プジョー408 GTハイブリッド(FF/6AT)
絶妙なるハーモニー 2025.09.19 試乗記 プジョーのクーペSUV「408」に1.2リッター直3ターボエンジンを核とするマイルドハイブリッド車(MHEV)が追加された。ステランティスが搭載を推進する最新のパワーユニットと、スタイリッシュなフレンチクロスオーバーが織りなす走りを確かめた。新しい408 GTの“ハイブリッド”
ファストバックとSUVを融合したフォルムが目を引くクロスオーバーモデル、プジョー408は、セダンやステーションワゴン、さらにはSUVの特性を持つ、機能性と高いデザイン性をバランスさせたニューモデルと紹介される。そのセグメントやカテゴリーを超えたキャラクターは、既存のSUVでみられるルーフ後端とハッチゲートを斜めにして「クーペSUVでござい」と紹介されるものとは一線を画している。
日本への導入は2023年6月にスタートした。当初のラインナップはプラグインハイブリッド車(PHEV)とガソリンエンジン車の2本立て。PHEVの「408 GTハイブリッド」は最高出力180PSの1.6リッター直4ターボに同110PSのフロントモーターと8段ATが組み合わされ、225PSのシステム最高出力を発生する。ガソリンエンジン車は「408アリュール」と「408 GT」の2グレードで展開された。最高出力130PSの1.2リッター直3ターボに、こちらも8段ATが組み合わされる。このターボエンジンは、「ピュアテック」という名称で知られている。
今回ステアリングを握ったのは、新しい408 GTハイブリッドである。その車名だけをみればPHEVが新しくなったのかと思うが、さにあらず。搭載されるパワーユニットは、現在ステランティスが導入を推進している、1.2リッター直3ガソリンターボエンジンにモーターを内蔵した6段デュアルクラッチトランスミッション「e-DCT」を組み合わせた48Vマイルドハイブリッドである。このマイルドハイブリッド車(MHEV)の導入に伴い、既存のPHEVは「408 GTプラグインハイブリッド」へと車名が変更されている。したがって、同年式に2種類の408 GTハイブリッドが存在することになり、あとあと中古車市場などで混乱を招きそう……というのはまったくの余談だ。
最新の408 GTハイブリッドに搭載される48Vのマイルドハイブリッドは、1.2リッター直3直噴ターボエンジンが136PSの最高出力を発生。モーターは同22PSという実力だ。これらの数字を含めてこのパワーユニットは、基本的にステランティスの他ブランドにラインナップされる48V MHEVと同じものである。
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一見しただけでは違いがわからない
あらためてステランティスの48V MHEVに注目すると、採用モデルの多さにおどろく。国内に導入された搭載車種を挙げると、「シトロエンC4」を皮切りに、「フィアット600」「アルファ・ロメオ・ジュニア」、「プジョー308」「3008」「2008」が名を連ねる。ジープブランドでは「レネゲード」に48V MHEVが設定されている。ただし、こちらはシステムが少々異なるため、今回は触れない。とにかく、こうして搭載モデルを見るだけでも圧倒されるステランティスのMHEV戦略であるが、そのビジネスストラテジーについては世良耕太氏のコラムに明るいので、そちらをご一読いただきたい(参照)。
プジョー408は、一見しただけではその車両がどんなパワートレインを積んでいるのかわかりづらいモデルである。言い換えればパワートレインが異なっていても、外観はほぼ同じ。エントリーグレードのアリュールがラインナップから消え、GTグレードのみとなった今では、ホイールすら同一である。PHEVは左フェンダーに充電ポートを配置しているので、リアの両フェンダーにリッドがあればそれがPHEVとわかる程度である。MHEVはさすが最新モデルとあって、歩行者などとの衝突時にボンネット後部を自動で持ち上げて衝撃を軽減する「アクティブボンネット」を3グレード中で唯一採用しているが、その有無を外観から判断するのは難しい。
少し高めの着座位置ながら、その全高は1500mmに抑えられている。19インチのタイヤと170mmの最低地上高がSUVらしさを演出しているとはいえ、上屋となるボディーそのものはいわゆる5ドアハッチバックモデルと紹介してもいい。したがって同クラスの正統派SUVと比較すれば、車内に空間的なアドバンテージはない。ただし、2790mmと長いホイールベースのおかげで、後席の居住性に不満を覚えることはないはず。大人4人がロングツーリングに出かけても、ストレスなく移動が楽しめるだろう。
MHEVといっても、操作は既存のガソリンエンジン車と変わらない。約30km/hまでなら100%電動走行も可能とアナウンスされるが、エアコンがフル稼働する残暑厳しき折には、発進時のほんの数秒のみで電動走行が味わえる程度である。
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純粋に運転を楽しめる
いったん走りだしてしまえばモーターは脇役に徹し、エンジンが主役のドライブとなる。いや、もちろん適切な場面でモーターはエンジンをバランスよくアシストしている。例えばパーシャルスロットルからもう一段深くアクセルペダルを踏み、走行レーンから追い越しレーンへと車線を変えるようなシーンでは、1.2リッターの純ガソリンターボ車よりも俊敏な動きをみせる。トルクが太いだけでなく、そのレスポンスも申し分ない。
