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BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ(FF/7AT)/メルセデス・ベンツB180(FF/7AT)

民主化されたプレミアム 2023.06.17 試乗記 鈴木 真人 「BMW 2シリーズ アクティブツアラー」と「メルセデス・ベンツBクラス」を比較試乗。姿かたちはよく似た両車だが、乗り味や使い勝手にはそれぞれのブランドの考え方が色濃く出ている。メインストリームの商品ではないものの、どちらも紛れもない力作だ。
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エレガントとアグレッシブ

(前編からの続き)

BMW 2シリーズ アクティブツアラーは、2022年にフルモデルチェンジされて2代目となった。基本的にはキープコンセプトだが、昨今のBMW流で、エクステリアでは大型キドニーグリルでアイデンティティーを強調している。「メルセデス・ベンツB180」は超小型スリーポインテッドスターを全面にちりばめるという対照的な手法を使っていたが、目的は同じだ。ブランドの象徴を顕示してオーナーの自尊心を満たそうとしている。

少し背の高いハッチバックということでフォルムはよく似ているが、印象は結構違う。メルセデスの考えるスポーティーというコンセプトを体現しながらもエレガントで保守的なイメージを与えるB180に対し、「218iアクティブツアラー」はアグレッシブで威圧感が前面に出ている。ボンネットの位置が高くて貫禄があるが、空力的には不利かもしれない。オーバーハングを限界まで切り詰めているところにBMWらしさが見える。

エンジンルームを見ると、隙間が多くてスカスカである。エンジンは3気筒の1.5リッターで、見た目にもはっきりとコンパクトだ。2リッター4気筒ディーゼルエンジンを搭載するモデルもあり、余裕を持った空間になっている。さらに大排気量のエンジンも難なく入れることができそうだ。

小さなエンジンながら、パンチのある加速力を持っている。156PSという最高出力はB180に対して20PSのアドバンテージにすぎないが、数字以上の差を感じた。右足に力を込めると意のままにパワーが湧き上がるのを感じる。演出は控えめで、エンジン音がさほど高まることもなくリニアに加速していく。

前編に続いて2代目「BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ」と「メルセデス・ベンツB180」を比較する。
前編に続いて2代目「BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ」と「メルセデス・ベンツB180」を比較する。拡大
「218i Mスポーツ」のインテリア。大型スクリーンが2枚並ぶという意味では「B180」と同じだが、センタースクリーンがグイッとドライバー側に向けられているのがBMWらしいところだ。
「218i Mスポーツ」のインテリア。大型スクリーンが2枚並ぶという意味では「B180」と同じだが、センタースクリーンがグイッとドライバー側に向けられているのがBMWらしいところだ。拡大
センターコンソールはフローティングスタイル。ドライバー側からは浮いているように見えるが、実際にはパッセンジャー側に柱が付いている。
センターコンソールはフローティングスタイル。ドライバー側からは浮いているように見えるが、実際にはパッセンジャー側に柱が付いている。拡大
高さを抑えたシフトセレクターをはじめ、センターコンソールのスイッチ類はフラットにレイアウトされる。アームレストの下には浅い収納スペースがあるものの、ヒンジがドライバー側にあるため左からしか開かない。
高さを抑えたシフトセレクターをはじめ、センターコンソールのスイッチ類はフラットにレイアウトされる。アームレストの下には浅い収納スペースがあるものの、ヒンジがドライバー側にあるため左からしか開かない。拡大
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非日常的なBoostボタン

高速道路での心地よさは格別だ。突き抜けていくような伸びのよさがある。速度が上がるほどにクルマの挙動が落ち着いてくるのが分かり、路面に張り付いたような感覚が得られる。高速コーナーの安定性については、B180に対して明らかなアドバンテージがあった。

ワインディングロードの走りでも、218iに軍配が上がる。コーナーからの立ち上がりでは、素早く加速を開始して次のコーナーに突き進んでいく。より大きな加速力が欲しければ、「Boost」の文字が刻印された左のパドルを引き続ければいい。「スポーツブーストモード」が始まり、10秒間パワーがアップする。メーターパネルにはカウントダウンの数字が表示され、気分を高揚させるのだ。

ただし、有効な場面は多くない。アクセルを強く踏み込んでいなければ作動しないので、公道でこの機能を存分に発揮するのは難しい。かつてF1で使われたオーバーテイクボタンのようなもので、レースで使うべき非日常的なモードである。いざという時のために備えられていると考え、通常はアクセルを踏み込むだけで追い越しにも十分な加速力を得られる。

