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水平対向エンジンのフルハイブリッドが登場! スバルの電動化戦略が見えてきた

2024.05.23 デイリーコラム 玉川 ニコ
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水平対向エンジンのフルハイブリッドを開発

2023年8月に発表されたスバルの「新経営体制における方針」が2024年5月13日にアップデートされた。

それによれば、2026年末までにラインナップする4車種の電気自動車(BEV)はトヨタと共同開発することが決定。スバルの矢島工場で生産するBEVはトヨタにも供給され、反対にトヨタの米国工場で生産されるBEVはスバルに供給される。そしてこのアライアンスの知見を生かした「自社開発のBEV」は、2028年末までの投入を見込んでいる。

また、トヨタのハイブリッドシステム「THS」をベースとした水平対向エンジンのストロングハイブリッド「次世代e-BOXER」を搭載する新型「フォレスター」が、2024年度中にも発売される。このストロングハイブリッドは「クロストレック」にも積まれる。そしてその他の内燃機関(ICE)系商品ラインナップの強化については「今後適宜発信する」としている。

以上が、5月13日に発表された「新経営体制における方針」のアップデート版における大まかな内容だ。これと前年8月の「新経営体制における方針」をベースに、ここで今後のスバルの電動化戦略を分析というか、予想する。

2023年11月、米ロサンゼルスオートショーにおいて発表された新型「フォレスター」。1997年に登場した初代モデルから数えて6代目にあたる。米国ではこれまでに260万台以上を販売したスバルの主力SUVだ。
2023年11月、米ロサンゼルスオートショーにおいて発表された新型「フォレスター」。1997年に登場した初代モデルから数えて6代目にあたる。米国ではこれまでに260万台以上を販売したスバルの主力SUVだ。拡大
クロスオーバーSUV「スバルXV」の後継モデルとなる「クロストレック」は、2022年9月に登場。最新モデルは始祖である「インプレッサXV」から数えて4代目にあたる。国内では2リッター水平対向4気筒マイルドハイブリッドの「e-BOXER」のみがラインナップされる。
クロスオーバーSUV「スバルXV」の後継モデルとなる「クロストレック」は、2022年9月に登場。最新モデルは始祖である「インプレッサXV」から数えて4代目にあたる。国内では2リッター水平対向4気筒マイルドハイブリッドの「e-BOXER」のみがラインナップされる。拡大
「e-BOXER」は、最高出力145PSの2リッター水平対向4気筒直噴ユニットとCVTの間に同13.6PSのモーターを挟み込み、駆動アシストや回生充電を行うマイルドハイブリッドシステムを採用している。
「e-BOXER」は、最高出力145PSの2リッター水平対向4気筒直噴ユニットとCVTの間に同13.6PSのモーターを挟み込み、駆動アシストや回生充電を行うマイルドハイブリッドシステムを採用している。拡大
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状況次第では純エンジン車も継続か

今回の発表に対する総論的な印象は「先行きを見通すことが難しいタイミングゆえ、スバルは取りあえず手持ちのカードをそろえることで、今後の世の中がどう転んでも柔軟に対応できるようにしてきたな」というものである。

まずは現在と近い将来においては確実に主力となるストロングハイブリッド車(HEV)というカードを手に入れる。そのうえで直近のタイミングで登場させるBEVにおいては、開発と供給においてトヨタと協業することでリスクを低減し、ビジネスに柔軟性を持たせる。そして自社開発のBEVに注力すると同時にICEにも含みを持たせ、前述したとおり「今後の世の中がどう転んでも柔軟に対応できる(はず)」という体制を組んできたのだ。

今回のアップデート版ではなく、2023年8月に発表された「新経営体制における方針」に掲載された棒グラフを素直な心で眺めると、スバルの2030年における電動車の販売比率目標は「BEVが50%で残る50%がHEV」と読むことができる。つまり2030年にはスバルの純ICE車は廃止され、BEVとHEVだけのメーカーになるということだが、筆者はこのグラフをそうは読まない。なぜならば、この棒グラフの右端部分は「2030年全世界販売台数120万台+α」という文字が入った円形の表示にて、巧妙に隠されているからだ。

