トヨタ・ランドクルーザーGRスポーツ ガソリン(4WD/10AT)/ランドクルーザーGRスポーツ ディーゼル(4WD/10AT)/ランドクルーザーAXガソリン(4WD/10AT)/ランドクルーザーVX ガソリン(4WD/10AT)/ランドクルーザーZX ディーゼル(4WD/10AT)
本物を選ぶということ 2021.10.26 試乗記 14年ぶりのフルモデルチェンジを経て登場した新型「トヨタ・ランドクルーザー」で、本格的なオフロードコースに挑戦。従来モデルからすべてが刷新された300系の悪路走破性能は、ドライバーが空恐ろしさすら覚えるほどの高みに達していた。納車待ちは2年以上に
いま300系ランドクルーザーのサイトをのぞくと、まず現れる情報が「納車目途に関するご案内」だ。前回(2021年9月上旬)の取材時点では「1年以上」とアナウンスされていたが、現時点では「2年以上」ということになっている。ちまたの報道ではやれ3年だ5年だとサスケの主題歌のようにバックオーダーの数字をあおり合っていたが、そこまでとは言わずともまぁまぁな感じになっちゃってることはトヨタも認めざるを得ない。それほど引く手あまたということだろう。
折しも、世界的な半導体不足や各国のロックダウンによる部品供給の滞りなどで、業界全体が調達面で課題を抱えている最中である。中東・豪州・ロシアという、ランクルにとっての3大マーケットの供給を支えながら、過熱する日本での受注をさばくのは容易なことではないだろう。ユーザー側にとっても、“納期が2年以上”ということは車検による代替に応えてもらえない可能性もあるわけだが、ランクルはホイホイとモデルチェンジを重ねるクルマでもないので、ここはもうじっと我慢するしかない。
……と、前回の市街地試乗でも同じことを思ったわけだが、いよいよ悪路試乗の機会を得て、今回はかなり真面目に自分ごととしてそれを考えさせられた。そもそも、ランクルという銘柄自体に憧れは抱いていたが、悪路を経験してみると、その総合能力やコスパはいよいよ唯一無二かと、“ジムニー推し”の僕でさえそう思ってしまう。
すでに完成されていたディメンション
ネジ一本のレベルまで完全に刷新された新型ランドクルーザーは、それでもラダーフレームに前がダブルウイッシュボーン、後ろが車軸式トレーリングリンクのコイルサス……と、構造は前型を継承している。言うまでもなく、悪路走破性や堅牢(けんろう)さを優先してのことだ。ライバルが軒並み快適性を考慮してモノコック化や四輪独立化に向かうなか、同じ形式を採るモデルは「メルセデス・ベンツGクラス」くらいになってしまった。
加えて言えば、新型ランドクルーザーは車格だけでなく、アプローチやデパーチャーなどの“3アングル”も含めた寸法構成も、前型にほぼ準じたところにある。フレームまで新規の案件だというのに外寸の変化がほぼなかった背景には、世界の顧客がそれを望んでいないという事情もあるのだろう。このクルマをライフラインやビジネスパートナーとして使う本気組にとって、いたずらなサイズアップは狭所の走行に影響を及ぼすこともある。
それに関連する話として、ホイールベースは“80系”以来の2850mmが踏襲された。ゆえに、後ろ2列の居住性に革新的な進化はない。世界中の悪環境を走りに走った揚げ句にたどり着いたその黄金比を、エマージェンシー用のささいなレッグスペースのために変えるつもりなどみじんもないというかたくなさが伝わってくる。が、3列目シートの格納を左右跳ね上げ式からダイブダウン式に変更するなど、映える進化をしっかりさせているあたりが、なんともトヨタだ。
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悪路を乗り切るための装備と機能
今回の試乗は愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」で行われた。4WDであればミニバンでも走れるフラットなコースから、30°近い勾配も採れる地形を生かした本格的なクロスカントリーコースまで用意され、幅広いオフロード走行体験ができるスポットだ。
供された車両はガソリンとディーゼルの「GRスポーツ」、そしてガソリンの「AX」と「VX」……という顔ぶれだった。ベースモデルのポテンシャルを体感したうえで、悪路性能にフォーカスしたGRスポーツの優位性を知ってもらおうという狙いだったのだろう。そして結果的には、その思惑にまんまと乗っかってしまうことになる。
新型ランドクルーザーのドライブトレインは、前:後=40:60を基本とするフルタイム4WDをベースに、標準グレード系ではオプションでリアに電動デフロック機能付きLSDを、GRスポーツでは標準で前後に電動デフロック付きLSDを配している。駆動制御モードを設定する「マルチテレインセレクト」は、H4モードで「AUTO」「DIRT」「SAND」「MUD」「DEEP SNOW」、副変速機を介してのL4モードでは「AUTO」「SAND」「MUD」「ROCK」が選択できる。
これに組み合わされるのが、極低速域の駆動力を均等に保持するクロールコントロールだ。L4モードのみで作動するそれは、微妙なアクセルやブレーキの操作をクルマがこなしてくれるというもので、難所の走破やスタックからの脱出などに威力を発揮する。速度は1~5km/hの範囲で、5段階で設定することが可能だ。もちろん、H4モードではヒルホールド&ダウンヒルホールドによるアシスト機能も継承されている。
