マツダ2 15 BD(FF/6AT)
未来へのかけ橋 2023.05.20 試乗記 スタイルのよさと走りの楽しさが自慢のBセグメントコンパクト「マツダ2」が、まさかのイメチェン! その新しいデザインには、きたるべき未来に対するマツダの“備え”が現れていた。今年でデビューから9年を迎える、ロングセラーモデルの今をリポートする。“グリルレス”のお顔にびっくり
マツダの「魂動デザイン」を当たり前のものとして、見慣れ過ぎてしまっていたせいだろう。新型マツダ2 15 BDのフロントマスクを見たときは、一瞬脳みそがフリーズした。いにしえの五角形グリルをモチーフとした(と筆者は勝手に思っている)、アイコニックなフロントグリルはプラスチックのパネルでふさがれ、まるでロボットのような顔つきになってしまった。
モデル末期の、強烈なテコ入れ? しばし考えて思いついたのは、次世代への暗黙のリレーだ。EVシフトが今後どれほどの速さで完遂されるのかは定かではないが、マツダはこのクルマの代替わりを目前に、ここでグリルレスな顔つきに対する市場の反応を見ようとしたのかもしれない。そういえば「MINI」も、同じ手法をとっていた(参照)。
とはいえ、そもそもが強烈なキャラクターづくりを展開してきたMINIならまだしも、魂動デザインでさんざん「美しさとは何か?」を問うてきたマツダにそれをやられると、多少こちらが戸惑ってしまうのも無理はないことだと思う。
ということで、いろいろ事情をひも解けば、どうやらこれは“若い世代”へ向けた提案らしい。ならばオッさんの私は、ターゲット外だからオッケーだ……なわけはない。仕事だからきちんと意見を述べよう。
車名の“BD”に込められたマツダの意図
今回の変更は、もちろんグリルのパネル化だけではない。4代目「デミオ」の時代から採用されたメッキトリムの「シグネチャーウイング」は、その彩りが黒く塗装され、ヘッドランプまで伸びたウイング部分がカットされた。またバンパー下のロアグリルの形状が、水平基調から“への字グチ”へと、デミオ時代に原点回帰した。
不思議なのはグリルの左にある黄色い六角形のドット(リアバンパー側はマフラーの上に同じものがある)だが、これはどうやら完全なデザインアクセントで、機能的な意味はないらしい。
また若い世代に向けた仕様として、安価に、あるいは無償で、さまざまなコーディネートが選べるようになっている。代表的なものは試乗車にも装着されるかわいらしいフルホイールキャップと、ルーフに貼られたカーボン調のラッピングだろうか。車名となる「15 BD」の“BD”は“ブランクデッキ”(何も装着しない素の状態)とのことで、ここから自分色に染めてください、というわけである。
ちなみに、こうした外観のマイナーチェンジは他のグレードでもシレッと行われている。「15スポルト」「XDスポルト+」は、グリルこそメッシュのままだがバンパー下は同じ形状に改められている。また「15C」「XD」とモータースポーツベース車両である「15MB」も、BDと同様にグリルが埋められている。肝心のパネルがブラックアウトされているから、それが目立たないだけなのだ。せっかく新設したグリルとバンパーのデザインアクセントまで黒く塗りつぶしてしまっているのがナゾだ。
ところで、機能面で言うとこのグリルのパネル化は、冷却性能に影響を与えないようだ。というのも、メッシュグリルの15スポルトおよびXDスポルト+のバンパーも、15 BDと同じく真ん中はふさがれている。上下のエアインテークで十分に吸気とクーリングはまかなえるだけでなく、むしろ空気抵抗を考えればこのほうがいいということなのだろう。というより、そもそも2014年に登場した4代目デミオだって、グリルの中にブラックバンパーを備えていた。つまりマツダを長らく支えたこの五角形グリルこそが、「デザインのためのデザイン」だったのだ。
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「ロードスター」にも似た軽快な走り
というわけでいよいよ若者向けの15 BDを走らせたわけだが、しかしこれが意外にも、“おじさん泣かせ”なコンパクトカーだった。ちなみにその外観に対して中身は変わっていないから、その評価は既存の「SKYACTIV-G 1.5」搭載グレードのリマインドとなる。
最初に感じたのは、1090kg(4WDは1160kg)という車体の軽さだ。マツダ2といえばプレミアムなコンパクトハッチという印象が強いけれど、それはフロントに1.5リッター直噴ディーゼルターボエンジンを搭載するXDの乗り味。対してエンジン単体重量が軽いガソリンエンジンを搭載する15 BDは、比べればその操舵感がやや頼りない。それが街なかではスイスイと泳ぐような軽快感につながっているのは確かだが、高速巡航だと落ち着きのない印象をもたらすのも、事実である。
しかし、こうした印象をいったん傍らに置いて走り続けると、その味つけが何かに似ているとわかる。そう、同じエンジンを搭載する「ロードスター」のひらり感だ。
それがつかめてからの15 BDとのドライブは、がぜん要領を得た。しなやかなロール剛性。バネ下重量の軽さ。操舵に対してノーズを軽く沈ませてから、斜めにスーッと曲がり込んでいく身のこなし。リズムに乗ればすべてが流れるようにまとまって、ただただ素直に心地よい。
そして直進安定性がほしいなら「MRCC」(マツダレーダークルーズコントロール)、いわゆるACCを起動すればいい。少しばかりレーンキープアシストの制御がせわしないけれど、電動パワステが据わって、クルージングをきちんとサポートしてくれる。