まぁ「巧妙に隠されている」というと人聞きは悪いが、要するに含みを持たせているというか、「2030年も状況次第では普通にICEの新車をつくっている可能性はあります」ということを、このグラフの制作者は心の中で言っているのだ。それが証拠に、2023年8月の発表と今回のアップデートのなかで「スバルのICE車は20XX年に製造を終える予定です」的な文言は確認できない。すでに述べたとおり「今後の世の中がどう転んでも柔軟に対応できるようにする」というのが、今回および昨年の発表の本質なのだ。

先に米国で発表された新型「フォレスター」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4656×1829×1730mm、ホイールベース=2670mm。「スバルグローバルプラットフォーム」をさらに進化させたフルインナーフレーム構造を採用し、最高出力180HPの2.5リッター水平対向4気筒エンジンを搭載している。
先に米国で発表された新型「フォレスター」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4656×1829×1730mm、ホイールベース=2670mm。「スバルグローバルプラットフォーム」をさらに進化させたフルインナーフレーム構造を採用し、最高出力180HPの2.5リッター水平対向4気筒エンジンを搭載している。拡大
スバルの電動化への道筋をつくったとされる取締役会長の中村知美氏は、2023年3月まで同社の代表取締役社長CEOを務めた。販売の軸足を置く米国市場で、9年連続前年超えの販売シェアを達成。2011年に2.09%だったシェアを2020年には4.2%にまで伸ばし、2030年に全世界販売台数120万台+αという目標の基礎を固めた。
スバルの電動化への道筋をつくったとされる取締役会長の中村知美氏は、2023年3月まで同社の代表取締役社長CEOを務めた。販売の軸足を置く米国市場で、9年連続前年超えの販売シェアを達成。2011年に2.09%だったシェアを2020年には4.2%にまで伸ばし、2030年に全世界販売台数120万台+αという目標の基礎を固めた。拡大
2026年末時点でラインナップが予定される純電動SUVは、現在販売されている「ソルテラ」を含む4モデル。スバルの矢島工場で生産するBEVはトヨタにも供給され、反対にトヨタの米国工場で生産されるBEVはスバルに供給される。(スバルのオフィシャルウェブサイトより)
2026年末時点でラインナップが予定される純電動SUVは、現在販売されている「ソルテラ」を含む4モデル。スバルの矢島工場で生産するBEVはトヨタにも供給され、反対にトヨタの米国工場で生産されるBEVはスバルに供給される。(スバルのオフィシャルウェブサイトより)拡大
スバルの2030年における電動車販売比率目標は「BEVが50%で残る50%がHEV」と読むことができるが、HEVと純エンジン車の販売比率には触れられていない。(スバルのオフィシャルウェブサイトより)
スバルの2030年における電動車販売比率目標は「BEVが50%で残る50%がHEV」と読むことができるが、HEVと純エンジン車の販売比率には触れられていない。(スバルのオフィシャルウェブサイトより)拡大

レアなエンジン車の中古価格が上がる?

今後登場するスバルのBEVとHEVに、われわれユーザーはどう向き合うべきなのか? 何ともいえない話ではあるが、一応筆者なりの考えを述べておこう。

まず2024年度中にも登場する見込みのストロングハイブリッド搭載のフォレスターおよびクロストレックだが、これには個人的にかなり期待している。いまさらいうまでもなくスバル車は全般的に“乗り味”において何ら不満はないものの、“実燃費”には大いに不満がある。

新型フォレスターやクロストレックと直接比較できるものでもないが、筆者の愛車である2.4リッター水平対向ターボエンジンを搭載する現行型「レヴォーグ」の平均燃費は7km/リッター台だ。主に都内で乗っているからという理由もあるだろうが、さすがに「昭和のクルマかよ……」と思ってしまう数値である。令和なのに。だがTHSベースのストロングハイブリッドによりこの問題がおおむね解決されるのであれば、もはやスバル車に不満はない。乗り味など、どうせいいに決まっているのだから。

次に「2026年末までにラインナップされるトヨタと共同開発のBEV SUV」についても、まぁ期待できるのではないかと思っている。そして2028年末までの投入が見込まれている「自社開発のBEV」ついては本当に何もわからないため、筆者から現時点で申し上げることはない。

