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「ホンダWR-V」に「スズキ・フロンクス」 “インドからの日本車”は今後メジャーになっていくのか?

2024.08.26 デイリーコラム 工藤 貴宏
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かの国から続けざまに……

2024年春に発売された「ホンダWR-V」と、もうすぐ発売が予定されている「スズキ・フロンクス」。両者の共通点がどこにあるかと問われれば、まずは、ともに“コンパクトクロスオーバーSUV”であること、となるのだろう。

しかし、それだけでは自動車メディア的には満点回答とはいえない。「いずれもインド製の輸入車」というのも、注目すべきトピックだからだ。WR-Vはホンダとして初めて、フロンクスはスズキにとっては2車種目となる「日本で売るインド生産車」である。

筆者の知る限り、日本へ正規導入されるインド製輸入車のさきがけとなったのは2014年に日本発売された「フォード・エコスポーツ」。次いで2016年には「スズキ・バレーノ」が発売されている。エコスポーツは(トランスミッションをDCTとするなど先進のメカは搭載しつつ)内装の仕立てなどに「新興国向けのコストを抑えたモデルであることを感じさせる部分」があったものの、いっぽうのバレーノは欧州でも販売されたこともあり、内外装の仕立ては先進国のマーケットまで考えたものだと、その違いを感じたことをよく覚えている。

余談だが、日本では「個性的」と思えたバレーノのスタイリングも本国であるインドで見ると妙にカッコよく、現地で走っているのを見ると高級感まで感じることに驚いたものだ(あくまで筆者個人の感想です)。インドでは「ネクサ店」というスズキの高級店舗で販売され、登場以来100万台以上を販売した超人気モデルである。

2024年3月に発売された「ホンダWR-V」は、タイで開発、インドで生産されるコンパクトSUV。1.5リッター直4ガソリン(FF)のみで、209万8800円~248万9300円というリーズナブルな価格設定が大きなトピックとなっている。
2024年3月に発売された「ホンダWR-V」は、タイで開発、インドで生産されるコンパクトSUV。1.5リッター直4ガソリン(FF)のみで、209万8800円~248万9300円というリーズナブルな価格設定が大きなトピックとなっている。拡大
インドのグジャラート工場で生産される、スズキのクロスオーバーSUV「フロンクス」。2024年秋に国内販売がスタートする。こちらもパワーユニットは1.5リッター直4ガソリンで、価格はカーナビ付きのFF車が250万円強、4WD車は+約20万円という。
インドのグジャラート工場で生産される、スズキのクロスオーバーSUV「フロンクス」。2024年秋に国内販売がスタートする。こちらもパワーユニットは1.5リッター直4ガソリンで、価格はカーナビ付きのFF車が250万円強、4WD車は+約20万円という。拡大
2016年3月に国内販売がスタートした、スズキの世界戦略車「バレーノ」。生産拠点はインド国内の工場で、日本における発表会には駐日インド大使も出席し、あいさつを述べた。
2016年3月に国内販売がスタートした、スズキの世界戦略車「バレーノ」。生産拠点はインド国内の工場で、日本における発表会には駐日インド大使も出席し、あいさつを述べた。拡大
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今後も増える可能性あり

閑話休題。WR-V(現地名「エレベイト」)ともうすぐ発売が見込まれるフロンクスで3台目&4台目となるインド製日本仕様だが、どうしてインド生産かといえば2つの理由がありそうだ。

ひとつは、生産クオリティーが日本とそん色ない状態にまで高められたから。かつては生産設備やサプライヤーから納入される部品などに起因して、日本製のクルマに比べると品質面で追いつけない部分があった。しかし昨今のグローバル化により現地での生産体制も強化され、日本の企業がしっかり品質を管理した製品であれば、少なくとも一般ユーザーが感じられる範囲においては日本製とそん色ないクオリティーでつくれるようになっているのだ。

もうひとつは、インド工場の活用方法。スズキもホンダもインドの国内内需をまかなうだけでなく、輸出拠点として活用する道を探っている。スズキを見ると、アフリカや東南アジア、中東、さらには欧州や南米までインド製のクルマを送り出しているほどだ。輸出先は100カ国にもなるという。

まとめてつくるから効率がいいうえに、インドはまだまだ人件費が安く、日本に比べるとクルマを安くつくれる。スズキのクルマは小さく、価格競争力が求められるコンパクトカーにおいて生産コストを抑えられるメリットは少なくないというわけだ。

