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第425回:もしや物凄い追い風なのかも? 日産リーフ&太陽光発電で考えるクルマ自給自足生活

2011.03.18 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第425回:もしや物凄い追い風なのかも?日産リーフ&太陽光発電で考えるクルマ自給自足生活

2010年12月末に販売がスタートした、日産の電気自動車「リーフ」。
2010年12月末に販売がスタートした、日産の電気自動車「リーフ」。 拡大
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響で、物資の流通は停滞。都内でも、多くのクルマがガソリンスタンドに行列をつくる光景が見られた。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響で、物資の流通は停滞。都内でも、多くのクルマがガソリンスタンドに行列をつくる光景が見られた。 拡大

ついつい考えちゃうクルマの未来

被災者のみなさま、心よりお見舞い申し上げます。

しかし、物凄く考えちゃいますね。この数日間。言わずと知れた地震&原発問題だけど、先日乗った「日産リーフ」、考えようによっちゃ物凄い“追い風”かもしれない……って思ってしまいました。

えっ、航続距離、理想的にいって200km、普通に運転すれば100km程度のクルマでしょ? こういう状況じゃますます使えなくなるじゃん! って思うかもしれないけど、そういう問題ではありません。この数日間で痛感したのは、クルマはやっぱクルマ単体だけでは語れない……ってこと。乱発するガソリンスタンド渋滞をみれば分かるように、クルマはインフラあってのモノなわけですよ。当たり前の話。

ゼロヨン3秒台の「GT-R」だろうが、満タンでヘタすると1000km以上走れる「プリウス」だろうが、ガソリンを補給できなければ一瞬にして無用の長物となる。単なる置物になる。
ところがこの「リーフ」、いや「三菱i-MiEV」もそうだけど、ガソリンスタンドに頼らずとも走る。急速充電機も確かに欲しいけど、時間さえゆるせば自宅充電でOK。これって、物凄い魅力なわけですよ。ウチのマンションだと電源なくて無理! とかいうケースもあるけどね。

一方「今みたいな緊急事態、節電が求められるジャン! 不謹慎だよ!!」という声もあるのは重々承知してる。
違うんですね。不肖小沢が考えちゃったのはリーフと自家発電、つまり“太陽光発電”との組み合わせ。今、技術的進歩と同時に、補助金ばやりなこともあって、今まで200万円以上した2.5kW発電レベルのヤツが100万円台、それも100万円台前半レベルで付けられる。そうなると、自宅電源として10年前後で元が取れる可能性があるうえ、昼間、電気を使わない間に駐車中の電気自動車に直接充電できるとなると、メチャクチャ魅力的になってくる。

 
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「リーフ」のカーナビ画面。残りのバッテリーでどこまで到達できるかを、地図上で把握することができる。
「リーフ」のカーナビ画面。残りのバッテリーでどこまで到達できるかを、地図上で把握することができる。 拡大

キブン的にほぼエネルギー代タダでクルマを使える上、こういう非常時、ガソリンスタンドに並ばずに済むし、“無駄使いしてる”って精神的負担も減るわけですよ。自給自足、自分の土地、自分の屋根で作ったエネルギーで走れるわけだからね。

100km程度しか走れないとしても、それくらいの不便さは許せるじゃないですか。社会的負担の少なさを考えると。
このヘンの感覚は人にもよるし、不肖小沢、独特の受け止め方かもしれないけど、いま現実に「スタンドに並ばずに済む」というEV特有の性能がクローズアップされてるのは事実。人に迷惑をかけずに自由に乗れる、遠慮せずに乗れるって物凄く魅力的だ。

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白いキャンバスみたいなクルマ

だから、つくづく思うのだ。リーフはクルマだけでは語れない、太陽光発電なり、充電設備なり、そういうインフラと合わせて初めて新しい価値が生じるのだと。時代の空気というか、環境の変化なしに本当のありがたみは生まれず、天災なり、環境意識の一大チェンジがあって、初めて光り輝く。今までの“内燃機関カー”の文脈では、語れない。

ぶっちゃけクルマとしてはいい意味でフツーだ。過剰なインパクトはない。年末、欧州カーオブザイヤーを取るわ、俺が関係する世界カーオブザイヤーも取りそうだわと、気にはなってて、先日やっと3時間ほどの公道初試乗となったわけだけど、ある意味予想どおりではあった。

要は全長4mちょいの便利なコンパクトカー。日産の横浜本社から三浦半島まで往復してみたけど、初期トルクの太いEVってことで80kWってスペックの割にパワー感は凄いが、既にテストコースで2回乗ったプロトタイプに比べて、加速の鋭さは若干落ちるし、静かさも想定内。むろんリーフに初めて乗った人は驚くはずだけど。