加えてGRスポーツのみの装備として採用されたのが「E-KDSS」だ。これは前2つ、後ろ1つの油圧シリンダーを介して、前後のスタビライザーを独立して電子制御するもので、オンロードでの走行安定性を確保しながら、悪路走破時にはスタビライザー効果をカットしてストロークを伸ばし、接地性を高めてくれる。油圧式による応答速度のネガはまったくなく、参戦する車両の更新に合わせて、ダカールラリーでも実戦投入される予定だという。
標準グレードでも“十分以上”だが……
試乗当日の天候はほぼ雨。走破性確認にはおあつらえ向きだが、この巨体にオールテレインタイヤではさすがにキツイのでは……。などと思いつつ走り出してまず感じたのは、最大で200kgにも及ぶという減量の効果だ。細幅化されたタイヤも相まってだろう、身のこなしが歴然と軽い。それだけではなく、すこぶる滑らかで洗練されている。比べると前型はやはり“重機”寄りのゴツゴツした重厚感が手肌に伝わっていたのを思い出す。まあ、そこは乗り手の好みの問題もあるし、一概によしあしの話にはできない。が、新型が明らかに進化していることは確かだ。
標準グレード系のVXとAXでは、両車の差は操舵フィードバックや制動のリアクションに表れる。VX以上のグレードではいずれも電子制御化された恩恵もあって、作動の反応が穏やかでドライバーのみならずパッセンジャーにも優しい。さりとてこの点についても、よりプリミティブなダイレクト感を好むドライバーもいることだろう。いずれにせよ、基本的な走破力の高さと悪路でさえ快適な乗り心地に大きな差はない。そう考えると、GXやAXのプライシングはいよいよ破格にみえてくる。
と、そんな感想を抱きつつGRスポーツに乗ると、標準グレード系とは快適性の次元が異なることに驚かされた。言わずもがなE-KDSSの効果は大きく、モーグルセクションでは眼前の大きなコブがならされたかのごとくロールやピッチが激減する。ロックセクションではタイヤが凹凸にねっとり絡みつくようにストロークしていることが伝わってきた。上屋の動きが抑えられていれば、ペダルやステアリングワークがあおられることもない。つまり操作ミスが減るわけで、そのぶん進路の情報収集にも集中できるということだ。
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畏怖の念すら抱かせる
雨天の走行により、セクションによっては時を経るにつれ路面が部分的に掘られていくなど劣悪なコンディションになっていったが、それにもかかわらず、新型ランドクルーザーは一度もスタックすることなく、激しいコースを幾度も走り抜けた。特にGRスポーツの側は、マルチテレインセレクトの操作さえ必要なく、L4モードにクロールコントロールの組み合わせで、ズルズルの岩場だろうがヌルヌルの沢登りだろうが、這(は)うように進んでいく。ドライバーがやることといえばステアリング操作のみ。その遂行力は、どこまでも追ってくるターミネーターのような薄ら怖ささえ覚えるほどだった。
1mmもブレることなくプロスペックのヘビーデューティーを提供し続ける“70系ランクル”に対し、“55型”由来のランドクルーザーは、「生きて帰還する」という同じミッションをどこまで楽に平然とクリアできるかというベクトルで、半世紀以上にわたって進化を重ねてきた。エアサスに頼らず信頼性の高いコイルばねでどうやってストロークを稼ぎ足を追従させるかという課題に、E-KDSSは新たなスタンダードを示したといえるだろう。
現状はGRスポーツのみの装備だが、バックオーダーが落ち着くころには標準グレードの側にも、ディーゼルの設定拡大とともにE-KDSSのオプションが加わるといいなぁと、一人ほくそ笑んでしまう。そうまでして走らなければならないタスクは見当たらないが、日本でランクルに乗る意味とは余力に身を委ねる安心感にあるわけだから、こういう装備はあるに越したことはないだろう。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
トヨタ・ランドクルーザーGRスポーツ ガソリン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1990×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2520kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:415PS(305kW)/5200rpm
最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:7.9km/リッター(WLTCモード)
価格:770万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:353km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・ランドクルーザーGRスポーツ ディーゼル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1990×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2560kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:309PS(227kW)/4000rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1600-2600rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:9.7km/リッター(WLTCモード)
