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変わらないために変わり続ける 最新型「Gクラス」はどんな進化を遂げたのか?

2024.03.26 デイリーコラム 渡辺 慎太郎
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2018年のフルモデルチェンジ以来、初の改良を受けた「Gクラス」。初代は1979年にデビューした。
2018年のフルモデルチェンジ以来、初の改良を受けた「Gクラス」。初代は1979年にデビューした。拡大

「メルセデス・ベンツGクラス」が2018年のモデルチェンジ以来初の大規模な改良を受けた。当時と同様に今回も重視されたのは「変わらないこと」。変わっていないように見せるために最新技術を惜しみなく投入する。人気者には人知れぬ苦労があるものだ。

2018年のフルモデルチェンジではフロントサスペンションがマルチリンク式に。それでもリアはリジッドを守り抜いている。
2018年のフルモデルチェンジではフロントサスペンションがマルチリンク式に。それでもリアはリジッドを守り抜いている。拡大
2018年以降も型式番号は「W463」を踏襲。メルセデスはフルモデルチェンジではなく「大規模な改良」と主張していた。
2018年以降も型式番号は「W463」を踏襲。メルセデスはフルモデルチェンジではなく「大規模な改良」と主張していた。拡大
姿はほとんど変わらなかったが、先代モデルから引き継いだ部品はドアハンドルとモール、ウオッシャーのノズル、スペアタイヤのカバーだけとされている。
姿はほとんど変わらなかったが、先代モデルから引き継いだ部品はドアハンドルとモール、ウオッシャーのノズル、スペアタイヤのカバーだけとされている。拡大

「前のほうがよかった」と言われないために

メルセデス・ベンツGクラスは、「ポルシェ911」や「MINI」のように、その形自体がアイコンとなってしまったモデルである。おそらく、1979年のデビュー当時には、将来的にそういうクルマになるだろうとは開発チームですら思っていなかっただろう。

正確に言えば、Gクラスにはエクステリアデザインを変えたくても変えられなかった事情がある。そもそもGクラスは、NATOの軍用車両の民生版として登場した。以後もしばらくはNATOとの契約が更新され続ける。ミリタリースペックの車両は、部品供給が安定的に継続できることが何よりも重要であり、ちょくちょくフルモデルチェンジをしてしまったら、その度に部品のストックを一新する必要があるため、おいそれと新型を開発するわけにはいかなかったのである。先代までのGクラスのウィンドウがすべて真っ平らな板ガラスだったのも、破損しても現地で調達しやすいからといわれている。

モデルチェンジできなかったことで、結果的にはその格好が世界中で広く認知され、いつの間にかGクラスのアイコンとなり、絶大なる人気を博すまでに至った。いちモデルがブランド化したというのは喜ばしいことであると同時に、つくり手側にとってはなかなかやっかいでもある。下手にいじると「前のほうがよかった」と必ず言われるからだ。かといって、自動車の技術は日進月歩を遂げており、いつまでも旧態依然としたままでいるわけにもいかない。そこでGクラスの開発チームがとったのは、先進技術を使うことで格好や性能を大きく変えずにブラッシュアップさせる方法だった。

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空力性能が劇的に改善(当社比)

現行Gクラスは先代と見た目がほぼ同じながらも、流用部品は(小さなねじ類などを除けば)わずか4品目といわれている。前述のウィンドウも、リアガラスのみが板ガラスのままだが、フロントとサイドはわずかな曲率を持つ空力に配慮したガラスに刷新されている。ボンネットの先端に乗っかっているターンシグナルは、現代の衝突安全基準に照らし合わせると、突起物とみなされて本来であればNGである。しかしこれを、ある程度の衝撃が加わると下に落ちるようにしてクリアした。変わってないように見せるために、開発チームは並々ならぬこだわりと努力を尽くしてきたのである。

2018年にフルモデルチェンジを受けた現行モデルにとっては、今回が初めての改良となる。そのコンセプトは相変わらず「変わってないように見せる」だった。例えばドアハンドルは、前述の4品目のひとつに該当し、そのせいで現代のクルマでは当たり前の“キーレスゴー”が装備できなかった。ドアハンドルを流用した理由について、当時のチーフエンジニアは「オーナーが最初に触れるものだから、その時点でGクラスだと実感してほしかった」と語っている。そして最新型ではついに“キーレスゴー”が標準装備となった。基本的にはドアハンドルは従来型と同型だが、よく見ると小さな突起があって、これが接触式スイッチになっている。最新の技術を旧式のパーツに埋め込むことに、見事に成功したのである。

