ホンダ・ステップワゴンe:HEVスパーダ 8人乗り(FF)/ステップワゴン エアー 7人乗り(4WD/CVT)
意識変革へのチャレンジ 2022.06.15 試乗記 いよいよ販売がスタートした、新型「ホンダ・ステップワゴン」。新鮮味のあるデザインで話題の、売れ筋ミニバンの乗り味は? ハイブリッド車と純ガソリンエンジン車、2つのタイプに試乗して確かめた。骨格はシンプル&クリーン
新型ステップワゴン発売直後の週末、東京・青山のホンダウエルカムプラザは大盛況だったらしい。家族連れが実物を確かめようと押しかけた。真剣なまなざしで内外装をチェックしていたという。家族の生活を支えるファミリーカーを選ぶのだから、妥協はできない。すでに「トヨタ・ノア/ヴォクシー」をディーラーで見てきた人も多かっただろう。時期を同じくして発売されたミニバンを比較して見定めようとしたはずだ。
ステップワゴンと“ノアヴォク”は、ガチンコのライバルである。このジャンルを開拓したのはステップワゴンだが、後発のノアヴォクがずっと王座に君臨していた。「日産セレナ」にも先行され、万年4位という残念な位置に甘んじていたのだ。現状を打開するためには、抜本的な改革が必要になる。ステップワゴンが先代とはガラリと変わったエクステリアデザインを採用したのは当然なのだ。
「エアー」と「スパーダ」という2種類のデザインが用意されるが、シンプル&クリーンな骨格は同じである。水平な直線で構成されたフォルムは潔いほど飾り気がなく、「きれいな箱をつくりたかった」という開発者の言葉がしっくりくる。「フィット」「ヴェゼル」「ホンダe」と共通する新しいデザイン言語が適用されていて、ホンダというブランドの統一感が明確に打ち出されているのだ。
ミドルサイズミニバンは“5ナンバーミニバン”と呼ばれることもあり、一部のグレードを除けば全幅を1700mmまでに抑えることが前提だった。新型ステップワゴンは全幅を55mm拡大して1750mmとし、全車が3ナンバーサイズである。全長も110mm延びて4800mm(スパーダは4830mm)になった。フォルムを変えたことも影響し、先代よりもひと回り大きくなった印象である。
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5.4mの最小回転半径を死守
ノアヴォクも3ナンバーサイズになったが、全幅1730mm、全長4695mmと控えめな拡大だった。ステップワゴンは「ホンダ車として過去最大の車内空間」だとしていて、大きなボディーであることをアピールポイントにしている。それでいて、先代と同じ5.4mの最小回転半径を死守した。街なかでの買い物や子どもの送迎に使われるのだから、取り回しが悪くなれば商品力の低下に直結してしまう。
発売前に栃木プルービンググラウンドで試乗していたが、公道で乗るのはこれが初めて。運転席におさまると、あらためて視界のよさに感心する。前方も側面も水平基調が徹底されていて、ふくらみや曲面がないから車両感覚をつかみやすい。試乗の基地となっていたコインパーキングのゲートがトリッキーなつくりで、入場する際に鋭角に曲がって発券機に向かわなければならなかった。戸惑ったけれどスムーズにパーキングチケットを取ることができ、小回りが利くことを証明する結果となった。
パワーユニットは、1.5リッターターボエンジンと、2リッター自然吸気エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「e:HEV」の2種類。まずハイブリッド車に乗る。前回はクローズドサーキットで40km/hの速度制限があり、ほぼモーター走行だった。公道試乗ではもう少し速度レンジが上がったが、やはりエンジンの存在感は薄い。急加速を行うのでなければ、バッテリーの電気でモーターを駆動し、なめらかに走っていく。
速度を上げていくとエンジンが始動して発電を開始するが、意識していなければ気づかないかもしれない。エンジンが脇役に回ってモーター駆動を前面に出すのが、最近のハイブリッド車のトレンドである。今回は高速道路を走れなかったが、クルーズ時にはエンジンが直接タイヤを駆動して効率のいい走りを実現する仕組みだ。
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軽快なガソリンエンジン車
ガソリンエンジン車に乗り換える。栃木ではハイブリッド車にしか乗れなかったので、今回が初めてだ。開発陣と話すと、誰もが口をそろえてエンジン車の出来のよさを熱心に訴えていたのが印象的だった。会社の方針はそれとして、現時点では内燃機関の性能をブラッシュアップしていくことに意義を感じている。
発進しようとして、大きな違いに気づく。センターコンソールに、立派なシフトセレクターが鎮座しているのだ。ハイブリッド車はボタン式で、フラットな操作パネルになっていた。最初は面食らったものの慣れると使いやすく、ごく普通のシフトセレクターがガサツに感じられてしまったから不思議である。スタートボタンを押すとエンジンが始動するのも、今となってはむしろ珍しくなった。
1.5リッターターボエンジンは、最高出力150PS。ハイブリッド車に比べるとパワーでは見劣りするが、レスポンスは良好で力不足は感じない。ナチュラルな加速を目指したというのはどちらのパワーユニットでも同様で、アクセル操作に対してリニアな反応を見せる。ファミリーカーなのだから、敏感すぎる操作性は歓迎されない。軽快感という面では、ガソリンエンジン車に分があるようだ。しっとりとした上質さをとるならばハイブリッド車で、カジュアルなスポーツ性を優先するならガソリンエンジン車を選べばいい。