価格:800万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1480km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・ランドクルーザーAX ガソリン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1980×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2430kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:415PS(305kW)/5200rpm
最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:8.0km/リッター(WLTCモード)
価格:550万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1243km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・ランドクルーザーVX ガソリン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1980×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2440kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:415PS(305kW)/5200rpm
最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:7.9km/リッター(WLTCモード)
価格:630万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:200km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・ランドクルーザーZX ディーゼル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4985×1980×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2600kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.3リッターV6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:10段AT
最高出力:309PS(227kW)/4000rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1600-2600rpm
タイヤ:(前)265/55R20 109V M+S/(後)265/55R20 109V M+S(ダンロップ・グラントレックPT5A)
燃費:9.7km/リッター(WLTCモード)
価格:760万円/テスト車=864万5550円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスホワイトパール>(5万5000円)/タイヤ空気圧警報システム<TPWS>(2万2000円)/ITS Connect(2万7500円)/マルチテレインモニター+T-Connectナビゲーションシステム<12.3インチディスプレイ[トヨタマルチオペレーションタッチ]+FM多重VICS[VICS WIDE対応]+オーディオ[Blue-ray、DVD、CD、microSD、AM/FM(ワイドFM対応)、サラウンドライブラリー、USB入力端子、地上デジタルTV]+スマートフォン連携[SDL(Smart Device Link)、Apple CarPlay、Android Auto対応]+T-Connect[ヘルプネット、eケア、マイカーサーチ]+ETC 2.0ユニット[VICS対応]+Bluetooth対応[ハンズフリー・オーディオ]+音声認証、Miracast対応、Wi-Fi対応>+JBLプレミアムサウンドシステム<14スピーカー/JBL専用12chアンプ>(45万7600円)/クールボックス(7万1500円)/ルーフレール<ブラック>(3万3000円)/リアエンターテインメントシステム<後席11.6インチFHDディスプレ×2+HDIM端子>(17万4900円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ+カメラ洗浄機能+ウインドシールドデアイサー+PTC[補助]ヒーター他>(3万1900円)/ヒッチメンバー(7万7000円) ※以下、販売店オプション カメラ一体型ドライブレコーダー(2万1450円)/フロアマット<エクセレントタイプ>(5万8300円)/ラゲッジマット(1万5400円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2955km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(10)/高速道路(0)/山岳路(0)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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