ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)
未来への回答 2025.06.21 試乗記 今やホンダの旗艦車種となった「アコード」に、先進運転支援システム(ADAS)「Honda SENSING(ホンダセンシング)360+」を搭載した新グレードが登場。ハンズオフ走行をはじめとする各機能の仕上がりを試すとともに、進化を続けるADAS/自動運転の未来を考えた。「レベル3」はひとまず置いておいて
米国自動車技術会(SAE)や国土交通省の定義によると、自動運転には「0」から「5」までの6段階のレベルがある……ということは、webCGの読者であればご存じかもしれない。スバルの「アイサイト」をはじめ、現在の市販車が搭載している高度なADASが「レベル2」(加速・減速・旋回の車両制御をシステムが部分的に行う)相当であることも、理解している人はいるだろう。
では、その次のステップはどうだろうか。「レベル3」、つまり運転主体が人間のドライバーからシステムに変わっているクルマというと、今は販売を終了した「ホンダ・レジェンド」をまず思い出す。「Honda SENSING Elite」を搭載したこのクルマは、世界で初めて市販車で自動運転レベル3を達成したということで、興味津々、試乗会に赴いた覚えがある。
しかし、その生産台数は100台限定で、販売方法はリースのみ。肝心のレベル3自動運転機能「トラフィックジャムパイロット」も、高速道路で車速が30km/h以下とならないとアイズオフ走行は可能にならず、また車速が50km/hを超えると通常のハンズフリー走行に戻されるなど、その作動基準はかなり厳しかった。おまけに価格は1100万円と、普通のレジェンドより400万円近く高かった。
そもそもの前提として、レベル3はシステムが交代を要請したときは、人間が運転を代わらなければいけない。だからだろう。同じ自動運転でも、移動サービスや物流サービスの分野では、レベル3が議論に上ることはなく、「レベル2の次はレベル4」というのが一般的な認識になっている。運転手不足の解消という大命題の解決に、レベル3はつながらないからだ。僕自身も、自家用車だけでなく移動サービスや物流サービスの自動運転を取材していくにつれ、「レベル3は曖昧ではないのか?」という気持ちになっていた。
なので、通算11代目となる現行アコードが、レベル2の枠内でのハンズオフを実現する「Honda SENSING 360+」を搭載してきたことは、レベルダウンではなく、理に適った判断だと思った(参照)。
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内外装にみるベースグレードとの違い
静岡県御殿場市で行われた試乗会では、「構成をスリムにして低価格化を図り、レベル2を高度化しつつ、普及を進めていくのが当面の目標」という説明があった。同様の言葉は、レジェンドのHonda SENSING Eliteの試乗会でも聞いた記憶がある。
現行アコードは、デビュー当初からADASにはホンダのなかでも高度な「Honda SENSING 360」を搭載していた。既存のシステムより、フロントウィンドウに仕込まれたセンサーカメラとリアバンパーのコーナーレーダーを広角化するとともに、フロントバンパーにもコーナーレーダーを装備して、その名のとおり自車の周囲360°をカバーしたものだ。
今回の360+は、運転席にドライバーモニタリングカメラ、ルーフエンドにマルチGNSSアンテナを装備し、高精度地図を追加した地図ECUを搭載。ステアリングホイールにはハンズオフの作動を伝えるインジケーターを内蔵している。
現行アコードはこれまで「e:HEV」のモノグレード構成だった。そこに加わった追加グレードには「e:HEV Honda SENSING 360+」と、ストレートにADAS名称を与えている。外観はアルミホイールやドアミラーの色が異なり、車体色によっては前述のルーフエンドアンテナもブラックで塗り分けられる。いっぽう、インテリアではホワイトが選べるようになった。現行型がデビューしたとき、ブラックインテリアだけでガッカリした覚えがあるので好ましいと思った。
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使えばわかる「ハンズオフ」のありがたみ
360+の特徴的な機能としては、先に述べた高速道路での「ハンズオフ機能付き高度車線内運転支援機能」のほか、「レコメンド型車線変更支援機能(追い越し支援/分岐退出支援)」「カーブ路外逸脱早期警報」などがある。このうちハンズオフは、コーナー手前での車速調整や合流車両の回避にも対応する。
さらに高速道路以外でも作動する「ドライバー異常時対応システム」や、「降車時車両接近警報」も付くが、今回の試乗は高速道路がメインだったので、主にはハンズオフと車線変更の機能をテストした。前半はスタッフが同乗してくれたこともあり、迷わず扱うことができた。
試乗会場を出て、すぐに高速道路に乗り、まずハンズオフ車線内運転支援を試す。ステアリングの作動スイッチを押すと、さっそくインパネやドアトリムのアンビエントランプがターコイズブルーになり、続いてステアリングのセンターパッド左右のインジケーターも同色に光った。記憶にあるレジェンドのレベル3も似たような色調で、ハンズオフが可能になるとステアリングにも同色のインジケーターを点灯させていたことを思い出した。Honda SENSINGとしてのストーリーはつながっているのだ。
アクセルペダルから足を、そしてステアリングから手を離しても、アコードは指定速度で車線内を進む。渋滞時限定ではなく、100km/h前後の流れのなかに身を置いているが、まったく不安はない。トンネルに入っても制御が途切れることはなかった。
