ルノー・メガーヌ ルノースポール(FF/6MT)【試乗記】
これはバーゲン 2010.12.16 試乗記 ルノー・メガーヌ ルノースポール(FF/6MT)……385万円
ハイパフォーマンスモデル「ルノー・メガーヌ ルノースポール」の新型が、日本上陸。2カ月後の発売を前に、その走りを試した。
あんなひとにも、こんなひとにも
「ルノー・メガーヌ」第3世代モデルの登場は、2008年秋のパリサロンであったが、日本市場に投入されるのはこれが最初だ。クーペボディで、しかもハイパフォーマンスな「ルノースポール」という、先鋭的なモデルが先陣を切る形になる。
ひとまわり大きくなったボディに、抑揚の利いた迫力あるエクステリアデザイン。そして、250psと34.7kgmを発生する高性能エンジンという過激な成立ち。単なる“ホットハッチ”にとどまらない、ルノー社の一枚看板として君臨するモデルである。
今度の「メガーヌ ルノースポール(RS)」は、スペックを重視し複雑な操作系にこだわる、現代のマニアックなユーザーの関心をも集める。
ブレンボ製のブレーキキャリパーやレカロ製のスポーツシートなどは、見た目のアピールだけでなく実質的な利点もある装備であるから、大歓迎。さらにドライビングの世界を広げるべく、このクルマにはさまざまな装置が用意されている。
ESP(横滑り防止装置)は、ノーマル/スポーツ/オフの3段階が選べ、ASR(トラクションコントロール)の度合いやアクセルレスポンスのレベルも自分で設定できる。モニターに表示される情報は、ターボのブースト圧、スロットル開度、トルク、出力、ブレーキ圧、油温、前後左右の加速度(G)、0-100km/hタイム、0-400mタイム、ラップタイム(ストップウォッチ)と盛りだくさんだ。
これらを「オモチャ」とちゃかしたり一笑に付すのは簡単だが、要は、利用するユーザー側の使い方次第ということだ。くだんの、5段階に変えられるスロットルなどは「初心者の練習用」ともいえるが、モーターで駆動するいまの技術を生かした工夫であり、たとえあなたが上級ドライバーでも、長時間の運転で疲れてきた際など、クルマの過敏な挙動を嫌ってゆったり流したい時には便利な備えであろう。
基本が違う
とはいえメガーヌRSの真価は、そんな電子ギミックにあるのではない。たとえば新型に与えられたLSDは、ルノーはもとより、量産型フランス車にとってめずらしい装備である。これまでフランス車は、ストロークの長いサスペンション、ソフトなバネと強力なダンパーなどにより、タイヤが路面からリフトすることのない接地性の良さをウリにしてきた。だから駆動輪の内輪が空転するような状況は、少し前まで皆無だったと記憶する。ハードコアなスポーツカー「ルノースポール・スピダー」でさえ、必要性が感じられなかった。エンジンのパワーよりもシャシーの能力が勝っていたとも言える。
しかしこのクルマは、通常ASRが働くにしても、一切の電気的デバイスをオフにして限界性能を楽しむ手段も選べる。ホイールスピンさせることまで楽しみとして視野に入れるならば、LSDは有効な安定装置でもあるし、空転による無負荷状態からエンジンをオーバーランさせてしまうという過失も防げる。もっとも、この点に関しては、エンジンそのものにリミッターが備わっているが。
メガーヌRSのハイパフォーマンスは、「基本を大ざっぱに造っておいて、さまざまな電気デバイスで整える」というような雑なものではない。
基本的な骨格をはじめ、主要コンポーネンツの剛性はしっかり確保されている。各部の作動が確実だからこそ、ドライバーの微妙な操作に対して適切に応えてくれる。繊細さを十分に持ち合わせている。例えば、スロットルレスポンスを最も過敏なレベルに調節したとしても、その感覚には簡単に慣れることができる。そしてひとたび慣れてしまえば「すべての状況でこの取り合わせがベスト」となりうる。
モーターアシストのパワーステアリングも、従来は軽過ぎて路面からの反力感に乏しかったが、この辺の感覚も改善された。
歴代ルノーでナンバーワン
他社のスポーツモデルと格段に違うのは、乗り心地である。フランス車にしては硬められているサスペンションも、ダンピングがしっかりしているのはもとより、路面から受けるハーシュネス的な単発の小入力に対しても、ゴツゴツした粗野な感触は皆無だ。姿勢をフラットに保ったまま、マイルドに凸凹を処理してしまう。
8.25Jのホイールに235/40ZR18という太めのタイヤを履く“バネ下”についても、決してドタバタ暴れる感覚はない。これは、サスペンションアームの材質を鉄から軽いアルミに変えただけでなく、そのスパンが十分に長く、スイング周期を長くとれた効果でもある。感覚的には、同種の日本車の倍はある感じだ。
個々のパーツの改善など小技もさることながら、トレッドが大幅に拡大され、バネ系を硬めなくてもロール剛性が強化されたのが一番効いている。私事ではあるが、昨年6月にこのメガーヌIIIの4ドアセダンで、パリ〜イスタンブール〜アテネ〜イタリア〜パリと9200km走破してきた経験も加味すると、これまですべてのルノー車の中で最良の走行感、という評価を与えられる。
2リッターエンジンが発生する250psは、わが国の「三菱ランサーエボリューション」や「スバル・インプレッサWRX STI」で見れば数世代前の数値に過ぎないが、乗った感覚では同レベルと言っていい。これら日本車が4WDであるにせよ、ものによっては100万円も高いことを考えると、クルマとしての洗練度ははるかに高くて仕上げも丁寧、スタイリングも派手かつエキサイティングな輸入車が、“たったの”385万円で買えることは、非常に魅力的だ。かなり思い切ったバーゲンであると言えよう。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏)

笹目 二朗
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