フェラーリが12気筒の新型スーパースポーツ「12 Cilindri(12チリンドリ)」を世界初公開

2024.05.03 自動車ニュース 西川 淳
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フェラーリ12チリンドリ
フェラーリ12チリンドリ拡大

伊フェラーリは2024年5月3日(現地時間)、アメリカ・フロリダ州で、12気筒エンジン搭載の新型車「12 Cilindri(12チリンドリ)」を発表した。

フラッグシップのV12シリーズの最新モデルとしては珍しく、「12チリンドリ」の発表はイタリア国外(アメリカ・フロリダ州)で行われた。
フラッグシップのV12シリーズの最新モデルとしては珍しく、「12チリンドリ」の発表はイタリア国外(アメリカ・フロリダ州)で行われた。拡大
エクステリア最大の特徴は、“デルタウイングシェイプ”と呼ばれるルーフのデザイン処理。ブラックのパネルはカーボン材に変更可能。
エクステリア最大の特徴は、“デルタウイングシェイプ”と呼ばれるルーフのデザイン処理。ブラックのパネルはカーボン材に変更可能。拡大
今回は、オープントップバージョンの「12チリンドリ スパイダー」も同時に発表された。
今回は、オープントップバージョンの「12チリンドリ スパイダー」も同時に発表された。拡大
「12チリンドリ スパイダー」のルーフ開閉時間はそれぞれ14秒。45km/h以下であれば走行中でも操作できる。
「12チリンドリ スパイダー」のルーフ開閉時間はそれぞれ14秒。45km/h以下であれば走行中でも操作できる。拡大
最高出力830PSを誇る自然吸気の6.5リッターV12エンジン。最大トルク678N・mの80%を2500rpmという低回転域で発生する。
最高出力830PSを誇る自然吸気の6.5リッターV12エンジン。最大トルク678N・mの80%を2500rpmという低回転域で発生する。拡大
クーペのコックピットの様子。内装には、リサイクルポリエステルを65%含むアルカンターラをはじめ、サステイナブルな素材が多く使われている。
クーペのコックピットの様子。内装には、リサイクルポリエステルを65%含むアルカンターラをはじめ、サステイナブルな素材が多く使われている。拡大
インテリアのデザインには、シンメトリー(左右対称)なコクーンスタイルを採用。
インテリアのデザインには、シンメトリー(左右対称)なコクーンスタイルを採用。拡大
メーターパネル、センターディスプレイのほか、助手席前方には第3のディスプレイ(写真)が備わる。
メーターパネル、センターディスプレイのほか、助手席前方には第3のディスプレイ(写真)が備わる。拡大
トランスミッションは8段ATのみで、コンベンショナルなMTは用意されない。ただし、Y字型の金属素材を用いたシフトセレクターのデザインには、MT車のシフトゲートのイメージが反映されている。
トランスミッションは8段ATのみで、コンベンショナルなMTは用意されない。ただし、Y字型の金属素材を用いたシフトセレクターのデザインには、MT車のシフトゲートのイメージが反映されている。拡大
「12チリンドリ」の個性的なシート。乗車定員は2人である。
「12チリンドリ」の個性的なシート。乗車定員は2人である。拡大
大きな山型(デルタ型)の輪郭が強烈な個性を放つリアビュー。エキゾーストパイプは左右2本ずつの4本出しとなっている。
大きな山型(デルタ型)の輪郭が強烈な個性を放つリアビュー。エキゾーストパイプは左右2本ずつの4本出しとなっている。拡大
フロントまわりのデザインは、往年の名車「365GTB4デイトナ」をほうふつとさせる。
フロントまわりのデザインは、往年の名車「365GTB4デイトナ」をほうふつとさせる。拡大
「12チリンドリ スパイダー」のキャビン後方。“デルタウイングシェイプ”のルーフを持つクーペに比べれば、おとなしいデザインでまとめられている。
「12チリンドリ スパイダー」のキャビン後方。“デルタウイングシェイプ”のルーフを持つクーペに比べれば、おとなしいデザインでまとめられている。拡大
タイヤのサイズはフロント:275/35R21、リア315/35R21。写真のモデルはいずれも「ミシュラン・パイロットスポーツS 5」タイヤが装着されている。
タイヤのサイズはフロント:275/35R21、リア315/35R21。写真のモデルはいずれも「ミシュラン・パイロットスポーツS 5」タイヤが装着されている。拡大
「12チリンドリ」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4733×2176×1292mmでホイールベースは2700mm。前後重量配分は48.4:51.6と公表されている。
「12チリンドリ」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4733×2176×1292mmでホイールベースは2700mm。前後重量配分は48.4:51.6と公表されている。拡大

異例のイタリア外デビュー

その名も“12気筒”。イタリア語で“ドーディチ チリンドリ”と発音する。
「フェラーリ・ドーディチ チリンドリ」。そのあまりにストレートなネーミングにかえってマラネッロの12気筒エンジンモデルに対する自負と矜持(きょうじ)の深さを見せつけられた思いだ。

正式なお披露目はF1グランプリで沸くマイアミで行われた。2024年、フェラーリが北米マーケットに参入してちょうど70周年を迎える。戦前からエンツォの盟友であったルイジ・キネッティによるロードカービジネスへの助言と北米マーケットでのプロモーション(そしてもちろんフェラーリそのもののレースでの活躍)が現代のマラネッロの礎となったことは疑いようもない。それゆえ記念すべきアニバーサリーイヤーに、マラネッロは初めてフラッグシップのV12シリーズモデルの発表を“国外で”行ったというわけだ。

