ジャガーFペースR-Dynamic SE D200(4WD/8AT)
これでペースが上がるはず 2021.06.28 試乗記 2021年モデルの「ジャガーFペース」には、新たにマイルドハイブリッド付きの2リッターディーゼルターボモデルが設定されている。乗ってみるとこれがなかなか……というよりも、予想を大きく上回る出来栄えに、思わず笑みがこぼれた。ジャガーの稼ぎ頭
Fペースという名前を初めて目にした時には、なるほどうまい、と感心したものだ。大昔のジャガーは、それこそ「XK」の時代から「Grace, Space & Pace」というキャッチコピーというか、ブランドタグラインのようなフレーズを打ち出していたからだ。優雅で広く、高性能とはまさしくジャガーである。
ジャガー初のSUVとして2016年に発売されたのがFペースである。“ペース”シリーズの最初のモデルであり、現在のジャガーの稼ぎ頭でもある。とはいえ、ジャガーの販売成績は今ひとつ振るわない。昨2020年のジャガー&ランドローバーの国内販売台数はおよそ5400台、そのうちジャガーは1500台足らずと前年比でほぼ半減した(世界販売台数は数年前は60万台を超えたものの昨年は42.5万台、うちジャガーは10万台ちょっと)。コロナ禍で生産・販売が思うようにいかなかったのは言うまでもないが、それでも同門のランドローバーに比べると少々寂しい数字である。乗ればその素晴らしさにハッとさせられるほどの実力を持ち合わせているのに、なぜかあまり注目されていない“惜しいクルマ”は少なくないが、ジャガーのなかでは一番の稼ぎ頭とはいえFペースもその一台といえるだろう。
そのFペースが2021年モデルとして新しくなった。という風に聞いていたが、その中身をあらためて確認してびっくり。前後ライトまわりなどコスメティクスを変えただけのフェイスリフトではなく、デジタル系のアップデートやマイルドハイブリッドシステム搭載など、どう見てもれっきとした、しかも大がかりなマイナーチェンジである。
はっきり静かになった
Fペースは(というより近年のジャガーはすべて)実力派である。スタイル重視の流麗なSUVのように見えて、実は室内スペースなどの実用面にも抜かりがないのがFペースである。カッコいいSUVのなかにはウエストラインから上のグリーンハウスを絞ったせいで、乗員の肩や頭部まわりが窮屈になってしまう例もあるが、Fペースの場合は前席はもちろん、後席も広々としており狭い場所に押し込められている感覚はない。リアシートの着座姿勢もアップライトで、ヘッドルームも十分。荷室の形状もスクエアで容量も大きい。スマートな外観からはちょっと意外なほど、“使える”スペースを持つSUVだった。
ただし、ダッシュボードまわりやインテリアの仕立てはやや大味でビジネスライクであり、ジャガーに期待される粋な雰囲気ではないことが弱点とされてきただけに、今回はそこに手を打ってある。目立つのは新採用の湾曲した11.4インチのセンターディスプレイと、従来はポップアップするダイヤル式だったATセレクターが一般的なレバー式に変更されたことだが(ドライブモード切り替えは反対にダイヤル操作式に変更)、それよりも従来型に比べて室内トリムが上質になり、全体的な内装クオリティーが向上していることがうれしい(ただしこの試乗車はオプション満載だった)。しかも、ディーゼルとしては、という注釈が要らないほど静かである。
もともとジャガーの2リッター“インジニウム”ディーゼルターボはたくましくて強かったものの、いっぽうで静粛性や滑らかさといった洗練度はプレミアムブランドとしてはもう一歩の印象があったが、新しいパワートレインは明らかに静かになった。ドアケーシングなども変更されたというが、アクティブロードノイズキャンセラー(オプションのMERIDIANサウンドシステムに含まれる)も効果を発揮しているものと思われる。今やジャガーのディーゼルモデルのなかでも一番洗練されているといえるだろう。
ディーゼル+マイルドハイブリッド
2リッター直4“インジニウム”ディーゼルターボの基本は従来通りながら、新型は最高出力204PS/3750-4000rpmと最大トルク430N・m/1750-2500rpmにパワーアップ(従来型は180PS/4000rpmで最大トルクは同一)したうえに、48V電源のベルト駆動スターター・ジェネレーターを備えたマイルドハイブリッド仕様となった。出力向上に伴いモデル名の数字も「D200」になっている。ターボエンジンの弱点である動き出しの鈍さをカバーできる電動モーターと組み合わせたおかげで、静かに走りだす際のピックアップもより滑らかで軽快である。ひとつ不思議なのは「エコ」モードを選んでいても、スロットルペダルを戻した場合にコースティングしないことだ。あらかじめ何らかの機能設定が必要なのかは定かではないが、そこまで躍起になって燃費を稼ぐタイプではないのかもしれない。もちろん、従来型よりも高い速度から(完全停止する前に)アイドリングストップするし、再始動のショックも小さくなっているようだ。
