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第786回:「EQG」改め「G580 with EQテクノロジー」が鮮烈デビュー! 4輪個別にモーターを搭載した新時代のオフローダー

2024.04.24 エディターから一言 渡辺 慎太郎
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ひっそりと終了していたEQブランド

過日、メルセデス・ベンツの新しいGクラスについて寄稿した際に「特別なヤツ」と書いたモデルの情報がようやく解禁となった(参照:変わらないために変わり続ける 最新型「Gクラス」はどんな進化を遂げたのか?)。すでに「EQG」の名称でコンセプトモデルが公開されてきたGクラスの電気自動車(BEV)仕様である。

正式な車名は「メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー」となった。EQGを名乗らなかった(あるいは名乗れなかった)のは、メルセデスが2023年8月末にひっそりとサブブランドである「EQ」を終了してしまったからだ。それにしても、相変わらずメルセデスのネーミングはイマイチだし、コロコロと変える傾向は昔から変わらない。今回にしても結局ずいぶんと長い割には分かりにくい車名となってしまった。いっそもっと簡単に「G580EQ」とかでもいいのにと、個人的には思ったりもする。

G580を含む新しいGクラスは北京モーターショーでワールドプレミアとなった。先に内燃機(ICE)仕様の情報だけを公開して、みんなが一番気になるBEV仕様のティーザーのように使うという戦略だと推測する。いずれにせよGクラスの情報公開に関しては、メルセデス本社がこれまでにないくらいナーバスになっていた。“情報漏れ”がいったいどれくらいの影響を与えるのかよく分からないけれど、事前のワークショップではスマホやPCがすべて没収され、資料も配られず、「すべて口頭で説明しますから頑張ってメモってください」くらいの厳戒態勢だった。

「メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー」が世界初公開されたのは2024年の北京モーターショー。これまでは「EQG」と呼ばれていた、BEV版「Gクラス」だ。
「メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー」が世界初公開されたのは2024年の北京モーターショー。これまでは「EQG」と呼ばれていた、BEV版「Gクラス」だ。拡大
「G580」は「G500」(3リッター直6ターボ)の上に位置づけられ、メルセデスAMGを除くトップパフォーマンスモデルということになる。
「G580」は「G500」(3リッター直6ターボ)の上に位置づけられ、メルセデスAMGを除くトップパフォーマンスモデルということになる。拡大
ボディーサイズはホイールベースなどは内燃機関モデルと同じ。角張ったスタイリングはまさに「Gクラス」だ。
ボディーサイズはホイールベースなどは内燃機関モデルと同じ。角張ったスタイリングはまさに「Gクラス」だ。拡大
グリルにあたる部分に光沢のあるパネルが装着されるのが「G580」ならではのポイント。「EQS」をはじめとしたBEVとの共通性を感じる。
グリルにあたる部分に光沢のあるパネルが装着されるのが「G580」ならではのポイント。「EQS」をはじめとしたBEVとの共通性を感じる。拡大
北京モーターショーでのワールドプレミアの様子。
北京モーターショーでのワールドプレミアの様子。拡大
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システム最大トルクは1164N・m

もはやGクラスの開発コンセプトになってしまった「変わっていないように見せる」はG580にも貫かれている。エクステリアにおけるICE仕様との大きな違いは、フロントグリルとリアのスペアタイヤの代わりに背負う充電ケーブルを収納する四角いボックスくらい(通常のスペアタイヤも装着可能)。リアフェンダーのスリットはダミーではなく、ここから空気を取り入れることで、リアタイヤまわりにエアカーテンを出現させて空力を向上させる効果を持っている。

BEVの開発で最も重要視される要件のひとつが、どれだけ多くのバッテリーを搭載できるか。そのためにホイールベースを延ばしたり専用のプラットフォームを用意したりというのは、メルセデスもこれまでやってきた手法である。ところがG580はICE仕様と同じラダーフレームのシャシーを共有し、はしごの隙間にバッテリーを敷き詰めている。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は116kWh。これで最大473km(WLTPモード)の一充電走行距離を達成している。ラダーフレームを流用したのは、BEVになってもICEと同様のオフロード走破性を実現したかったからで、アンダーボディーはバッテリーの防水と耐衝撃性の目的で、CFRP製のカバーで覆われている。これにより渡河水深850mmも確保したそうだ。ちなみに、G580の車重は3085kgで、ついに3tを超えてしまった。「G500」の車重は2485kgだから、600kgも重くなっている。

モーターは各車輪に1つずつ、計4個を備えている。それぞれ最高出力147PS/最大トルク291N・mを発生し、システム全体で最高出力587PS、最大トルク1164N・mを誇る。当たり前だが、前後のアクスルをつなぐプロペラシャフトや、前/中央/後ろのデフも存在しないが、4個のモーターを個別に制御できるため、デフロックと同等の機能を備えているという。

