メルセデス・ベンツGLA200d 4MATIC(4WD/8AT)
カランコロンのゴロゴロゴロ 2023.12.13 試乗記 メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「GLA」がマイナーチェンジ。変更点は決して多くないものの、オプションながら減衰力可変式サスペンションが設定されたのがトピックだ。2リッターディーゼルモデル「GLA200d 4MATIC」の仕上がりを試す。うるさがるFさん
秋の夜長、朝の5時はまだ真っ暗である。ひんやりした空気のなか、新しいGLAに乗り込む。例によって紫色に近いブルーの細いLEDのアンビニエントライトが自動的に点灯して、室内にあやしいムードが醸し出される。♪タンタカタンタン・タンタンタン。ちょっとだけよ。あんたも好きねぇ。と思う人はライトの色を変えることもできるはずだけれど、カトちゃんが嫌いな子はいない。筆者も好きよ~。タンタカタンタン・タンタンタン。ジェットエンジンのタービンを模したというエアコンの吹き出し口のシルバーに、その紫色が、よく覚えていないけれど、たぶん反射していたと思う。横長の液晶スクリーンはモダンで、未来派っぽい。最近のメルセデスに共通するインストゥルメントパネルである。
それから2リッターの直4ディーゼルターボを目覚めさせる。アイドリング音が多少大きいような気もするけれど、編集部のFさんが言うほど、ゴロゴロゴロゴロ、うるさいとは筆者は感じない。ただ、新しいGLA200d 4MATICの「AMGラインパッケージ」には、ダイレクトステアリング、アダプティブダンピングシステム付きサスペンション、スポーツシートにカーボン調インテリアトリム、20インチAMGアルミホイール、スポーツブレーキ等に加えて、スポーティーエンジンサウンドという項目がある。だから、Fさんの感覚のほうが正しい、ともいえる。いや、正しい。と断言することもできる……かもしれない。走行状況に応じたエンジンサウンドを演出する、というこのシステムの存在を感知しなかった筆者の聴覚は鈍感、ということになる。悲しい……。
効果テキメンの可変ダンパー
いずれにせよ、マイナーチェンジを受けた2代目GLAの機構的な目玉のひとつがスポーティーエンジンサウンドであり、もうひとつがアダプティブダンピングシステムである。可変ダンピングのほうはAMGラインパッケージを選ぶと1.3リッターガソリンターボの「GLA180」にも付いてくるけれど、サウンドはGLA200d 4MATICに限られる。音に敏感な方はご注意ください。
可変ダンピングは効果テキメンというべきで、235/45R20という極太偏平の超大径サイズを履いているわりに、タイヤ&ホイールの存在が目立たない。ボディーの剛性感が高いこともあるだろう。プレミアムSUV用とされる「ブリヂストン・アレンザ001」の特性もあるにちがいない。ともかく、首都高速の目地段差を通過しても、ドシンバタンというショックが皆無といってよい。メルセデスのSUVファミリーを示す「GL」の文字が付いてはいるものの、GLA200d 4MATICのAMGラインパッケージは乗用車に近い乗り心地を示す。ヨンゴーの20インチなのに、低速で走ってもゴツゴツしない。
スポーティーエンジンサウンドによる効果なのか、加速時にはゴオオオーッという音が室内にとどろく。どっちかというと、ガソリンエンジンのようなサウンドで、もっと聴きたい、と思わせる。だけど、ディーゼルなので、ガソリンみたいに高回転までこぶしを利かせる、というところまでは回らない。2000rpmを超えるとほえはじめ、3000rpm過ぎでシフトアップするからだ。その際の8段DCTのスムーズで電光石火の変速ぶりは絶品である。
スポーティーかと問われなば
低速トルクはたっぷりしている。さほど回さなくてもスイスイ走る。1949ccの直4ディーゼルは可変ジオメトリーターボチャージャーとの組み合わせにより、340N・mという強力なトルクを1400-3200rpmの範囲で発生する。ガバチョとアクセルを踏み込むと、いわゆるケチャップがドバッと出ちゃったときみたいにパワーが出てくる。なので、そういうことはしてはいけない。アクセルはやさしく控えめに。そうすると、街なかだと1200rpm程度で走れるから、室内は静かなものだ。