110PSと142N・mのパワー&トルクを発生するエンジンは、正直に言ってしまえばパワフルでもトルクフルでもない。しかしパワーがないわけでも、トルクがないわけでもないところが、実はこのエンジンのかんどころだ。
燃費性能を見据えながら、とんがり過ぎず、平凡過ぎず。アクセルを踏むとほどよい蹴り出しを感じさせながら、まろやかかつスムーズに、高回転まで回ってくれる。レブリミットは6500rpmからだが、そこまで回しきらずともパワーはついてくる。かつてNA/NB時代のロードスターや「ファミリア」が搭載したB6/BPエンジンを知る筆者にしてみたら、その回転上昇感はものすごく洗練されている。なおかつアンダー1.5リッターだから、税金も安い。
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最後まで(?)マツダらしさ全開
ただいっぽうで、果たしてこのパワーユニットが、若者の心を揺さぶるのか? いやむしろ今どきの若者はこうした淡麗さを好むのかもしれないが、それで本当にいいのか? とも思う。環境性能の問題が大きな足かせとなっていることは明白だが、ぜいたくなことを言えばこのSKYACTIV-G 1.5は、洗練され過ぎている。そして、かつて中古の4A-GやVTECで自然吸気エンジンの魅力に触れたオジサンとしては、未成熟でももう少しだけ野蛮でエモいエンジンを、今の若者にも体験させてあげたくなる。
それだけに、エンジンのキャラクターにも影響を及ぼすATがいまだに6段だったり、BDには6段MTの設定がなかったりすることを残念に思う。
翻ってマツダ2 15 BDのデザインチェンジは、きちんとモデル末期のカンフル剤になるのではないかと思う。不思議なもので半日も時間を共にしていると、その姿は見慣れてしまう。それどころかホワイトボディーにパネルグリルの組み合わせは、ちょっとコンサバだとさえ思えてくる。個人的にはグリルパネルはすべてボディー同色とするのがいいと思ったが、ツートンにするからこそこのデザインを選ぶ意味があるという人もいるかもしれないから、オッサンは黙っていよう。
なによりうれしいのは、その中身がいまだにマツダらしさを何ひとつ失っていないことであり、この軽やかさこそZ世代に味わってほしいテーマの本命だといえる。そして164万7800円という価格でこの走りが手に入るのは、すてきなことだと思う。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
マツダ2 15 BD
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4080×1695×1525mm
ホイールベース:2570mm
車重:1090kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:110PS(81kW)/6000rpm
最大トルク:142N・m(14.5kgf・m)/3500rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:20.3km/リッター(WLTCモード)
価格:164万7800円/テスト車=194万6820円
オプション装備:ボディーカラー<スノーフレイクホワイトパールマイカ>(3万3000円)/360°セーフティーパッケージ<360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー[センター/コーナー]+自動防眩(ぼうげん)ルームミラー>(6万0500円)/セーフティークルーズパッケージ<スマートブレーキサポート+マツダレーダークルーズコントロール[全車速追従機能付き]+レーンキープアシストシステム+交通標識認識システム+アクティブドライビングディスプレイ[カラー]+メーターリング[サテンクロームメッキ]+タコメーター[アナログ]+ステアリングスイッチパネル加飾[サテンクロームメッキ]>(6万6000円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万3000円)/ルーフフィルム<ブラック>+ドアミラー<グロスブラック>(5万5000円) ※以下、販売店オプション ナビゲーション用SDカード(5万1520円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1017km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:295.6km
使用燃料:19.6リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.1km/リッター(満タン法)/15.2km/リッター(車載燃費計計測値)
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◆カラーバリエーションは198通り 「マツダ2」のマイナーチェンジモデル登場
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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