4輪それぞれに最高出力147PSのモーターを搭載。システム全体では最高出力587PSと最大トルク1164N・mを発生する。
4輪それぞれに最高出力147PSのモーターを搭載。システム全体では最高出力587PSと最大トルク1164N・mを発生する。拡大
ラダーフレームの隙間に詰め込まれた駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は116kWh。WLTPモードの電力消費率は30.3-27.7kWh/100km(約3.3-3.6km/kWh)となかなか豪快な数字だ。
ラダーフレームの隙間に詰め込まれた駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は116kWh。WLTPモードの電力消費率は30.3-27.7kWh/100km(約3.3-3.6km/kWh)となかなか豪快な数字だ。拡大
最低地上高は250mmを確保。足まわりはもちろんリア:リジッド、フロント:ダブルウイッシュボーンの組み合わせだ。
最低地上高は250mmを確保。足まわりはもちろんリア:リジッド、フロント:ダブルウイッシュボーンの組み合わせだ。拡大
バッテリー保護を目的にアンダーボディーはCFRP製のパネルで覆われている。
バッテリー保護を目的にアンダーボディーはCFRP製のパネルで覆われている。拡大
リアゲートにはスペアタイヤ&カバーだけでなく普通充電用ケーブルが収まるケースも装着できる。
リアゲートにはスペアタイヤ&カバーだけでなく普通充電用ケーブルが収まるケースも装着できる。拡大

その場で回れる独自機能

そしておそらくG580最大のトピックは“Gターン”と呼ばれる“曲芸”だろう。センターコンソールにあるデフロックスイッチの代わりに設けられた“Gターン”のボタンを押し、右のステアリングパドルを引くと右に、左を引けば左にその場で回転を始め、2回転で自動的に止まる。パドルを戻してもその場で止まるので、90度や180度など、任意の位置で回転を止めることも可能。車両が1回転するのにかかる時間は約4秒。じれったく感じるほど遅すぎず、危険を感じるほど速くない時間を割り出した結果が4秒だったとのこと。また“Gコーナリング”というボタンも備わっていて、これはいわゆるトルクベクタリングに似た効果をコーナリング中に発揮したり、最小回転半径を小さくしたりできるそうだ。

個人的に気になったのは車重とタイヤである。3tを超える車体を支えるには、専用設計のタイヤが必要になるのではないかと考えたからだ。これに対してエンジニアは「ICE仕様にも採用している標準タイヤの、1輪にかかる最大荷重の範囲内には収まっているので問題ありません」とのこと。それでも、面白がってGターンを連発したらあっという間にタイヤが寿命を迎えてしまいそうではある。

G580は「エディション1」という特別仕様車から発売されるそうだ。専用のボディーカラーやブラックパネルのフロントグリルを囲むように配置されるLED照明などが用意されるという。その他の各種装備はICE仕様とまったく同じで、音声認識の「MBUX」やタッチパッド式のコントローラーなどは標準装備となる。おそらく「メルセデスAMG G63」を超えるような車両本体価格になるだろうけれど、きっと売れるんだろうなとも思う。そうなるととてもじゃないけど手が届きそうにないので、2023年にアナウンスされたBEVの“Baby G”の登場がますます待ち遠しくなってきた。

(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)

これがその場で旋回できる驚異の新機能“Gターン”だ! メルセデスのプロダクトマネージャーが「G580 with EQテクノロジー」の特徴を動画で解説!

内装のデザインは最新の「Gクラス」を踏襲。センタースクリーンがタッチ操作に対応している。
内装のデザインは最新の「Gクラス」を踏襲。センタースクリーンがタッチ操作に対応している。拡大
メーター表示はさまざまにアレンジ可能だが、やはり「Gクラス」にはピッチ&ロール計やコンパスなどを組み合わせた「オフロードスクリーン」がしっくりくる。
メーター表示はさまざまにアレンジ可能だが、やはり「Gクラス」にはピッチ&ロール計やコンパスなどを組み合わせた「オフロードスクリーン」がしっくりくる。拡大
内燃機関モデルのデフロックスイッチの場所には「Gターン」と「Gコーナリング」のスイッチが備わっている。中央のスイッチでローレンジも使える。
内燃機関モデルのデフロックスイッチの場所には「Gターン」と「Gコーナリング」のスイッチが備わっている。中央のスイッチでローレンジも使える。拡大
ドライブモードは写真の5種類。内燃機関モデルにはある「エコ」が省略されているのは、そもそもBEVがエコだからか、車重3t超えではエコに走れないからか……。
ドライブモードは写真の5種類。内燃機関モデルにはある「エコ」が省略されているのは、そもそもBEVがエコだからか、車重3t超えではエコに走れないからか……。拡大
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