BMW 120(FF/7AT)/M135 xDrive(4WD/7AT)
大事なことを忘れてました 2024.10.11 試乗記 FFへの歴史的転換からはや5年。「BMW 1シリーズ」がフルモデルチェンジを受けた。4代目となる新型でもドライブトレインのレイアウトはFFを踏襲しているが、そのドライビングフィールには確かな進化のアトが感じられる。「120」と「M135 xDrive」の仕上がりを報告する。そもそも異端だった1シリーズ
BMWの1シリーズといえば“エフアール”なんて言っているのは、どうやら今では少数派になってしまったようで、実際に1シリーズのオーナーの多くは駆動形式には強いこだわりを持っていないそうである。ブランドのエントリーモデルでありコンパクトでお手ごろな価格帯にあるモデルは、BMWに限らずおおむねどこのメーカーでも同じような状況だろう。
そもそもパッケージを優先し、コンパクトサイズでキャビンスペースをできるだけ広く確保するためには、エンジンを縦置きにしてプロペラシャフトが部屋の真ん中を貫通するFRよりも、エンジンを横置きにして駆動系のすべてをAピラーより前方で完結させるFFのほうが理にかなっている。その当時、わざわざエンジンとプラットフォームを新設までしてつくったメルセデスの「Aクラス」を見ても、コンパクトカーにとってFFの駆動形式は合理的かつ常道の手段であることがうかがえる。そんななかにあって、常識を覆すがごとくあえてFRの駆動形式を携えこの市場に参入してきたのが初代1シリーズだった。それでも3代目になるとやはりFFの駆動形式に変更。1シリーズとしては4代目の新型もFFの駆動形式を踏襲して登場した。
ただし、BMWの場合はFFに“寝返った”というよりも、お家事情による苦渋の選択だったといえるかもしれない。BMWはMINIブランドを抱えることになり、そのFFプラットフォームを共有せざるを得なかったのだ。初代1シリーズに対するBMWの気概を思えば、もしMINIをつくる必要がなければ、FRの1シリーズはいまでも存続していたかもしれない。
デザインには力を入れました
クルマ好事家の間では、FRの1シリーズはちょっとしたブームになったこともあるくらいの人気を博していた。3ドアや2ドアクーペ、コンバーチブルなんかもラインナップされていた。だからFFへの転向を惜しむ声も少なくなかったものの、FF化されたからといって販売台数が急激に落ち込むこともなく、2004年の誕生以来300万台の販売台数を記録しているという。ちなみに生産台数の約8割はヨーロッパ圏内で消費されており、ドイツが40%と最も多く、2位はイタリア、3位には右ハンドルのイギリスが名を連ねている。
ボディーサイズを先代と比較すると、全長は42mm、全高は25mmそれぞれプラスされたが全幅とホイールベースに変更はない。ホイールベースが同値ということからも察しがつくように、プラットフォームは先代の改良版という位置づけである。これは共有する新型MINIでも同様だ。ただし、開発コードはF40からF70になったのでフルモデルチェンジの扱いである。
エンジンを縦置きにしていたため、物理的に長くなっていたエンジンルームを含むロングノーズのシルエットは1シリーズのアイコンでもあり、それはFFになってもスタイリングイメージに継承されてきた。新型も、実際にはそれほど長くないのだけれど長く見えるようなフォルムで形成されている。「先代のスタイリングはイマイチだった」との声があったそうで、新型ではかなり気合を入れてデザインに取り組んだとのこと。確かに、ヘッドライトよりも下がったキドニーグリルなどを含めて全体的に刷新感はあると思う。ただ、そもそも最近のBMWデザイン自体がいろいろと物議を醸しているようなので、新型1シリーズのデザインがどのように市場へ受け入れられるのかは未知数でもある。
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シャシー補強に見るBMWのこだわり
インテリアは最近のBMWの文法にのっとった風景で、ボディーサイズに合わせてちょっと小ぶりなカーブドディスプレイ、機能や作動状況に応じて光り輝くインタラクションバーなどが装備されている。左右の吹き出し口を覆うように配置されているシルバーのトリムはアルミ製で、スリットからLEDの明かりが見えるなど、ディテールがなかなか凝っている。オプションのスポーツシートの表皮にはペットボトルのリサイクル素材を採用、本革は一切使用しないなど、地球環境への配慮も忘れていない。
パワートレインはガソリンが4種類、ディーゼルが2種類の計6タイプを用意。ガソリンの「116」(最高出力122PS/最大トルク230N・m)と「120」(170PS/280N・m)は3気筒、「123 xDrive」(218PS/360N・m)と「M135 xDrive」(300PS/400N・m)は4気筒、ディーゼルの「118d」(150PS/360N・m)と「120d」(163PS/400N・m)も4気筒で、M135以外は48Vのマイルドハイブリッド仕様となる。つまり現状だと、ディーゼルを選ぶと自動的に前輪駆動になるようだ。