スポーツ性能が高い代償として、乗り心地はあまりよくない。高速道路で路面の段差を拾うのはまだしも、街なかで常時ゴツゴツした突き上げを感じるのは困りものだ。B180も硬めの足まわりだが、快適性ではずっと上である。B180のほうが扁平(へんぺい)率の高い幅広タイヤを履いているのだから、サスペンションの設定がはっきりと操縦性重視になっているのだろう。

新型ではステアリングのボタンが整理され、ダイヤルとスライドスイッチを積極的に使うスタイルになった。左のパドルを引き続けると10秒間の「スポーツブーストモード」が起動する。
新型ではステアリングのボタンが整理され、ダイヤルとスライドスイッチを積極的に使うスタイルになった。左のパドルを引き続けると10秒間の「スポーツブーストモード」が起動する。拡大
ホワイトレザーにダイヤモンドステッチをあしらったシートはラグジュアリーな雰囲気。BMWらしく表皮の張りは強め。
ホワイトレザーにダイヤモンドステッチをあしらったシートはラグジュアリーな雰囲気。BMWらしく表皮の張りは強め。拡大
「Bクラス」に対するアドバンテージのひとつが後席にスライド機構が備わること。写真は奥を一番前に、手前を一番後ろに固定したところ。
「Bクラス」に対するアドバンテージのひとつが後席にスライド機構が備わること。写真は奥を一番前に、手前を一番後ろに固定したところ。拡大
後席は背もたれの角度調整もできる。こんな角度で座ることはないだろうが、一番立たせると写真のようになる。
後席は背もたれの角度調整もできる。こんな角度で座ることはないだろうが、一番立たせると写真のようになる。拡大
USBはタイプCポートが前後席にそれぞれ2つずつ備わっている。
USBはタイプCポートが前後席にそれぞれ2つずつ備わっている。拡大

変則的なドライブモード

同じコンパクトハッチバックでも、218iはよりパーソナルな用途に向けられているように感じた。B180はもう少し幅広い層をターゲットにしているようである。218iの運転席に座ると、センタースクリーンがドライバーに向けて設置されていることが分かる。BMWの伝統で、コックピット感を強調しているのだ。それが裏目に出ているのがセンターコンソールボックスである。左ハンドル用に設計されているので、右ハンドル仕様だとカバーが助手席側にしか開かない。

内装のしつらえは温かみのあったB180とはかなり異なる印象で、アバンギャルドで無機質だ。センターコンソールはフローティングしていて、下には空間がある。カップホルダーの前方にあるスマートフォントレイが秀逸なデザインだ。縦に設置してホルダーで押さえる構造になっているので、クルマが揺れても動かない。平置きするタイプだと、位置がズレて充電がストップすることがよくあるのだ。USBソケットは前席に2つ、後席に2つ。いずれもタイプCである。B180は前席3つ、後席1つだった。なぜ前席が優遇されているのかはよく分からない。

218iのドライブモードはちょっと変則的だ。「スポーツ」「エフィシエント」は普通なのだが、加えて「リラックス」「エクスプレッシブ」という選択肢が用意されている。それぞれ“落ち着いた環境でリラックスした走行”“印象的な視覚化と鮮やかなライト演出”と説明があるが、何を意味するのか理解するのが難しかった。特に後者が難解である。このモードを選ぶと、インクを水面に浮かべたような不思議なビジュアルがメーターパネルに現れて心をかき乱す。現代アート愛好家向けの設定なのだろうか。

B180にはモードセレクトの物理ボタンがあり、タッチパネルより使いやすいと感じた。しかし、そういう感覚はもはや古いのかもしれない。音声コントロールが進化すれば、手で操作する必要はなくなる。今のところ音声認識がパーフェクトとは言えない段階だが、近いうちに状況は変わるに違いない。

「Mスポーツ」の付くグレードには減衰力可変式の「Mアダプティブサスペンション」が備わっている。どのモードを選んでも乗り味は硬め。
「Mスポーツ」の付くグレードには減衰力可変式の「Mアダプティブサスペンション」が備わっている。どのモードを選んでも乗り味は硬め。拡大
いわゆるドライブモードは「マイモード」と呼称する。種類も「エコ」「スポーツ」などではなく「パーソナル」「エフィシェント」「エクスプレッシブ」など独特だ。
いわゆるドライブモードは「マイモード」と呼称する。種類も「エコ」「スポーツ」などではなく「パーソナル」「エフィシェント」「エクスプレッシブ」など独特だ。拡大
「マイモード」ではパワートレインなどの制御だけでなく、空調や画面表示をはじめとした車両全体の雰囲気がまとめて変更される。
「マイモード」ではパワートレインなどの制御だけでなく、空調や画面表示をはじめとした車両全体の雰囲気がまとめて変更される。拡大
「エクスプレッシブ」モード時のメーターパネル。情報表示が最小限になり、現代アート風の模様が大写しになる。
「エクスプレッシブ」モード時のメーターパネル。情報表示が最小限になり、現代アート風の模様が大写しになる。拡大