日本において、これからもインド製の輸入車が増えるかといえば、為替相場が円高に振れれば増えていくに違いない。品質もそん色なくて値段が安いとなれば、メーカーにとってメリットが大きいからだ。

自動車メーカーとしては、同じ車種をインドと日本の両方の工場でつくるのではなく、生産拠点をインドにまとめ、日本向けはインドからの輸出として生産を効率化することも十分にあり得る話だ。どちらも右ハンドル&ウインカーレバーも右側なので仕様をつくり分けなくても済むし。

いっぽうで高価格帯の車両に関しては、話はそう簡単ではないかもしれない。小型車と違って「安ければいい」という単純な話にはなりにくいからだ。それを逆手に取り、“日本製”であることを付加価値として、インド製(や東南アジア製)の小型車とは差別化するようなことだって将来的には考えられる。

インドでは「ホンダ・エレベイト」の名で販売される「WR-V」。ちなみにWR-Vという車名は「Winsome Runabout Vehicle」の頭文字から。「生き生きとした毎日を楽しんでほしい」という願いが込められている。
インドでは「ホンダ・エレベイト」の名で販売される「WR-V」。ちなみにWR-Vという車名は「Winsome Runabout Vehicle」の頭文字から。「生き生きとした毎日を楽しんでほしい」という願いが込められている。拡大
「ホンダWR-V」のインテリア。全3グレードのうち上位2グレードのシート表皮は、合皮とファブリックのコンビ(写真)となる。
「ホンダWR-V」のインテリア。全3グレードのうち上位2グレードのシート表皮は、合皮とファブリックのコンビ(写真)となる。拡大

旬の2車種はいい勝負

ところで、もしかするとインド生産つながりでWR-Vとフロンクスはどっちがお買い得? と悩んでいる人もいるかもしれない。

フロンクスはまだ正式発表前で価格も装備も発表になっていないが、うわさによるとカーナビ標準装備のワングレードでFFモデル(駆動方式はFFのほか4WDが選べる)が250万円ちょっとなのだとか。カーナビは「スイフト」だとオプションで25万円なので、実質230万円くらいと考えればよさそうだ。

WR-Vの価格は209万8800円から248万9300円なので、「できるだけ安いほうがいい」というのならWR-Vのベーシックグレード「X」を選ぶのがいいだろう。荷室の広さもWR-Vの勝ちだ。

コストパフォーマンス的にはWR-Vのミドルグレード「Z」とフロンクスは同じくらいといえるが、内装の仕立ての上質感はフロンクス有利というのが筆者の印象だ。フロンクスには電動パーキングブレーキも備わるし、先進安全機能もモリモリ装備だし。

というわけで、今後もきっと増えるであろうインド製の日本向け輸入車。果たして次に日本上陸するインド生産車は、どのクルマか?

きっと現時点では、インドでしか生産していない「ジムニー」の5ドアじゃないかな……? よく知らんけど、期待を込めて(笑)。

(文=工藤貴宏/写真=本田技研工業、スズキ、向後一宏/編集=関 顕也)

「スズキ・フロンクス」のインテリアは、ブラックとボルドーのツートンカラー。力強さやたくましさを表現したという造形で、シート表皮は合皮とファブリックのコンビとなる。
「スズキ・フロンクス」のインテリアは、ブラックとボルドーのツートンカラー。力強さやたくましさを表現したという造形で、シート表皮は合皮とファブリックのコンビとなる。拡大
「スズキ・フロンクス」とは対照的に、直線的なデザインが採用された「ホンダWR-V」のインテリア。ブラックの室内色や、パーキングブレーキがレバー式であることも相違点として挙げられる。
「スズキ・フロンクス」とは対照的に、直線的なデザインが採用された「ホンダWR-V」のインテリア。ブラックの室内色や、パーキングブレーキがレバー式であることも相違点として挙げられる。拡大
2023年1月、インドのモーターショー「Auto Expo2023」の会場に並べられた、スズキの「ジムニー5ドア」(写真左)と「フロンクス」(同右)。そのうち、インドからの新たな輸入車としてジムニー5ドアが上陸する!?
2023年1月、インドのモーターショー「Auto Expo2023」の会場に並べられた、スズキの「ジムニー5ドア」(写真左)と「フロンクス」(同右)。そのうち、インドからの新たな輸入車としてジムニー5ドアが上陸する!?拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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