【F1 2023】第14戦オランダGP続報:フェルスタッペン、母国で最多連勝記録タイとなる9連勝を達成
2023.08.28 自動車ニュース![]() |
2023年8月27日、オランダのザントフールト・サーキットで行われたF1世界選手権第14戦オランダGP。突然の雨も赤旗中断もなんのその、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが母国で無敵の快進撃を披露した。
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レッドブル以外は激戦状態
3週間のサマーブレイクが終わり、いよいよ2023年シーズンは残り10戦の後半戦に突入した。前半12戦のすべてで優勝したレッドブルは史上最多となる連勝記録を更新中。さらに前戦ベルギーGPで破竹の8連勝を飾ったマックス・フェルスタッペンは、母国オランダの熱狂的なファンの前で、2013年にセバスチャン・ベッテルが成し遂げた9連勝というレコードに挑む。
前半戦だけで314点ものポイントを稼いだフェルスタッペンは、チャンピオンシップ2位でチームメイトのセルジオ・ペレスに丸々5勝分の125点もの差をつけており、3年連続となるチャンピオンに向けて独走中。もはやタイトルの行方よりも、「レッドブルとフェルスタッペンの連勝記録がどこまで伸びるか」に注目せざるを得なくなっている。
とはいえ、レッドブル以外は激戦状態だ。149点でドライバーズランキング3位のフェルナンド・アロンソと4位ルイス・ハミルトンの差はたったの1点。5位のシャルル・ルクレールと6位ジョージ・ラッセルは99点の同点で、7位カルロス・サインツJr.も92点と僅差でこの2人に迫っていた。
そしてコンストラクターズチャンピオンシップでも、503点で孤高の首位につけるレッドブルより下は別世界が広がっている。247点で頭ひとつ抜け出したのは、シーズン中にマシンコンセプトをガラリと変える決断を下した2位メルセデス。一方で開幕から表彰台の常連だったアストンマーティンは開発競争でつまずいて失速、196点で3位に転落し、191点で4位のフェラーリに追われている。そして第11戦イギリスGPで持ち込んだアップデートで劇的なカムバックを果たした103点のマクラーレンが5位に躍進している。
速すぎるレッドブル&フェルスタッペンを前に、その後続のマシンがひとつ下のカテゴリーである「F2に見える」と言ったのはメルセデスのトト・ウォルフ代表。ライバルをしてそこまで言わしめる一強独走だが、フェルスタッペンが不動の主演俳優なら、その他の助演陣は局面ごとに目まぐるしく変わる展開でもある。おもしろみを欠くと嘆くのは、まだ早いというものだろう。
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フェルスタッペン、母国で3年連続ポール
ドライで行われた金曜日のプラクティスでは、アルファタウリでF1復帰3戦目を迎えたダニエル・リカルドがクラッシュし左手を骨折。レッドブルのリザーブドライバーだったリアム・ローソンが急きょGPデビューを飾ることとなった。
土曜日には天気が崩れるも、予選開始時にウエットだった路面は天候回復とともに徐々に乾き始め、トップ10グリッドを決めるQ3は各車ドライタイヤを履いて出走。ウィリアムズのローガン・サージェント、フェラーリのシャルル・ルクレールがそれぞれクラッシュし、12分間のセッションは2度も赤旗中断となる慌ただしい展開に。残り4分、各車続々とタイムアップを果たすなかで最速で駆け抜けたのはフェルスタッペンだった。後続に0.537秒もの大差をつけ、母国で3年連続、今シーズン8回目、通算28回目のポールポジションを奪った。
フェルスタッペンと最前列をシェアしたのは、好調が続くマクラーレンのランド・ノリス。メルセデスのジョージ・ラッセルが3位、ウィリアムズのアレクサンダー・アルボンが大健闘の末、キャリアベストタイとなる4位を獲得した。
さらにアップデートを施してきたアストンマーティンのフェルナンド・アロンソ5位、フェラーリのカルロス・サインツJr.6位と、トップ6に6チームのマシンが並ぶ混戦模様。レッドブルのセルジオ・ペレスはチームメイトに1.3秒も離されて7位、マクラーレンのオスカー・ピアストリは8位につけ、ルクレール9位、サージェントはクラッシュしたものの自身最高10位からレースに臨むこととなった。
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スタート直後に雨の混乱、レッドブルが早々に1-2
