フォード・レンジャー ラプター【海外試乗記】
誰もこいつを止められない 2023.08.18 アウトビルトジャパン 原始の獣と呼ばれ、まさにそのように振る舞う。「フォード・レンジャー ラプター」はパワフルで派手で速いという、非常に特殊なピックアップトラックだ。つまり、とても楽しいのだ。※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
荒野を駆けるためのすべてが備わっている
ラテン語で捕食者や猛禽(もうきん)類を意味する「ラプター(Raptor)」という名前は、恐ろしい恐竜、戦闘機、ミサイルと、そういう類いのものに好んで使われる。そしてフォードのモデルにも。ラプターは、彼らが擁するピックアップトラックの新型「レンジャー」における、最もパワフルでワイルドなバリエーションなのだ。
巨大な「FORD」のレタリングが書かれた四角くてイカツいフロントマスクに、ワイドなホイールアーチ、ダブルキャブ、バー、長い荷台と、このクルマはすでに実に大胆だ。そして、移動するフラットベッドトラックに必要なすべてが装備されている。
フルタイム4WD、オフロード向けのリダクションギア、前後アクスルのリミテッドスリップデファレンシャル、そして目の粗い17インチのオールテレインタイヤ「BFグッドリッチ・バハ チャンピオン」が、過酷な使われ方に備えている。さらに、2.3mmの厚さを持つスチール製の頑丈なアンダーガードも装備される。
ベーシックなレンジャーと比べると、シャシーは驚くほど精巧に改良されている。フロントサスペンションは独立懸架、リアはこのジャンルでは典型的なリジッドアクスルだが、リーフスプリングに代わってコイルスプリングが使用される。フォックスレーシング製の強力なアダプティブショックアブソーバーを見れば、オフロード愛好家は絶句するだろう。最低地上高(265mm)とサスペンショントラベル(フロント256mm、リア290mm)は、余裕たっぷり。
そしてエンジンだ。先代のようなふ抜けの2リッター直4ディーゼルではない。ツインターボで最高出力292PSを発生する、非常にカジュアルな3リッターV6ガソリンエンジンが、10段オートマチックと組み合わされている。
![]() |
フラップエキゾーストから響く“バハサウンド”
攻撃的な……ああ、失礼。力強いアンサンブルを奏でるV6は、野生のバッファローのようにたくましく、トルクフルだ。ラプターはゼロから100km/hまで7.9秒で一気に駆け抜ける。
フラップエキゾーストからのサウンドは、「クワイエット」「ノーマル」「スポーツ」「バハ」という設定の間で調整できる。これにより、目立たないように通りにこっそり出ることもできるが、オープンな場所では大音量を放つことも可能だ。V6の咆哮(ほうこう)はバハモードではハードなリフを奏で、ブーミーなベースが大音量で荒々しいしゃがれ声を上げる。ボ・ディドリーは言うに及ばず、ビル・ヘイリーやエディ・コクランも大喜びだろう。
ドライビングプログラムには、さまざまなシステム……エンジン、トランスミッション、ABS、トラクションスタビリティーコントロール、ステアリング、スロットル特性……を調整する7つのモードがある。オンロード用には「ノーマル」「スポーツ」「グラス/グラベル」の3種類。そしてオフロード用には「石/岩」「砂/雪」「泥/わだち」、そして「バハ」モードの4種類。さいごのひとつは、メキシコのバハ・カリフォルニア半島と、そこで開催される伝説的なオフロード・デザートレース「バハ1000」にちなんで名づけられた。クレイジーな高速マシンだ。
![]() |
どんな障害もこのクルマを止めることはできない
バハモードにおけるフォードの目標は、可能な限り高速でオフロードを走行することであり、とりわけレースで彼らが採用しているアンチラグシステムを駆使している。ドライバーがアクセルから足を離しても、スロットルは最大3秒間開いたままになり、ターボの回転が維持される。これにより、全回転域で高いブースト圧が維持される。
なんといっても、機能的だ。大きなパワーとグリップ力を備えたラプターは、オフロードでは基本的にほとんど止めることのできないクライミングの才能を発揮し、ストイックに、臆することなく、堂々と自分の道を突き進む。しかし並外れたスピードも持ち合わせている。ラプターは望めばオフロードでも本当に速く走れるのだ。
加えて、まったく不慣れな人のためにオフロード用のクルーズコントロール(トレイルコントロール)も用意されている。車速は32km/hまで対応しており、ドライバーがすることといえばステアリングを切るだけ。あとはラプターが何とかしてくれる。これだとかなり平和的になる。結局のところ、ロックンロールには休憩が必要なのだ。
結論
「ラプター」には個性があり、運転が楽しく、オフロードではほとんど止められない。そしてだまされてはいけない。武骨な外観の裏には高い技術力がある。尊敬するよ、フォード。
(Text=Dirk Branke/Photos=Tom Salt、AUTO BILD)
![]() |

AUTO BILD 編集部
世界最大級のクルマ情報サイトAUTO BILDの日本版。いち早い新車情報。高品質なオリジナル動画ビデオ満載。チューニングカー、ネオクラシックなど世界のクルマ情報は「アウトビルトジャパン」でゲット!