歓迎すべきカジュアル化

後席の乗員は、どちらも安楽な姿勢をとることができる。前席の下に大きなスペースがあり、足を伸ばして入れることができるのだ。ミニバンやSUVほどの広さはないが、長時間ドライブでも快適に過ごすことができるはずである。218iは後席にスライド機構が備えられているのもうれしい。

後席シートバックはいずれも3分割可倒式。荷室の大きさはB180が445リッターで218iが470リッター。ほぼ同じだが、使い勝手には差がある。B180は床面の高さを2段階に調整できるだけだが、218iは下にサブ収納スペースがある。しかも、床面はヒンジ式のはね上げスタイルで使いやすい。ただし、後席シートバックを前方に倒した際の最大容量は、B180が1540リッター、218iが1455リッターである。

今回の比較試乗について、最初に「コレジャナイ対決」などと書いてしまった。FFのコンパクトハッチバックというジャンルは、メルセデス・ベンツにとってもBMWにとっても主戦場ではないことは事実である。得意技を封じられているわけだから、実力を発揮できなくても仕方がない。

それでもしっかりと魅力的なモデルに仕立て上げてくるところが、老舗の底力である。世界を見渡しても主流ではなくなったタイプのクルマでも、真面目につくり込めば商品力を保つことができることを証明した。かつては仰ぎ見るものだったメルセデス・ベンツとBMWが、手の届くところにある。ドイツ車の民主化とカジュアル化は、間違いなく歓迎すべき潮流なのだ。

(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

1.5リッター3気筒エンジンは最高出力156PSと最大トルク230N・mを発生。7段のデュアルクラッチ式ATとの組み合わせで軽快に走る。
1.5リッター3気筒エンジンは最高出力156PSと最大トルク230N・mを発生。7段のデュアルクラッチ式ATとの組み合わせで軽快に走る。拡大
荷室の容量は470リッター。後席の背もたれが3分割式なのは「B180」と同様。
荷室の容量は470リッター。後席の背もたれが3分割式なのは「B180」と同様。拡大
「218i」の荷室の床下には大きなサブスペースがある。床板は2つ折りにしてはね上げ、固定できるのがスマートだ。
「218i」の荷室の床下には大きなサブスペースがある。床板は2つ折りにしてはね上げ、固定できるのがスマートだ。拡大
どちらもブランドの看板と呼ぶべきポジションではないが、プレミアムブランドのクルマとして立派なクオリティーに仕上がっている。
どちらもブランドの看板と呼ぶべきポジションではないが、プレミアムブランドのクルマとして立派なクオリティーに仕上がっている。拡大
BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ
BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ拡大
 
BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ/メルセデス・ベンツB180(後編)【試乗記】の画像拡大

テスト車のデータ

BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1825×1565mm
ホイールベース:2670mm
車重:1530kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:156PS(115kW)/5000rpm
最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1500-4600rpm
タイヤ:(前)205/60R17 97W/(後)205/60R17 97W(ハンコック・ヴェンタス プライム3)
燃費:14.1km/リッター(WLTCモード)
価格:447万円/テスト車:549万円
オプション装備:ボディーカラー<ストームベイ>(16万円)/ヴァーネスカレザー<オイスター/ブラック>(0円)/テクノロジーパッケージ(41万円)/ハイラインパッケージ(27万9000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(17万1000円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1920km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:324.6km
使用燃料:30.4リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:10.7km/リッター(車載燃費計計測値)/11.5km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデス・ベンツB180
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BMW 218iアクティブツアラーMスポーツ/メルセデス・ベンツB180(後編)【試乗記】の画像拡大

メルセデス・ベンツB180

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4430×1795×1550mm
ホイールベース:2730mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/1460-4000rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)225/45R18 91W(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:14.9km/リッター(WLTCモード)
価格:537万円/テスト車=586万3000円
オプション装備:メタリックカラー<イリジウムシルバー>(9万5000円)/AMGラインパッケージ(39万8000円)

テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:804km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:460.2km
使用燃料:33.7リッター(プレミアムガソリン)
参考燃費:13.7km/リッター(車載燃費計計測値)/13.7km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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