その代わりというかなんというか、「STI」のコンプリートモデルや「WRX STIファイナルエディション」など希少なICE車の中古車価格は今後徐々に上がっていき、最終的には、現在の空冷「ポルシェ911」にように「ちょっと買えない値段」になるのではないかと予想する。

昨年8月に発表された「新経営体制における方針」のなかで、スバルは電動化戦略だけでなく「開発日数半減」「部品点数半減」「生産工程半減」という方針も示している。もちろん、例えば部品点数が半分になるからといって自動的に「味が落ちる」ということは決してなく、さまざまな合理化や最先端化により、むしろそれまで以上の仕上がりになる可能性のほうが高い。このあたりの流れは、過去と現在のメルセデス・ベンツやポルシェがすでに証明している。

とはいえ、例えば最新の911では空冷時代の「あの感じ」が出せていないことも確かで、だからこそ空冷ポルシェ911の中古車には2000万円以上、あるいは3000万円以上の値がついている。

スバルの電動化戦略が順調に進めば進むほど、これと似たようなことが、STIコンプリートカーなどの希少ICE車においても起こるだろう──というのが筆者の見立てだ。

(文=玉川ニコ/写真=スバル/編集=櫻井健一)

2022年4月に登場した「ソルテラ」は、スバルがトヨタと共同開発したBEV。トヨタブランドの「bZ4X」が姉妹車としてラインナップされる。一充電走行距離はFWD車が530km前後、4WD車が460km前後で、車両本体価格は627万円から715万円。
2022年4月に登場した「ソルテラ」は、スバルがトヨタと共同開発したBEV。トヨタブランドの「bZ4X」が姉妹車としてラインナップされる。一充電走行距離はFWD車が530km前後、4WD車が460km前後で、車両本体価格は627万円から715万円。拡大
スバルが「新経営体制における方針」のアップデートで発表した電動モデルの生産工場と生産のスケジュール。フルハイブリッドのパワートレイン「次世代e-BOXER」は、埼玉・北本工場で製造される。(スバルのオフィシャルウェブサイトより)
スバルが「新経営体制における方針」のアップデートで発表した電動モデルの生産工場と生産のスケジュール。フルハイブリッドのパワートレイン「次世代e-BOXER」は、埼玉・北本工場で製造される。(スバルのオフィシャルウェブサイトより)拡大
スバルとアイシンは2024年3月12日、スバルの次世代電気自動車に搭載する駆動ユニット「eAxle」を共同開発・分担生産すると発表した。写真左はスバルの代表取締役社長 大崎 篤氏、同右はアイシンの取締役社長 吉田守孝氏。
スバルとアイシンは2024年3月12日、スバルの次世代電気自動車に搭載する駆動ユニット「eAxle」を共同開発・分担生産すると発表した。写真左はスバルの代表取締役社長 大崎 篤氏、同右はアイシンの取締役社長 吉田守孝氏。拡大
スバルとアイシンの協業によって製造される新世代「eAxle」は、スバルが2020年代後半から生産開始するBEVに搭載される予定。ギアやモーター、インバーターといった部品をパッケージ化することで、従来のエンジン+トランスミッションに対して2分の1程度のサイズへと小型・軽量化され、「省スペース」「電費の向上」「低コスト化」といった効果も生み出す。
スバルとアイシンの協業によって製造される新世代「eAxle」は、スバルが2020年代後半から生産開始するBEVに搭載される予定。ギアやモーター、インバーターといった部品をパッケージ化することで、従来のエンジン+トランスミッションに対して2分の1程度のサイズへと小型・軽量化され、「省スペース」「電費の向上」「低コスト化」といった効果も生み出す。拡大
「STI」のコンプリートモデルや「WRX S4 STI Sport#」(写真)といった希少なエンジン車は、今後中古車価格が徐々に上がっていくものとマニア筋は予想している。
「STI」のコンプリートモデルや「WRX S4 STI Sport#」(写真)といった希少なエンジン車は、今後中古車価格が徐々に上がっていくものとマニア筋は予想している。拡大
玉川 ニコ

玉川 ニコ

自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。

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