-
【ニュース】高性能を誇るBMWのラグジュアリーエステート「M5ツーリング」が復活! その魅力とは? 2024.9.6 高性能サルーン新型「BMW M5」に続き、そのワゴンバージョンたる新型「M5ツーリング」が登場。ユーティリティーからスリルまで幅広いニーズをパーフェクトに満たす“スーパーワゴン”とは、どんなクルマなのか?
-
MINIクーパーSE(FWD)【海外試乗記】 2024.8.21 電気自動車でも内燃機関車でも、常に「クーパー」と呼ばれるようになった新型MINIのハッチバック。価格にデザイン、パワーユニット、装備、そしてドライビングテストリポートと、新しくなったMINIクーパーの全情報をお届けする!
-
スズキ・スイフト(FF/5MT)【海外試乗記】 2024.8.20 世界で900万台以上が販売されてきた大人気モデル「スズキ・スイフト」。7代目となる新型は、海外でどのように評価されているのか? これまでの成功をさらに発展させることを目指し、スズキが投入した小さな巨人に、『AUTO BILD』のスタッフが試乗した。
-
スマート#1ピュア(RWD)/#1ブラバス(4WD)【海外試乗記】 2024.8.20 続々とラインナップを拡大している、スマートブランドのフル電動SUV「スマート#1」とはどんなクルマなのか? その価格とデザインからパワーユニット、イクイップメント、試乗した印象まで、すべての情報をお届けしよう。
-
【ニュース】電動ルノー・トゥインゴの最新情報 2024.8.15 ルノーの電気自動車(BEV)を手がける新会社アンペアが、2025年にコンパクトBEVとして「トゥインゴ」を復活させる。初代トゥインゴを想起させるデザインや価格、そしてパワーユニットまで、現時点でのすべての情報をお届けする。
-
NEW
スズキが未来の技術戦略を発表! “身近なクルマ”にこだわるメーカーが示した問題提起
2025.9.15デイリーコラムスズキが、劇的な車両の軽量化をかなえる「Sライト」や、次世代パワートレインなどの開発状況を発表。未来の自動車はどうあるべきか? どうすれば、生活に寄りそうクルマを提供し続けられるのか? 彼らの示した問題提起と、“身近なクルマ”の未来を考える。 -
NEW
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】
2025.9.15試乗記フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。 -
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(後編)
2025.9.14ミスター・スバル 辰己英治の目利き万能ハッチバック「フォルクスワーゲン・ゴルフ」をベースに、4WDと高出力ターボエンジンで走りを徹底的に磨いた「ゴルフR」。そんな夢のようなクルマに欠けているものとは何か? ミスター・スバルこと辰己英治が感じた「期待とのズレ」とは? -
スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】
2025.9.13試乗記「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”【試乗記】
2025.9.12試乗記レースやラリーで鍛えられた4WDスポーツ「トヨタGRヤリス」が、2025年モデルに進化。強化されたシャシーや新しいパワートレイン制御、新設定のエアロパーツは、その走りにどのような変化をもたらしたのか? クローズドコースで遠慮なく確かめた。 -
新型スーパーカー「フェノメノ」に見る“ランボルギーニの今とこれから”
2025.9.12デイリーコラム新型スーパーカー「フェノメノ」の発表会で、旧知の仲でもあるランボルギーニのトップ4とモータージャーナリスト西川 淳が会談。特別な場だからこそ聞けた、“つくり手の思い”や同ブランドの今後の商品戦略を報告する。