【F1 2021】イタリアGP続報:2度目の接触、3年ぶりの勝利、11年ぶりの1-2
2021.09.13 自動車ニュース![]() |
2021年9月12日、イタリアのアウトドローモ・ナツィオナーレ・モンツァで行われたF1世界選手権第14戦イタリアGP。イギリスGPに次ぐ2回目の「スプリント予選」開催となった今回、チャンピオンシップで激戦を繰り広げる2人が再び接触。後味が悪くなりかけたレースを救ったのは、底抜けに明るいパパイヤオレンジのチームだった。
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ラッセル、来季いよいよメルセデスへ
イタリアGPを前に、これまで公然の秘密とされてきた、メルセデスの来季のドライバーラインナップがようやく発表された。ルイス・ハミルトンのチームメイトになるのは、ジョージ・ラッセル。今季3シーズン目のウィリアムズでベルギーGP 2位表彰台を獲得、予選でもQ3進出を度々記録するなど成長著しい若手実力派が、晴れてチャンピオンチームの一員となることが明らかになった。一方、2017年以来5年間をシルバーアローで戦ってきたバルテリ・ボッタスは、キミ・ライコネンの引退で空きができたアルファ・ロメオに複数年契約で移籍することとなった。
ラッセルが離脱するウィリアムズでは、元レッドブルのアレクサンダー・アルボンがF1復帰を果たし、残留を決めたニコラス・ラティフィとタッグを組むことに。またアルファタウリも、来年もピエール・ガスリーと角田裕毅のペアで戦うこととした。
こうして2022年のシートが埋まっていくなか、F1はイギリスGPに続き2度目の「スプリント予選」を迎えた。まずは金曜日夕方の、スプリント予選のスタート順を決める予選でトップを取ったのはボッタス。ハミルトンが僅差で2位につけ、「スピードの殿堂」といわれる超高速モンツァでメルセデスが韋駄天(いだてん)のごとき速さを見せつけた。レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、トップに0.411秒離されての3位。マクラーレンはランド・ノリス4位、ダニエル・リカルド5位と、スピード勝負ではほぼレッドブルと互角だった。
昨年同GPの覇者、アルファタウリのピエール・ガスリーが6位、地元ファンの声援を受けたフェラーリ勢は、カルロス・サインツJr.7位、シャルル・ルクレールは8位だった。チームメイトにトー(スリップストリーム)を与えるという大役をこなしたレッドブルのセルジオ・ペレスは9位、アルファ・ロメオをけん引するイタリアン、アントニオ・ジョビナッツィは10位。アルファタウリの角田裕毅は、Q2進出のタイムをトラックリミット違反で消され、惜しくも17位だった。
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2回目の「スプリント予選」をボッタスが制するも……
レースの3分の1、100kmで争われるスプリント予選は、5.7kmのモンツァを18周して行われた。スタートでトップを守ったボッタスに対し、2位ハミルトンはクラッチ操作を誤り大きく出遅れ5位。2番手にはフェルスタッペンが上がり、3位リカルド、4位ノリスと続いた。その後方では、マクラーレンに軽く追突したガスリーがフロントウイングを落としクラッシュ、セーフティーカーが出動。角田は、キミ・ライコネンの代役、ロバート・クビサのアルファ・ロメオと接触したことでピットインし、結果16位に終わった。
4周目、今度は混乱なく再開。ハミルトンはストレートでDRSを効かせながらも、同じパワーユニットのマクラーレンはストレートで速く予想外の苦戦を強いられ、結局5位でチェッカードフラッグを受けた。
一方、快調に周回を重ねた首位ボッタスは、2.3秒後方にフェルスタッペンを従えて堂々のゴール、チャンピオンシップポイント3点を獲得した。しかし、すでにパワーユニット交換による降格ペナルティーが決まっていたため、第3戦ポルトガルGP以来となる今季2回目のポールポジションとはならず、2位で2点を手にれたフェルスタッペンがポールシッターに。3位フィニッシュで1点プラスのリカルドが2番グリッド、ノリス3番グリッド、ハミルトンはポイント追加ならず4番グリッドから挽回を目指すことになった。
その後ろには、フェラーリがルクレール、サインツJr.の順で並び、続いてジョビナッツィ、ペレス、アストンマーティンのランス・ストロール、そしてアルピーヌのフェルナンド・アロンソというのがトップ10グリッドの陣容となった。
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スタートでリカルドがトップに
スプリント予選により全車タイヤ選択は自由。大勢がミディアムを選んだのに対し、メルセデス勢は長いスティントも可能なハードを装着し、レースでの劣勢をはね返そうとしていた。
