転席に移ると、このe-tron 50クワトロはe-tronスポーツバックに比べて多少アイポイントが高く、そのぶん視界が開けているのがうれしいところだ。視界といえば、この試乗車にはオプションのバーチャルエクステリアミラーが装着されており、OLEDディスプレイに映し出される映像は想像以上に鮮明だが、ドアミラーに比べると低い位置にあるため、慣れるまでには時間を要した。
オススメは55クワトロ
たいぶ前置きが長くなったが、早速e-tron 50クワトロを走らせると、期待どおりスムーズかつ静かに加速するさまは、アウディに抱く上質な走りのイメージそのものだった。アダプティブエアサスペンションが標準装着されるだけに、乗り心地も実に快適で、街なかから高速道路までフラットな挙動が保たれるのもさすがである。
一方、以前に試乗したe-tronスポーツバック55クワトロに比べて約140kg軽いe-tron 50クワトロだが、その重量差ほどは軽快さが感じられず、むしろ重たく思えるのは、モーターの出力が抑えられ、加速が控えめになってしまったからだろう。特に動き始めはおとなしい印象で、力強い加速が自慢のEVとしては、やや物足りなく感じたのも事実である。
性能と価格のバランスを考えるとe-tron 50クワトロは魅力的な選択肢といえるが、より素早い加速や余裕ある航続距離などを楽しみたければ、エクストラのコストを払ってでも55クワトロを選ぶことをオススメする。といっても、現時点ではカタログモデルの「e-tron 55クワトロ」や「e-tronスポーツバック55クワトロ」は用意されていないが、そう遠くない将来、ラインナップに加わることが予想されるから、55クワトロ狙いの人はしばしお待ちを。
(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
アウディe-tron 50クワトロSライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4900×1935×1630mm
ホイールベース:2930mm
車重:2420kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:非同期モーター
リアモーター:非同期モーター
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:313PS(230kW)
システム最大トルク:540N・m(55.1kgf・m)
タイヤ:(前)265/45R21 108H XL/(後)265/45R21 108H XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電最大走行可能距離:316km(WLTCモード)
交流電力量消費率:237Wh/km(WLTPモード)
価格:1108万円/テスト車=1205万円
オプション装備:インテリアパッケージ<エクステンデッドアルミニウムコントロールパネル+4ゾーンオートマチックデラックスエアコンディショナー+エアクオリティーパッケージ>(23万円)/アルミホイール<15スポークデザインコントラストグレー9.5J×21 265/45R21>(15万円)/バーチャルエクステリアミラー(26万円)/サイレンスパッケージ<プライバシーガラス+アコースティックガラス+Bang & Olufsen 3Dサウンドシステム+パワークロージングドア>(33万円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2292km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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