その格好から、Gクラスに空力性能を求めるのは事実上不可能といわれてきた。この点に関しても手が加えられている。ボンネットの中央部が従来型よりもわずかに盛り上がっている。これは、エンジンルーム内のパーツとの干渉を避けるためではなく、ボンネット上の空気を整流することが狙い。フロントグリルがほぼ真っ平らだった形状から奥行きを持たせた立体的形状に変更されたのも同じ理由である。さらに、Aピラーにかぶさっていた樹脂製のスポイラーの形状も刷新された。これにより、Cd値は従来の0.53から0.44に向上したという。「そもそも0.53もあったのか」「これだけやってもまだ0.44か」など、ツッコミどころは満載ではあるけれど、少しでもよくしようという開発チームの気概は伝わってくる改良である。

これは最新の「G500」。バンパー下部の形状が新しくなったほか、グリル内のバーがより立体的な形状になった。
これは最新の「G500」。バンパー下部の形状が新しくなったほか、グリル内のバーがより立体的な形状になった。拡大
Aピラーに付いていたスポイラーの形が変わり、Cd値が0.53から0.44へと改善。絶対的にはいまひとつだが、なにしろこれは「Gクラス」なのだ。
Aピラーに付いていたスポイラーの形が変わり、Cd値が0.53から0.44へと改善。絶対的にはいまひとつだが、なにしろこれは「Gクラス」なのだ。拡大
先代モデルから受け継いだドアハンドルは、小さな接触式スイッチの追加によって“キーレスゴー”が可能になった。
先代モデルから受け継いだドアハンドルは、小さな接触式スイッチの追加によって“キーレスゴー”が可能になった。拡大
ガソリン&ディーゼルの直6ターボ、ガソリンのV8ツインターボ(写真)の3種のパワーユニットはすべてISG付きのマイルドハイブリッドになった。
ガソリン&ディーゼルの直6ターボ、ガソリンのV8ツインターボ(写真)の3種のパワーユニットはすべてISG付きのマイルドハイブリッドになった。拡大
ボンネット先端のターンシグナルは衝突安全基準に抵触しないよう、衝撃を受けると落下する仕掛けに。これは改良前から変わっていない。
ボンネット先端のターンシグナルは衝突安全基準に抵触しないよう、衝撃を受けると落下する仕掛けに。これは改良前から変わっていない。拡大

V8エンジンはメルセデスAMG専用に

インテリアにおける最大のトピックは、「MBUX」が最新版に(ようやく)アップデートされたことだ。実はこれまでは「ハイ、メルセデス」の音声認識機能もタッチ式液晶パネルも採用されていなかったのである。同時にセンターコンソールのダイヤル式スイッチも、他のメルセデスと同様のパッド式にあらためられた。それ以外は基本的にほぼ従来のスタイルを継承している。

パワートレインは「G450d」が積む2989ccの直列6気筒ディーゼルターボ、「G500」の2999cc直列6気筒ガソリンターボ、そして「G63」の3982cc V8ツインターボの3種類。最高出力/最大トルクはG450dが367PS/750N・m、G500が449PS/560N・m、G63が585PS/850N・mで、さらに3つのエンジンはすべてISG仕様となり、メルセデスのなかで唯一の“無電動化モデル”だった汚名を返上した。なお、現行モデルは「G550」がV8を搭載していたが、今後はAMG専用となる。

今回は、生産工場やエクスペリエンスセンターがあるGクラスの故郷ともいうべきオーストリア・グラーツで開催されたワークショップに参加した。そして実は、前述のモデル以外にもう1台、特別な“ヤツ”も見せてもらった。現時点ではまだ詳細について語れないのだけれど、「変わってないように見せる」はそのモデルにも貫かれているし、何より期待を大きく上回る性能も備えたとんでもない代物だった。

(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)

インフォテインメントシステムの「MBUX」は(ようやく)音声認識とタッチ操作に対応した。デフロックスイッチの形状も新しくなった。
インフォテインメントシステムの「MBUX」は(ようやく)音声認識とタッチ操作に対応した。デフロックスイッチの形状も新しくなった。拡大
メーターパネルにはこれまでよりも詳細なオフロードの各種パラメーターが表示できるようになった。
メーターパネルにはこれまでよりも詳細なオフロードの各種パラメーターが表示できるようになった。拡大
ドライブモードには「トレイル」「ロック」「サンド」の3つが追加されている。
ドライブモードには「トレイル」「ロック」「サンド」の3つが追加されている。拡大
実は改良型「Gクラス」にはまだ隠し玉がある。すべてをご紹介できるのはもう少し先のことになりそうだ。
実は改良型「Gクラス」にはまだ隠し玉がある。すべてをご紹介できるのはもう少し先のことになりそうだ。拡大
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