メルセデスAMG SL43(FR/9AT)/ポルシェ718ケイマンGT4 RS(MR/7AT)/BMWアルピナXD4(4WD/8AT)/BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ(FF/7AT)
エンジンにほれる 2023.02.23 JAIA輸入車試乗会2023 旬の輸入車が一堂に会するJAIA輸入車試乗会でwebCG櫻井が選んだのはメルセデスAMGとポルシェ、BMWアルピナ、そしてコンパクトなBMWという4台。いずれも特徴的なエンジンを搭載するドイツ車だ。EVでは味わえないその個性的な走りを報告する。スポーツという芯が太くなった
メルセデスAMG SL43
初めてまともに「メルセデス・ベンツSL」のステアリングを握ったのは、電動ソフトトップを採用した4代目のR129型(1989年)だった。取材場所もしっかり覚えている。ソフトトップの開け閉めが完全に自動化されたその機構は実に画期的で未来的だった。ただし走りはというと、たしかに5リッターV8モデルは速くスポーティーな雰囲気も十分だったが、オープンカーということもあって、ボディーのしっかり感がイマイチ。もちろん、当時の他ブランドがリリースしたオープンカーに比べれば10倍はしっかりしていた。しかし、路面コンディションに左右される乗り心地や揺すられ感は、いかにメルセデスといえども、やはり緩めでオープンカー的だったのだ。
その後に、ドイツで新旧SLを取材する機会に恵まれたこともあって、現行モデルまでひと通り試乗経験を得ることができた。レーシングマシンに由来する歴史を肌で感じ、どの世代のSLであってもぶれることなくひと目でメルセデス、ひと目でSLだと分かるフォルムは納得のカッコよさである。ただ、その後「AMG GT」が登場したこともあって、ルックスは魅力的だけど走りで選ぶならAMG GTでは? という気持ちも正直あった。
最新モデルは2022年10月に上陸した7代目である。5代目、6代目と続いたバリオルーフ(電動格納式ハードトップ)はソフトトップに回帰。ハイパフォーマンスカーを展開する、メルセデスのサブブランドであるAMG名義となったこと、そしてフロントミドに搭載されるパワーユニットがダウンサイジング極まるM139型2リッター直4ターボであることも、R232と呼ばれる最新モデルの特徴だ。
M139には「エレクトリックエキゾーストガスターボチャージャー」と名づけられた電動ターボが組み込まれ、最高出力381PS、最大トルク480N・mを発生する。もちろんAMGのルールに則り、1基ずつAMGの熟練工が手組みで仕上げる珠玉のパワーユニットだ。パワーが永遠に湧き続けるようなV8とは異なり、レスポンス良くシャープに吹け上がるのが、M139の白眉(はくび)である。その回転フィールは、マスの小さな2+2オープンモデルにとてもマッチしている。ボディーやシャシーは洗練の極みで、うねりの続くようなワインディングロードを攻め込んでもミシリともいわない。それは、完成度の高いいかにもドイツっぽい緻密な機械を連想させる。
AMGブランド車になったことで、スポーツという芯が太くなったことは自明。最新のSLにはどこか、職人が鍛え上げた日本刀のような切れ味と美しさに重なるところがある。オープンカーのきらびやかな雰囲気は大切羽や柄に施された装飾にも通じるが、それはひとつの要素でしかない。いい日本刀は、刀身こそが核心。鈍く放たれる光を眺めるだけでほれぼれする。武器となる刀に例えるのは不謹慎かもしれないが、しかしアーティファクトとしてみるならば、新型SLは見た目も切れ味も、そして存在感も申し分ない。それは「懐宝剣尺」に載ってもいいほどの業物ということである。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4700×1915×1370mm/ホイールベース:2700mm/車重:1780kg/駆動方式:FR/エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ(最高出力:381PS/6750rpm、最大トルク:480N・m/3250-5000rpm)/モーター:交流同期電動機(最高出力:13.6PS、最大トルク:58N・m)/トランスミッション:9段AT/燃費:10.8km/リッター(WLTPモード)/価格:1648万円
希代のエンターテイナー
ポルシェ718ケイマンGT4 RS
ポルシェは「マカン」に続き、「718ボクスター/ケイマン」をEV化すると発表した。マカンは当初の予定であれば2023年の今年、新型EVとして登場するはずだったが、どうやらそのスケジュールは若干後ろ倒しになっているようだ。