床下バッテリーの超低重心ボディもあって、電動ステアリングの感覚はスポーツカーはだしと言えなくもないが、「マツダ・ロードスター」ほど軽快でもなく、ブレーキも回生タイプなのでタッチは独特な硬さを持つが、踏めば良く効く。当初あった「トヨタ・プリウス」みたいな違和感もない。

それよりますます面白く感じたのは車内のインターフェイスで、モニターで行ける範囲が分かるとか、最寄りの充電場所がわかるとか、携帯電話で電池残量がモニターできるとか、充電コントロールができるとか、そういうこと。繰り返すと走り出せば驚くほどフツー。要するにリーフはある意味、社会を映す鏡、それこそ“白いキャンバス”のようなクルマなのだ。
そしてそれは結果的にEVの本質を、モノの見事に突いている。

 
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運転席まわりの様子。二段式のメーターや、電子制御式のシフトノブが特徴的。
運転席まわりの様子。二段式のメーターや、電子制御式のシフトノブが特徴的。 拡大
メーターのアップ。向かって右に「航続可能距離」が、左に「リチウムイオンバッテリーの温度」が表示される。
メーターのアップ。向かって右に「航続可能距離」が、左に「リチウムイオンバッテリーの温度」が表示される。 拡大
携帯電話を使って、エアコンを遠隔操作してみる。写真は、オーダー受け付けのメッセージ画面。
携帯電話を使って、エアコンを遠隔操作してみる。写真は、オーダー受け付けのメッセージ画面。 拡大

つくづく宗教的なEV

EVとはなにか? それは、ある種のイデオロギーであり、宗教的なまでの“考え方のチェンジ”だ。
例えば、リーフ登場で一番感じたのは政治力の強さ。個人ユーザー以上にタクシーやレンタカー、公的機関からの引き合いは俺たちが考える以上に強く、例えば航続距離からどう考えても不利なタクシー車両として、神奈川県のタクシー協会は既に100台の導入を決めたし、資生堂は営業車両として入れたことをわざわざ記者発表した。「三菱i-MiEV」もそうだが、EVは「買った」事実が一番大切であり、「乗った」感想は二の次なのだ。いわば○×党に入れましたよとか、太陽電池付けましたよ! という主張であり、政治的アピールであり、そのもののテイストにはあまり注目しない。

リーフ人気の本質とは、現代社会のエコに対するプレッシャーの裏返しであり、強迫観念の現れに他ならない。
人にはその時代時代の特有のプレッシャーがあって、戦後の日本人は欧米人に負けないことが大切だったし、今だったら中国人にナメられないことが大切。最近の若い男性だったら「草食」ってことに妙な反応を示すだろうし、女性は「結婚」に対して非常にセンシティブ。「英語」コンプレックスなんかも相変わらずあちこちにまん延している。
リーフ人気でヒシヒシと感じるのは、現代人が常日頃感じている、真綿でクビを締められるようなエコの義務感であり、恐怖である。リーフは無条件にそれを救ってくれる存在であり、それは理屈ではなく、観念的かつ宗教的ですらある。

さらに今回、不運にも受けた天災が浮き彫りにしたのは、俺たちの根本的エネルギー問題だった。今まで頭ではわかってはいたけど、原発頼みだったことへのリスクをトコトン痛感させられた。
いまの日本人、特に関東以北のひとが直感的に感じているのは、“変わらねば”ということである。とにかく何かを根本的に変えなければ、安全と幸せは得られない気がしている。
そして俺の頭には今、リアルな自給自足的クルマ社会の未来像として、リーフ&自宅太陽電池の組み合わせが急速に浮かび上がってきているのである。

これはいいかもしれない……と。

(文と写真=小沢コージ)

 
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三菱の「i-MiEV」。軽乗用車の「i(アイ)」をベースとする電気自動車だ。
三菱の「i-MiEV」。軽乗用車の「i(アイ)」をベースとする電気自動車だ。 拡大
こちらは「リーフ」のカーナビ画面に表示される充電施設情報。現在地からの距離や設備の種類が分かるとともに、そのままカーナビで誘導してもらうことも可能。
こちらは「リーフ」のカーナビ画面に表示される充電施設情報。現在地からの距離や設備の種類が分かるとともに、そのままカーナビで誘導してもらうことも可能。 拡大
「リーフ」の充電は、車体前面にある充電ポートから行う。普通充電でゼロから満タンまでに要する時間は8時間、急速充電を利用すれば、30分でゼロから80%まで充電できる。
「リーフ」の充電は、車体前面にある充電ポートから行う。普通充電でゼロから満タンまでに要する時間は8時間、急速充電を利用すれば、30分でゼロから80%まで充電できる。 拡大
小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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