【F1 2021】サンパウロGP続報:予選失格に降格、それでも諦めなかったハミルトンの大逆転劇
2021.11.15 自動車ニュース 拡大 |
2021年11月14日(現地時間)、ブラジルはサンパウロにあるアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェで行われたF1世界選手権第19戦サンパウロGP。パワーユニット交換による降格ペナルティー、そしてリアウイングの規定違反による予選失格。逆境に立ち向かったルイス・ハミルトンが、見事な逆転劇を披露した。
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時間がない
今年最後の3連戦はひときわ慌ただしい。前戦メキシコシティGPを終え、すぐにでもブラジルはサンパウロへの大移動を始めなければならないのに天候不良で飛行機が飛ばず、機材到着が遅れてしまう事態となった。FIA(国際自動車連盟)も特別に労働時間制限を撤廃し、メカニックらは大急ぎで準備にあたった。
さらに、今年3度目にして最後のスプリント予選が組まれていたのだから現場は多忙を極めた。金曜日の1回、1時間だけのプラクティスでセッティングを決め、その直後に予選、そして翌日にはプラクティスを挟んでのスプリント予選、日曜日にレースと、とにかく時間がないなかでの戦いを強いられた。
時間がなくなってきたといえば、残り4戦でマックス・フェルスタッペンに19点差をつけられていたルイス・ハミルトンだ。最後に勝った第15戦ロシアGPから、トルコGPでパワーユニット交換を受け5位、直近のアメリカ、メキシコの2戦ではフェルスタッペンに次ぐ2位と負け越していた。十分に逆転可能な点差ではあっても、衰え知らずのレッドブルを相手にするとなれば、ブラジルでの優勝は必須といえた。
しかし、メルセデスはハミルトンに5基目のICE(V6エンジン)を投入することとし、スプリント予選の結果から5グリッド降格することが決定。加えてハミルトンは金曜日の予選で大差をつけトップを奪うも、メルセデスの「DRS」に違反が見つかり予選失格、最後尾から100kmのスプリント予選に向かわなければならなくなってしまった。
一方、これで1番手からスプリントをスタートすることになったフェルスタッペンも、予選後にマシンを保管するパルクフェルメ内で不用意にハミルトンのマシンを触ってしまったことでスチュワードに呼び出された。こちらは5万ユーロ(約650万円)と、高額だが勝負には関係ない罰金で済んだのは幸いだった。
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スプリント予選でボッタスがポール ハミルトン怒涛の追い上げで5位
ブラジルGP改めサンパウロGPも、レース前からタイトルを争う2人がコース内外で話題をさらったが、そのおかげもあってスプリント予選は白熱した。
土曜日の午後、24周の短期決戦を制したのは、2番手スタートのバルテリ・ボッタス。蹴り出しのいいソフトタイヤに賭けたメルセデスは、ターン1でトップを奪い、ミディアムタイヤ勢を見事押さえきった。ボッタスにとっては、イタリアGPに次ぐ2度目のスプリント予選でのポールとなり、この時点でポイントに3点を追加した。
2位はレッドブルのフェルスタッペン。長持ちのミディアムで出走するも、ギアがうまくシフトできず先頭から2位、さらにはソフトでジャンプアップしたフェラーリのカルロス・サインツJr.にも抜かれて3位に落ちた。4周目にサインツJr.をオーバーテイクしボッタスを追ったが、2位2点どまりだった。またサインツJr.は、5番手から3位1点を手に入れた。
最後尾20番手スタートのハミルトンは、この日の主役だった。1周目に16位に上がると、その後も慎重かつ大胆なオーバーテイクを繰り返した。それでも4位のセルジオ・ペレスのレッドブルまでは攻めきれず5位。5グリッド降格で10番グリッドスタートとなるも「まだ終わってないんだ」とレースに向けて闘志をみなぎらせていた。
マクラーレンのランド・ノリスが5番グリッド、フェラーリのシャルル・ルクレール6番グリッドと、コンストラクターズランキング3位を争う2チームが並んだ。その後ろには、アルファタウリのピエール・ガスリー、アルピーヌのエステバン・オコン、アストンマーティンのセバスチャン・ベッテルが続いた。なおアルファタウリの角田裕毅は、12番手スタートから15位だった。
