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新型「ホンダ・アコード」登場 “セダンばなれ”でもアコードがしぶとく生き残る理由

2023.09.28 デイリーコラム 佐野 弘宗
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新型の導入は最初から決まっていた

この2023年9月21日、北米や中国ではすでに発表されていた新型「アコード」(参照)がついに日本向けにも公開となった。ただ、正直なところ「新型アコードも日本で売るの?」と、意外に思われた向きもおられるかもしれない。

というのも、2020年2月に国内発売された先代アコードは、そのわずか2年半後の2022年夏に生産を終了。デビュー当時の販売計画からして月販300台(=年間販売台数3600台)という少なさだったことに加えて、実際の月販平均は200台程度だったとか。先代アコードについては、あのウィキペディアにも「日本市場において販売不振のため〜生産終了」と書かれているほどである。

しかし、先日の開発者インタビュー(参照)にもあったとおり、ウィキペディアの記述は事実とは異なる。先代アコードの生産終了はあくまで今回の新型への切り替えに合わせたもので、日本仕様の生産期間の短さも、もろもろの事情で日本仕様の販売開始が遅れたのが原因だったそうだ。さらには、新型アコードの日本発売についても、その是非の議論はホンダ社内にはなく、最初から予定されていたものという。

もっとも、「もはやこれまで!」と大変身に追い込まれた「トヨタ・クラウン」は、先代モデル末期にも年間2万台以上を売り上げていた。それを考えると、年間販売台数2000台強のアコードが販売不振と評されてもいたしかたない面もあるが、同時期の「日産スカイライン」の販売台数も年間3000台に達しておらず、国内のアッパーミドルセダンで、アコードだけが極端に売れていなかったわけでもない。

ただ、これ以上は追加しようがないほどのフル装備で500万円を切っていた先代アコードの価格は、クラウンやスカイラインと比較しても1〜2クラス手ごろだった。なのに、この台数とは、客観的に見て、日本でのアコードはやはり人気車種とはいえなかった。

2023年9月21日に公開された、初代モデルから数えて11代目にあたる新型「ホンダ・アコード」。2024年春に正式発売される予定だ。
2023年9月21日に公開された、初代モデルから数えて11代目にあたる新型「ホンダ・アコード」。2024年春に正式発売される予定だ。拡大
フルLEDの薄型ヘッドランプやブラックに統一されたラジエーターグリルでワイド感を強調する新型「アコード」のフロントフェイス。スポーティーなルックスもセリングポイントに挙げられている。
フルLEDの薄型ヘッドランプやブラックに統一されたラジエーターグリルでワイド感を強調する新型「アコード」のフロントフェイス。スポーティーなルックスもセリングポイントに挙げられている。拡大
水平基調のデザインや統一感のあるカラーコーディネートを用いて全面刷新されたインテリア。12.3インチのホンダコネクトディスプレイとバイザーレス仕様の10.2インチ液晶メーター、11.5インチ相当のヘッドアップディスプレイを搭載する。手に触れやすい部分にソフト素材を使用し、上質な仕上げを目指したという。
水平基調のデザインや統一感のあるカラーコーディネートを用いて全面刷新されたインテリア。12.3インチのホンダコネクトディスプレイとバイザーレス仕様の10.2インチ液晶メーター、11.5インチ相当のヘッドアップディスプレイを搭載する。手に触れやすい部分にソフト素材を使用し、上質な仕上げを目指したという。拡大
新型「アコード」は、より進化した2モーター式ハイブリッドシステムの搭載に加えて、最新のコネクティビティーとインフォテインメントシステム、安全運転支援技術の採用が特徴。“ホンダ初”の技術や装備が数多く盛り込まれている。
新型「アコード」は、より進化した2モーター式ハイブリッドシステムの搭載に加えて、最新のコネクティビティーとインフォテインメントシステム、安全運転支援技術の採用が特徴。“ホンダ初”の技術や装備が数多く盛り込まれている。拡大
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ホンダセダンの最後のトリデ