読者のなかには「ハンズオフだけでは意味がない」と思う人もいるだろうが、そんなことはない。操舵にまつわる負担が軽減されるのに加え、腕を下ろしていると、これが断然楽だからだ。自分の体力が落ちてきているためもあるが、ステアリングを握るべく腕を上げ続けるという行為は、相応に体力を使うことがわかった。
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「レベル3」を実現したメーカーだからこその回答
続いてレコメンド型車線変更支援を試す。前走車に接近し、走行車線の流れが明確に設定車速以下になると、メーター内に「前方に遅い車両がいます」というメッセージが出る。そこでステアリングに手を戻し、右スイッチパネル右下の承認スイッチを押すと、「車線変更を受け付けました」という表示が現れる。もちろん、追い越し車線に車両がいるときは“待ち”となるが、車線が空いていれば自動的にウインカーを出し、車線変更を完了する。驚いたのは、一連の操作がスムーズであるうえにスピーディーだったこと。上手なドライバーが運転してくれているかのようだ。
ちなみに、カーナビで目的地設定をしていると、高速道路の分岐や出口に近づいたときにも同様の案内を行い、本線からの退出を自動で行ってくれる。こちらは現行アコードで採用したGoogleのナビと、高精度地図の連携で可能になったものだ。
新しもの好き、かつ面倒くさがりの僕は、自分でウインカーやステアリングの操作をしなくても車線変更を支援してくれる仕掛けに魅せられてしまい、ついにはウインカーレバーに触れることさえ面倒に思えるようになってしまった。もちろん、Honda SENSING 360+はレベル2であり、運転主体はあくまでドライバーであることを忘れてはいけない。でも、運転支援の範囲も作法も、レジェンドのレベル3より上ではないかと感じられた。
話を自動運転の6段階のステップに戻すと、レベル3は先述したように、システムに交代を要請されると人間が運転を代わらなければいけないので、“完全自動”とはいえない。それを克服した「レベル4」も、道路や地域を限定しての作動を前提としており、自家用車の魅力である“自由な移動”を実現する完全自動運転、すなわち最上位の「レベル5」との間には、なお大きな隔たりがある。
それを思うと、やはりドライバーレスのレベル4は、一部で実用化が進んでいる移動サービスなどに任せ、自家用車はレベル2を高度化していくのが望ましいのではないか。アコードに搭載されるシステムの体験を通し、レベル3での苦労を知るホンダが出した現時点での回答に納得した。
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高度なADASを広く浸透させるために
最後になってしまったが、試乗では現行アコードそのものの魅力も再確認できた。低く伸びやかなファストバックのスタイリングは、昔ながらのクルマのカッコよさをたたえており、低めのシートとインストゥルメントパネルを持つインテリアは、1980年代のホンダ車を思わせる。
ハイブリッドシステムは、市街地を流すようなシーンではほぼモーターだけで走れるのに対し、山道でアクセルペダルを踏み込むと、軽やかな吹け上がりと予想以上の快音に引き込まれる。ことこの部分に関していえば、昔ながらのホンダそのものだ。
そんなアコードに最初に360+を搭載したのは、もとからHonda SENSING 360を搭載しており、360+化に際してのコストが抑えられること、そしてそれでもベース車より40万円アップという費用がかかることが関係していると思われる。低・中価格帯のクルマで高額な先進装備を提案しても、買う人は少ないだろうからだ。ただ、伝統的なクルマらしさを前面に押し出したアコードのような車種を好む層が、ハンズオフを歓迎するだろうかという疑問は残った。やはりここは、コストダウンを進めたうえで、手ごろな車格のSUVやミニバンへの搭載を望みたい。
それと、今回の試乗では、スタッフが同乗しての操作説明がとてもありがたかった。Honda SENSING 360+の各機能は、高度で利用者側の理解も求められるものなので、販売の現場でもこれに近い対応があれば、ユーザーに喜ばれるのではないだろうか。
(文=森口将之/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4975×1860×1450mm
ホイールベース:2830mm
車重:1580kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:147PS(108kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:182N・m(18.6kgf・m)/4500pm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-8000rpm
モーター最大トルク:335N・m(34.2kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/45R18 98W XL/(後)235/45R18 98W XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:23.8km/リッター(WLTCモード)
価格:599万9400円/テスト車=618万4200円
オプション装備:ボディーカラー<キャニオンリバーブルー・メタリック>(4万4000円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(8万1400円)/ドライブレコーダー 前後2カメラセット(5万9400円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2031km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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