トライアンフ・スピード400(6MT)
ベテランにこそ薦めたい 2024.08.14 試乗記 英国の老舗トライアンフが、満を持して投入した400ccクラスの新型エントリーモデル「スピード400」。小・中排気量セグメント進出の旗手を担う一台は、メーカーの気合が感じられる、王道のロードスポーツに仕上がっていた。トラディショナルないで立ちとは裏腹に
いつから、「単気筒エンジンのバイクはクラシカルな雰囲気とエンジンの鼓動を味わいながら、成熟した走りを楽しむテイスティーモデル」という刷り込みができたのだろうか。トライアンフの新たな排気量クラスのニューモデル、スピード400は、そんな先入観を覆す走りを味わえる。
イギリスを代表するバイクメーカー、トライアンフは、1990年代以降は600cc以上の排気量を中心にラインナップを展開してきた。小・中排気量クラスに参入すると表明したのは2013年のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で、当時、世界を席巻していた250ccのカウル付きスポーツバイク、例えば「カワサキ・ニンジャ250」や「ヤマハYZF-R25」の対抗馬として、「デイトナ250」を開発中であるとサプライズ発表して多いに注目を集めたのだ。
ところがその計画は幻に終わり、トライアンフはまったく異なるアプローチでの小・中排気量マーケットへの進出を画策する。その結果生まれたのが、このスピード400だ。スタイルは幻のデイトナ250とまったく異なるクラシックなネイキッド。“ザ・モーターサイクル”といった風情を醸しだす丸目ヘッドランプや、丸みを帯びたフォルム、バーハンドルにバーエンドマウントのミラーなど、ボンネビル系のトラディショナルないで立ちとなっている。
いっぽうで、フロントサスペンションはφ43mmの倒立フォーク、リアショックはあえてツインショックではなくモノショックとするなど、“走り”に重きを置く装備をまとう。これに応える電子制御系にも、ABSはもちろんのこと、スロットルバイワイヤやトラクションコントロールを装備。モダンなロードスポーツとして、この辺りは抜かりない。
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排気量を忘れさせるエンジンの存在感
トライアンフの伝統的な外観デザインを踏襲した単気筒エンジンは、どこから見ても存在感がある。やや広めのハンドルも相まって、マシンのかたわらに立つと、ひとまわり大きなサイズのバイクと見紛(まが)うほどだ。
しかし、またがってみるとサイズ感はオーソドックスなミドルクラスのネイキッドそのものだし、170kgという車両重量も、環境規制や排気音量対策のために金属パーツの厚みが増していることを加味すれば、ごく一般的な範囲のものだ。
ライディングポジションは王道のロードスター、すなわち日本語で言うところのネイキッドスポーツそのもの。身長160cmの筆者でも、すぐに手足になじむ車格で、走りだしてしまえば自在に操ることができる。
スタートした瞬間に感じるエンジンのパワフルさとトルク感は、単気筒であることも400ccであることも忘れさせる。排気音は野太く低音にチューニングされており、トルク変動の小さい滑らかなエンジンフィールとともに、ぐいぐいと前に進む独自の感覚を味わえる。その鼓動感は、シングルというよりもツインエンジンのそれに近い。また極低速時でのエンジンの粘りは、エンストしにくい特性にもつながっている。クラッチ操作が楽になる「トルクアシストクラッチ」システムの搭載とも相まって、特にビギナーは、発進停止時や低速走行時に大いにその恩恵を受けることだろう。
試乗日はあいにくの雨で、スピード400の本当の実力に触れることはできなかったが、ミドルクラスの枠を超えたエンジンの存在感を味わうことができた。また、少し前ならスーパースポーツにしか搭載されなかったトラクションコントロールなどの電子制御システムとも相まって、ラフなストリートライドから積極的なスポーツライディングまでこなせそうなパフォーマンスも感じさせてくれた。
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デザインにも独自のこだわりが
スピード400が単なるネイキッドバイクに収まらないのは、随所に見せる遊び心を盛り込んだデザインもまた魅力だからだ。英国のユニオンジャックをオマージュした燃料タンクの巨大ロゴはもちろんのこと、あちこちに「T」マークやトライアンフのロゴを忍ばせる。
計器については、アナログのスピードメーターに加えてモノクロのLCDディスプレイを装備。スプロケット風にデザインされたアナログ風のタコメーター(エンジン回転計)をデジタルで表現し、その左側には大きなギアポジションインジケーター、右側には走行距離や燃費などの表示枠を配し、ハイブリッドで新たなデザインにチャレンジしている。
トライアンフのカタログでは、スピード400はモダンクラシックのラインナップに加えられているが、ネオクラシックなフォルムとともに、王道のスポーツバイクの走りを実現する装備とエンジン性能を持ち合わせている。ビッグバイクを駆ってきたベテランライダーも納得の走りができることだろう。
(文=小林ゆき/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×814×1084mm
ホイールベース:1377mm
シート高:790mm
重量:170kg
エンジン:398.15cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
最高出力:40PS(29.4kW)/8000rpm
最大トルク:37.5N・m(3.8kgf・m)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:72万9000円
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小林 ゆき
専門誌への寄稿をはじめ、安全運転セミナーでの講習やYouTubeへの出演など、多方面で活躍するモーターサイクルジャーナリスト。ロングツーリングからロードレースまで守備範囲は広く、特にマン島TTレースの取材は1996年から続けるライフワークとなっている。
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