すでにお気づきの向きも多いように、そんなアコードをやめてしまうと、日本からホンダのセダンが消滅してしまう。実際、アコードのモデルチェンジ期である2023年現在、ホンダには新車で買える国内向けセダンは1台もない。

振り返ってみると、今からほんの3年ちょっと前、すなわち先代アコードが発売された2020年2月時点では、ホンダは国内でもなんと6車種ものセダンを用意していたのだ。

ところが、同年7月にまず「グレイス」の生産を終了。同じく8月には「シビックセダン」が10代目シビックそのもののモデルチェンジを待たずに国内生産と販売を終了した。さらに「レジェンド」と「クラリティ」は翌2021年いっぱい、そして「インサイト」も、先代アコードとほぼ同時期の2022年8月をもって生産を終了してしまった。つまり、アコードは国内のホンダセダン最後のトリデなのだ。

もっとも、グローバルでは、ホンダは今もセダンを多くつくるメーカーのひとつだ。かつて日本でグレイスの名で売られていたコンパクトセダンの「シティ」はその後もフルモデルチェンジを受けて、今でもアジアや中東、南ア向けの主力商品であり続けている。また、インドや南ア向けにはさらに小さなスモールセダンの「アメイズ」もある。また、現行シビックも日本や欧州以外ではセダンが残る……というか、多くの市場では、いまだにセダンこそがシビックの基本形である。

さらに北米ではホンダブランドのアコードやシビックに加えて、高級車チャンネルのアキュラで「TLX」と「インテグラ」も売っている。ちなみに、TLXはアコードの、インテグラはシビックのアキュラ版と考えていい。

北米と同じくアコードとシビックを売る中国では、さらに「クライダー」と「エンビックス」という中国専用セダンがあり、アコードのスポーツ版かつ同市場のフラッグシップとして「インスパイア」の名も健在である。

2017年10月、当時の八郷隆弘社長は、緊急記者会見で国内四輪車生産体制の集約を発表。フラッグシップセダンの「レジェンド」(写真)や、燃料電池車とプラグインハイブリッド車をラインナップする「クラリティ」、そしてミニバンブームの火付け役「オデッセイ」の生産終了が決断された。
2017年10月、当時の八郷隆弘社長は、緊急記者会見で国内四輪車生産体制の集約を発表。フラッグシップセダンの「レジェンド」(写真)や、燃料電池車とプラグインハイブリッド車をラインナップする「クラリティ」、そしてミニバンブームの火付け役「オデッセイ」の生産終了が決断された。拡大
2014年に発売された5ナンバーサイズの枠内に収まったコンパクトセダン「グレイス」。2020年7月に生産が終了した。
2014年に発売された5ナンバーサイズの枠内に収まったコンパクトセダン「グレイス」。2020年7月に生産が終了した。拡大
新型「アコード」では、これまでのアコードオーナーに加え、40〜50代の若いユーザーもターゲットに据えている。ブラックパーツを用いたシャープなエクステリアデザインで、全体的な若返りを図ったという。
新型「アコード」では、これまでのアコードオーナーに加え、40〜50代の若いユーザーもターゲットに据えている。ブラックパーツを用いたシャープなエクステリアデザインで、全体的な若返りを図ったという。拡大
1976年5月に登場した初代「アコード」は、3ドアハッチバックモデルとしてデビュー。1977年10月に4セダンタイプの「サルーン」(写真)が追加設定された。
1976年5月に登場した初代「アコード」は、3ドアハッチバックモデルとしてデビュー。1977年10月に4セダンタイプの「サルーン」(写真)が追加設定された。拡大
「シビック」の上位モデルとして登場した初代「アコード」。デビュー当初は最高出力82PSの1.6リッター直4「CVCC」エンジンを搭載していた。トップグレード「EX」の価格は112万円(東京地区標準現金価格)であった。
「シビック」の上位モデルとして登場した初代「アコード」。デビュー当初は最高出力82PSの1.6リッター直4「CVCC」エンジンを搭載していた。トップグレード「EX」の価格は112万円(東京地区標準現金価格)であった。拡大