いっぽうの718ボクスター/ケイマンは、2025年のEV化を目指しているという。充電にかかる時間やバッテリーの耐久性など、技術的にクリアしてほしい要件はあるものの、重心の低さから得られる安定性や路面を削りながら走るようなグリップ感などを含め、EVのパフォーマンスとその進化には乗る度に感心する。しばらくはエネルギーダイバーシティ―をキーワードに、国や地域、車両の種類や用途によってパワートレインの多様化が進むというのが個人的な印象だが、いずれはEVが主役になるような気もしている。
そうした背景を考えれば、これまでポルシェが綿々と守り続けてきたヒエラルキーにおける不文律を破った「718ケイマンGT4 RS」は、死ぬまでに一度は乗っておかねばならない車両の筆頭に置きたい存在である。なにせその最大の特徴はリアミドに「911 GT3」のエンジンを搭載してしまったことにある。4リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンは、最高出力500PS、最大トルク450N・mを発生。911 GT3よりも数値は10PSと20N・mダウンしているが、それぐらいの違いであればリアルワールドでは誤差として扱ってもいい。
背後から聞こえる圧縮比の高そうなアイドリングサウンドは、右足に軽く力を込めるだけで簡単にボリュームを増す。ギアを入れ発進すれば、そのフィーリングはまるでレーシングマシン。エンジンはもっとアクセルを踏め、ガスを入れろとばかりにパワーを放出し、回せば回すほど「グガーーーーーーーーーーン」といういかにも高性能なフラットシックスに独特の音色を奏でる。そのサウンドには心底ほれぼれし、振動すらありがたい。
シャシーがポルシェ一流の仕上げであることはもちろんだが、このエンジンのサウンドやバイブレーションが一体となるフィーリングをEVで味わうことはできないだろう。電子的にサウンドは再現できても、エンジンの鼓動を表現するのは難しそうだ。EVでサーキットを走っても気持ちはいいだろうが、果たして718ケイマンGT4 RSのような興奮極まる走りが味わえるだろうか。やはりスポーツカーは、ドライバーにアドレナリンを出させてナンボ。例えサーキットに持ち込まずとも、いつもの道で、角のタバコ屋コーナーを曲がるときでさえ楽しませる。718ケイマンGT4 RSはそんな希代のエンターテイナーなのではないか。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4456×1822×1267mm/ホイールベース:2482mm/車重:1415kg/駆動方式:MR/エンジン:4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ(最高出力:500PS/8400rpm、最大トルク:450N・m/6750rpm)/トランスミッション:7段AT/燃費:13.2リッター/100km(約7.6km/リッター、WLTPモード)/価格:1878万円
その加速力は病みつきになる
BMWアルピナXD4
最高出力394PS/4000-5000rpm、最大トルク800N・m/1750-3000rpmを誇る3リッター直6ディーゼル“クアッドターボ”エンジンが搭載された「BMWアルピナXD4」。400PS、500PSという数値が特別なものではなくなった現代においても、3リッターの排気量で800N・mというトルクは、驚くべきものである。導入当初でさえ最高出力は388PS、最大トルクは770N・mであったから、まだまだ進化の余地があったのかと感心する。
エンジンのベースはBMWのB57D30T2。高圧ターボチャージャーを2基、低圧ターボチャージャーも同じく2基組み合わせ、合計4基のターボチャージャーが備わるのでクアッドターボである。ちなみにBMW版は最高出力が同じ394PSで、最大トルクが760N・mとなる。
ここで勘のいいマニアなら、おや? B57D30T2は「X5」や「X7」、あるいは「5シリーズ」や「7シリーズ」に搭載されるパワーユニットでは……と、気づくかもしれない。そう、XD4がアルピナであり特別といえる理由は、Eセグメント以上向けのB57D30T2を、ひと回り小さなDセグメントの「X4」に積んだことにある。X4あるいは「X3」とB57D30T2の組み合わせは、ドイツ本国のBMWにも設定されていないという。
こうした本来積むべきサイズのクルマよりもひと回り小さなボディーに、それよりも大きな車種用のエンジンを積み込むのは、1980年代に流行したチューニングメニューの定番。現代においてはBMWとの関係が深い自動車メーカーのアルピナだからこそできる業であり、スポーツ志向の「BMW M」に対して高級志向だといわれるアルピナが、実はいまだにパフォーマンスの向上に貪欲であるとの証明にもなりそうだ。
ただ、X4にX5用のエンジンをぶち込んだ弊害もある。それは構造上の理由で、右ハンドル仕様が存在しないということだ。そんなわけで、日本で販売されるXD4はすべて左ハンドル仕様となる。昔は左ハンドルのガイシャでブイブイ言わせてたぜというベテランなら問題なさそうだが、いまどきであればまずは左ハンドルに慣れ、800N・mの驚異的な全開加速にも耐性をつけなければならない……というのは大げさだが、その加速力は病みつきになるほどエキサイティングだ。
