レクサスの充電サービスにみる「BEVのカーライフで大事なこと」
2023.07.03 デイリーコラム待ちの時間をどう使う?
トヨタ自動車は2023年6月15日、レクサスのバッテリーEV(BEV)オーナー向けの急速充電ステーション第1弾として、東京ミッドタウン日比谷に「レクサス充電ステーション」を開設した。
レクサスのオーナーは専用アプリまたはオーナーズデスクを通じて、駐車場にある充電ステーション(2基設置)を最大60日前から事前予約することが可能。予約したクルマで充電ステーションに向かうと、駐車場のカメラが車番を認証して自動でスタンドを下げ、駐車が可能になる。急速充電器(最大出力150kW)での充電後は自動支払いが行われるので、現地での支払い手続きは不要だ。
BEVオーナー向け急速充電ステーションの設置は、「BEVにまつわるユーザーの不安と不便の解消」が狙いだ。東京ミッドタウン日比谷のケースでは、予約可能な充電ステーションを設けてBEVの使用にまつわる不便を解消しただけでなく、“コト消費”と結びつけたのがポイントだ。東京ミッドタウンでの充電の待ち時間には、レクサスのブランド体験型施設であるLEXUS MEETS ...の併設カフェでお茶を楽しんだり、提携する店舗でマッサージなどを受けたりすることができる。それも優待価格などの特典付きで。
海外での事例になるが、アウディは同年6月21日、オーストリア初となる「Audi charging hub」をザルツブルクにオープンしたと発表した。ニュルンベルク、ベルリン(いずれもドイツ)、チューリッヒ(スイス)に続き、世界で4番目の拠点だ。
設備・サービスの内容はレクサス充電ステーションに似ている。急速充電器(6基ある)は専用アプリを通じて予約可能で、予約時間から15分後までリザーブされる。車両がプラグ&チャージ機能に対応している場合は、充電ステーションでの決済は不要。クレジットカードやApple Pay、Google Payでの支払いも可能だ。
コト消費と結びついているのもAudi charging hubの特徴で、娯楽施設やレストランを備えた商業施設が隣接。充電ステーションには、近隣の飲食やショッピング、観光施設を案内する情報端末が設置されている。
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BEVへの意識を変える取り組み
BEVとの付き合いに不安を感じている人たちが一定数存在するのは、洋の東西を問わないということだろう。ガソリンエンジン車であれディーゼルエンジン車であれ、はたまたハイブリッド車であれ、エンジンを積んだクルマのエネルギー補給はガソリンスタンドで行うと相場は決まっている。ところがBEVの場合、エネルギーである電気の補充方法には複数の選択肢がある。自宅で行う普通充電と、商業施設などで行う急速充電・普通充電だ。
BEVの充電は自宅で行うものと決めつけてしまうと、BEVの普及を阻むことになる。現状、充電器の設置が不可能、もしくは設置のハードルが高い集合住宅に住んでいる人たちは選択肢から外れてしまうからだ。国内でレクサスが始めた急速充電ステーションにまつわるサービスは、BEVの所有に二の足を踏む潜在ユーザーの心理的なバリアを取り除くきっかけになる可能性を秘めている。
また、すでにBEVを所有するユーザーの行動機会を増やすきっかけにもなりそうだ。BEVで出かけたときの第1の不安は、充電だろう。充電スポットを探すことはできても、到着してみれば先約がいて予想以上に待たされたなんてことになりかねず、そういう経験が一度でもあると、BEVとの付き合いにネガティブな印象が染みついてしまう。充電ステーションの予約ができるのは、BEVにまつわる不便の解消につながるため、既存ユーザーに歓迎されるはずだ。
トヨタは2023年6月8日に行ったテクニカルワークショップで、2027年~2028年に向けて全固体電池の実用化にチャレンジすると表明した。全固体電池が実用化され、そのポテンシャルを生かせる急速充電器が整備されれば「レクサスRZ」で30分かかる急速充電時間(充電率:10%→80%)が10分以下に短縮される。それでもガソリンや軽油の給油に要する時間の倍程度必要だが、現在のように時間を持て余すことはないだろう。世の中に全固体電池が普及しそれに見合うインフラが整備されるのはもっと先の話で、それまでは、自宅ではなく外で充電する人たちのための長い充電時間の過ごし方を考えなければならない。
その意味でも、インセンティブが働く特典付きコト消費と結びつけたレクサスのオーナー向け充電ステーションの開設は注目に値する。BEVの充電は外でしてもいいんだというマインドを潜在・既存のオーナーに植えつけるうえで。また、BEVとの生活が充実したコト消費と両立するのだと実感させるうえで。
(文=世良耕太/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)
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世良 耕太
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