プジョー408 GTハイブリッド(FF/8AT)
創作系モダンフレンチ 2023.06.30 試乗記 プジョーの4ドアクロスオーバークーペ「408」が上陸。ファストバックとクロスオーバーを融合し、セダン・ステーションワゴン・SUVの特性をもつというブランニューモデルの仕上がりを、プラグインハイブリッドシステム搭載車で確かめた。欧州で人気のSUVクーペ
プジョー408は日本法人のプレスリリースによると“解き放たれた新種”だとか。「40~」という車名はかつてDセグメントセダンおよびツーリングワゴンを指す車名だったが、2011年に生産を終えた「407」を最後に、その役割は「607」と統合された「508」に受け継がれた。というわけで、新しい408は、クルマとしては407とはまったく別系統の商品である。
各メディアでは408を「シトロエンC5 X」のプジョー版と表現する記述も多い。なるほど、大きめの地上高が与えられた、リアにハッチゲートをもつSUVクーペサルーン……という意味では、408とC5 Xはよく似ている。国交省に届け出られた日本仕様の諸元値では両車のホイールベースに5mmのちがいがあるが、本国公表値で2mm差しかなく、これも実質的には同寸と考えていい。つまり、ハードウエア的にもC5 Xととても近い。
ただ、全長は前後オーバーハングが短く削り取られた408のほうが、C5 Xのそれより100mm以上短い。4700mmというその全長は、プジョー内では「308SW」より45mm長く、508のサルーンより50mm短い……というポイントに落とし込まれてる。ちなみに、C5 Xは(中国市場専用の「C6」を例外とすれば)シトロエンのサルーン系フラッグシップという位置づけだ。よって、その全長も、プジョーの「508SW」よりさらに長い4805mmという堂々たるサイズになっている。
SUV形態こそがフツーのクルマになった現在、そこから派生した“SUVクーペ”は、とくに欧州で人気のようだ。ご承知のように、ドイツ系の高級ブランドではSUVクーペはもはや定番商品だし、日本発祥の「日産ジューク」や「トヨタC-HR」も欧州で確固たる地位を築いて、どちらも現地では2代目が登場している。プジョーの宿敵であるルノーは「アルカナ」の成功に味をしめて(失礼)、さらに上級の「ラファール」も先日発表した。
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明確で強いクーペ感
408もこうした欧州を中心として人気のSUVクーペ市場に、遅ればせながら参入した一台ということだろう。ただし、多くのライバルに対して408がちょっと独特なのは、1500mmという全高の低さである。
多くのSUVクーペは、クーペといいつつも、セダンやハッチバックのような伝統的な車形よりは背高なパッケージレイアウトを採用する例が大半だ。しかし、408は、たとえばハッチバックの「308」より40mm大きな地上高を与えられつつも、全高は308より15~25mm高いだけ。単純計算だと、上屋そのものは308のそれより薄いといえるほどだ。
まあ、プジョーの場合は、上級の508が全高1420mmというスポーツカーはだしのプロポーションなので、それと比較すれば408もSUVらしい背高レイアウトといえなくもない。とはいえ、他社SUVクーペと比較すれば、408は明確に背が低くてクーペ感が強い。
そんな408のエクステリアデザインは、これまでプジョーが問うてきたテーマを、より純化・先鋭化させた印象である。車体と溶け込むような「フレームレスグリル」はその最たるものだし、フロントのサーベルランプやリアの薄目3連テールランプ、U字形に切り欠かれたエンジンフード、余計なモールを廃したプロポーション表現は、いかにも最近のプジョーだ。
408はそのうえで、フレームレスグリルのグラデーションなどがさらに複雑で凝った処理になっているのは、写真以上に実車のほうが分かりやすい。また、ポリゴン風の多角形と曲線を融合させたプロポーションの表現も、どのプジョーよりも立体的に強調されている。これも写真で見るより、自然光の下で肉眼で見る実車のほうが、より実感できる。
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内装の仕立てや品質は上級
408のパワートレインは、1.6リッター直4ターボを核とするプラグインハイブリッド車(PHEV)と1.2リッター直3ターボ車の2本立て。横浜で開催された今回のメディア試乗会で、webCGチームに供されたのは前者のPHEVだった。「日本ではディーゼルを期待される声があるのも理解していますが、408は世界的にも、クルマのコンセプトに合致するPHEVと1.2リッターガソリンしか用意していません」とは、日本法人担当者の弁だ。
408に使われている「EMP2(厳密にはその最新世代である『V3』とか)」は、旧グループPSAのC~Dセグメントに広く使われる上級プラットフォームである。ただ、408のリアサスペンションにトーションビームが使われるところからも、ハードウエア的にはCセグメントの308に近いことが想像できる。本国の資料でも、408は“Cセグメントのトップレンジ”という位置づけと表現されているし、408の開発作業も308と並行するカタチで進められたそうだ。