開発者が気にしていたのは、車内の静粛性である。先代モデルでは、運転席と3列目の乗員の間で会話ができなかったというのだ。ガソリンエンジン車は静かさの点では不利になるので、実際に試してみた。運転を代わってもらい、3列目シートに座る。大丈夫、ちゃんと会話が成立した。後方に向かって座面が高くなる設計になっており、一番うしろでも閉塞(へいそく)感を覚えないのもうれしい。
3列目シートのアドバンテージ
ミニバンでは、シートアレンジの多彩さが重要だ。ステップワゴンの3列目シートは、格納の方法にアドバンテージがある。ダイブダウンの動きは何度操作しても感心する巧妙さだ。簡単に格納できるうえに、クッションを厚くして座り心地を改善させていることに感服する。2列目シートはロングスライドを実現し、横方向の動きも可能になった。1本のレバーで簡単に操作できる。
子どもの世話をするための配置もでき、車中泊用に2列目と3列目をフラットにつなげるモードもある。実際にはすべてのアレンジを使い切ることはほとんどないだろうが、可能性を担保しておくことが重要らしい。ライバルにある機能が欠けていると、販売店で説明するのに苦労するのだ。過剰なほどのおもてなしをすることが求められるのが、日本的ミニバンの宿命である。
新型ステップワゴンのコンセプトは「#素敵な暮らし」。クルマではなく乗る人が主役だという意味だそうだ。空気のような存在になることを意識して、ベースモデルをエアーという名にしたという。ファブリックを使った内装は、リビングルームのテイストを狙ったものだ。エクステリアデザインも合わせ、このジャンルに新たな価値観を生み出そうとする意欲が感じられる。
ミニバンのデザインは、立派そうに見えることを競ってきた歴史がある。ユーザーの好みに合わせてきたわけだが、3割ほどは異なる嗜好(しこう)を持っているというのがホンダの読みだ。エアーはそこに狙いを定めた。残念ながら、想定どおりにはなっていないようで、初期受注ではエアーは3割に届いていないという。意識を変革するには、少し時間が必要なのだろう。新たな価値観を浸透させるのは簡単ではないかもしれないが、ホンダらしいチャレンジに拍手を送りたい。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
ホンダ・ステップワゴンe:HEVスパーダ 8人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1750×1840mm
ホイールベース:2890mm
車重:1830kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:175N・m(17.8kgf・m)/3500rpm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315N・m(31.2kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 96H/(後)205/60R16 96H(ブリヂストン・トランザER33)
燃費:19.6km/リッター(WLTCモード)
価格:364万1000円/テスト車=377万5200円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイト・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<DRH-224SD>(3万3000円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ/e:HEV車用/ベンチシート車用>(6万2700円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1186km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ホンダ・ステップワゴン エアー 7人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4800×1750×1855mm
ホイールベース:2890mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150PS(110kW)/5500rpm
最大トルク:203N・m(20.7kgf・m)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 96H/(後)205/60R16 96H(ブリヂストン・トランザER33)
燃費:13.3km/リッター(WLTCモード)
価格:324万0600円/テスト車=337万4800円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイト・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<DRH-224SD>(3万3000円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ/ガソリン車用/キャプテンシート車用>(6万2700円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1138km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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