ランボルギーニ・ガヤルドLP550-2(MR/6AT)【試乗記】
快楽のランボルギーニ 2010.12.06 試乗記 ランボルギーニ・ガヤルドLP550-2(MR/6AT)……2408万1750円
四駆のスーパースポーツ「ランボルギーニ・ガヤルド」に、二輪駆動バージョンが登場。その誕生のワケと価値を、サーキット・ドライブで探った。
ワケあって二本足
「ランボルギーニ・ガヤルドLP550-2」の車名にある“LP”は、「Longitudinale Posteriore=後方縦置き」を表す。スーパーカー世代にとっては、おなじみの、ある種特別な意味を持った記号である。続く“550-2”は、最高出力と駆動輪の数のこと。つまり、このガヤルドは550psの90度V型10気筒エンジンを積み、後輪のみ駆動する。往年の名車「カウンタックLP」シリーズの由緒正しき末裔(まつえい)である。
「LP550-2」の誕生は、2009年7月に発売された「ガヤルドLP550-2 バレンティーノ・バルボーニ」に端を発している。同じ550psのMR版ガヤルドが世界限定250台で発売され好評を博したことから、単なる「LP550-2」の名でカタログモデル化されたというわけだ。「LP550-2」がその装備を一部簡略化したというのは、300万円以上高い「バレンティーノ・バルボーニ」のオーナーに対する敬意でもあるのだろう。しかし、「LP550-2」(e-gearモデル)でさえ2408万1750円もする(6段MTモデルは2303万1750円)。決して“お買い得モデル“なんかではないのだ。もちろん、あとからオプションのホイールや、「アド・ペルソナム」と名付けられたカスタマイズプログラムで着飾ることもできる。
新世代ランボルギーニ、特に「ガヤルド」は、アウディが鉄壁の4WDシステムとドイツ的クオリティコントロールでバックアップする、いわばスーパーカーの現代的解釈なのだ。
その文法を、ランボ自身が2WD化でいとも簡単に打ち破ったのはちょっと驚きだった。ちなみに4WDモデルの「LP560-4」は乾燥重量1410kgで、LP550-2は1380kg。2WD化がもたらす軽量化のメリットは、たったの30kgでしかない。それでもMRモデルを発売する理由は何だったのか。単に前後のトルク配分を電子制御するなり、システムのうえで「2WDモード」を作ればよかったのではないのか?
あとは乗り手の腕次第
ランボルギーニはその理由を「ドライバーが思い描くとおり、簡単にドリフト状態に持ち込むことができるようにするため」としている。少々子供っぽい言い方であるが、要するに彼らは、「スポーツカーをドライブする最大の楽しみは、ヨーコントロールにある」と認めたのである。
気になるのは、その550psというパワーを、ミドシップの2WDシャシーがどのように受け止めるかだ。なにしろランボは「このクルマ、ケツが出るぞ!」といい、さらに「リアデフにはロック率45%のLSDが付いているから、あとはお前次第だ!」とあおっているのである。
ただし、イタリアの本社が許しても、アジアを統括するランボルギーニの支社はそれを許してくれなかった。当日のコースは各所にパイロンが設置され、ストレートエンドではかなり早めのブレーキングポイントが、高速コーナー入り口には絶妙なシケインが作られたからだ。助手席にはお目付役のプロドライバーが座り(それはそれで怖かっただろうが)、厳戒態勢が敷かれている。しかも午前中の試乗はセミウェット。「ノーマル」「スポーツ」「コルサ」と3種類あるモードはノーマルに固定。トラクションコントロール機能は常にオンだった。
それでも、ウェット路面でその実力を推し量れたのは有意義だった。路面の摩擦抵抗が低そうな状況下でも、30扁平の極薄タイヤは自然な感覚で路面を捉え続け、安全装置でがんじがらめとはいえ、路面からのインフォメーションも豊か。軽く踏んだだけで大げさに反応するような、はやりのアクセルレスポンスもない。低速トルクは豊かなので、それほどアクセルを踏み込まずとも猛牛LP550-2は軽やかに歩を進める。余計な緊張感を強いられずに済んだ。
ガヤルド7年目のうま味
幸運なことに、午後の試乗枠は晴れ。ここではスポーツ/コルサの両モードを試すこともできた。
最も印象的だった違いは、e-gearのクラッチミート。これは段階を追うごとに速くなっていく。コルサモードはその名のとおりレーシングライクで、クラッチにはかなりの負担がかかると思うが、クラッチディスクはそれを見越してツインプレートになっているという。
圧縮比が12.5にまで高められたV10エンジンはあっという間に8500rpmまで吹け上がり、シフトアップ後も力強く加速し続ける。それでもストレートでリアタイヤは微動だにしない。スピードは恐怖感を伴わず、純粋なアトラクションとして楽しめる。立体的な吸気音で室内は高揚感に満たされるが、外から聴く分にはエキゾーストノートも意外に静かだ。
コーナーの立ち上がりでアクセルを一気に踏み込めばおもむろに駆動力をカットするが、パーシャルスロットルでじわりじわりとリアタイヤが滑り出す高速コーナーでは、実に細かい制御を行いトラクションを確保してくれる。もしかしたら、この制御に気づかないドライバーもいるかもしれない。
唯一不満に感じたのはブレーキだ。フロント6POT、リア4POTキャリパーにバカでかいローターを付けているから、踏み込めばしっかりと減速はする。しかしそこに至るまでの油圧の掛かり方が曖昧なため、踏み心地はセダンのように柔らかい。ここはキャラクター相応に、ソリッドなタッチにしてほしかった。そうすれば、サスペンションのストロークはややしなやかなままでも、その姿勢変化をより楽しめるはずである。
LP550-2は、2003年にデビューした当時のガヤルドに比べて、格段にアスリート的になった。期待していた2WDのドリフト性能こそ堪能できなかったが、エンジンは額面上のパワーだけでは魅力を伝えきれないほど豪快かつ緻密になり、そのレスポンスも堅牢(けんろう)過ぎたシャシーにようやくマッチして、最上のバランスとなった。
どちらかといえばヤッピーかヤンエグ御用達マシンと思えたガヤルドを見直せたのだから、ドリフトできなかったことには目をつぶろう。
助かったのはボクの方かもしれないけれど。
(文=山田弘樹/写真=田村弥)

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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