それを象徴するのがインテリアだ。ご覧のようにダッシュボードやシートなどインテリアの基本デザインは308と共通。シート表皮などの細部では差別化されている部分もあるが、各部の仕立て品質、装備レベルでは大きな差はない。場所によってレザーやスエード、ソフトパッドがキメ細かく使い分けられた調度類の仕立て品質は、Cセグメントでも上級の部類に入る。
室内空間はディメンションから想像されるとおりである。後席は308のハッチバックより110mm、308SWより60mm長いホイールベースのおかげで、レッグルームこそ余裕はあるが、ヘッドまわりは308と同等か、少しせまく感じる。しかも、サイドからの採光は明らかに308にゆずるので、408は閉所感が強い。いっぽうで、運転席からは308より40mm大きな地上高もあって、少しだけ眺めがいい。
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いつの間にこんな静かに?
今回は横浜・みなとみらい周辺の市街地と都市高速での、実質1時間未満の短時間試乗だったが、308あるいは508、あるいはC5 Xとも異なる408ならではの味は感じられた。
パワートレインは他モデルでもおなじみのシステム最高出力225PS+12.4kWh電池のPHEVシステムで、「ハイブリッド」「エレクトリック」「スポーツ」という3種類のドライブモードがあるが、スポーツ以外なら電池残量があるうちは基本的に電気走行となる。
このPHEVシステムは、408を含むFF車では1モーター構成となるので、充電しながらモーター駆動するシリーズハイブリッド走行は物理的にできない。よって、見た目の電池残量が尽きた状態でのスタートとなった今回は、必然的にエンジン主体の走行となった。
ただ、実際は一定の電池残量をキープする制御のようで、見た目は電池が空っぽでも、ゆるやかなゼロ発進や低負荷巡航時には、エンジンを停止してEV状態に切り替わることもしばしばだ。ちなみに、エンジンが回りっぱなしになるスポーツモードには“隠れチャージモード”的な役割もあり、これで長時間走ると、電池残量をある程度まで戻すことができる。
それはともかく、今回の408はエンジンが回っていても「いつの間にこんな静かになった?」と驚くくらいの静粛性が印象的だ。無意識だとエンジンのオンオフにも気づかないほどで、耳に届くエンジン音だけでなく、ハイブリッドの振動制御もじつに巧妙になっていた。
速度を問わずピタリと水平に安定したフラット姿勢をくずさず、超小径ステアリングを少しばかり乱暴にあつかっても乱れることもなく、それでいて路面の凹凸を適度にいなすフットワークには、素直に感心した。それは確信犯的にふんわり上下させるC5 Xとはもちろん一線を画し、可変ダンパーをもつ508の絵に描いたネコアシ感ともちがう。昔ながらの好事家は「フランス車っぽくない」と評するかもしれないが、C5 Xや508と冷静かつ客観的に比較すれば、高級感うんぬんはともかく、408の味わいはより現代的といえる。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
プジョー408 GTハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4700×1850×1500mm
ホイールベース:2790mm
車重:1740kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:180PS(132kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:110PS(81kW)/2500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-2500rpm
システム最高出力:225PS
システム最大トルク:360N・m
タイヤ:(前)205/55R19 97V XL/(後)205/55R19 97V XL(ミシュランeプライマシー)
ハイブリッド燃料消費率:17.1km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:66km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:66km(WLTCモード)
交流電力量消費率:193Wh/km(WLTCモード)
価格:629万円/テスト車=630万7215円
オプション装備:メタリックペイント<オブセッションブルー>(0円)/ETC+取り付けブラケット(1万7215円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:950km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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