といって、GLA200d 4MATIC AMGラインパッケージがスポーティーかというと……う~む。従来の価値観からすると、速攻でうなずけるものでもない。メルセデス・ベンツはGLAを「コンパクト・オールラウンダー」と定義していて、その定義に筆者も賛同する。おむすび型の外見からしてSUVというより、ハッチバックに近い。アウトドア感が強調されていない。そっち方面は「GLB」に任せている。若干、最低地上高が高めのハッチバック。というのがGLAの実像で、だけど、同じホイールベース2730mmの「Aクラス」の「200d」の最低地上高125mmと比べると、GLAは190mmあるから、75mm余裕がある。最低地上高の高さはオフロードでの大きな強みとなる。名門メルセデス・ベンツがつくった血統書付きの雑種、というと聞こえが悪いですね、オールラウンダーという名の新しい品種、それがGLAなのだ。
なお、今回試乗したGLAは、2020年にニッポンに上陸した2代目のフェイスリフト版である。およそ3年を経て、2代目GLAは7年のライフサイクルの後半へと向かう。改良点はさほど多くない。前後ライトのデザインが変更となり、前述したスポーティーエンジンサウンドとアダプティブダンピングのほか、機構的にはMBUXやナビゲーション等、エレクトロニクス関連が中心になっている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
気軽さがありがたい
AMGラインパッケージはオプション扱いになっているけれど、プラス59万円の別グレードと考えたほうが分かりやすい。AMGラインパッケージ装着車でしか選択できない「アドバンスドパッケージ」(48万6000円)も、試乗車は装備しており、おそらくディーラーに足を踏み入れたら、これらを付けたくなる誘惑に駆られることだろう。あらがうことは難しい。655万円だと思って、GLA200d 4MATICをお求めにディーラーののれんをくぐった諸氏は、どうせなら、とAMGラインパッケージが欲しくなり、そうすると、この試乗車のようにおよそ800万円になっちゃうのだ。
筆者の場合は、これでは買えない……と、トボトボ家路につくことになったりするわけですけれど、お金がありすぎて困っている人も世の中にはたくさんいらっしゃる。いいなぁ。
余談ながら、2020年に発売された当初、GLA200d 4MATICの車両価格は502万円だった。当時の円=ユーロの為替レートはおおむね120円台。2023年は140~160円台の円安である。輸入車の再度の値上げもある、かもしれない。なので、結局、いま買っておくのが一番お得……。かもしれない。
というわけで、可変ダンピングを得たGLA200d 4MATICは、コンパクトなオールラウンダーとしての資質をますます磨いた。カメラがとらえた前方の画像に矢印が出るシステム「MBUX ARナビゲーション」なんてのもオプションで選べる。高級ブランドがつくる、気軽なゲタ。仮におうちに「Sクラス」や「Gクラス」があったとしても、一番出番が多くなるのではないでしょうか。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLA200d 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4445×1850×1605mm
ホイールベース:2730mm
車重:1760kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150PS(110kW)/3400-4400rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1400-3200rpm
タイヤ:(前)235/45R20 96W/(後)235/45R20 96W(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:655万円/テスト車=788万2000円
オプション装備:ボディーカラー<デジタルホワイト>(9万6000円)/AMGラインパッケージ(59万円)/AMGレザーエクスクルーシブパッケージ(16万円)/アドバンスドパッケージ(48万6000円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:369km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:332.0km
使用燃料:21.2リッター(軽油)
参考燃費:15.7km/リッター(満タン法)/15.9km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.8.11 新型電気自動車「ES90」は、ボルボが「フラッグシップクロスオーバー」と紹介する新種の5ドアハッチバックモデル。「SPA2」プラットフォームによるゆとりあるボディーと、ボルボの次世代電気自動車アーキテクチャーの織りなす走りを報告する。