アコードが日本から消えるとき

そんなセダン大国(?)のホンダでも、アコードは屈指のグローバル商品であり、とくに世界の2大市場である北米と中国での売り上げが大きい。北米も最近はセダンばなれが顕著で、アコードの北米販売も最盛期(1990〜2000年代初頭)の年間40万台にはおよばない。それでも、先代もピーク時の2018〜2019年には30万台近くを売った。今後は予断を許さない中国でも、ここ数年は常に年間20万台超えだった。

さらにアコードは北米や中国以外でも、アジア、中東、中米、豪州、そして日本で販売されている。まさにグローバル。アコードはやはり、とびきりのビッグネームということである。

そういえば、機を見るに敏というか、行き当たりばったりというか……国内ラインナップの出入りが激しいのも、ホンダの伝統的な特徴である。そんなホンダゆえか、じつは以前にも国内でセダンが1種類しか買えなかった時代があった(2013〜2014年)。そのときも、日本で唯一販売されていたのが、当時9代目のアコードだった。

とにもかくにも、いま国内で買える(厳密な予約注文開始は2023年12月予定だけど)ホンダのセダンはこれ1台。しかも、かろうじて生き残っているほかの国産セダンも多くが長寿化しており、こうして真新しい姿で出てきたアコードは、ホンダ好きだけでなく、日本全国のセダン好きにとっても、存在してくれているだけで貴重といえる。

先代の日本での業績や日本のセダン市場の動向を見るかぎり、失礼ながら、新型アコードも大量に売れるとは考えにくい。それでも、歴史が物語るとおり、アコードは今後もしぶとく生き残ってくれると期待したい。アコードが日本から消えるとき、それこそが日本のセダン市場の完全なる終焉(しゅうえん)……なのかも。

(文=佐野弘宗/写真=本田技研工業、花村英典/編集=櫻井健一)

2008年12月に発売された8代目「アコード」。セダンタイプと、ステーションワゴンの「アコードツアラー」が設定された。エンジンは最高出力206PSの2.4リッター直4を搭載。
2008年12月に発売された8代目「アコード」。セダンタイプと、ステーションワゴンの「アコードツアラー」が設定された。エンジンは最高出力206PSの2.4リッター直4を搭載。拡大
2008年12月に発売された9代目「アコード」。 ホンダ自慢の「i-MMD」を搭載するハイブリッド車に加え、外部充電が行えるプラグインハイブリッド車も設定された。後者はリースのみの販売だった。
2008年12月に発売された9代目「アコード」。 ホンダ自慢の「i-MMD」を搭載するハイブリッド車に加え、外部充電が行えるプラグインハイブリッド車も設定された。後者はリースのみの販売だった。拡大
2020年2月に発売された10代目「アコード」。ハイブリッドモデル「EX」のモノグレードのみの設定で、車両本体価格は465万円とされた。国内発売からわずか2年半後の2022年夏に生産が終了した。
2020年2月に発売された10代目「アコード」。ハイブリッドモデル「EX」のモノグレードのみの設定で、車両本体価格は465万円とされた。国内発売からわずか2年半後の2022年夏に生産が終了した。拡大
新型「アコード」には、2リッター直4直噴エンジンに2モーター内蔵のCVTを組み合わせたハイブリッドパワートレインを搭載。正式発売に先がけ、2023年12月に先行予約の受け付けが開始される予定だ。
新型「アコード」には、2リッター直4直噴エンジンに2モーター内蔵のCVTを組み合わせたハイブリッドパワートレインを搭載。正式発売に先がけ、2023年12月に先行予約の受け付けが開始される予定だ。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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