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フェルスタッペン首位 ハミルトンは追い上げて2位へ
ブラジルでは過去7戦中ポール・トゥ・ウィンは6回と、統計上はボッタスが有利。メルセデス陣営は、スタート直後のターン1でボッタスにリードを守ってもらいレッドブルを抑え、ハミルトンの追い上げに期待するしかなかったのだが、初っぱなからその作戦は崩れ去った。
いや、そもそもハミルトンは、チームメイトの助けなど必要としていなかった。71周レースのスタート、フェルスタッペンが前日の雪辱を果たし首位奪取、ペレスも2位に上がり、レッドブルが1-2を確立。ボッタスは3位に落ち、ルクレール、サインツJr.の後ろには、早くもハミルトンが6位までポジションアップしていた。
レースでもハミルトンの快進撃は続いた。あっという間にフェラーリの2台を抜くと、5周目にはボッタスをかわして3位。6周目には、角田とランス・ストロールの接触で散らばったアルファタウリの破片を片付けるためにセーフティーカーが入ったことも、メルセデスのエースに加担した。
10周目にレース再開。フェルスタッペン&ペレスのレッドブルの壁に、ハミルトン&ボッタスのメルセデス勢が挑む。ペレスの真後ろからプレッシャーをかけ続けるハミルトンは、18周目にペレスのインを突き2位。すぐさまペレスが抜き返し抵抗するが、メルセデスの抜群のストレートスピードにレッドブルは屈するしかなく、翌周にはハミルトンが2位を奪った。
この時点で、1位フェルスタッペンと2位ハミルトンの間隔は3.9秒。20周を過ぎるころには双方タイヤが厳しくなり、27周目に先んじてメルセデスがハミルトンにハードを与えると、続いてレッドブルもカウンターを打ち、結果、フェルスタッペンがハミルトンに対して1.6秒のギャップを設け、3位にはバーチャルセーフティーカーのタイミングで順位を上げたボッタス、そして4位ペレスというオーダーとなった。
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ハミルトンの大逆転優勝 ポイント差は14点に
41周目、フェルスタッペンが2回目のタイヤ交換でハードから再びハードへ。ハミルトンも44周目にピットに入りハードを装着すると、2秒のギャップを挟んだ最後の攻防戦が始まった。
トップのフェルスタッペンはコース中盤のツイスティーなセクションで速く、ハミルトンは全開区間でのスピードを武器としていた。その差が1秒を切ったトップの2台。48周目には、長いストレート後のターン1でフェルスタッペンが巧みにブロックするも、続くターン4までの直線でハミルトンがDRSを効かせ横並びに。2台はそろってコースを外れ、レッドブルが首位を死守したのだが、勝負はこれで終わらなかった。
59周目の同じ場所、ハミルトンが再び牙をむき、今度はオーバーテイクに成功してトップへ。2位に引きずり下ろされたフェルスタッペンはペースを緩め、最終的に10秒差をつけられチェッカードフラッグを受けた。
優勝争いが決着したなか、レッドブルにはもうひと仕事残っていた。単独で4位を走行していたペレスにソフトタイヤを与え、ハミルトンからファステストラップのボーナス1点を奪うこと。順位でこそ1-2を守れなかったペレスだったが、しっかりと最速タイムを更新し、チームの作戦に貢献した。
パワーユニット交換のグリッド降格に予選失格。自分のせいではないことで、合わせて25グリッドもの降格を強いられたハミルトンの大逆転劇だった。「この週末、これだけのギャップを縮めることができるなんて思ってもみなかった」とは、今シーズン6勝目を飾ったハミルトンの弁。「数々の困難に遭遇しても、諦めてはダメだということを証明したと思う。プッシュし続け、戦いをやめないことだ」。
フェルスタッペンのポイントリードは19点から14点に縮まった。 2021年シーズンも残るは3戦。フェルスタッペンがこのまま初戴冠となるか? 最後まで諦めないハミルトンが、果たしてチャンピオンシップでも逆転を決めるのか。
F1サーカスは南米から中東へ。トリプルヘッダーの最後は、初開催のカタールGP。決勝は11月21日に行われる。
(文=bg)