72周のレースは、突然の雨により混乱のうちにスタートした。オープニングラップの終盤になって急に雨脚が強まったことでペレスやアルピーヌのピエール・ガスリーらがすかさずピットへ。トップのフェルスタッペンも2周目を終えインターミディエイトタイヤに履き替えたが、ラッセル、ノリス、アルボン、ハミルトンらはドライのソフトタイヤのまま走行を続行。この初動の違いがリザルトに大きな影響を及ぼすことになった。
順位が目まぐるしく変わるなか、早々にインターを装着したペレスが首位に立ち、アルファ・ロメオのジョウ・グアンユーが2位、ガスリー3位、そしてフェルスタッペンは4位というオーダー。フェルスタッペンは程なくして2位までポジションを上げると、早々にレッドブル1-2が出来上がった。一方でインターに履き替えるのが遅かったノリスやメルセデス勢は後退を余儀なくされ、明暗が分かれた。
雨はすぐにやみ、10周を過ぎる頃には再びソフトタイヤにスイッチするドライバーが現れだした。2位だったフェルスタッペンは12周目、先頭のペレスより1周先んじてソフトに変更したことで首位に返り咲き、2位ペレス、3位アロンソ、4位ガスリーという並びとなった。
16周目、サージェントのウィリアムズがスピン、ウォールにしたたかにヒットしたことでセーフティーカーが出動。22周目、フェルスタッペンを先頭にペレス、アロンソ、ガスリー、サインツJr.の順位でにレースが再開。その後フェルスタッペンはファステストラップを連発しながら、どんどんリードを広げていくのだった。
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レース終盤の大雨で中断、フェルスタッペンが記録タイの9連勝達成
レースの折り返しを過ぎると、2度目のタイヤ交換に動くドライバーが出始める。46周目には2位ペレスが再びソフトタイヤを装着。49周目にはアロンソがピットに入るも、タイヤ交換に手間取りタイムロス。50周目には首位フェルスタッペンがソフトに履き直したことで、順位は1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位サインツJr.、4位アロンソとなった。サインツJr.に先行を許したアロンソだったが、瞬く間に同郷の後輩を抜き返し3位奪還。この日のアストンマーティンとアロンソには、シーズン序盤の勢いが戻っていた。
しばし小康状態を保っていた空模様が、レース終盤になってバケツをひっくり返したような大雨に転じた。61周目にペレス、続いてフェルスタッペンらが続々とインターミディエイトタイヤにチェンジ。ペレスはターン1を曲がりきれずコースオフし、アロンソが2位に上がった。
あまりにも激しい雨脚に、フェルスタッペンはフルウエットタイヤに履き替えたのだが、ジョウのアルファ・ロメオがコースオフ、バリアにヒットしたことで赤旗が出されると、レースはおよそ45分間中断した。
1位フェルスタッペン、2位アロンソ、3位ペレス、4位ガスリー、5位サインツJr.、6位ハミルトンといった隊列で、全車インターミディエイトタイヤを装着し、セーフティーカー先導で再開。残り6周となった時点で本格的なレースが始まると、千載一遇のチャンス到来とばかりにアロンソがフェルスタッペンに襲い掛かるも、一分の隙もないフェルスタッペンには歯が立たなかった。
オランダ人フェルスタッペンによる3年連続となるオランダGP制覇、しかも記録に並ぶ9連勝という快挙まで付いてきたのだから地元ファンが歓喜しないわけはない。ポールからの優勝はこれで12戦連続となり、こちらはミハエル・シューマッハーのレコードに肩を並べたことになる。
2位となったアロンソにとっては、第9戦カナダGP以来となる久々の表彰台。このレースでハミルトンが6位に終わったことで、ランキング3位のアロンソのハミルトンに対するリードは12点に広がった。
3位でチェッカードフラッグを受けたのはペレスだったが、ピットレーンのスピード違反により5秒加算のペナルティーが科され4位に転落。代わってガスリーが3位に繰り上がり、2021年アゼルバイジャンGP以来となるポディウムに立った。
各陣営とも雨に翻弄(ほんろう)されながらも、アストンマーティンは勢いを取り戻し、マクラーレンにやられっぱなしだったアルピーヌは表彰台でやり返した。相変わらずフェルスタッペンの独走は続いているが、2023年のF1がつまらないということは、決してないのである。
次の第15戦イタリアGP決勝は、9月3日に行われる。
(文=bg)