「マツダ2」の生産終了と新型「CX-3」のタイ生産を公表 マツダの次世代コンパクトカー戦略を探る
2026.06.22 デイリーコラム2027年にタイ生産の新型「CX-3」を発表
マツダは2026年5月12日に「2026年3月期決算説明会」を開き、決算の総括や今期の見通し、「2030経営方針」の取り組みに関する進捗(しんちょく)について説明を行った。2026年3月期通期では4兆9182億円の売上高となり営業利益は516億円だった。対前年26%減となる1861億円だった2025年3月期通期の営業利益を大幅に下回る結果になった。これについては「米国における追加関税の影響」と説明。ただし影響をこうむったのは上期で、下期は関税影響による損失から回復したとの報告であった。
2027年3月期はグローバル販売台数132万台を見通しており、新型「CX-5」をテコに10万台(+8%)の成長を見込んでいる。営業利益は1500億円(+191%)、当期純利益は900億円(+157%)を見通している。「今期の成長は新型CX-5が担います。これは単なる主力商品ではなく、グローバルで最大の顧客を持つ車種であり、当社の『2030経営方針』における収益モデルそのものを体現する商品です」と、毛籠勝弘社長は力を込めた。
決算説明会では各リージョン(地域)に投入するニューモデルについて言及があるのが通例だ。今回は「今期より、ASEAN、欧州、豪州については共同開発の電動車を順次導入し、電動化への対応を進めながら市場適応を図りつつ、タイで投資し、開発している次期「CX-3」を来年、市場に導入。ボリュームゾーンの獲得を着実に進めていきます」という発言があった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「マツダ2」は2026年8月に国内生産を終了
マツダは、2022年に縦置きパワートレインを採用したラージ商品群の第1弾となる「CX-60」を国内に導入。2024年にはラージ商品群の第2弾で3列シートを持つ「CX-80」を国内に導入した。そして2026年5月には、国内の最量販機種であるCX-5をフルモデルチェンジし、発売している。横置きパワートレインを持つCX-5はスモール商品群に属するが、ホイールベースを115mm延長した新型の全長は4690mmで、CX-60より70mm短いだけだ(クレジットカードの横幅が85mmである)。
マツダの場合、近年は比較的大きなクルマのラインナップは充実していく方向だが、小さなクルマは置いてけぼりを食っているかっこうだ。ファストバックとセダンのボディータイプを持つ「マツダ3」とそのSUV版の「CX-30」は2019年にデビュー。BセグメントのコンパクトSUVであるCX-3は2015年の登場で(ということは、12年ぶりのモデルチェンジになるわけだ)、「デミオ」改め「マツダ2」に至っては2014年のフルモデルチェンジが最後である。
そのマツダ2は、4月に一部メディアが2026年8月に国内生産を終了すると報道。5月の決算説明会で質問を受けた毛籠社長は、現行型マツダ2の国内での販売終了を認めた。ということは、このままであればマツダのBセグメントは次期CX-3が期待と需要を一気に引き受けることになる。
毛籠社長は2025年2月にタイ首相のもとを訪れ、同国で生産・販売を強化する投資計画について説明。その際、同国で生産する新型コンパクトSUV(これがCX-3になることが5月の決算説明会で明らかになった)のデザインスケッチを披露した。
「ビジョンXコンパクト」がデザインのカギを握る
当時は何の気なしに眺めていたが、後になって気づくことがある。あのクルマに似ているのだ。そう、2025年の10月末から11月上旬にかけて開催された「ジャパンモビリティショー2025」の会場でマツダが初披露した「ビジョンXコンパクト」である。ルーフからバックドアにかけての弧を描く形状と、ほおずきを半分に切ったようなテールランプの形状が似通っている。今から思えばだが、ビジョンXコンパクトはタイの首相に見せた新型コンパクトSUV、改め次期CX-3のエクステリアデザインの流れをくむコンパクトハッチだったのだ。
イメージスケッチの公開はエクステリアだけだったが、インテリアもビジョンXコンパクトのエッセンスを受け継いでいるものと期待したくなる。となると、相当おしゃれなコンパクトSUVとして登場することになるはずだ(大いなる期待を込めて)。
収益性の観点から、プラットフォームはキャリーオーバーだろう。ASEANをメインマーケットとする機種となることからエンジンはガソリンで、1.5リッター直4自然吸気がメインか。国内仕様はISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)による減速回生を行うマイルドハイブリッドシステムの「Mハイブリッド」を加えて経済性とエンジン再始動時の快適性を高めてくるだろう。
CX-3に次期型が存在することは確約が取れたが、マツダ2は2026年8月に国内生産が終了する。在庫限りの販売となって、マツダのコンパクトハッチの歴史にいったん終止符が打たれる。ただ、プレミアムなコンパクトカー像を提示したビジョンXコンパクトについて、マツダは予想を超えるポジティブなフィードバックを受け取ったと聞く。これに背中を押されて次のマツダ2が生まれたりしないだろうか(いやいや、はなからそのつもりでしたよ、という展開が望ましい)。
