ポルシェ718ケイマンGT4 RS(MR/7AT)
“Renn Sport”の名は伊達じゃない 2022.11.18 試乗記 ポルシェの軽快なミドシップスポーツ「718ケイマン」に、新たなハイパフォーマンスモデル「GT4 RS」が登場。その最大の特徴は、リアミドに「911 GT3」のエンジンを搭載してしまったことだ。ヒエラルキーを超越した豪胆な一台の、実力の片りんに触れた。まずはエンジンに目を奪われる
ポルシェはこの春先に、718ケイマンを「2025年までに完全EV化する」と正式に発表した。そうなると、日本にようやく上陸を果たした「GT4 RS」は、その内燃機関モデルとしては最終進化形となるだろう。
718ケイマンGT4 RSは、その名が表すとおりGT4の“Renn Sport”(レン・シュポルト=レーシングスポーツ)バージョンだ。911 GT3がそうであるように、718ケイマンでもモータースポーツの「FIA GT4」カテゴリーに照準を定めた車両開発とブランディングが行われており、ロードバージョンを「GT4」、レース仕様を「GT4クラブスポーツ」として販売してきた。今回導入されたGT4 RSは、これら既存のGT4の上級グレードというより、さらに戦闘力をバージョンアップさせた仕様となる。
そんな718ケイマンGT4 RSで最もホットな話題といえば、なんといってもエンジンに911 GT3由来の4リッター水平対向自然吸気(NA)エンジンが搭載されたことだろう。ご存じのことと思うが、これまで718ケイマンGT4には、同じ4リッターのNAユニットでも「911カレラ」由来のものが搭載されていた。ターボエンジンをベースに圧縮比を13.0に変更し、5段階調整が可能なピエゾインジェクションを初めて高回転型の直噴エンジンに搭載するなどの改良が図られたこのユニットは、「718ケイマンS」に搭載される2.5リッターターボの最高出力350PS/6500rpm、最大トルク420N・m/1900-4500rpmに対し、+70PSの420PS/7600rpmにまで高められた。最大トルクも数値こそ同等ながら、420N・m/5000-6800rpm(MT仕様、PDK仕様は430N・m/5500rpm)と、より高回転側でその値を発生する特性となっていた。
事実、これだけでも4気筒ターボのサウンドやフィーリングに不満を抱いていたポルシェ好きたちは驚くほど歓喜したわけだが、今回の変更は、まるでレベルの違う話だ。
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決して快適ではないが、それがいい
911 GT3由来となる718ケイマンGT4 RSのユニットは、ボア×ストロークこそφ102×81.5mmと、既存のGT4ユニットの内径および行程と変わらない。ちなみにその排気量は、前者が3996cc、後者が3995ccと表記されている。一方で、圧縮比は13.3まで引き上げられており、その最高出力は500PS/8400rpm、最大トルクは450N・m/6750rpmと、GT4(PDK仕様)と比べてそれぞれ80PS、20N・mも高められている。参考までに言うと、911 GT3の最高出力は510PS/8400rpm、最大トルクは470N・m/6100rpmである。
このエンジンは、走らせるととてもにぎやかだ。そしてクルマ好きの心を、これでもかとばかりにグラグラ揺さぶる。
コールドスタートでは高圧縮比エンジンが、まさに爆発するように目覚める。早朝の出発ではいささか肩身が狭いレベルで、室内に容赦なくガチャガチャ響くカムまわりの音もドライバーをせかす。というわけで、暖機を兼ねたスロー走行でそそくさと出発すると、アクセルペダルに合わせて吸気が「シュゴッ!」とうなった。惰性で走りながら再び踏むと、やっぱり「シュゴッ!」。6連スロットルが開いて吸い上げられる空気は、リアクオーターに増設された「プロセスエアインテーク」(「ヴァイザッハパッケージ」に付属)からも吸い込まれるようになっており、ダイレクトにドライバーの耳を刺激する。これが実に、スゴみが利いている。そしてエンジンがほどよく温まってくると、音色が「クーーーーーーッ」と、きれいに整ってくる。この一連の流れが実に刺激的で、オーナーはこれだけでGT4 RSを手に入れてよかったと思えるはずである。
乗り味は、なかなかに物々しい。911 GT3ほどではないが、718ケイマンGT4よりもさらにレーシングカー的な輪郭がハッキリしている。ダンパーの減衰力は「PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメント)」でソフトにできるが、20インチの「ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2」が伝える入力をいなすスプリングは、サーキットを前提としたハイレートな設定である。クローズドエリアではきっとしなやかな乗り味を示すはずだが、オープンロードでのそれはガッシリしている。
よって、街なかや高速道路での移動は、快適とは言えない。シュゴシュゴうるさく、ドシドシと継ぎ目を乗り越える。しかしこれが不快かといえば、そうではないから面白い。いま自分が運転しているのは「公道を走れるレーシングカー」だと実感したとき、そのハーシュネスまでもがエンタメになるのだ。
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パワートレインの刺激に見る絶妙なあんばい
ワインディングロードで確認できるのは、おおきくふたつ。ひとつはこのエンジンが、ケイマン史上最強にして最高のパワーユニットだということだ。そしてそれを見事に引き立てているのが、やはり911 GT3からそのままコンバートされた7段PDKだと筆者は感じた。