170mmの最低地上高を意識させない路面をなめるようにトレースするハンドリングも、408 GTハイブリッドの魅力である。ドライバーの意思とステアリング操作どおりにノーズを左右に振る動き、アクセルペダルに呼応する前後の加重移動、そのどれもが理想的だ。ロードノイズが比較的抑え込まれ、キャビンに不快な音や振動がさほど伝わってこないのも、快適性の向上に寄与している。
今回試乗した車両は205/55R19サイズの「ミシュランeプライマシー」タイヤを装着していて、当然その恩恵もあろう。とはいえ、「EMP2」プラットフォームを用いる車両としてほぼ最後発となる408は、熟成されたシャシーによる足さばきのよさも印象的である。路面のアンジュレーションを適度に受け流すフットワークや、高速域でフラットに保たれる姿勢は、かなり上等だ。完成度が高いと言い換えてもいい。
その動きには、このサイズのハイブリッド車にして1.5tしかない車重も関係しているのであろうが、ターボラグを感じさせないモーターアシストが利いている加速フィールと、軽快感あふれるハンドリングのハーモニーは絶妙。ハイブリッドゆえに期待したくなる電動車感覚は、さすがにPHEVには遠く及ばないが、エンジンを回して得られる推進力を耳と体で感じることもできるとあって、純粋に運転という作業を楽しめる。
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回生ブレーキにMHEVのアドバンテージ
旧グループPSAとベルギーのパンチパワートレインとの合弁会社をルーツとしたステランティスの拠点で製造されるe-DCTは、モーターを組み込んだとはいえ、そもそもがDCTである。ゆえに極低速域、例えば駐車時や、歩行者や自転車の飛び出しに注意しながら裏道をそろりと走るときなどにぎくしゃくした動きを覚えることがある。大げさにいえば、パワートレインのぐにょぐにょしたようなその動きは、ステランティスのMHEVに共通するくせで、残念ながらこの408 GTハイブリッドでも完全になくなってはいない。
ただ、チョイ乗りで終わった最新の3008を除く一連のMHEVをしっかりと何台か試した経験からいえば、408 GTハイブリッドは、その違和感が一番少ない。リリース年次ならば、プラットフォームを「e-CMP」としたアルファ・ロメオ・ジュニアあたりで仕上がりレベルの向上がみられそうなものだが、自然な走行フィールという点では、408 GTハイブリッドに軍配を上げたい。
今回の試乗は、東京を後に東名高速を沼津で降り、伊豆半島に西からアプローチ。いったん海沿いに南下した後で、同半島を北上・縦断するようなルートで行った。帰路は大小のカーブを擁する有料道路をクルージング速度でのんびりと下る。MHEVらしく回生ブレーキの利きは申し分なく、たまにフットブレーキを使う程度で、予想以上に楽しく快適にワインディングロードを下ることができた。ワンペダルとまではいかないものの、マイルドハイブリッドのアドバンテージを感じた瞬間である。
プジョー408は、これぞという直接のライバルが見当たらないユニークなポジションにいる。もちろん血縁関係にある「シトロエンC5 X」は比較すべき筆頭である。シルエットを眺めれば、車格が上とは承知の「トヨタ・クラウン クロスオーバー」も並べてみたくなる。
いかにもプジョーらしい顔つきと独創的なフォルム、立体的な「iコックピット」のインテリア、ソリッドなのにしなやかな乗り心地、そして時流に乗ったマイルドハイブリッドを積むとなれば、ユニークな存在と紹介できるのは確か。それは、ルーフラインとリアゲートに手を加えただけでスタイリッシュを気取るクーペSUVとは距離を置いたフレンチスタイル。走りとスタイリングのハーモニーもまた格別である。
(文=櫻井健一/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=ステランティス ジャパン)
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テスト車のデータ
プジョー408 GTハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4700×1850×1500mm
ホイールベース:2790mm
車重:1500kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:22PS(16kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
システム最高出力:145PS(107kW)
タイヤ:(前)205/55R19 97V/(後)205/55R19 97V(ミシュランeプライマシー)
燃費:20.4km/リッター(WLTCモード)
価格:529万円/テスト車=542万8570円
オプション装備:ボディーカラー<オケナイトホワイト>(6万0500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダーV263A(5万9950円)/ETC1.0車載器(1万6060円)/電源ハーネス(2060円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:547km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:377.0km
使用燃料:33.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.1km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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