極上の乗り心地と紹介されることの多い他のアルピナ車よりは少々ハードな足まわりだが、クールなたたずまいや特徴的なインテリアの仕立ては、エクストラコストを払うだけの価値がある。今後BMWがアルピナブランドをどのように展開していくのかは想像の域を超えない。けれど、生粋のアルピナを味わえる時間が残り少ないことだけは確かである。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4751×1927×1615mm/ホイールベース:2864mm/車重:2145kg/駆動方式:4WD/エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ターボ(最高出力:394PS/4000-5000rpm、最大トルク:800N・m/1750-3000rpm)/トランスミッション:8段AT/燃費:11.6km/リッター(WLTPモード)/価格:1450万円
フツーさがジワジワくる
BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ
2022年6月に日本導入が発表された新型「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」。ここでは初代モデルのオーナーとして、意見を少々。評価や紹介というよりも、私情にあふれたものになりそうだが、そこはBMW愛によるものと優しくご理解いただきたい。
まずはスタイリング。ムダをそぎ落としたスッキリしたフォルムはおおむね好印象。グリルの大きさは、いまや拡大の一途をたどるBMWのなかにあっては小さいほうともいえる。ま、ボディーサイズがサイズだけに、これくらいがいいバランスである。今回試乗した「Mスポーツ」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4385×1825×1565mmで、いずれも先代モデルより20~35mm大きくなったにすぎない。実車を並べてみてもほとんど変わらない印象だった。
ホイールベースは新旧同数値なので、キャビンの広さも同等。ただし、一番違うのがインテリアデザインとその質感だ。液晶メーターパネルとセンターディスプレイが一体化されたBMWのコンパクトモデルでは初となる「BMWカーブドディスプレイ」と、コンパクトなスイッチ式のシフトセレクターは、今風で実にカッコイイ。なによりもコックピットまわりがすっきりしている。ドアミラーがボディーマウントに変更されたおかげで三角窓のピラーが常識的な太さとなり、ネックだった斜め前方の視界が改善されたのもスバラシイ。それに比べると、初代モデルのインテリアは少しビジーでムダが多く、片づけが苦手なオジサンの部屋のようだ。
手に触れる部分の質感や機能性が向上しているのもわかる。ただ、しばらくいじって乗ってみて、反対に愛車のいいところも発見できた。それは、初代モデルにある「iドライブ」のコントローラーだ。最新モデルはタッチ式ディスプレイで操作するようになっていて、走行中にピンポイントで目的のアイコンにタッチするのはほぼ不可能。これは運転中だからではなく、ナビシートからでも難しい。進化しているとか言いつつ操作性がイマイチじゃどうなのよ、と鼻息を荒くしていたところ、「あ、『OK、BMW』(=BMWインテリジェントパーソナルアシスタント)の精度が上がったので、慣れてコツをつかめば大抵のことは音声コマンドで操作できますから」となじみの広報車両担当氏。そうですか。
今回の試乗ではひと皮むけたような乗り心地や、接地感の向上も確認できた。最高出力156PSの1.5リッター直3エンジンは、よく回るし適度にパワフル。BMWなら直6でしょうと言われそうだが、1.5リッターでも直3でもまったく不満はない。それらをひとことで言い表すなら、「全方位に確実な進化を遂げた」である。フツーのクルマはこれぐらいでいいんだよなぁ、と思わせる地味だがジワジワくる魅力が2シリーズ アクティブツアラーにはある。
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1825×1565mm/ホイールベース:2670mm/車重:1600kg/駆動方式:FF/エンジン:1.5リッター直3 DOHC 16バルブターボ(最高出力:156PS/5000rpm、最大トルク:230N・m/1500-4600rpm)/トランスミッション:7段AT/燃費:14.1km/リッター(WLTCモード)/価格=447万円
(文=webCG櫻井健一/写真=田村 弥、峰 昌宏/編集=櫻井健一)

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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