というのも、既存のGT4にはターボを積む他の718ケイマンと同じギア比の7段PDKが組まれており、これが少々物足りなかった。トルクフルなターボエンジンの特性を生かしたロングなギア比では、高回転型NAエンジンを心地よく回せなかったからだ。しかしGT4 RSでは、2速から5速までが接近したレシオにまとめられており、6速でもまだ“等速”に近い0.96となっている。さらにファイナルギアにも、GT4の3.62に対して、4.17という加速重視のレシオが与えられているのだ。
このギア比で走らせる自然吸気のレーシングボクサーは、メカニカルノイズと排気音と吸気音のすべてを一気に混ぜ合わせた、最高のサウンドを室内に届けてくれる。もし音に色がつけられるならば、虹色のようなシャワーサウンド。これが高回転になればなるほど、室内に充満する。
サウンドのキレっぷりとパワー感は、911 GT3に比べて絶妙に一段階落とされているのだが、それでも不足は感じない。むしろそのギリギリ常軌を逸しない感じが、スポーツギアとしてふさわしいと思えた。
真価を試せるのはサーキットしかない
対してシャシーは、正直に言うとその素性が見極められなかった。
オープンロードにおけるハンドリングは、弱アンダーステアのどっしり型。パイロットスポーツ カップ2のグリップが路面を捉え、それに負けない足まわりが、コーナリングGをこぼすことなくどこまでも車体を支え続けてくれる。鍛造マグネシウム製のホイールはバネ下でばたつくこともなく、ブレーキを踏めば確かなタッチで、オプションの「PCCB(ポルシェカーボンコンポジットブレーキ)」が確実に速度を殺す。左足のオーバーラップを許容するブレーキ制御もさすがだ。
操舵の手応えとしては、前:ダブルウイッシュボーン/後ろ:マルチリンクとなった911 GT3の鋭さには、あとひとつ及ばない感じ。トルクベクタリングで内輪をつまんでその接地性を高めているとはいえ、旋回速度の強烈さもリアステアを搭載する兄貴分が一枚上手な印象だ。そもそもホイールベース自体が、718ケイマンは911に比べて長い。つまり安定志向である。
しかし、それが718ケイマンGT4 RSの真のキャラクターかどうかはわからない。タイヤのスリップアングルを5~10%ほど超えた一番オイシイ領域で、もしくはタイヤが発熱しきったグリップの厳しい状況下で、このミドシップマシンの旋回性はどう変化するのか? 果たしてGT4比で25%高められたダウンフォースがリアのストラット式サスペンションの横剛性不足をどのくらい補うのか? それはクローズドコースで確かめるしか方法がない。
確かに718ケイマンGT4 RSはオープンロードで走らせても抜群のアドレナリン製造機だったけれど、やっぱりその“本籍”はサーキットだ。私がお伝えできるのは、ここまでである。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ポルシェ718ケイマンGT4 RS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4456×1822×1267mm
ホイールベース:2482mm
車重:1415kg
駆動方式:MR
エンジン:4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:500PS(368kW)/8400rpm
最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)/6750rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20 95Y XL/(後)295/30ZR20 101Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ カップ2)
燃費:13.2リッター/100km(約7.6km/リッター、WLTPモード)
価格:1878万円/テスト車=2721万円(※日本国内での販売価格)
オプション装備:ボディーカラー<アークティックグレー>(53万5000円)/ヴァイザッハパッケージ付き レザーおよびRace-Texインテリア<ブラック/ディープシーブルー>(29万3000円)/クラブスポーツパッケージ(0円)/ヴァイザッハパッケージ<ロールケージなし>(209万7000円)/20インチ 718 Cayman GT4 RS鍛造マグネシウムホイール(247万5000円)/ホイール<インディゴブルー塗装>(9万2000円)/ポルシェセラミックコンポジットブレーキ<PCCB>(131万7000円)/クルーズコントロール(5万4000円)/フロントアクスルリフトシステム(43万2000円)/ロールケージ<ディープシーブルー>(6万1000円)/シートベルト<ディープシーブルー>(4万6000円)/6点式レーシングハーネスシートベルト<助手席>(7万円)/スモーカーパッケージ(9000円)/LEDヘッドライト ポルシェダイナミックライトシステムプラス(31万1000円)/ライトデザインパッケージ(5万円)/モデル名ロゴおよび「PORSCHE」ロゴ削除(0円)/フロアマット(1万8000円)/BOSEサラウンドサウンドシステム(19万7000円)/アクセントロゴパッケージ(10万9000円)/カーボンのウィンドウトライアングルトリム(7万9000円)/クロノパッケージ(4万6000円)/RHD(0円)/Race-Texのサンバイザー(6万9000円)/カーボンのドアシルガード<イルミネーション付き>(7万円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:3231km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:255.5km
使用燃料:36.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.0km/リッター(満タン法)/7.9km/リッター(車載燃費計計測値)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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