53周レースのスタートでは、気合十分、抜群の加速でリカルドがトップ奪取に成功。2位フェルスタッペン、3位にはハミルトンが上がったものの、第2シケインでフェルスタッペンに並びかけた直後に2台は軽く接触、コースを外れたハミルトンはノリスに抜かれ4位に戻った。その後ろでは、好スタートを決めたジョビナッツィが一瞬コースを外れサインツJr.と接触、スピンし、バーチャルセーフティーカーが出されるもすぐにレースは再開した。
思わぬ伏兵、リカルドに前を取られた2位フェルスタッペンは、1秒以下の僅差で迫るもオーバーテイクできるほどは近づけない。このことは4位ハミルトンも同じで、3位ノリスを追い抜くまでには至らなかった。一方、19番グリッドスタートのボッタスは、10周を過ぎて10位まで挽回してきていた。
順位が膠着(こうちゃく)するなか、23周目からレースが動く。首位リカルドがピットインし、ミディアムからハードに交換。フェルスタッペンも次の周にピットに入ったのだが、タイヤ交換作業に手間取り11秒もの時間がかかってしまった。その間、ハミルトンがノリスを抜き暫定トップへ。25周目にはノリスもハードタイヤに交換した。
“事件”が起きたのは、26周目にタイヤを交換したハミルトンのピットアウト直後だった。
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フェルスタッペンとハミルトン、2度目の接触
ハミルトンがコースに戻ると、その真後ろにはピット作業で遅れたフェルスタッペンがつけていた。モンツァのターン1は右、そしてすぐさま左と切り返すシケイン。最初の右ターンではハミルトンがインから前を取るも、次の左ターンに向けては逆にフェルスタッペンがインになる。アウトからかぶせるハミルトンに、半ば強引に割り込もうとするフェルスタッペン。レッドブルは行き場を失い縁石に乗り上げ、リアタイヤからメルセデスのマシンの上に乗っかるかっこうで2台は接触しコース外で止まった。低速でのコンタクトだったが、ハミルトンの頭上にタイヤが覆(おお)いかぶさり、頭部を守る「ヘイロー」がなければ危険な状態だった。
「左ターンに向けて、ハミルトンがどんどん寄せてきたんだ」とフェルスタッペンが言えば、「フェルスタッペンは、コーナーを曲がり切れないことを分かっていたはずだ」とするハミルトン。最初のスプリント予選が行われたイギリスGPでも接触し物議を醸した2人だったが、今回も両者の意見は平行線をたどった。レース後、両ドライバーへの聴取を行ったスチュワードは、フェルスタッペンに非があったとし、次戦ロシアGPで3グリッド降格ペナルティーを科すことを決めた。
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マクラーレン、170レースぶりの優勝を1-2で飾る
この接触でセーフティーカーが出動し、タイヤ未交換のドライバーがピットへ。隊列が整うと、1位リカルド、2位ルクレール、3位ノリス、4位ペレス、5位サインツJr.、6位ボッタスというオーダーで、31周目にレースは再開した。ルクレールは2位をキープできず、程なくしてノリス、ペレス、そしてサインツJr.をかわしたボッタスにも抜かれ5位。だがペレスは、ルクレールをオーバーテイクした際にコースをショートカットしたことで5秒加算ペナルティーを受け、3位でゴールするも5位に降格となった。
1位リカルド、2位ノリスでまさかの1-2となったマクラーレンは、後続を従えて安定した速さで残り周回をこなし、真っ先にチェッカードフラッグをくぐり抜けた。3位は、最後尾から見事にリカバリーしたボッタスだった。
レッドブル時代に記録した7勝に、マクラーレンでの1勝を加えることができたリカルド。「スタートからフィニッシュまでリードできるなんて、誰も予想なんかしてなかった。優勝、しかも1-2なんて、ちょっとおかしすぎるよ!」とはち切れんばかりの笑顔で答えていた。自身最高の2位となったノリスも、無線で雄たけびをあげ、チームの1-2を心底喜んでいた。
マクラーレンの優勝は2012年以来、170レースぶりのこと。1-2フィニッシュとなれば11年も前にさかのぼることになる。この間、元代表ロン・デニスが築いた“帝国”は、ザック・ブラウンCEO、アンドレアス・ザイドル代表といった新たな首脳陣により変革を遂げ、パパイヤオレンジのマシンカラーと同じように、明るく、前向きなチームへと生まれ変わった。
脱ぎたてのシューズにシャンパンを注いで飲む「シューイ」を、3年ぶりに披露したリカルド。もしデニスがボスだったら、絶対に見られなかったであろう光景である。
シーズン後半スタートの3連戦を乗り切ったF1サーカスは、第15戦ロシアGPへと向かう。決勝は9月26日に行われる。
(文=bg)