前述のように、プラットフォームは基本的に先代からの流用だが、剛性アップを狙ったシャシーの局部的補強など随所に手が加えられている。注目すべきは、例えば120とM135 xDriveでは補強を入れる場所や方法を微妙に変えている点。駆動形式もパワースペックも異なるので、当たり前といえばそうなのだけれど、コストや手間を考えたら(日本メーカーのように)両仕様で共有するやり方のほうが一般的だ。こういうところにBMWの走りに対するこだわりが感じられるし、同時にFFでもFRに負けず劣らずの操縦性にさらに磨きをかけようとする意気込みも伝わってくる。また、フロントのキャスターアングルを20%増やすことで、直進性の向上も図ったそうだ。今回われわれに供された試乗車は、120とM135 xDriveだった。
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夢中にさせるほどの完成度
M135 xDriveはまあとにかくシャシーが頑強という印象が強い。路面からの大きな入力があっても特に腰から下がねじれる兆候はみじんもなく、ピンと張り詰めたままという感じ。Mアダプティブダンパーが標準で装備されているが、減衰力可変タイプではあるものの電子制御式ではなく機械式。路面入力の大きさによってあらかじめ設定された減衰力を切り替える仕組みである。これでたいていの路面はカバーできているようで、どんな場面でもほぼ同等の快適な乗り心地を提供してくれた。
4輪駆動なので後輪にもトラクションがかかるわけだが、タイヤの接地面変化が少なく安定的に路面を捉える。ステアリングレスポンスはもちろんよくて、切るともっと曲がりたがるタイプの味つけでもある。操縦性というと、どうしてもステアリング系や足まわりでどうにかしようとする傾向があるけれど、BMWのxDriveは駆動力配分も積極的に操縦性へと有効活用しているように思えるし、最近ではその制御が一段とうまくなった。前輪で曲がっているのかトラクション配分を使っているのかがほとんど分からないほど、両者が溶け込んで一体化しているようでもある。
それでも個人的に印象がよかったのは120のほうである。M135 xDriveほどの頑強な感じはないものの、それがかえって全体的にマイルドな乗り味となって表れている。操縦性にしてもグイグイ巻き込むようなタイプではなく、ドライバーのステアリングからの入力に対してあくまでも正確に反応する。このとき、クルマの動きが手に取るようにわかり、そこに無駄な所作はほとんど存在しない。クルマと対話をしながら自分自身が操っている感触を味わえるのである。こうなると運転が楽しくてつい没頭してしまい、気がつけばこのクルマが前輪駆動だったことをすっかり忘れていた。従来型でも前輪駆動をあまり意識させない操縦性にはなっていたけれど、新型になってついにBMWは完全にFFを攻略したと思った。
(文=渡辺慎太郎/写真=BMW/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW 120
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4361×1800×1459mm
ホイールベース:2670mm
車重:1425kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:156PS(115kW)/4700-6500rpm
エンジン最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1500-4400rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)
システム最高出力:170PS(125kW)
システム最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)
タイヤ:(前)225/45R18 95Y XL/(後)225/45R18 95Y XL(コンチネンタル・スポーツコンタクト7)
燃費:6.0-5.3リッター/100km(約16.7-18.7km/リッター、WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
BMW M135 xDrive
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4361×1800×1459mm
ホイールベース:2670mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:300PS(221kW)/5750-6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-4500rpm
タイヤ:(前)235/40R19 96Y XL/(後)235/40R19 96Y XL(グッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツ)
燃費:8.1-7.6リッター/100km(約12.3-13.2km/リッター、WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 慎太郎
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