ボディーの80%にアルミを使用した軽量ハイブリッド構造とはいえ、全長4.7mを超えるフルタイム4WDのディーゼルモデル、しかもマイルドハイブリッドだから、車重は2tにも達するが、たくましいトルクは、ほとんどその重さを意識させることはなく、洗練された8段ATを生かして滑るように走る。
ジャガーの十八番
走る性能や乗り心地、いわゆるダイナミックな能力については、オールアルミ構造に生まれ変わった先代の「XJ」以降、ジャガー各車はずっと高評価を得ており、私もまったく同意見である。少なくとも、「XE」や「XF」など縦置き後輪駆動プラットフォームを採用したモデルは、適切に俊敏で自然な挙動を備えている。Fペースも前後重量配分はほぼ50:50で、重く背が高いSUVらしからぬ軽快さを感じさせる。切れ味鋭く、だが薄っぺらではなくタフさも感じさせるところが大人向けである。フリクション感のない、極めてスムーズでしなやか、かつフラットな乗り心地はジャガーに共通するものだ。「アダプティブダイナミクス」と呼ばれる電子制御連続可変ダンパー(「ダイナミックハンドリングパック」に含まれるオプション)の適切な制御は、ジャガーが以前から十八番とするところである。
意外な収穫といっては気を悪くするかもしれないが、新しいFペースはジャガーびいきの私の期待をさらに上回る出来栄えだった。こんなに素晴らしいモデルが発売されたばかりなのに、本当にあと4年ほどでEV専業ブランドになってしまうのだろうか。誠に惜しい限りである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ジャガーFペースR-Dynamic SE D200
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1935×1655mm
ホイールベース:2875mm
車重:2030kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:204PS(150kW)/3750-4000rpm
最大トルク:430N・m(43.9kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)255/50R20 109W/(後)255/50R20 109W(ピレリPゼロ)
燃費:14.3km/リッター(WLTCモード)
価格:810万円/テスト車=1087万3000円
オプション装備:ボディーカラー<シャラントグレイ>(13万3000円)/シエナタンパーフォレイテッドグレインレザースポーツシート<エボニー×シエナタンインテリア>(0円)/コンビニエンスパック(5万8000円)/プレミアムアップグレードインテリアパック(53万円)/ロードスペースプラクティカリティーパック(6万4000円)/4ゾーンクライメートコントロール(13万3000円)/空気イオン化テクノロジー<PM2.5フィルター付き>(1万9000円)/MERIDIANサウンドシステム(14万9000円)/ワイヤレスデバイスチャージング(2万8000円)/ヒーター付きステアリングホイール(4万1000円)/ブラックエクステリアパック(7万7000円)/ヘッドアップディスプレイ(7万7000円)/ヒーター付きウインドスクリーン(5万3000円)/固定式パノラミックルーフ(23万2000円)/プライバシーガラス(8万1000円)/ルーフレール<グロスブラック>(5万1000円)/フロントフォグランプ(3万4000円)/ピクセルLEDヘッドライト<シグネチャーDRL付き>(29万9000円)/パークアシスト(3万5000円)/ジャガードライブコントロール<アダプティブサーフェスレスポンス>(3万1000円)/ダイナミックハンドリングパック(12万6000円)/パワージェスチャールーフブラインド(1万6000円)/40:20:40分割可倒式リアシート<ヒーター&電動リクライニング&センターアームレスト付き>(18万円)/16ウェイ電動フロントシート<ヒーター&ベンチレーション&運転席・助手席メモリー&2ウェイマニュアルヘッドレスト&マッサージ機能付き>(32万6000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2109km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:351.1km
使用燃料:31.1リッター(軽油)
参考燃費:11.3km/リッター(満タン法)/11.0km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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