しかもスパイダーモデル「12チリンドリ スパイダー」(「812GTS」と同様、つまり14秒で開・閉、45km/h以下であれば走行中も操作可能なフル電動のリトラクタブルハードルーフ)と同時発表したこともまた、V12のシリーズモデルとしては史上初であった。


「812コンペティツィオーネ」が最後ではなかったのか!? メディアはもちろん、カスタマーたちもさぞ驚いたに違いない。そう、スーパーカーブランドは人々を驚かせることが大好きだ。そしてマラネッロはそのことに今、世界で最もたけているブランドでもある。

さらに進化したV12

その名のとおり、フロントミドに搭載されるエンジンはV12であり、もちろん自然吸気であった。型式名をF140HDというから812コンペティツィオーネのF140HBならびに「デイトナSP3」のF140HCをベースに発展させた新設計ユニットだとみていい。

事実、HDのパーツ構成やスペックはHBと似通っている。総排気量6.5リッター、最高出力は830PS/9250rpmで、最大許容回転数も9500rpmと812コンペと全く同じ。しかし最大トルクは逆に678N・m/7250rpmとスペックを下げてきた。このあたり、ユーロ6をはじめとする排ガスや音の規制に対応すべく主に排気系をチューニングしたことが影響しているが、実際には新たに組み合わされた8段DCTのギア比やプログラミング、革新的なトルク制御システム“アスピレーテッド・トルク・シェイピング”などによって、ドライバーには最大スペック減少とは無縁の“高ぶるドライビングプレジャー”を提供するという。

シャシー面では剛性アップや軽量化といった基本の取り組みはもちろん、20mmも短くなったホイールベースや各種電子制御技術のブラッシュアップ、リアを左右独立でコントロールする4WS、V12モデル初となるブレーキバイワイヤの採用など、その進化は多岐におよんでいる。さらにエアロダイナミクスの話もある。最大の驚きはこれら総合的なパフォーマンスで、その方面の話は尽きないのだが、もうひとつの驚きに話題を進めよう。それはやはりデザイン、スタイリングだ。

個性際立つエクステリア

フラビオ・マンツォーニ氏率いるデザインチームが新たなスタイリングを開発し始めたのは今から約4年前のこと。新モデルのコンセプトは「選ばれし者たちのためのエレガント&スポーツ」。それを体現するために彼らは全く新しいクーペフォルムを生み出した。

斜め後ろ、やや上方から見ると新型クーペの個性が際立つ。彼らが“デルタウイングシェイプ”と呼ぶユニークなモチーフが大胆に用いられた。ガラスもしくはカーボンファイバーのルーフとサイドウィンドウがひとつのセット、そしてもうひとつ、リアウィンドウとリッド、そして新たな空力アイテムである左右のエアロフラップがセットでいずれもブラック系でまとめられ、ボディー同色のピラーがその間からルーフへとブーメランのように侵食している。リアセクションを大胆に分割するのだ。

このモチーフは例えばフロントセクションやインテリアのセンターコンソールあたりにも用いられた。デザイン上、最も重要なモチーフということで、今のところ彼らは顧客がブラック調のパートをカーボン以外の色やマテリアルで代替することを許していない。そういう意味では今回、スパイダーモデルのほうはこのモチーフが幾分弱まるので、クーペのほうがより見どころが多いといえそうだ。

真横から見ると、ホイールベースが極端に短く、キャビンはかなり後方でグラマラスなリアフェンダーにほとんど寄りかかっているのがわかる。それゆえロングノーズはさらに強調され、しかも先端が低くとがっているので、サイドフォルムの斬新さはいまだかつてなく鮮烈だ。

特別な2人のためのコックピット

フロントからの見た目もユニーク。センターの黒いパネルや左右のライト周りの形状、さらにはリアエンドへと至る水平のダブルキャラクターライン、ルーフからリアエンドへ向かっての柔らかなラインなど、デザインのディテール処理には往年の名車「365GTB4デイトナ」の面影を見てしまうが、マンツォーニ氏いわく「完全に未来志向の結果」であるらしい。なるほどヘリテージの先に未来があるとする彼らの考え方をよく表したデザインだ。フロントフードは「プロサングエ」と同様にコファンゴスタイルで、前ヒンジ開きである。

もちろんこういったユニークなエクステリアのデザインは(床下も含めて)、エアロダイナミクス性能を可能な限り高めた結果でもあった。

筆者が最も気に入ったのはインテリアだ。「ローマ」、プロサングエとデュアルコックピットスタイルを強調してきたマラネッロだったが、ついにそのコンセプトが新型モデルで極まった。ほぼシンメトリーなコクーンスタイルのコックピットが2つ並び、その間を例のデルタウイングシェイプのフローティング風デザインがブリッジしている。なるほどこれは“選ばれし者たち”のコックピットと呼ぶにふさわしい。

0-100km/h加速2.9秒や最高速度340km/h以上などといったパフォーマンス数値など、これら個性的なデザイン性を前にして、もはや刺し身のツマでしかない。もちろんマラネッロもこのモデルのフィオラノラップタイムを明らかにはしていない。12チリンドリはフェラーリ最新のエレガンスとパフォーマンスを両立するモデルなのだ。

クーペのデリバリーは2024年末、スパイダーは2025年春から始まる。イタリアでの車両本体価格は39万5000ユーロ(約6650万円)からだ。

(文=西川 淳/写真=フェラーリ)

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