マツダ2 15Sブラックトーンエディション(FF/6MT)
7年モノのドライビングプレジャー 2021.10.06 試乗記 前回のフルモデルチェンジから7年を経たマツダのBセグメントコンパクト「マツダ2」。ライバルが続々と全面刷新されるなかにあって、このクルマが依然として持ち続けるアドバンテージとはなんなのか? 進化を遂げた1.5リッターのガソリン車で確かめた。トピックは改良を受けたガソリンエンジン
トヨタの「ヤリス」「アクア」に「ホンダ・フィット」「日産ノート」……と、ここ1、2年で次々とフルモデルチェンジを果たした日本のBセグメント。それらを向こうに、2014年のフルモデルチェンジ以降、7年モノの古箱で戦うのがマツダ2だ。
リブランド戦略の一環で日本名が「デミオ」から改名され、マツダ2へと国際統一されたのは2019年のこと。その後も折につけ特別仕様車などを投入してテコ入れを図っている。が、販売台数は往時の半分程度で、近ごろは「スズキ・スイフト」とのつばぜり合いという状況が多い。
コモンアーキテクチャーを前提として一括企画や混流生産の高度化を果たしてきたマツダだが、FR系車台の量産が半ば公然化するなか、そしてトヨタと縁組している今、リソースをいかに振り向けるかのいかんではBセグメントがその割を食う可能性もゼロとはいえない。ましてや世の趨勢(すうせい)は電動化にあり、内燃機への風当たりは強い。一部の暴論にはあきれ果てあらがいたくもなる一方で、多勢に無勢という言葉が示すように、ある程度は同調せざるを得ない未来も覚悟しておくべきだろう。
そんななか、マツダ2はこの2021年6月にマイナーチェンジを受けている。主眼となったのは一部グレードのガソリンエンジンの燃費改善で、シリンダー内に取り込まれる空気を斜め渦流化し、直噴燃料との撹拌(かくはん)能力を高めて混合気の質を向上させる「ダイアゴナル・ボルテックス・コンバッション」を採用。これによりレギュラーガソリン対応ながら14.0の高圧縮化を図り、最大トルクの低回転移行とともに従来比で最大6.8%の燃費向上をみている。ちなみに、このエンジン制御には「SKYACYTIV-X」の開発で得られたノウハウを活用しており、スロットル操作に対する応答性やコントロール性の向上も果たしたという。さらにちなみに、ガソリンエンジンの側にリファインの手が入るのは、1.5リッターに一本化されてから初めてのことだ。
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今も感じられるマツダ2ならではの美点
今回試乗したのは、その新しいエンジンを搭載した「15Sプロアクティブ」をベースに、内外装に黒系の装飾を施した特別仕様車「15Sブラックトーンエディション」。その6段MTモデルという、いかにもマツダの広報車両らしいマニアックな仕様を編集のHくんがうれしそうに掘り出してきた。
改名以来の2年ぶりに乗るマツダ2。その間には前述の通り、ライバルが続々フルモデルチェンジを果たしているわけだが、そのデザイン、そして質感については、まったく見劣りはないと思う。シンプルだけど冷淡さはなく、抑揚度の高いエクステリアは内外問わずあらゆるBセグメントのなかでもしっかり自分の世界観を築いているし、インテリアも月日による褪(あ)せを感じさせない。
細部の仕上がりもいまだライバルと肩を並べるだけでなく、マツダがこだわる運転環境の整合性は今もクラストップにあるといっていいだろう。繊細な入力も受け入れるステアリングスポークの径や断面形状、オルガン式のアクセルペダル……と、それらをオフセットなくストレートにレイアウトできている点などは、長く乗れば乗るほどにほかにない美点として輝いてくるはずだ。一方で、成人男性だと長時間はつらい後席環境など、パッケージ面で割り切られているところがあるのは当然ながら変わっていない。このあたりはヤリス同等くらいに見込んでいたほうがいいと思う。
新しいエンジンのパフォーマンスについては、前型に対して特筆する差異は感じられない。マツダのレシプロエンジンにしては気持ちよく回ってくれる「P5-VPS」の個性はそのままだ。マツダ2にはスーパー耐久参戦のベース車両としても用いられる「15MB」というグレードもあるので、あえてMTを選んで走りを突き詰めようというのなら、よりハイパワーなそちらを選ぶという手もある。対すればこちらは、日常用途のなかで快適性もきちんと満たしながらクルマと仲良く付き合いたいという目的で選ぶMTという感じだろうか。
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対話性の高さこそ身上
マツダのクルマといえば、意のままに動かせることについては並ならぬ執念があるわけで、このマツダ2についても動的質感はライバルと一線を画していた。持ち前の加減速のゲインコントロールのしやすさに加えて、深からず浅からずと癖なく扱いやすいクラッチのしつけ、重すぎず軽すぎず、素直なトラベルで調律されたMTの手応え……と、そういう操作の行間からはしっかり機微が感じられる。
齢(よわい)をまったく感じさせないといえばそれはうそになるだろう。車体剛性やアシの動きの渋さ、軸モノの精度感などは軒並みレベルを高めたライバルに対して一歩譲るところで、それらの雑みが今やはっきりとマツダ2の古さとして表れている。が、それを補えるのが意のままに動くというこのインターフェイスのクリーンさだ。指に込めた力ひとつの微妙なニュアンスに至るところまで、自分の操作をリニアに反映してくれる。この解像度や表現力の高さが運転する楽しさへと帰結しているあたりは、「ロードスター」や「マツダ3」などと見事に同じベクトルだ。
速い遅いの問題ではなく、クルマといかに濃くつながるか。そういう類いのドライビングプレジャーを求めるのであれば、マツダ2はまだまだ選ぶ意味のあるクルマだと思う。もちろんMTは、その望むべき対話性をより高めてくれる。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
マツダ2 15Sブラックトーンエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4065×1695×1525mm
ホイールベース:2570mm
車重:1090kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:110PS(81kW)/6000rpm
最大トルク:142N・m(14.5kgf・m)/3500rpm
タイヤ:(前)185/60R16 86H/(後)185/60R16 86H(トーヨー・プロクセスR55)
燃費:20.3km/リッター(WLTCモード)
価格:179万8000円/テスト車=199万0500円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万3000円)/360°ビューモニター+フロントパーキングセンサー<センター+コーナー>+自動防眩(ぼうげん)ルームミラー(6万0500円)/ALHパッケージ<アダプティブLEDヘッドライト+ヘッドランプユニット内シグネチャーLEDランプ>(4万9500円) ※以下、販売店オプション ナビゲーション用SDカードPLUS(4万9500円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1495km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:131.1km
使用燃料:9.7リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.6km/リッター(満タン法)/13.0km/リッター(車載燃費計計測値)
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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