-
テスラ・モデルY Lプレミアム(4WD)【試乗記】 2026.8.10 日本でも好評を博す、テスラのSUVタイプの電気自動車「モデルY」。その6人乗り・ロングボディー仕様が「モデルY L」だ。実際に機能性や走りに触れてみると、決して「補助金頼み」とは言えない、同車の人気の理由が分かってきた。
-
アウディQ3 TFSI 110kWアドバンスト(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.8 アウディのミドルサイズSUV「Q3」の新型が日本に上陸。デザインやインターフェイスは新しくなっているが、さまざまな事情によってクルマとしての基本コンポーネンツは先代を踏襲しているのが3代目の実情だ。果たしてそれが吉と出るか凶と出るか。FWDのエントリーグレードを試す。
-
スズキDR-Z4SM(5MT)【レビュー】 2026.8.7 スズキ久々のスーパーモタードである「DR-Z4SM」に試乗! 最新の400cc級デュアルパーパスモデルをベースに、タイヤを17インチ化してオンロードでの機動性を突き詰めた一台は、今どき珍しいほどにアグレッシブで、強烈な個性を放つマシンに仕上がっていた。
-
アウディA6 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.8.5 歴史的にも車格的にも、アウディの中核に位置している「A6」。その最新モデルが日本に導入された。往年の「100」から数えて9代目となる新型は、いかなる走りを備えているのか? 既存の車種とは一味違う、新時代のアウディのドライブフィールを報告する。
-
ボルボのフラッグシップ電気自動車「EX90」が上陸 軌道修正された電動化戦略の今を探る
2026.8.13デイリーコラムボルボのフラッグシップ電気自動車(BEV)「EX90」と「ES90」が日本に上陸。2030年までに完全BEVブランドになるという目標は軌道修正したが、2040年までに温室効果ガス排出ゼロ企業を目指す方針に変わりはない。ボルボの電動化戦略の今を探る。 -
第974回:「民生用」と「軍用」をまたぐクルマたち――ルノーの最新戦術車両に思う
2026.8.13マッキナ あらモーダ!ルノーのクロスオーバーSUV「ラファール」がまさかの軍用車に? ルノーと軍需との第1次大戦にまでさかのぼるつながりと、彼らが今ふたたび防衛産業と距離を詰め始めた理由、世界的に見られる軍用と民生用の垣根を超えたクルマの歴史を、大矢アキオが解説する。 -
「スバルBRZ」が採用した「新しいシフトレバー構造」とは何か?
2026.8.12デイリーコラム2026年7月31日に発表された「スバルBRZ」の最新モデルでは6段MTへの「新しいシフトレバー構造」の採用がうたわれている。すでに熟成し切った技術のように思われるマニュアルトランスミッションだが、2026年にもなってどんな構造を取り入れたのだろうか。スバルに聞いてみた。 -
第124回:「日産エルグランド」と「メルセデス・ベンツVLE」(前編) ―絶対王者に戦いを挑む、次世代高級ミニバンのカーデザイン―
2026.8.12カーデザイン曼荼羅日産が新型「エルグランド」を発売し、海の向こうではメルセデス・ベンツが「VLE」を発表するなど、いまにわかに盛り上がりを見せている高級ミニバンのかいわい。新興勢力は王者「トヨタ・アルファード」の存在を超えられるのか? カーデザイン視点で考えた。 -
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)【試乗記】
2026.8.12試乗記トヨタの人気SUV「RAV4」が6代目へと進化。どれくらい人気なのかは本文をご覧いただきたいが、日本だけでなく約180もの国と地域で愛されているモデルゆえに、その仕上がりはとにかく手堅く、そして隙がない。街から高速道路、さらに山道まで走り回って、気になったのはわずか1カ所のみだった。 -
ネジやボルトの“締め付け”ひとつでクルマの乗り心地やハンドリングがよくなるって本当?
2026.8.11あの多田哲哉のクルマQ&A車体の組み上げに使われる、無数のネジやボルト。その締め方次第でよりよい走りを実現できるというのは本当なのか? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いてみた。














