(文=世良耕太/写真=マツダ、Thailand Board of Investment/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

世良 耕太
-
補助金効果で爆売れ 納車が長期化する「ホンダ・スーパーONE」に代わるおススメのBEVは?NEW 2026.8.6 場合によっては軽規格の電気自動車(BEV)「ホンダN-ONE e:」よりも安く乗れるとネット界隈で話題の「スーパーONE」。ただし、納車に時間かかると肝心の補助金が……。と、そんな人気のスーパーONEに代わるBEVを下町の中古車評論家がご紹介。
-
16年ぶりのフルモデルチェンジ 新型「日産エルグランド」の価格は妥当か? 2026.8.5 実に16年ぶりのフルモデルチェンジで登場した新型「日産エルグランド」。その価格は「X e-4ORCE」の689万7000円からとなっているが、はたしてこの設定は買い得なのだろうか。グレード間の装備差やライバル車との比較を通じて検証した。
-
「フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ」の“MTごっこ”は、スーパーカーの新スタンダードになるか? 2026.8.3 フェラーリひさびさの3ペダルMT車として注目される「12チリンドリ マヌアーレ」は、実はDCTがベースの“なんちゃってMT車”だ。やはり、超ハイパワー車と伝統的なMTのコンビは無理なのか? 事情に詳しい西川 淳はこう考える。
-
いばらの道のフォルクスワーゲン再建計画 ――10万人のリストラと4工場閉鎖は本当か?―― 2026.7.31 不振にあえぐフォルクスワーゲンが経営再建計画を発表。しかしその中身は、追加の人員削減や工場閉鎖に言及しない、外部から「生ぬるい」と指摘されるものだった。この内容で本当にドイツの巨人は再生するのか? 厳しさを増す市場環境から考察した。
-
1990年代の名車「プリメーラ」が復活? 日産のグローバル戦略の一翼を担うBEVの正体を探る 2026.7.30 日産が新型ピックアップトラック「ナバラ プロ プラグインハイブリッド」と新型BEV「プリメーラ」をフィリピンで発表した。いずれも中国を生産・輸出のハブとするグローバル戦略の一翼を担うモデルだ。果たして日本導入の可能性は?
-
NEW
アウディA6 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】
2026.8.5試乗記歴史的にも車格的にも、アウディの中核に位置している「A6」。その最新モデルが日本に導入された。往年の「100」から数えて9代目となる新型は、いかなる走りを備えているのか? 既存の車種とは一味違う、新時代のアウディのドライブフィールを報告する。 -
NEW
16年ぶりのフルモデルチェンジ 新型「日産エルグランド」の価格は妥当か?
2026.8.5デイリーコラム実に16年ぶりのフルモデルチェンジで登場した新型「日産エルグランド」。その価格は「X e-4ORCE」の689万7000円からとなっているが、はたしてこの設定は買い得なのだろうか。グレード間の装備差やライバル車との比較を通じて検証した。 -
NEW
第123回:新型「日産キックス」とゆかいな仲間たち(後編) ―ライバル比較で浮き彫りになる日産デザインの底力―
2026.8.5カーデザイン曼荼羅日産ひさびさの話題作となっている新型「キックス」だが、盛況なコンパクトSUV市場は競合ひしめくレッドオーシャン! ライバルと比較しても、キックスのデザインは埋もれない逸品と言えるのか? カーデザインの識者とともに、日産デザインの実力に迫る。 -
「売れるクルマ」と「いいクルマ」にズレがあるとき、開発者がつくりたいのはどっち?
2026.8.4あの多田哲哉のクルマQ&A「いいクルマが売れるとは限らない」などといわれるが、「売れるクルマ」と「いいクルマ」が一致しないとき、エンジニアが目指したいと思うのはどちらなのか? 元トヨタの車両開発者である多田哲哉さんに聞いてみた。 -
ホンダ・スーパーONE(FWD)【試乗記】
2026.8.4試乗記ホンダのスポーツハッチバック電気自動車「スーパーONE」がいよいよ公道を走り始めた。その愛らしいスタイリングと走りの楽しさはすでに各所で報告されているが、多くの方が不安に感じているのは“距離”に関してに違いない。幾度かの経路充電を挟みつつ300km余りをドライブした。 -
第341回:「スカイアクティブZ」は大丈夫か
2026.8.3カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「マツダCX-5」で出撃した。マイルドハイブリッドのパワートレインと進化したシャシーが織りなす走りを確かめつつ、ディーゼルエンジンがラインナップから消えた3代目CX-5について考えた。









































